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第五十話【新宿編】
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ロボットから離れたユーベルシュタインは、ゆっくりと歩き水槽の前に立つ。背後から青い光を受けているためその顔は影となり、表情は読めない。しかし、微笑んでいるようだ。
「あんたが、一体ここがなんなのか説明してくれるという訳か?」
莫邪の言葉に、ユーベルシュタインはゆっくりと頷く。
「それは半世紀近く前からの物語になる」
ユーベルシュタインは学者のようにゆっくり落ちついた声で語り始める。
「人類はかつて月へ行った。その時見出したものが、君たちが今目の当たりにしている巨人なのだ」
私たちは息をのむ。
「月には、何体もの眠れる巨人がいた。私たちはその体組織を一部切り取ると、クローン技術を使って地球上で復元した。それがこの水槽で眠る巨人だ」
「そんなことは」
莫邪の言葉をユーベルシュタインが遮る。
「確かに、一切公表されたことは無い。しかし、元々巨人が月に眠っていることを知っているものはいた。それがゼータ機関だ。ゼータ機関は月に人類を送り込むための資金提供を影で行い、巨人の体組織を得ると同時にその資金提供を打ち切った。そして、こんどはその体組織から巨人の復元をするためのプロジェクトを立ち上げたのだよ」
信じがたい話だ。ユーベルシュタインが私たちをこの部屋に招いてから話を始めた理由が判った。もし、巨人を見ないままこんな話を聞いたとしても、とても信じられなかっただろう。
「ゼータ機関が誰の手によって運営されているのかあんたは知ってるか?」
ブラックソウルの言葉に、ユーベルシュタインは首を振った。
「いや。超国家組織であるゼータ機関の中心に誰がいるのかは誰もしらない。太古から存在する秘密結社がその前身らしいが、噂の域を出ない。ただ、ゼータ機関はその巨人が私たちの世界を破壊することを知っていたのは間違いない」
「破壊するって、どういうことや」
莫邪が問いかける。
「巨人は、この世界の物理法則を歪める力を持つ。その力はウィルスのように感染し広がってゆく。もし、巨人が目覚めれば世界は完全に崩壊するだろう」
「なぜ、ゼータ機関はそんなものを地球に持ちこんだんや」
莫邪の言葉にユーベルシュタインは首を振るだけだった。
「それを知るものはいないのだよ。巨人はいずれ目覚める。それに対抗する手段を私は造りあげた。それが」
「小人になることだな」
ブラックソウルは嘲るような笑みを浮かべて、ユーベルシュタインの言葉を遮った。
ユーベルシュタインは、深く静かに頷く。
「時空間を支配する物理法則が安定しないのであれば、それを防ぐために私たちの身体を構成する次元界を圧縮して安定させてやればいい。そのために私はゼータウィルスを造りあげた。そして、そのウィルスに感染したものは身体が縮小する。厳密には身体を構成する原子の五次元以上の次元界を圧縮することにより縮小させるのだ」
「原子そのものを圧縮する?」
莫邪の言葉にユーベルシュタインは頷く。
「その通り」
ユーベルシュタインが厳かに言った。
「これが人類を救う唯一の方法だ」
「おれは知っているよ」
無造作にブラックソウルが言った。怪訝な顔をしてユーベルシュタインはブラックソウルを見る。
ブラックソウルは狼の笑みを浮かべていた。
「ゼータ機関は人類がどうなろうと興味は無い。滅ぼうが生き長らえようが、大した問題じゃない。なぜなら」
ユーベルシュタインは不思議なものを見るようにブラックソウルを見ている。
「巨人を地球上に復活させることだけが目的の機関だからだ。そして、ゼータ機関を支配するものは、巨人をこの宇宙に造りあげた存在でもある」
「馬鹿な」
ユーベルシュタインは戸惑った声を出す。
「もし、そんな存在がいるとすれば」
ブラックソウルは邪悪な笑みを浮かべた顔で頷く。
「そうだ」
ユーベルシュタインは蒼ざめる。
