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第一話
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あたしはまるで。
ふわふわとした、薔薇の花束の上でただよっているような気分から。
刃を突き付けられるような、鋭い現実へと戻った。
薄暗い場所だ。
天井は高く、広々としている。
あたしに馬乗りになったおとこは、にやにやと軽薄な笑みを浮かべたまま。
手にした大きなナイフをひらひら弄んでいる。
鉈をくの字にへしまげたようなそのナイフは、ククリナイフというやつだろう。
金属のブレードは、七色のハレーションをおこして八の字の軌跡を描く。
うーん。
意識がはっきりするにつれ、全身が苦痛を訴えはじめる。
ひどい。
さんざん殴られたようだ。
身体のこの感覚は多分、ドラッグを使われた感じ。
アンフェタミンじゃなくて。
MDMAだね、これは。
あたしの上に乗ってるおとこは、にやにや笑いながら言った。
「やあ、どうだい気分は」
あたしは、小声で呟く。
ふざけろ、くそやろう。
「なんだって?」
あたりをそっと、そして素早く見回す。
とりあえず、視界におさめたのは三人だ。
ギターみたいな楽器を抱えているやつが二人に。
ドラムセットの後ろにひとり。
バンドかよ。
そういえば、なんかライブハウスのようでもある。
というより、この広さだとレイヴに使うウェアハウスか。
あたしは、小声で呟き続ける。
ああ、うざい。
帰りたい。
「なんだよ、聞こえないよ」
あたしは、にっこりと微笑むと手招きをする。
ああ、馬鹿だねこいつ。
素直にあたしの前に耳を差し出した。
MDMAがまだ効いてると思ってるんだ。
あたしは、耳に噛みつく。
絶叫。
あたしは耳の後ろを殴られた。
思わず耳をはなす。
食い千切れなかった。
レクター博士みたいには、いかないわね。
あたしは、それでも口にたまった血を吐き捨てるとげらげら笑った。
バンドのメンバーたちも笑ってる。
笑ってないのは、あたしの上にいるククリナイフのおとこだけ。
顔の半分を血に染めたそいつは、口を歪めるとあたしの顔面を殴った。
金属の味がする苦痛があたしの顔を、紅く染める。
それでもあたしがくすくす笑っていると、ククリナイフが喉元に突きつけられた。
「なあ、殺していいか?」
あたしに対する問いではなく、仲間に聞いたらしい。
ギターを手にしたおとこが応える。
「殺したら面倒くさいじゃん」
ククリナイフのおとこは、薄く笑う。
「オーバードーズであたまのいかれたおんながいっちまうなんて、よくあることだ。警察もいちいち真面目に調べんさ」
「殺すにしても、最後にやることだ。その前にすることがあるだろ」
ドラマーが、応える。
ククリナイフのおとこは、素直に頷いた。
「まあ、そうだな」
ふわふわとした、薔薇の花束の上でただよっているような気分から。
刃を突き付けられるような、鋭い現実へと戻った。
薄暗い場所だ。
天井は高く、広々としている。
あたしに馬乗りになったおとこは、にやにやと軽薄な笑みを浮かべたまま。
手にした大きなナイフをひらひら弄んでいる。
鉈をくの字にへしまげたようなそのナイフは、ククリナイフというやつだろう。
金属のブレードは、七色のハレーションをおこして八の字の軌跡を描く。
うーん。
意識がはっきりするにつれ、全身が苦痛を訴えはじめる。
ひどい。
さんざん殴られたようだ。
身体のこの感覚は多分、ドラッグを使われた感じ。
アンフェタミンじゃなくて。
MDMAだね、これは。
あたしの上に乗ってるおとこは、にやにや笑いながら言った。
「やあ、どうだい気分は」
あたしは、小声で呟く。
ふざけろ、くそやろう。
「なんだって?」
あたりをそっと、そして素早く見回す。
とりあえず、視界におさめたのは三人だ。
ギターみたいな楽器を抱えているやつが二人に。
ドラムセットの後ろにひとり。
バンドかよ。
そういえば、なんかライブハウスのようでもある。
というより、この広さだとレイヴに使うウェアハウスか。
あたしは、小声で呟き続ける。
ああ、うざい。
帰りたい。
「なんだよ、聞こえないよ」
あたしは、にっこりと微笑むと手招きをする。
ああ、馬鹿だねこいつ。
素直にあたしの前に耳を差し出した。
MDMAがまだ効いてると思ってるんだ。
あたしは、耳に噛みつく。
絶叫。
あたしは耳の後ろを殴られた。
思わず耳をはなす。
食い千切れなかった。
レクター博士みたいには、いかないわね。
あたしは、それでも口にたまった血を吐き捨てるとげらげら笑った。
バンドのメンバーたちも笑ってる。
笑ってないのは、あたしの上にいるククリナイフのおとこだけ。
顔の半分を血に染めたそいつは、口を歪めるとあたしの顔面を殴った。
金属の味がする苦痛があたしの顔を、紅く染める。
それでもあたしがくすくす笑っていると、ククリナイフが喉元に突きつけられた。
「なあ、殺していいか?」
あたしに対する問いではなく、仲間に聞いたらしい。
ギターを手にしたおとこが応える。
「殺したら面倒くさいじゃん」
ククリナイフのおとこは、薄く笑う。
「オーバードーズであたまのいかれたおんながいっちまうなんて、よくあることだ。警察もいちいち真面目に調べんさ」
「殺すにしても、最後にやることだ。その前にすることがあるだろ」
ドラマーが、応える。
ククリナイフのおとこは、素直に頷いた。
「まあ、そうだな」
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