【完結】悪役令嬢だって真実の愛を手に入れたい~本来の私に戻って初恋の君を射止めます!

灰銀猫

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理解に苦しむ

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 やってきたのは街の中心部から少し外れた大衆酒場だった。下級貴族やちょっと裕福な庶民が利用する店で、気楽な上に個室があるので使い勝手がいいのだ。それなりに賑やかな店なので盗み聞きされる心配がないもの気に入っている。頼んだエールと料理を給仕が置いて部屋を出ていくと、ヒューゴの空気が緩んだ。

「急に悪いね~」

 そう言ってふんわりと口元に笑みを浮かべたヒューゴだったが、彼とは学園を卒業後もこうして時折飲みに行ったりする仲だ。彼はバルベ伯爵家の五男だが実家とは折り合いが悪く、今は家を出て人材派遣ギルドで働いていた。

「いや、気にするな。でも一体どうした?」
「え~ちょっと面白い話を聞いたから」
「面白い話?」
「うん、ラフォン侯爵家のご令嬢とどうなっているのかなぁって?」
「…っ!」

 グラスに口を付けたところでそう切り出されて、思わずむせそうになった。この件は慎重に隠していた筈なのに、どうして…
 もっさりとした髪形と伊達眼鏡で素顔を隠しているが、濃茶の髪と鮮やかな緑の瞳を持つこの友人は、実はかなり見目のいい部類に入る。だがそれを隠して人懐っこく人畜無害なふりをして、ギルドの客や登録者たちから雑談に見せかけて色んな情報を聞き出すのが得意なのだ。お陰で彼の元には貴族のスキャンダルや動向、時には国の施策などの準機密的な情報まで入ってくるのだが…

「ああ、これはベルナールさんに聞いたんだよ」
「兄さんから…」」

 あれほど漏らすなと言った話をあっさり口にした兄に怒りを感じたが、あの兄なら涼しい顔をしてヒューゴならいいだろ?と言いそうだ。一方のヒューゴは、好奇心が抑えられないと言った風で、実際はどうなってるの?と聞いてきた。

「…断る理由が見つからなくて、困ってる…」
「そっか。可愛くて王子妃に選ばれるほど有能で…となれば断る理由探す方が大変だよねぇ」
「どうして俺なのか、理解に苦しむ…」
「あはは、顔じゃないの?そもそもあの令嬢とどんな絡みが?まさか接点なしってわけじゃないんだろう?」

 わくわくした感情を隠さないヒューゴのその気安い雰囲気に舌打ちしそうになったが、思い止まって小さ息を吐いた。どうせここで言わなければ誰かから聞き出すのだろうし、その可能性が高い相手を思うと嫌な予感しかしない。直接話した方が十倍マシだろう。




「…なるほどねぇ…」

 一通りあの令嬢との邂逅を話すと、ヒューゴは何とも表現し難い声色で相槌を打った。きっと彼にしてもそれくらいで?と思っただろう。

「たったそれだけのことで、なぜ結婚に繋がるのか理解出来ん」
「ま、恋なんてそんなもんだろ。本人にもわかんないものだからねぇ」
「それに親も親だろう?この身分差で許すか?こっちは人に知れたらと思うと気が気じゃないんだ…」

 そう、もし自分がラフォン家の令嬢に求婚されているなんて知られたら、面倒事が起きるとしか思えない。妬みややっかみ、恨みがどれほど人を残忍にさせるか、それを知らない侯爵でもないだろうに…

「まぁね~確かに我が国の筆頭侯爵家の娘婿が裏社会の有名人なんて、出来過ぎだよねぇ」

 呑気な声色で全く呑気じゃない事を友は口にした。
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