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第四部
閑話:国王夫妻の焦燥
「コニー! 大変だ! どうしよう!」
兄上が爵位を、筆頭侯爵の地位をフレディに譲ると言い出した。これまでも何度も繰り返し簒奪の噂は流れては消えていたけれど、今回は違う。イステル領で遭った襲撃事件の首謀者が兄上だと言い出す者が現れたからだ。
なんとか五侯爵家の当主たちと協力して兄上を宥めてその件は保留にしたけれど、兄上の意志の強さと実行すると言ったら躊躇しない行動力、そして……多分兄上を止めないだろう、むしろ嬉々として受け入れそうなイルーゼちゃんを思うと気が気じゃない。今、こうしている間にも屋敷に帰った兄上がイルーゼちゃんに事の次第を話し、イルーゼちゃんと共に計画を進めるための話し合いをしているかもしれないのだ。
「陛下、何がありましたの? そんなに慌てて……」
今日の会議にコニーは出なかった。五侯爵家の会議は俺と当主、時々宰相や騎士団長、法の専門家が出るだけだ。コニーにはコニーの公務もあるから仕方がないけれど、今日は一緒に出てほしかった。掻い摘んで兄上の引退発言に至った経緯を話した。話が進むにつれてコニーの顔色が段々と青褪めていく……
「侯爵が、引退を……」
「どうしよう、コニー! このままじゃ我が国は終わりだよぉ」
情けないけれど、兄上がいなくなったらどれほどの影響が出るか……俺が譲位するよりもずっと大きい気がする。いや、絶対に大きいだろう。王なんてお飾りなんだ。法律を決めるにしたって今は五侯爵家や、そこに辺境六侯爵家を加えた十一侯爵家の承認が必要だ。かの悪逆王の悪政に反省した次代の王は王の権限を見直し、大幅に削っていた。先々代で好き勝手していた祖父だって法を変えることは出来なかったんだから。
「あなた、それは由々しき事態ですわ……」
「やっぱりそう思うだろう? どうしよう……なんとか皆で止めたけれど、兄上の意志は固い。イルーゼちゃんだって……」
「ええ、ええ。イルーゼ様なら嬉々として受け入れますわ。お茶会でも侯爵が引退したらあれをしたいとか、どこに行きたいとか仰っていましたもの。そして好機を逃す方ではありませんわ」
やっぱり……あの二人ってちっとも欲がないんだよな。今の地位だって周りから干渉されないのがいい、くらいにしか思っていないのは間違いない。兄上は望んだわけじゃなく仕方なしにそうなっただけだし、イルーゼちゃんが望んだのは多分、両親や姉への対抗心から。その両親や姉は既にイルーゼちゃんの前では無力で、これまでの行いからか彼女を避けている。煩わしい役目がなくなったら兄上と子どもたちとの時間が増えると喜んで二つ返事で受け入れる。
「あなた、落ち着いてくださいませ」
「だけどコニー……」
「私共では侯爵に立ち向かうのは容易ではありませんわ。まずは五侯爵家の当主を味方に付けるのです。彼らほど侯爵の重要性を理解している方はいませんから」
「そうだよね。早速各々に書簡を送ろう」
ミュンターの当主代行のエーリックは当てにならないけど、ベルトラムのエルマ嬢はイルーゼちゃんの親友だ。彼女から説得してもらうのも手だよね。ベルトラムとアーレントは兄上より年上で当主歴も長い。宰相と騎士団長にも協力を頼もう。
「あ、兄上は噂が立たないようにしろって言うんだ。だけど、俺が宣言を出したって噂は消えない。むしろ兄上が俺を脅してそう言わせたと言い出す馬鹿が出てくるだろうし……」
「仰る通りですわ。どこにでも現実を見ずに噂を面白おかしく吹聴する屑はおりますし、根絶することも不可能ですわ」
コニーが頬に手をあてて考え込む。その様はちょっと色っぽい。いや、今はそれどころじゃない。ほんっと、兄上は第一王子で王位を継ぐのだって兄上のはずだったんだぞ。なのに下世話な噂の的にするなんて、不敬罪で滅ぼしてやりたい。兄上が止めるからやらないけど。
「だけど、どうしたらいいんだ……兄上はあんなに国のために尽くしてくれているのに……」
俺が何を言っても逆効果にしかならない。多分五侯爵家の当主でも同じだろう。兄上が脅しているとか弱みを握っているとか言い出しそうだし……あいつら、本当に目と耳ついているのかって思うほどわかっていない。まぁ、領地から出てこなかったら知るはずもないんだろうなぁ。
「困りましたわね。馬鹿な噂を流すのは主に下位貴族。彼らを抑える家門の長が何を言ったところで面白おかしく囀るのは変わらないでしょうし……」
「ああ、そして彼らから民に話が広がるんだよなぁ……」
そんな話が出来るのも今の夜が平和だから。
「俺が、悪王になって……厳しく言動を監視すれば……」
「あなた?」
「そうだよ、兄上の噂をするなんて馬鹿は出てこなくなる。そうしたら貴族らの悪意は俺に向くんだよな。それで兄上が守れるなら……」
意外といい案かもしれない。俺がどう思われようと知ったこっちゃない。兄上を、俺の半身を貶める奴らなんかに生きている価値なんかないよな。そんな奴らには空気だってもったいない。
「あなた、落ち着いてくださいませ!」
「い、痛いっ!」
思いっきり腕を抓られた。痛ぁっ!