「その存在は人間ではない」
「ああ。おれたちの世界では邪神グヌンと呼ぶ」
「おれたちの世界?」
そのとき。
巨人が。
ゆっくりと。
動きだした。
「あんたが、一体ここがなんなのか説明してくれるという訳か?」
莫邪の言葉に、ユーベルシュタインはゆっくりと頷く。
「それは半世紀近く前からの物語になる」
ユーベルシュタインは学者のようにゆっくり落ちついた声で語り始める。
「人類はかつて月へ行った。その時見出したものが、君たちが今目の当たりにしている巨人なのだ」
私たちは息をのむ。
「月には、何体もの眠れる巨人がいた。私たちはその体組織を一部切り取ると、クローン技術を使って地球上で復元した。それがこの水槽で眠る巨人だ」
「そんなことは」
莫邪の言葉をユーベルシュタインが遮る。
「確かに、一切公表されたことは無い。しかし、元々巨人が月に眠っていることを知っているものはいた。それがゼータ機関だ。ゼータ機関は月に人類を送り込むための資金提供を影で行い、巨人の体組織を得ると同時にその資金提供を打ち切った。そして、こんどはその体組織から巨人の復元をするためのプロジェクトを立ち上げたのだよ」
信じがたい話だ。ユーベルシュタインが私たちをこの部屋に招いてから話を始めた理由が判った。もし、巨人を見ないままこんな話を聞いたとしても、とても信じられなかっただろう。
「ゼータ機関が誰の手によって運営されているのかあんたは知ってるか?」
ブラックソウルの言葉に、ユーベルシュタインは首を振った。
「いや。超国家組織であるゼータ機関の中心に誰がいるのかは誰もしらない。太古から存在する秘密結社がその前身らしいが、噂の域を出ない。ただ、ゼータ機関はその巨人が私たちの世界を破壊することを知っていたのは間違いない」
「破壊するって、どういうことや」
莫邪が問いかける。
「巨人は、この世界の物理法則を歪める力を持つ。その力はウィルスのように感染し広がってゆく。もし、巨人が目覚めれば世界は完全に崩壊するだろう」
「なぜ、ゼータ機関はそんなものを地球に持ちこんだんや」
莫邪の言葉にユーベルシュタインは首を振るだけだった。
「それを知るものはいないのだよ。巨人はいずれ目覚める。それに対抗する手段を私は造りあげた。それが」
「小人になることだな」
ブラックソウルは嘲るような笑みを浮かべて、ユーベルシュタインの言葉を遮った。
ユーベルシュタインは、深く静かに頷く。
「時空間を支配する物理法則が安定しないのであれば、それを防ぐために私たちの身体を構成する次元界を圧縮して安定させてやればいい。そのために私はゼータウィルスを造りあげた。そして、そのウィルスに感染したものは身体が縮小する。厳密には身体を構成する原子の五次元以上の次元界を圧縮することにより縮小させるのだ」
「原子そのものを圧縮する?」
莫邪の言葉にユーベルシュタインは頷く。
「その通り」
ユーベルシュタインが厳かに言った。
「これが人類を救う唯一の方法だ」
「おれは知っているよ」
無造作にブラックソウルが言った。怪訝な顔をしてユーベルシュタインはブラックソウルを見る。
ブラックソウルは狼の笑みを浮かべていた。
「ゼータ機関は人類がどうなろうと興味は無い。滅ぼうが生き長らえようが、大した問題じゃない。なぜなら」
ユーベルシュタインは不思議なものを見るようにブラックソウルを見ている。
「巨人を地球上に復活させることだけが目的の機関だからだ。そして、ゼータ機関を支配するものは、巨人をこの宇宙に造りあげた存在でもある」
「馬鹿な」
ユーベルシュタインは戸惑った声を出す。
「もし、そんな存在がいるとすれば」
ブラックソウルは邪悪な笑みを浮かべた顔で頷く。
「そうだ」
ユーベルシュタインは蒼ざめる。
「その存在は人間ではない」
「ああ。おれたちの世界では邪神グヌンと呼ぶ」
「おれたちの世界?」
そのとき。
巨人が。
ゆっくりと。
動きだした。
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