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自由を手に入れました!
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一夜明けた私は、さすがに目も腫れて頭もどんよりしていました。あんなに泣いたのはもう何年ぶりでしょうか…殿下の婚約者になってからの私は、辛く惨めな日々でした。婚約者として扱われたのは最初の二年ほどで、その後は陛下や王妃様の前では取り繕うだけ。パーティーに出ても最初の挨拶とダンスを終えると、殿下は直ぐに私を置いてどこかに行ってしまい、戻って来ることはありませんでした。
学園に入学してからはアネット様との噂に愕然とし、学園の皆からは憐れみと侮りの目を向けられ、友達を作る事も出来ずずっと独りぼっちでした。たまに同年代の令嬢の集まりに出ても婚約者として妬まれ、意地悪をされた事も数知れず…みんなが友達と楽しそうに学園生活を満喫している間、私は一人でただ淡々と日々を過ごすだけでした。
ここ数年は諦めに支配されて心が麻痺し、悲しいとも寂しいとも感じなくなっていましたが…やっぱり心の中では納得がいかず、苦しかったのですね。でも、これからは…
ベッドから出て、窓際によると、空は晴れ渡り、とても清々しい朝でした。ああ、私は…
「自由だーーー!!!」
私は両手を広げ、天を仰ぎながらそう叫びました。ああ、なんて気が楽なのでしょうか…もうあの殿下に煩わされる事も、注文の多い王妃様の機嫌を取る必要も、厳しい王子妃教育を受ける事もないのです。これからは自分で好きな服を選び、好きな髪形に出来るのです。些細な事かもしれませんが、これまではずっと王妃様がよこした侍女に全てを決められていて、私に自由はありませんでしたから。
「おはようございます、お嬢様。どうしたんです、朝から大声なんか出して」
「だってコレット!自由なのよ!今日からはあの侍女たちが決めた服を着なくてもいいのよ。あの厚化粧も、縦ロールもよ!」
「それは確かに…そうですわね」
ええ、あのメイクも髪形も、私にとっては嫌でたまりませんでした。殿下は大人っぽい女性が好きだと王妃様が仰って、そう見えるようにこてこてに塗り立てられていたのです。でも、今日からはそんな必要がないなんて…夢のようですわ!
「さ、お嬢様、今日のお仕度をしましょうね」
「ええ、コレット、お願い!」
「ええ、ええ。私達がお嬢様を素敵に仕上げますわ!」
そうしてやる気満々のコレット率いる侍女の皆にお任せした私でしたが…鏡に映ったのは昨日までの私とは完全な別人でした。縦ロールにされていたくせっけの髪は、今日は左右を編み込みした後、ふんわりと結われてふわふわです。メイクもいつもは目じりを無理やりアイライナーで上がっているように見せていましたが、今は私本来の少したれ目のぱっちりした目そのままです。官能的に見えるようにこってり塗られた赤い口紅もなく、ほんのりピンク色のグロスを塗っただけ。ドレスも大人びて見えるようなすっきりした物から、年相応のレールやフリルのある可愛らしいものです。
「ああ、やっぱりお嬢様はこちらの方がずっとお似合いですわ!」
「ええ、ええ。これぞ我らのお嬢様です!」
「これからはたくさんお洒落を楽しめますわね!」
コレット達の絶賛を聞きながらも、私は自分の姿を呆けるように見ていました。
(こ、これって…もしかしてアネット様よりも可愛い系の美少女?いいえ、あっちより年が下な分、無理がないといいますか…)
そう、そこにいたのはあの憎たらしいアネット様よりも涼し気な色彩を持ちながらも、気品のある透明感たっぷりの美少女でした。
学園に入学してからはアネット様との噂に愕然とし、学園の皆からは憐れみと侮りの目を向けられ、友達を作る事も出来ずずっと独りぼっちでした。たまに同年代の令嬢の集まりに出ても婚約者として妬まれ、意地悪をされた事も数知れず…みんなが友達と楽しそうに学園生活を満喫している間、私は一人でただ淡々と日々を過ごすだけでした。
ここ数年は諦めに支配されて心が麻痺し、悲しいとも寂しいとも感じなくなっていましたが…やっぱり心の中では納得がいかず、苦しかったのですね。でも、これからは…
ベッドから出て、窓際によると、空は晴れ渡り、とても清々しい朝でした。ああ、私は…
「自由だーーー!!!」
私は両手を広げ、天を仰ぎながらそう叫びました。ああ、なんて気が楽なのでしょうか…もうあの殿下に煩わされる事も、注文の多い王妃様の機嫌を取る必要も、厳しい王子妃教育を受ける事もないのです。これからは自分で好きな服を選び、好きな髪形に出来るのです。些細な事かもしれませんが、これまではずっと王妃様がよこした侍女に全てを決められていて、私に自由はありませんでしたから。
「おはようございます、お嬢様。どうしたんです、朝から大声なんか出して」
「だってコレット!自由なのよ!今日からはあの侍女たちが決めた服を着なくてもいいのよ。あの厚化粧も、縦ロールもよ!」
「それは確かに…そうですわね」
ええ、あのメイクも髪形も、私にとっては嫌でたまりませんでした。殿下は大人っぽい女性が好きだと王妃様が仰って、そう見えるようにこてこてに塗り立てられていたのです。でも、今日からはそんな必要がないなんて…夢のようですわ!
「さ、お嬢様、今日のお仕度をしましょうね」
「ええ、コレット、お願い!」
「ええ、ええ。私達がお嬢様を素敵に仕上げますわ!」
そうしてやる気満々のコレット率いる侍女の皆にお任せした私でしたが…鏡に映ったのは昨日までの私とは完全な別人でした。縦ロールにされていたくせっけの髪は、今日は左右を編み込みした後、ふんわりと結われてふわふわです。メイクもいつもは目じりを無理やりアイライナーで上がっているように見せていましたが、今は私本来の少したれ目のぱっちりした目そのままです。官能的に見えるようにこってり塗られた赤い口紅もなく、ほんのりピンク色のグロスを塗っただけ。ドレスも大人びて見えるようなすっきりした物から、年相応のレールやフリルのある可愛らしいものです。
「ああ、やっぱりお嬢様はこちらの方がずっとお似合いですわ!」
「ええ、ええ。これぞ我らのお嬢様です!」
「これからはたくさんお洒落を楽しめますわね!」
コレット達の絶賛を聞きながらも、私は自分の姿を呆けるように見ていました。
(こ、これって…もしかしてアネット様よりも可愛い系の美少女?いいえ、あっちより年が下な分、無理がないといいますか…)
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