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煮卵

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大型商業施設に隣接したビルの43階にある会議室の窓からは遠く渋谷のビル街が見える。

木目調の床材をヘリンボーンに貼り合わせた小洒落た床にシンプルな楕円の三連ペンダントライト、変わった形の白いデスクと肘掛け椅子がやや凡庸で不釣り合いだった。

「それでは、こちらから資料をお渡しします」
そう言って、田中は持参したクリアファイルから紙の資料を取り出し、取引先相手である柏商事の社員、清地に手渡した。糸目に近い単の細い目を木余地はさらに細め書類を見て眉間にシワを寄せると、すぐに田中へ視線を向ける。

「協業でに関する資料、ありがとうございます。弊社希望は買収だったかと記憶しているのですが、そちらの資料はありますか?」

清地の口調は丁寧だったが、不満をあらわにしていた。田中は表情を変えずに淡々と答える。

「はい。ただ、弊社としては、買収よりも協業の方がメリットが多いと考えます。一度そのご説明をさせていただいてもよろしいでしょうか?」
清地が眉を上げ、怪しむような顔をする。

「それは、どういうことですか? 買収よりも協業の方を優先する理由を教えていただけませんか?」
田中は手元の紙資料を見ながら答え始める。

「まず、今回の企画で使用される御社の製品ですが、いくつかのメーカーさんと弊社は懇意にしております。「弊社の屋号を使え」ば御社よりも良い条件で販売可能です」

清地の表情が少し緩む。しかし、まだ納得していない様子だ。
「そうなんですね。それで、具体的にはどのように違うのですか?」
「例えば、こちらです」
そう言って、田中は別の紙を一枚取り出し、清地に手渡す。
そこには価格や納期などについて書かれた表があった。清地はざっと目を通す。
「……なるほど。確かに、こちらの方が条件が良いですね」
田中は頷きながら説明を続ける。
「特殊な業界ですから、新規参入の場合あまり良い条件で交渉いただけないことが多い。御社のような様々な事業を手がけている
会社様にお声がけいただけて光栄ですが、今回のケースの場合は協業させていただいた方がお互いメリットが多いかと」
清地は椅子の背もたれに倒れ込み、腕を組んで考え込んだ
「そうですか……。」
清地は顔を上げ、田中を見つめる。
「わかりました。それでは、一旦持ち帰って検討させていただきます」

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