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王太子襲撃事件
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「襲われたって…セレスティーヌ様のご一行が?」
もしそれが本当であれば、大変な事で、私はその意味を直ぐには消化出来ませんでした。隣国の次期女王が我が国で襲われたとなれば、直ぐにでも戦争になってもおかしくないのですから。しかも相手は我が国よりも国力が上の国なのです。
「そ、それで被害は…」
「幸いにも王太子殿下の方には怪我人も出なかったそうだ」
「そう、ですか…」
怪我人が出なかったのは不幸中の幸いと言うべきでしょうか。いえ、襲われたという事実だけでも十分に問題ですが、それにしても一体相手は…
「それで、襲撃犯は?」
「今はまだ調査中で滅多な事は言えん。この事は陛下にも奏上した。既に王宮の騎士がお迎えに上がり、今は厳重にお守りしている」
「そうですか。ですが…この件を知っているのはごく一部の筈では…」
「そうだ、王太子殿下の訪問は内々のもので、表立っては知られていなかった」
「それでは…」
「ああ、どこかで情報が漏れたのだろうな」
どこかと言いますか、この話を知っているのは、我が家のごく一部と王家、そしてリスナール国くらいです。勿論リスナール国でのセレスティーヌ様の立場が盤石とは言え、彼女が女王になるのを反対している勢力や、王政に反対する勢力もいるので、これ幸いにと強硬手段に出る可能性は皆無ではないでしょう。むしろ他国で問題を起こして、それを我が国のせいだと擦り付けようとする方が、彼らにとっては好都合かもしれません。
でも、今回はそれ以外にも要因があるのですよね。それはエストレ国のアドリエンヌ様の存在です。
「アドリエンヌ様がいきなり我が国にやってきたのは…」
「ああ、レアンドルがセレスティーヌ様の王配になると聞いたから、と考えるのが妥当だろうな」
「そうなりますよね」
お兄様を追い回しているあの王女ですが、これまで手紙や使者を送ってきても我が国に来た事は一度もなかったのですよね。なのに今回急にやってきたとなれば、王配の件を聞いてそれを阻止しようとしたから、と考えるのが妥当でしょう。既に冬に入り、新年と創世祭を控えた今は旅行には適しない次期ですし、他国の王族が我が国に来る理由もありません。
「今は騎士が護衛についているから問題はないだろう。私も内々に影を潜り込ませて王太子殿下とレアンドルを見守らせている」
「そうですか」
「騎士に命じて証拠集めもしている。襲撃犯は夜盗らしいが、命じた者は別にいるだろう。今は背後関係を調べているところだ」
「それでは…」
「相手も簡単にボロは出さないだろうが…一歩間違えれば戦争になりかねん話だ。それにレアンドルのためにも逃すつもりはない」
お父様もアドリエンヌ様の関与が濃厚だとお考えなのでしょうね。これまでお兄様の事では散々煮え湯を飲まされてきましたし、我が家としては後継を代えなければならない事態になったのです。ラフォンの色を受け継がないお兄様でしたが、お父様はお祖父様の意向に反してお兄様を後継にするおつもりでいましたし、お母様によく似たお兄様を大切に思っていたのです。
この件に王妃様が絡んでいるとなれば、お父様は容赦なく王妃様の力も削ぐおつもりでしょう。私とエルネスト様の婚約とその後の一連の件に、お父様は酷く憤っていらっしゃいましたから。王妃様としては政敵の我が家の力を削ぎつつ、エルネスト様の後見にして取り込もうとしていたようですし。せめてエルネスト様が私を大切に思っていたらそれも許容範囲内ではあったのですが、残念ながらその未来を自ら手放したのは、外ならぬエルネスト様ご自身なのです。
もしそれが本当であれば、大変な事で、私はその意味を直ぐには消化出来ませんでした。隣国の次期女王が我が国で襲われたとなれば、直ぐにでも戦争になってもおかしくないのですから。しかも相手は我が国よりも国力が上の国なのです。
「そ、それで被害は…」
「幸いにも王太子殿下の方には怪我人も出なかったそうだ」
「そう、ですか…」
怪我人が出なかったのは不幸中の幸いと言うべきでしょうか。いえ、襲われたという事実だけでも十分に問題ですが、それにしても一体相手は…
「それで、襲撃犯は?」
「今はまだ調査中で滅多な事は言えん。この事は陛下にも奏上した。既に王宮の騎士がお迎えに上がり、今は厳重にお守りしている」
「そうですか。ですが…この件を知っているのはごく一部の筈では…」
「そうだ、王太子殿下の訪問は内々のもので、表立っては知られていなかった」
「それでは…」
「ああ、どこかで情報が漏れたのだろうな」
どこかと言いますか、この話を知っているのは、我が家のごく一部と王家、そしてリスナール国くらいです。勿論リスナール国でのセレスティーヌ様の立場が盤石とは言え、彼女が女王になるのを反対している勢力や、王政に反対する勢力もいるので、これ幸いにと強硬手段に出る可能性は皆無ではないでしょう。むしろ他国で問題を起こして、それを我が国のせいだと擦り付けようとする方が、彼らにとっては好都合かもしれません。
でも、今回はそれ以外にも要因があるのですよね。それはエストレ国のアドリエンヌ様の存在です。
「アドリエンヌ様がいきなり我が国にやってきたのは…」
「ああ、レアンドルがセレスティーヌ様の王配になると聞いたから、と考えるのが妥当だろうな」
「そうなりますよね」
お兄様を追い回しているあの王女ですが、これまで手紙や使者を送ってきても我が国に来た事は一度もなかったのですよね。なのに今回急にやってきたとなれば、王配の件を聞いてそれを阻止しようとしたから、と考えるのが妥当でしょう。既に冬に入り、新年と創世祭を控えた今は旅行には適しない次期ですし、他国の王族が我が国に来る理由もありません。
「今は騎士が護衛についているから問題はないだろう。私も内々に影を潜り込ませて王太子殿下とレアンドルを見守らせている」
「そうですか」
「騎士に命じて証拠集めもしている。襲撃犯は夜盗らしいが、命じた者は別にいるだろう。今は背後関係を調べているところだ」
「それでは…」
「相手も簡単にボロは出さないだろうが…一歩間違えれば戦争になりかねん話だ。それにレアンドルのためにも逃すつもりはない」
お父様もアドリエンヌ様の関与が濃厚だとお考えなのでしょうね。これまでお兄様の事では散々煮え湯を飲まされてきましたし、我が家としては後継を代えなければならない事態になったのです。ラフォンの色を受け継がないお兄様でしたが、お父様はお祖父様の意向に反してお兄様を後継にするおつもりでいましたし、お母様によく似たお兄様を大切に思っていたのです。
この件に王妃様が絡んでいるとなれば、お父様は容赦なく王妃様の力も削ぐおつもりでしょう。私とエルネスト様の婚約とその後の一連の件に、お父様は酷く憤っていらっしゃいましたから。王妃様としては政敵の我が家の力を削ぎつつ、エルネスト様の後見にして取り込もうとしていたようですし。せめてエルネスト様が私を大切に思っていたらそれも許容範囲内ではあったのですが、残念ながらその未来を自ら手放したのは、外ならぬエルネスト様ご自身なのです。
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