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悪縁契り深し
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薄荷春勢は葛の中で、白無垢に身を包み、息を潜めて二人の天狗が入ってくるのを今か今かと待ち構えていた。歳のころは二十歳。切長の瞳に少し青みがかった後ろに束ねた黒い髪。褐色の肌が凛々しい美青年である。春勢の叔父飯室の僧正の仇討ちに力を貸してほしいと書状を送れば、姉の時子の操をよこせと薄荷家の足元を見たふざけた返しをしてきた。一族郎党ぐっと怒りをこらえ、色良い返事を出してやった。
天狗たちは白無垢に身を包んだお時をつづらに入れて奴らがねぐらにしている廃寺の離れに置き、他のものはそばに置かぬよう指示を出してきた。
そうであれば好都合。陰陽師の名家薄荷家を虚仮にした罰として目に物見せてくれようと、
春勢は姉の着るはずの白無垢を被り、廃寺で天狗どもの寝首をかかんと待ち伏せているのである。
夜の帷の降りる頃、天狗二人が上がり込んできた。一つの足音は細身のだが鍛錬されたしなやかな体つきの男のようで、猫のそれのように柔らかで静かだった。もう一つはやや重みを感じるガタイの良さそうな男の足音である。
「人間から嫁を取るのは久しぶりだねえ。善界坊」
「そうだな、あまり無体をするなよ太郎坊」
「僕は約束できないなあ、薄荷家はなかなかの美形揃いというじゃないか」
好色な会話にはらわたが煮えくりかる心地がした。
鯉口を切り近付く足音に耳を澄ます。
葛の蓋を太郎坊が持ち上げるが早いか、春勢が切りつける。すんでで太郎坊はかわした。
善界坊に切り付けると、なんと素手で掴まれる
「!馬鹿な!」
ただの刀では当然ない。退魔の気をこめた物である。手に刃が食い込むのもお構いなしに引き倒され、すぐに刀を取り上げられ縛り上げられてしまう。
「代わりに坊やが入ってたんだねえ」
太郎坊と呼ばれた天狗に顎を掴まれ、上向かせられる。抜けるような白い肌に金糸のような美しいうねる髪、朝の光のような淡い青い瞳をしていた。目が合うとフッと笑った。美しさに一瞬息を呑む。
「お時はどうした?」
背の丈が七尺二寸はありそうな大男がこちらを睨んでいる。こちらは太郎坊とは打って変わって烏の濡羽のような長い黒髪に薮睨みに近い黒い瞳を持つ鬼で気色ばむ様子は凄まじい迫力だったが、春勢は怯まなかった
「残念だったな。美しい姉様の体を汚してまでお前たちに助けを乞うほど薄荷家は落ちぶれておらん。美しい女が手に入らなくて残念だったな」
「何か勘違いしているんじゃないのかい?」
「なんだと?」
「手紙には美しく育った子供を一人寄越せと書いたはずだ」
「僕たちに必要なのは、夜伽をしてくれて淫気を吸わせてくれる相手だからね」
「・・・は?」
白無垢がはだけよく日に焼けた褐色の肌が際どいところまで露わになっていた
隠そうと身を捩るが、着物がはだけるだけだった。
太郎坊の指が体のラインをつっと撫でる
「薄荷家からの貢物、なかなかいいじゃないか、僕は気に入ったよ善界坊」
「そうだな、太郎坊。二人でゆっくり・・・・楽しむとしようか」
天狗たちは白無垢に身を包んだお時をつづらに入れて奴らがねぐらにしている廃寺の離れに置き、他のものはそばに置かぬよう指示を出してきた。
そうであれば好都合。陰陽師の名家薄荷家を虚仮にした罰として目に物見せてくれようと、
春勢は姉の着るはずの白無垢を被り、廃寺で天狗どもの寝首をかかんと待ち伏せているのである。
夜の帷の降りる頃、天狗二人が上がり込んできた。一つの足音は細身のだが鍛錬されたしなやかな体つきの男のようで、猫のそれのように柔らかで静かだった。もう一つはやや重みを感じるガタイの良さそうな男の足音である。
「人間から嫁を取るのは久しぶりだねえ。善界坊」
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「僕は約束できないなあ、薄荷家はなかなかの美形揃いというじゃないか」
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鯉口を切り近付く足音に耳を澄ます。
葛の蓋を太郎坊が持ち上げるが早いか、春勢が切りつける。すんでで太郎坊はかわした。
善界坊に切り付けると、なんと素手で掴まれる
「!馬鹿な!」
ただの刀では当然ない。退魔の気をこめた物である。手に刃が食い込むのもお構いなしに引き倒され、すぐに刀を取り上げられ縛り上げられてしまう。
「代わりに坊やが入ってたんだねえ」
太郎坊と呼ばれた天狗に顎を掴まれ、上向かせられる。抜けるような白い肌に金糸のような美しいうねる髪、朝の光のような淡い青い瞳をしていた。目が合うとフッと笑った。美しさに一瞬息を呑む。
「お時はどうした?」
背の丈が七尺二寸はありそうな大男がこちらを睨んでいる。こちらは太郎坊とは打って変わって烏の濡羽のような長い黒髪に薮睨みに近い黒い瞳を持つ鬼で気色ばむ様子は凄まじい迫力だったが、春勢は怯まなかった
「残念だったな。美しい姉様の体を汚してまでお前たちに助けを乞うほど薄荷家は落ちぶれておらん。美しい女が手に入らなくて残念だったな」
「何か勘違いしているんじゃないのかい?」
「なんだと?」
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「・・・は?」
白無垢がはだけよく日に焼けた褐色の肌が際どいところまで露わになっていた
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