「コニー、酷い……」
「申し訳ありません。だけど、笑みが黒くなってきましたから……」
「あ、ああ。止めてくれたんだね。ありがと」
俺の思考がやばい方向に向かったら止めてほしいと願ったのは俺だ。さすがコニー、俺をわかってくれている。
「侯爵は陛下が賢王になることを望まれこそすれ、悪王になるなんてお認めになりませんわ」
「そう、だよな。そんなことをしたら……」
「侯爵に見放されてしまいますわ」
「そうなるよね。兄上なら」
「ええ、弟からその辺の小石に格下げ確実ですわ」
小石って……そこまで言う? コニーって何気に抉ることさらっと言うよね。だけど好きの反対は無関心だって言うからなぁ。やっと俺に笑みを向けてくれるようになったんだから。さっきのあれは絶対に『俺に』笑ってくれたんだ。そう信じる。
「どうしたらいいんだろう……」
「そうですわね。侯爵に悪い噂を流すことが出来なくなる状況、ですよね……」
コニーが小声で呟いて考え込んでしまったけれど、俺にもわからないよ。押さえつければ逆効果だし。う~ん、平民が兄上を好きになるような、支持するような政策を考える? だけどそれを今から始めて民に広がるの、何年先になることか……そこまで兄上は待ってくれないよなぁ。第一、これまでだって俺が出来る範囲のことはやって来たんだぞ。これ以上何をしろと……
兄上から三日以内に対策案を出せと言われたこともコニーに話すと、「そんな……」と顔を強張らせて言葉に詰まった。気持ちはわかる。三日以内なんて無茶が過ぎる。
それからは時間が許す限りコニーと話し合い、また五侯爵家の当主や宰相、騎士団長らの協力も仰いだ俺たちは「兄上の功績を全貴族の前で知らしめて彼らに兄上がいなくなったらどうなるか、その未来を突き付ける」ことにした。兄上ならもっといい方法を考え出すのかもしれないけれど、それが「引退」の可能性は極めて高い。しかも兄上は嬉々として実行しそうだ。それは何としても避けたい。俺にはこれが精一杯だったけれど、幸いにも兄上の引退を阻止することに成功した。いや、「次はない」って言われたから、一時凌ぎかもしれないけれど。
「ようございましたわね、あなた」
「ありがとうコニー。だけどこれだけじゃ終わらないんだよなぁ」
「そうですわね。これからはあなたが威厳のある強い王にならなければいけませんから」
そう、俺より優秀になれと兄上は言った。そんなの不可能だろうと思ったけれど、最初はそう見せるようにするだけでいいと、少しずつ変わっていけばいいと兄上は言ってくれた。なんて優しいんだ、兄上……
「しっかし、強い王って、誰を参考にすれば……」
問題は俺が目指したい国王の姿がはっきりしないことだった。父上は賢王と呼ばれたけれど強いっていうよりも辛抱強いって感じだったし、先々王の爺は論外。他国の王もなぁ……アーレントは見習っちゃいけない見本だし、グレシウス王は胡散臭いしその息子は頼りない、ルタの前女王は強くてしっかり者だったからちょっと参考になるかな。サザールは老害でこれも見習っちゃ(以下同文)、サシャは……最近の動向が掴めないからよくわからない。
「あ~あ、兄上が王になってくれたらいいのに……」
「それは絶対に侯爵が断られますわ」
そうだよなぁ、断るの一言で終わるよなぁ。その強さが羨ましい……
「ふふ、あなた。だったら侯爵を参考になさればいいではありませんか」
