29 / 29
おまけ
ささやかなもの
しおりを挟む
「落ち着く」
無理やり通した腕枕。優弥君の髪の馴染みのある匂い。彼の中に受け入れてもらった自身を包んでくれる表面的ではない温かさ。
動かずそのまま、ただそのまま。
「お前ちょいちょい変なこと言うよな」
「そうかな」
「気持ちいいならわかるけど落ち着くって」
一か月以上ぶりの触れ合い。少しだけ、と訴えた我儘で許された緩やかなセックス。優弥君の中は温かいし、彼も望んでいたのだというようにきゅうと締る。気持ちいいのは当然で、だけどもそれ以上に安心する。
「優弥君に入れたまま、寝てもいいくらい」
「ええ……」
ちょっと引いたような声。
もちろんそんなことはしないけど、でも気分的にはそのくらい。彼を抱くと安心して落ち着いた気分になれる。
「俺が動いたら折れるかもよ」
なんて軽く笑って振り向く優弥君の耳にキスをする。唇で挟んで、人にそう触れられはしない独特な柔らかさを感じる。
くすぐったそうに首をすくめるその体を、またぎゅっと力を込めて密着させた。
「前から思ってたんだけど、優弥君は後ろからのほうが好き?」
揺さぶるように突き動けば、小さく喘ぎが漏れ出る。前よりも隠さなくなったその反応や声を、一番近くで感じている。
「んん……どーだろ」
本人はあまりそういうことをわかっていないようだけど、たまに後ろからやる時のほうが彼は気持ちよさそうに溶けている。猫のように鳴き、僕を受け入れてくれる中だけがひくひくと動く。奥の奥まで入れてしまえば、うわ言の様に気持ちいいと言ってくれる。
僕としては彼の反応を見たくて、可愛い顔にキスをしたくて、後ろから彼を抱くことは少ない。
でも後ろからのほうが具合がいいというのなら、そうすべきかな。顔を見ていたいんだけど。
「どっちがいい?」
「どっちでもいいよ」
「体辛くない?」
「なんかあったらさっさと言ってる」
痛いとか苦しいとか、確かに彼は素直に言ってくれる。だから僕は注意深く彼を窺わなくてもよくなっていた。それは結構前からのこと。
「後ろからのほうが気持ちいいなら、最初もそうしたらよかったな」
嫌だと叫べなかった初めての優弥君に、せめて後ろからしたのならもう少し苦しませなかったかもしれない。
「あの時は、怖かったんだよ。多分な。多分、俺だけがお前のことを好きになっていくのが怖かったんだよ」
腕枕している手が撫でられる。続きを促すようにお尻を押し付けられ、空いている手で優弥君に触れた。
「ぁー……。昔なんか、いいよ、もう」
前を擦れば後ろが反応を示す。気持ちいいと教えてくれるように、一緒にって言うように。
「さっさとしないと明日に響く」
「そんな身も蓋もない」
「このまま寝る?」
「入れたまま?」
「そう」
そう言って優弥君は、彼を触っていた僕の手を抑えるように抱え込んだ。
「それは無理……」
情けなく否定すれば笑われる。
「なぁ、」
僕を誘う色っぽい声。抱えられた腕に噛みつくようにされるキス。
「だから、やろ?」
一か月以上、二か月未満。
久しぶりに抱きしめた恋人は"最初"と同じようにかわいらしく、僕は相変わらず惹かれてしまう。
無理やり通した腕枕。優弥君の髪の馴染みのある匂い。彼の中に受け入れてもらった自身を包んでくれる表面的ではない温かさ。
動かずそのまま、ただそのまま。
「お前ちょいちょい変なこと言うよな」
「そうかな」
「気持ちいいならわかるけど落ち着くって」
一か月以上ぶりの触れ合い。少しだけ、と訴えた我儘で許された緩やかなセックス。優弥君の中は温かいし、彼も望んでいたのだというようにきゅうと締る。気持ちいいのは当然で、だけどもそれ以上に安心する。
「優弥君に入れたまま、寝てもいいくらい」
「ええ……」
ちょっと引いたような声。
もちろんそんなことはしないけど、でも気分的にはそのくらい。彼を抱くと安心して落ち着いた気分になれる。
「俺が動いたら折れるかもよ」
なんて軽く笑って振り向く優弥君の耳にキスをする。唇で挟んで、人にそう触れられはしない独特な柔らかさを感じる。
くすぐったそうに首をすくめるその体を、またぎゅっと力を込めて密着させた。
「前から思ってたんだけど、優弥君は後ろからのほうが好き?」
