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女装の理由
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「お兄様のこれまでの経緯はわかりましたけれど…そのお姿は一体…」
そうです、お兄様がどうやってエストレ国を脱出したのか、その後どうしてリスナール国に向かったのかはこれでわかりましたが…問題は今のそのお姿です。どこからどう見ても美女にしか見えませんが…どうして女装など…
「ああ、これ?追っ手を誤魔化すために始めたの」
聞けばあの王女はしつこくお兄様を探し続け、エストレ国内の領地を超える関所にもお兄様を見つけたら王宮に連れてくるように命令を出していたそうです。とある領地の関所を超える時、咄嗟にその場にあった女性の服を着たところ、全く疑われる事なく通れたのもあって、それからは女装していたのだそうです。
「いくら追手を誤魔化すためだからって…」
「私だってそう思ったんだけど…あの王女、本当にしつこくて」
「でも…」
「それに身分証がなかったから、テオと夫婦だって事にしたの」
「はぁ?ふ、夫婦って…」
「さすがに既婚の女性が侯爵家の令息なんて、誰も思わないでしょ?」
その設定にしたら全く疑われないし、身を隠す必要がなくて気楽だったと笑うお兄様は、どこからどう見ても女性にしか見えず、多分ノリノリで楽しんでいたんだろう事が伺えました。ううん、昔から護身術なんかも苦手意識を持っていた兄ですし、性格的にも女性っぽかったと言えばそうなのだけど…
「でも、似合っているでしょ?男だって疑われたのは最初だけだったのよ」
自慢げにそう言うお兄様ですけれど…ここはよかったねというところじゃ、ないですわよね?気が付けば言葉使いが女性のそれに変わっていますが…仕草なんかも女性みたいで自然ですし、あまりにも女装が板につき過ぎていて、実兄だと言うのに違和感がないのは…四年近く会っていなかったせいでしょうか…
「それにしても…一体どうして急に帰国を?あの王女が諦めたんですの?」
そう、次に気になったのはお兄様が急に帰宅した理由です。お父様とは連絡を取っていたと聞きますし、今どうしているのかも粗方は聞いていましたが…
「ああ、それはないわね。あの王女、まだ諦めていないみたいなのよ」
「どうしてそれが…」
「あの国で親しくなった友人がいてね。彼の実家は商会をやっているから、テオと定期的に連絡を取っていたのよ、主に商売絡みで。その手紙に、私がリスナール国にいると気が付いてそっちに人をやったらしいから気を付けてって教えてくれて…」
何て事でしょうか…あれから三年以上経っていますのに、まだあの王女は諦めていなかったなんて…そりゃあ、我が家にも問い合わせが来た事もありましたが、我が家もずっと行方不明で押し通し、むしろそちらの国こそ知っているのではないかと言い返していましたが…
「それがどうして帰国に?」
「うん。まぁ、逃げてばかりもいられないし、あの王女から逃げる手が出来たから父上に相談しようと思って。さすがに手紙では出来かねる話だし」
なるほど…お兄様が帰ってこられたのは、あの王女から逃げる手段が見つかったから、なのですね。もしそうであるならお兄様も身を隠す生活から解放されるのでしょう。でも…あの王女に対抗できる方法ってなんでしょうか?そう簡単に諦めてくれるような人柄なら、三年以上も隠れている必要はなかったのですが…詳しく話を聞こうと思った私でしたが、それはお父様が帰ってからね、と言われてしまい、それ以上聞くことは出来ませんでした。
そうです、お兄様がどうやってエストレ国を脱出したのか、その後どうしてリスナール国に向かったのかはこれでわかりましたが…問題は今のそのお姿です。どこからどう見ても美女にしか見えませんが…どうして女装など…
「ああ、これ?追っ手を誤魔化すために始めたの」
聞けばあの王女はしつこくお兄様を探し続け、エストレ国内の領地を超える関所にもお兄様を見つけたら王宮に連れてくるように命令を出していたそうです。とある領地の関所を超える時、咄嗟にその場にあった女性の服を着たところ、全く疑われる事なく通れたのもあって、それからは女装していたのだそうです。
「いくら追手を誤魔化すためだからって…」
「私だってそう思ったんだけど…あの王女、本当にしつこくて」
「でも…」
「それに身分証がなかったから、テオと夫婦だって事にしたの」
「はぁ?ふ、夫婦って…」
「さすがに既婚の女性が侯爵家の令息なんて、誰も思わないでしょ?」
その設定にしたら全く疑われないし、身を隠す必要がなくて気楽だったと笑うお兄様は、どこからどう見ても女性にしか見えず、多分ノリノリで楽しんでいたんだろう事が伺えました。ううん、昔から護身術なんかも苦手意識を持っていた兄ですし、性格的にも女性っぽかったと言えばそうなのだけど…
「でも、似合っているでしょ?男だって疑われたのは最初だけだったのよ」
自慢げにそう言うお兄様ですけれど…ここはよかったねというところじゃ、ないですわよね?気が付けば言葉使いが女性のそれに変わっていますが…仕草なんかも女性みたいで自然ですし、あまりにも女装が板につき過ぎていて、実兄だと言うのに違和感がないのは…四年近く会っていなかったせいでしょうか…
「それにしても…一体どうして急に帰国を?あの王女が諦めたんですの?」
そう、次に気になったのはお兄様が急に帰宅した理由です。お父様とは連絡を取っていたと聞きますし、今どうしているのかも粗方は聞いていましたが…
「ああ、それはないわね。あの王女、まだ諦めていないみたいなのよ」
「どうしてそれが…」
「あの国で親しくなった友人がいてね。彼の実家は商会をやっているから、テオと定期的に連絡を取っていたのよ、主に商売絡みで。その手紙に、私がリスナール国にいると気が付いてそっちに人をやったらしいから気を付けてって教えてくれて…」
何て事でしょうか…あれから三年以上経っていますのに、まだあの王女は諦めていなかったなんて…そりゃあ、我が家にも問い合わせが来た事もありましたが、我が家もずっと行方不明で押し通し、むしろそちらの国こそ知っているのではないかと言い返していましたが…
「それがどうして帰国に?」
「うん。まぁ、逃げてばかりもいられないし、あの王女から逃げる手が出来たから父上に相談しようと思って。さすがに手紙では出来かねる話だし」
なるほど…お兄様が帰ってこられたのは、あの王女から逃げる手段が見つかったから、なのですね。もしそうであるならお兄様も身を隠す生活から解放されるのでしょう。でも…あの王女に対抗できる方法ってなんでしょうか?そう簡単に諦めてくれるような人柄なら、三年以上も隠れている必要はなかったのですが…詳しく話を聞こうと思った私でしたが、それはお父様が帰ってからね、と言われてしまい、それ以上聞くことは出来ませんでした。
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