「兄上を?」
その発想はなかったけど……確かに兄上を目標に……うん、悪くない。それどころか……やる気出る……
「そうだよ、コニー! ありがとう!」
どうして気付かなかったんだ。そうだよ、これ以上ないお手本が側にいるじゃないか。
「ふふっ、双子ですもの、きっと侯爵のようにおなりになれますわ」
「そうだよね」
それが無理なことは俺が一番わかっているけれど、少しでも兄上に近づけると思えば苦じゃない。むしろ嬉しいし頑張れる。
後日、兄上にそう宣言したら、いつも通り無表情なまま一瞥された。あれは絶対に出来るはずがないって思っていそうだけど、それでいい、今すぐは無理でも十年、二十年後に達成出来たら、俺はきっと俺を褒めてやれる。
後年、俺がローゼンベルクでも「異色の王」と語り継がれることになるのだけど、それはまだ誰も知らない話であることは言うまでもない。
♢ ♦︎ ♢ ♦︎ ♢ ♦︎ ♢ ♦︎ ♢ ♦︎ ♢ ♦︎ ♢ ♦︎ ♢
大変申し訳ございませんが、人様には任せられない重大任務が出来まして、明日、場合によっては明後日の更新が危うくなっております。
そのお詫び代わりといってはなんですが、本編に関係なく没にした話を閑話として手直ししたものを更新します。
任務が終わり次第すぐに戻ってきますので、今しばらくお待ちください。
また、「次にくるライトノベル2025」の結果発表が、本日19:00~から生放送で公表されるそうです。
皆様のおかげでノミネートされたので、結果が残せたらいいのですが……
もしお時間があるようでしたらどうぞ(私もこの時間帯だけは動画流しながら任務に励みたいと思います)
発表の動画はこちらです↓
https://www.youtube.com/live/IBRCFlkHqxE?si=niquL2bk2qrKamcH
兄上が爵位を、筆頭侯爵の地位をフレディに譲ると言い出した。これまでも何度も繰り返し簒奪の噂は流れては消えていたけれど、今回は違う。イステル領で遭った襲撃事件の首謀者が兄上だと言い出す者が現れたからだ。
なんとか五侯爵家の当主たちと協力して兄上を宥めてその件は保留にしたけれど、兄上の意志の強さと実行すると言ったら躊躇しない行動力、そして……多分兄上を止めないだろう、むしろ嬉々として受け入れそうなイルーゼちゃんを思うと気が気じゃない。今、こうしている間にも屋敷に帰った兄上がイルーゼちゃんに事の次第を話し、イルーゼちゃんと共に計画を進めるための話し合いをしているかもしれないのだ。
「陛下、何がありましたの? そんなに慌てて……」
今日の会議にコニーは出なかった。五侯爵家の会議は俺と当主、時々宰相や騎士団長、法の専門家が出るだけだ。コニーにはコニーの公務もあるから仕方がないけれど、今日は一緒に出てほしかった。掻い摘んで兄上の引退発言に至った経緯を話した。話が進むにつれてコニーの顔色が段々と青褪めていく……
「侯爵が、引退を……」
「どうしよう、コニー! このままじゃ我が国は終わりだよぉ」
情けないけれど、兄上がいなくなったらどれほどの影響が出るか……俺が譲位するよりもずっと大きい気がする。いや、絶対に大きいだろう。王なんてお飾りなんだ。法律を決めるにしたって今は五侯爵家や、そこに辺境六侯爵家を加えた十一侯爵家の承認が必要だ。かの悪逆王の悪政に反省した次代の王は王の権限を見直し、大幅に削っていた。先々代で好き勝手していた祖父だって法を変えることは出来なかったんだから。
