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第六話
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「俺がここへ来たのは、そんな事とは関係ない」
クリスは冷静な表情でブラックソウルを見つめたが、内心は闇の中に置き去りにされた子供のように、困惑していた。誰が聞き耳を立てているともしれぬこの酒場で、彼女の上司は自分がオーラの間者であると、公言するようなことを言ってる。
しかし、ここのもの達は、皆、周囲に無関心であった。自分達の計略に夢中な、盗賊たち。他人に酒をたかるのに熱心な、流れ者。金勘定の最中の行商人。羽振りの良い客の気を引こうとする、売笑婦。そしてその女達を振り向かそうとする、美貌の詩人。
この雑然とした店の中では、大国の計略なぞ、おとぎ話のように、現実味が薄い。
ブラックソウルはそう考えて、ここを選んだのだろうか。クリスには判断できなかった。
「まあ、当分は大人しくドルーズのおもりをしていてくれ。俺はいずれ、ジゼルに会いにゆく」
「どういう意味ですか?」
ブラックソウルは謎めいた笑みをみせた。
「ジゼルはオーラの間者とて、受け入れてくれるのさ。あれは奇妙な考えの女だよ」
クリスは半信半疑であったが、ブラックソウルの輝く瞳は、確信に満ちている。
彼女はジゼルの、荒野の狼のような笑みを想いうかべた。目の前のこの限りなく無神経に近い、大胆さを持った男に似ていると思う。
「そんなことよりも、ジゼルは巨人族の女戦士を捕らえたそうじゃないか」
ブラックソウルは子供のような無邪気な笑みを浮かべ、聞いた。
「ええ、どうも本当のようです」
「ドルーズは、ブラックロータスでも調合したのか?巨人というのは不死身の完全体らしいが」
「何かは知りませんが、クワン共和国から来た麻薬のようでしたが」
ブラックソウルは楽しそうに、くすくす笑った。
「知の大国クワンは別名、麻薬大国というらしいからな。俺も土産に買って帰るとするか。オーラの闘竜を眠らせるようなやつも、あるかもしれねぇな」
クリスはこの男に感じる戸惑いの正体が、判ったような気がした。ブラックソウルは楽しんでいるのだ。ジゼルの野心や、ドルーズの危険な野望を知った上で、面白がっている。しかし、その本心がどこにあるのかは、クリスには見当もつかなかった。
クリスは冷静な表情でブラックソウルを見つめたが、内心は闇の中に置き去りにされた子供のように、困惑していた。誰が聞き耳を立てているともしれぬこの酒場で、彼女の上司は自分がオーラの間者であると、公言するようなことを言ってる。
しかし、ここのもの達は、皆、周囲に無関心であった。自分達の計略に夢中な、盗賊たち。他人に酒をたかるのに熱心な、流れ者。金勘定の最中の行商人。羽振りの良い客の気を引こうとする、売笑婦。そしてその女達を振り向かそうとする、美貌の詩人。
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ブラックソウルはそう考えて、ここを選んだのだろうか。クリスには判断できなかった。
「まあ、当分は大人しくドルーズのおもりをしていてくれ。俺はいずれ、ジゼルに会いにゆく」
「どういう意味ですか?」
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「ジゼルはオーラの間者とて、受け入れてくれるのさ。あれは奇妙な考えの女だよ」
クリスは半信半疑であったが、ブラックソウルの輝く瞳は、確信に満ちている。
彼女はジゼルの、荒野の狼のような笑みを想いうかべた。目の前のこの限りなく無神経に近い、大胆さを持った男に似ていると思う。
「そんなことよりも、ジゼルは巨人族の女戦士を捕らえたそうじゃないか」
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「ええ、どうも本当のようです」
「ドルーズは、ブラックロータスでも調合したのか?巨人というのは不死身の完全体らしいが」
「何かは知りませんが、クワン共和国から来た麻薬のようでしたが」
ブラックソウルは楽しそうに、くすくす笑った。
「知の大国クワンは別名、麻薬大国というらしいからな。俺も土産に買って帰るとするか。オーラの闘竜を眠らせるようなやつも、あるかもしれねぇな」
クリスはこの男に感じる戸惑いの正体が、判ったような気がした。ブラックソウルは楽しんでいるのだ。ジゼルの野心や、ドルーズの危険な野望を知った上で、面白がっている。しかし、その本心がどこにあるのかは、クリスには見当もつかなかった。
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