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奇天烈姫の到着
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お兄様が家を出て六日後の夜、アドリエンヌ様が王宮に到着したとの連絡が入りました。私はお父様の執務室で、お母様とリシャール様の四人でこの話を聞きました。
陛下がリスナール国に使者を送ってから今日で二十六日目。エストレ国とは片道十日ほどなので、こうなると陛下が親書を送ったのと同じくらいの時期にあちらに情報が伝わったと考えてよさそうです。
「こうも早くに到着するという事は、情報を漏らしたのは王家の可能性が高いな」
「やはり王妃様、でしょうか?」
「可能性は高い。王族が他国を訪問するにはそれ相応の準備が必要だ。こちらから使者を送るのに十日かかったとして、それから十六日で到着だ。相当な強行軍だったろう」
王族となれば護衛や侍女も連れて行くので相当な人数になりますし、宿などの手配も含めれば相応の準備が必要です。仮にお忍びだとしても、道中の宿の手配は簡単ではありません。こうも短期間で来たとなれば、我が国の協力者がいるのは確実です。
「到着したのなら、今日にでも我が家に押しかけてくるかもしれないわね」
「陛下には我が家に王家の騎士を派遣して頂けるように頼んである。陛下からも王女と会う必要はないと言われているから心配しなくていい」
「でも、あの王女殿下ですもの。話が通じるかしら…」
お母様が重くため息をつきました。確かに話が通じる相手ではないのですよね。そうであればお兄様も身を隠す必要はなかったでしょう。それに…私が心配なのはリシャール様です。リシャール様も麗しいお姿なので、あの王女が興味を持たないかが心配で仕方ないのです。
「お父様…あの…」
「どうかしたか?」
「いえ…あの王女の事ですし、その、リシャール様が…」
「ああ、それもそうだな。あの王女は面食いだし、リシャール君に興味を持つ可能性もないとは言えん。あの王女がいる間は王宮への伺候の時は同行させないつもりだ」
「閣下、しかし…」
リシャール様が戸惑っていますが、あの王女の非常識さをご存じないからでしょう。あれは人間だと思ってはいけないのです、言葉が通じない野生生物なのです。
「レアンドル一人でも大変だったんだ。暫くは…そうだな、商会の方に手をかけてはどうだろう?人を増やしたと言うが、まだ気になるところもあるだろう?」
「それは…そうですが…」
「危険を回避する事も大事な処世術だ。我が家とて万能ではないのだから」
「畏まりました」
とりあえずリシャール様が王宮に行く事がないと聞いて私はホッとしました。アドリエンヌ様は王宮に滞在されるでしょうから、そうなればあそこに近づくのは危険です。勿論、リシャール様を渡すつもりはありませんが、あの王女は何をするかわかったものではありません。お兄様の事もあるので、難癖をつけてくる可能性もありますし、養子の立場のリシャール様では強く出る事も難しいでしょう。
「私も今回ばかりは見逃すつもりはない」
「ですが、あなた。相手は王族ですし…」
「なぁに、こうなった原因を作ったのは王家だ。自分の尻拭いは自分でしてもらうよ」
「立場が悪いとなれば、勝手に我が家を売りませんか?」
「そんな事をしたら国を捨てると陛下には言ってある。その意味が分からない陛下でもあるまい」
そう言ってお父様がお笑いになりましたが…冗談になりませんわ。確かに王家は我が家に見限られたら終わりでしょう。実質的に貴族達をまとめてコントロールしているのは我が家ですし、その影響力は王家よりも強いのです。特に最近は王家の失態が続いているので、求心力が落ちているのですよね。ここで我が家の機嫌を損ねる事はないと思いたいですわ。
陛下がリスナール国に使者を送ってから今日で二十六日目。エストレ国とは片道十日ほどなので、こうなると陛下が親書を送ったのと同じくらいの時期にあちらに情報が伝わったと考えてよさそうです。
「こうも早くに到着するという事は、情報を漏らしたのは王家の可能性が高いな」
「やはり王妃様、でしょうか?」
「可能性は高い。王族が他国を訪問するにはそれ相応の準備が必要だ。こちらから使者を送るのに十日かかったとして、それから十六日で到着だ。相当な強行軍だったろう」
王族となれば護衛や侍女も連れて行くので相当な人数になりますし、宿などの手配も含めれば相応の準備が必要です。仮にお忍びだとしても、道中の宿の手配は簡単ではありません。こうも短期間で来たとなれば、我が国の協力者がいるのは確実です。
「到着したのなら、今日にでも我が家に押しかけてくるかもしれないわね」
「陛下には我が家に王家の騎士を派遣して頂けるように頼んである。陛下からも王女と会う必要はないと言われているから心配しなくていい」
「でも、あの王女殿下ですもの。話が通じるかしら…」
お母様が重くため息をつきました。確かに話が通じる相手ではないのですよね。そうであればお兄様も身を隠す必要はなかったでしょう。それに…私が心配なのはリシャール様です。リシャール様も麗しいお姿なので、あの王女が興味を持たないかが心配で仕方ないのです。
「お父様…あの…」
「どうかしたか?」
「いえ…あの王女の事ですし、その、リシャール様が…」
「ああ、それもそうだな。あの王女は面食いだし、リシャール君に興味を持つ可能性もないとは言えん。あの王女がいる間は王宮への伺候の時は同行させないつもりだ」
「閣下、しかし…」
リシャール様が戸惑っていますが、あの王女の非常識さをご存じないからでしょう。あれは人間だと思ってはいけないのです、言葉が通じない野生生物なのです。
「レアンドル一人でも大変だったんだ。暫くは…そうだな、商会の方に手をかけてはどうだろう?人を増やしたと言うが、まだ気になるところもあるだろう?」
「それは…そうですが…」
「危険を回避する事も大事な処世術だ。我が家とて万能ではないのだから」
「畏まりました」
とりあえずリシャール様が王宮に行く事がないと聞いて私はホッとしました。アドリエンヌ様は王宮に滞在されるでしょうから、そうなればあそこに近づくのは危険です。勿論、リシャール様を渡すつもりはありませんが、あの王女は何をするかわかったものではありません。お兄様の事もあるので、難癖をつけてくる可能性もありますし、養子の立場のリシャール様では強く出る事も難しいでしょう。
「私も今回ばかりは見逃すつもりはない」
「ですが、あなた。相手は王族ですし…」
「なぁに、こうなった原因を作ったのは王家だ。自分の尻拭いは自分でしてもらうよ」
「立場が悪いとなれば、勝手に我が家を売りませんか?」
「そんな事をしたら国を捨てると陛下には言ってある。その意味が分からない陛下でもあるまい」
そう言ってお父様がお笑いになりましたが…冗談になりませんわ。確かに王家は我が家に見限られたら終わりでしょう。実質的に貴族達をまとめてコントロールしているのは我が家ですし、その影響力は王家よりも強いのです。特に最近は王家の失態が続いているので、求心力が落ちているのですよね。ここで我が家の機嫌を損ねる事はないと思いたいですわ。
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