「あなた、それは由々しき事態ですわ……」
「やっぱりそう思うだろう? どうしよう……なんとか皆で止めたけれど、兄上の意志は固い。イルーゼちゃんだって……」
「ええ、ええ。イルーゼ様なら嬉々として受け入れますわ。お茶会でも侯爵が引退したらあれをしたいとか、どこに行きたいとか仰っていましたもの。そして好機を逃す方ではありませんわ」
やっぱり……あの二人ってちっとも欲がないんだよな。今の地位だって周りから干渉されないのがいい、くらいにしか思っていないのは間違いない。兄上は望んだわけじゃなく仕方なしにそうなっただけだし、イルーゼちゃんが望んだのは多分、両親や姉への対抗心から。その両親や姉は既にイルーゼちゃんの前では無力で、これまでの行いからか彼女を避けている。煩わしい役目がなくなったら兄上と子どもたちとの時間が増えると喜んで二つ返事で受け入れる。
「あなた、落ち着いてくださいませ」
「だけどコニー……」
「私共では侯爵に立ち向かうのは容易ではありませんわ。まずは五侯爵家の当主を味方に付けるのです。彼らほど侯爵の重要性を理解している方はいませんから」
「そうだよね。早速各々に書簡を送ろう」
ミュンターの当主代行のエーリックは当てにならないけど、ベルトラムのエルマ嬢はイルーゼちゃんの親友だ。彼女から説得してもらうのも手だよね。ベルトラムとアーレントは兄上より年上で当主歴も長い。宰相と騎士団長にも協力を頼もう。
「あ、兄上は噂が立たないようにしろって言うんだ。だけど、俺が宣言を出したって噂は消えない。むしろ兄上が俺を脅してそう言わせたと言い出す馬鹿が出てくるだろうし……」
「仰る通りですわ。どこにでも現実を見ずに噂を面白おかしく吹聴する屑はおりますし、根絶することも不可能ですわ」
コニーが頬に手をあてて考え込む。その様はちょっと色っぽい。いや、今はそれどころじゃない。ほんっと、兄上は第一王子で王位を継ぐのだって兄上のはずだったんだぞ。なのに下世話な噂の的にするなんて、不敬罪で滅ぼしてやりたい。兄上が止めるからやらないけど。
「だけど、どうしたらいいんだ……兄上はあんなに国のために尽くしてくれているのに……」
俺が何を言っても逆効果にしかならない。多分五侯爵家の当主でも同じだろう。兄上が脅しているとか弱みを握っているとか言い出しそうだし……あいつら、本当に目と耳ついているのかって思うほどわかっていない。まぁ、領地から出てこなかったら知るはずもないんだろうなぁ。
「困りましたわね。馬鹿な噂を流すのは主に下位貴族。彼らを抑える家門の長が何を言ったところで面白おかしく囀るのは変わらないでしょうし……」
「ああ、そして彼らから民に話が広がるんだよなぁ……」
そんな話が出来るのも今の夜が平和だから。
「俺が、悪王になって……厳しく言動を監視すれば……」
「あなた?」
「そうだよ、兄上の噂をするなんて馬鹿は出てこなくなる。そうしたら貴族らの悪意は俺に向くんだよな。それで兄上が守れるなら……」
意外といい案かもしれない。俺がどう思われようと知ったこっちゃない。兄上を、俺の半身を貶める奴らなんかに生きている価値なんかないよな。そんな奴らには空気だってもったいない。
「あなた、落ち着いてくださいませ!」
「い、痛いっ!」
思いっきり腕を抓られた。痛ぁっ!
