【完結】悪役令嬢だって真実の愛を手に入れたい~本来の私に戻って初恋の君を射止めます!

灰銀猫

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現実と向き合って下さい

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 しくしくと両手を顔で覆って涙を流し始めたアネット様ですが…涙が流れれば流れるほど、お顔が凄い事になっているような気がします。顔を手で覆ってしまったので、もしかしなくてもアイライナーが広がって顔が黒くなっているのではないでしょうか…
 チラ…とリシャール様の方を窺うと、リシャール様も私の視線に気付いて下さって、困ったような笑みを浮かべられました。どうやらリシャール様の私への心証は…悪くなっていない、と思いたいです。

「殿下とアネット様、この際ですからはっきり申し上げますが」
「な、何だ?」

 私が呆れながら深呼吸してそう告げると、殿下が一瞬びくっとし、アネット様は恐る恐る顔を上げました。

(ひゃあ、か、顔が…)

 僅かに見えたアネット様の顔が、予想通り凄い事になっていて、それに気が付いた周りが騒めき始めましたわ。でも、もういいですわよね、気を使わなくても…

「殿下が私に婚約破棄を宣言された時にも申し上げましたが」
「あ、ああ」
「私、殿下との婚約をずっと破棄したいと思っていました」
「え…?!」

え?じゃありませんわ。何でそこで驚いているんですか?前にもはっきりとそう申し上げましたわよね?まぁ、いいでしょう、話が進まないので今は無視です。

「前にも申し上げましたが、私には殿下への想いは全くありませんでした」
「なっ?」
「王子妃教育はただただ苦しいだけだとも申しました」
「……」
「そんな私がアネット様に嫉妬する要素が、欠片もございません」
「で、でも、私の方が可愛くて…」

 結局そこに行きますか。仕方ないですわね。これは出来ればしたくなかったのですが…

「鏡をご覧になりますか?」
「え?」
「ああ、ちょうどいいですわ、あれがその替わりになりますわね」

 そう言って私は、近くで固まっている給仕からお盆を借りました。案の定、そのお盆はピカピカに磨き上げられたものなので鏡の変りにはなりそうです。

「さ、ご覧になって?」

 そう言って私は、アネット様の姿をお盆に映しました。

「え…え、え…えええええええっ!」
「ア、アネットォ?!」

 これまでで最も大きな声が会場内に響き渡りました。

「う、嘘よぉっ!!!何なのこれぇ!!!うそっ!!何でぇ?!!」
「ア、 アネット、大丈夫か?!お、おい、貴様、アネットに何をしたんだ?!!」

 ご自身の姿を見せられたアネット様は現状を把握されて錯乱されたようですが、こうなると気づいていなかったとは意外です。そして殿下、どうして私のせいになるのでしょうか?

「私は何もしておりませんわよ?」
「だ、だがっ!」
「アネット様の現状はそのメイクとアネット様の行動の結果です。厚化粧で涙を流せば、こうなるのは当然ではありませんか」

 私がため息交じりにそう言うと、お二人はようやくその事に気が付いたのか、叫ぶのを止めましたが…それでもまだ何か言いたそうにしています。往生際が悪い方々ですわね。何なのでしょうか、このお二人は…

「爵位に成績、権力も財力も私の方が圧倒的に上。そんな私が一体アネット様のどこに嫉妬すると仰るのですか?」

 もう一度私がそう問いかけると、ようやく殿下が何か言いたげにしていた口の動きを止め、半開きのまま固まりました。

「むしろお二人にはとっても感謝していますわ。だって、お二人のお陰で婚約破棄になって、大好きな方と婚約できたのですもの」

 この時浮かんだ笑みは、心からのものでした。あの婚約破棄のお陰で今、私はとっても幸せなのですから。

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