揺さぶるように突き動けば、小さく喘ぎが漏れ出る。前よりも隠さなくなったその反応や声を、一番近くで感じている。
「んん……どーだろ」
本人はあまりそういうことをわかっていないようだけど、たまに後ろからやる時のほうが彼は気持ちよさそうに溶けている。猫のように鳴き、僕を受け入れてくれる中だけがひくひくと動く。奥の奥まで入れてしまえば、うわ言の様に気持ちいいと言ってくれる。
僕としては彼の反応を見たくて、可愛い顔にキスをしたくて、後ろから彼を抱くことは少ない。
でも後ろからのほうが具合がいいというのなら、そうすべきかな。顔を見ていたいんだけど。
「どっちがいい?」
「どっちでもいいよ」
「体辛くない?」
「なんかあったらさっさと言ってる」
痛いとか苦しいとか、確かに彼は素直に言ってくれる。だから僕は注意深く彼を窺わなくてもよくなっていた。それは結構前からのこと。
「後ろからのほうが気持ちいいなら、最初もそうしたらよかったな」
嫌だと叫べなかった初めての優弥君に、せめて後ろからしたのならもう少し苦しませなかったかもしれない。
「あの時は、怖かったんだよ。多分な。多分、俺だけがお前のことを好きになっていくのが怖かったんだよ」
腕枕している手が撫でられる。続きを促すようにお尻を押し付けられ、空いている手で優弥君に触れた。
「ぁー……。昔なんか、いいよ、もう」
前を擦れば後ろが反応を示す。気持ちいいと教えてくれるように、一緒にって言うように。
「さっさとしないと明日に響く」
「そんな身も蓋もない」
「このまま寝る?」
「入れたまま?」
「そう」
そう言って優弥君は、彼を触っていた僕の手を抑えるように抱え込んだ。
「それは無理……」
情けなく否定すれば笑われる。
「なぁ、」
僕を誘う色っぽい声。抱えられた腕に噛みつくようにされるキス。
「だから、やろ?」
一か月以上、二か月未満。
久しぶりに抱きしめた恋人は"最初"と同じようにかわいらしく、僕は相変わらず惹かれてしまう。
2
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
今日もBL営業カフェで働いています!?
卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ
※ 不定期更新です。
平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)
優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。
本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
二日に一度を目安に更新しております
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
イケメンモデルと新人マネージャーが結ばれるまでの話
タタミ
BL
新坂真澄…27歳。トップモデル。端正な顔立ちと抜群のスタイルでブレイク中。瀬戸のことが好きだが、隠している。
瀬戸幸人…24歳。マネージャー。最近新坂の担当になった社会人2年目。新坂に仲良くしてもらって懐いているが、好意には気付いていない。
笹川尚也…27歳。チーフマネージャー。新坂とは学生時代からの友人関係。新坂のことは大抵なんでも分かる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
まず2人の名前が書き方が違っても同じ紫色を指していて、素敵だと感じました。また人の癖や好み、スペースなど少しずつ様子を見ながら色々考えつつ近づいていく描写がとてもリアルで好きです!
同棲後やおまけは、2人の温かでゆったりした安心感(?)が伝わってきて、読みながら幸せな気持ちになりました。特に最後のムラサキの「最初と変わらずまた惹かれてしまう」(違ったらすみません)が凄い好きで何度も読み返しました😊
語彙力が無くてすみません🙇♀️
ありがとうございます。
この話は私のBLの基本となるものです。
こんなことがあって、それから、今後も誰に語ることもない小さな陽だまりの毎日をこの子たちは送っていくのかな、と伝わってたらいいなーと思っています。