「コニー、酷い……」
「申し訳ありません。だけど、笑みが黒くなってきましたから……」
「あ、ああ。止めてくれたんだね。ありがと」
俺の思考がやばい方向に向かったら止めてほしいと願ったのは俺だ。さすがコニー、俺をわかってくれている。
「侯爵は陛下が賢王になることを望まれこそすれ、悪王になるなんてお認めになりませんわ」
「そう、だよな。そんなことをしたら……」
「侯爵に見放されてしまいますわ」
「そうなるよね。兄上なら」
「ええ、弟からその辺の小石に格下げ確実ですわ」
小石って……そこまで言う? コニーって何気に抉ることさらっと言うよね。だけど好きの反対は無関心だって言うからなぁ。やっと俺に笑みを向けてくれるようになったんだから。さっきのあれは絶対に『俺に』笑ってくれたんだ。そう信じる。
「どうしたらいいんだろう……」
「そうですわね。侯爵に悪い噂を流すことが出来なくなる状況、ですよね……」
コニーが小声で呟いて考え込んでしまったけれど、俺にもわからないよ。押さえつければ逆効果だし。う~ん、平民が兄上を好きになるような、支持するような政策を考える? だけどそれを今から始めて民に広がるの、何年先になることか……そこまで兄上は待ってくれないよなぁ。第一、これまでだって俺が出来る範囲のことはやって来たんだぞ。これ以上何をしろと……
兄上から三日以内に対策案を出せと言われたこともコニーに話すと、「そんな……」と顔を強張らせて言葉に詰まった。気持ちはわかる。三日以内なんて無茶が過ぎる。
それからは時間が許す限りコニーと話し合い、また五侯爵家の当主や宰相、騎士団長らの協力も仰いだ俺たちは「兄上の功績を全貴族の前で知らしめて彼らに兄上がいなくなったらどうなるか、その未来を突き付ける」ことにした。兄上ならもっといい方法を考え出すのかもしれないけれど、それが「引退」の可能性は極めて高い。しかも兄上は嬉々として実行しそうだ。それは何としても避けたい。俺にはこれが精一杯だったけれど、幸いにも兄上の引退を阻止することに成功した。いや、「次はない」って言われたから、一時凌ぎかもしれないけれど。
「ようございましたわね、あなた」
「ありがとうコニー。だけどこれだけじゃ終わらないんだよなぁ」
「そうですわね。これからはあなたが威厳のある強い王にならなければいけませんから」
そう、俺より優秀になれと兄上は言った。そんなの不可能だろうと思ったけれど、最初はそう見せるようにするだけでいいと、少しずつ変わっていけばいいと兄上は言ってくれた。なんて優しいんだ、兄上……
「しっかし、強い王って、誰を参考にすれば……」
問題は俺が目指したい国王の姿がはっきりしないことだった。父上は賢王と呼ばれたけれど強いっていうよりも辛抱強いって感じだったし、先々王の爺は論外。他国の王もなぁ……アーレントは見習っちゃいけない見本だし、グレシウス王は胡散臭いしその息子は頼りない、ルタの前女王は強くてしっかり者だったからちょっと参考になるかな。サザールは老害でこれも見習っちゃ(以下同文)、サシャは……最近の動向が掴めないからよくわからない。
「あ~あ、兄上が王になってくれたらいいのに……」
「それは絶対に侯爵が断られますわ」
そうだよなぁ、断るの一言で終わるよなぁ。その強さが羨ましい……
「ふふ、あなた。だったら侯爵を参考になさればいいではありませんか」
「兄上を?」
その発想はなかったけど……確かに兄上を目標に……うん、悪くない。それどころか……やる気出る……
「そうだよ、コニー! ありがとう!」
どうして気付かなかったんだ。そうだよ、これ以上ないお手本が側にいるじゃないか。
「ふふっ、双子ですもの、きっと侯爵のようにおなりになれますわ」
「そうだよね」
それが無理なことは俺が一番わかっているけれど、少しでも兄上に近づけると思えば苦じゃない。むしろ嬉しいし頑張れる。
後日、兄上にそう宣言したら、いつも通り無表情なまま一瞥された。あれは絶対に出来るはずがないって思っていそうだけど、それでいい、今すぐは無理でも十年、二十年後に達成出来たら、俺はきっと俺を褒めてやれる。
後年、俺がローゼンベルクでも「異色の王」と語り継がれることになるのだけど、それはまだ誰も知らない話であることは言うまでもない。
♢ ♦︎ ♢ ♦︎ ♢ ♦︎ ♢ ♦︎ ♢ ♦︎ ♢ ♦︎ ♢ ♦︎ ♢
大変申し訳ございませんが、人様には任せられない重大任務が出来まして、明日、場合によっては明後日の更新が危うくなっております。
そのお詫び代わりといってはなんですが、本編に関係なく没にした話を閑話として手直ししたものを更新します。
任務が終わり次第すぐに戻ってきますので、今しばらくお待ちください。
また、「次にくるライトノベル2025」の結果発表が、本日19:00~から生放送で公表されるそうです。
皆様のおかげでノミネートされたので、結果が残せたらいいのですが……
もしお時間があるようでしたらどうぞ(私もこの時間帯だけは動画流しながら任務に励みたいと思います)
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