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どうしてこうなった?
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「きゃぁあああ!ど、どうしてあんたがここにいるのよっ!」
「ま、待てっ!静かにしろ」
「何言ってんのよ!こんな時に黙ってなんて…!」
「何事ですっ?!!」
「どうなさいましたか?!!」
「き、きゃぁああああああ!!!」
目が覚めた時、目の前にいたのは淡い金の髪をした裸の女だった。身に覚えのない部屋に裸の自分、徐々に湧き上がる軽い嘔吐感と頭痛に、少しずつ自分が置かれた情況を理解した。理解したが…
(嘘だろう?ど、どうしてこの女がここに?この女はレティシアの兄と…)
自分が置かれた情況がわかってくる毎に、身体を言いようもない寒気が襲ってきた。どうして自分はこの狂犬女と一緒にいるのか…昨夜の記憶を必死に手繰り寄せる。昨夜は夜会で、俺はこの女をエスコートして出席した。
この女はレティシアの兄に媚薬を盛ってものにするのだと嬉々として語っていて、とんでもない女に気に入られて気の毒な事だと思いながらも、俺もリスナール国の王太子を手に入れて、彼の国の王になるのだと意気込んでいた。景気づけにと酒を飲んでいい気分だったが…思った以上に酔ってしまったらしい。酔って…その後…全くどうしたのか、記憶がなかった。その事に一層の不安がこみ上げてきた。
そうしている間に、目の前の女が目を覚まして…俺の姿を見るなり大声で叫んだんだ。しまった、さっさと逃げてしまえばよかったのに…と後悔したのはずいぶん経ってからだった。
女が叫んだせいで、侍女とこの棟を護衛していた近衛騎士たちが一斉に押しかけてきた。それも仕方がないだろう、ここは他国の王族やそれに匹敵する高位貴族が使う部屋なのだ。そこでバカでかい悲鳴を上げればこうなる事は明白だった…
こうして俺は、アドリエンヌとベッドの上で言い合っているところを大勢の者に見られて…謹慎を命じられた。
「何て事なのっ!」
謹慎していた俺の元を訪れたのは、母上だった。いつも感情を押し殺した笑みを浮かべている母上は、これまでに見た事もないほどに動揺していた。
「ああ、エルネスト…」
「母上、どうしてこんな事に…」
「わからないわ。でも貴方は酔い過ぎてラフォンの息子に介抱されたそうね。それであの部屋に連れていかれたと侍女達に聞いたわ」
「な…」
「全く、よりにもよってどうしてあの部屋に…」
「で、では…もしかしてあの計画が…」
レティシアの兄が俺をあの部屋に連れて行ったという事は、あの計画が知られていたからだろうか。いや、そんな筈はない。計画は秘密裏に勧められたはずだ。でも、それを考えたのはあの狂犬王女だ…嫌な汗が背中を流れた。
「そんな筈はありません。いいえ、あってはならないのよ」
「しかし…」
「エルネスト、貴方はただお酒に酔って寝てしまっただけなのよ」
「は、母上、何を…」
「何も知らなかったのよ。いいわね?」
「でも…!それじゃ俺は女に襲われたと…」
「それでは、全てを話しますか?」
「そ、それはっ…!」
言われなくてもわかる。それだけは、絶対に知られてはいけない事だと。
「そんな事をしたら貴方だけでなく我が国は破滅です。いいわね、貴方はただお酒に酔って眠っていただけ。そこで何があったのかはあの王女の責任です」
そうだ、ここで本当の事を話しても何のメリットもない。それどころかあの計画まで知られてしまう事になり兼ねないが、そんな事をしたら終わりだ。あんな女を妻にするなんて冗談ではないが、それでも戦犯として全てを失うよりはマシ、なのだろう。
(レティシアと婚約破棄しなければ、今頃は…)
あの時の高揚感は既に失われた。突きつけられた現実と自ら手放した未来に、重い泥のような後悔が押し寄せてきた。
「ま、待てっ!静かにしろ」
「何言ってんのよ!こんな時に黙ってなんて…!」
「何事ですっ?!!」
「どうなさいましたか?!!」
「き、きゃぁああああああ!!!」
目が覚めた時、目の前にいたのは淡い金の髪をした裸の女だった。身に覚えのない部屋に裸の自分、徐々に湧き上がる軽い嘔吐感と頭痛に、少しずつ自分が置かれた情況を理解した。理解したが…
(嘘だろう?ど、どうしてこの女がここに?この女はレティシアの兄と…)
自分が置かれた情況がわかってくる毎に、身体を言いようもない寒気が襲ってきた。どうして自分はこの狂犬女と一緒にいるのか…昨夜の記憶を必死に手繰り寄せる。昨夜は夜会で、俺はこの女をエスコートして出席した。
この女はレティシアの兄に媚薬を盛ってものにするのだと嬉々として語っていて、とんでもない女に気に入られて気の毒な事だと思いながらも、俺もリスナール国の王太子を手に入れて、彼の国の王になるのだと意気込んでいた。景気づけにと酒を飲んでいい気分だったが…思った以上に酔ってしまったらしい。酔って…その後…全くどうしたのか、記憶がなかった。その事に一層の不安がこみ上げてきた。
そうしている間に、目の前の女が目を覚まして…俺の姿を見るなり大声で叫んだんだ。しまった、さっさと逃げてしまえばよかったのに…と後悔したのはずいぶん経ってからだった。
女が叫んだせいで、侍女とこの棟を護衛していた近衛騎士たちが一斉に押しかけてきた。それも仕方がないだろう、ここは他国の王族やそれに匹敵する高位貴族が使う部屋なのだ。そこでバカでかい悲鳴を上げればこうなる事は明白だった…
こうして俺は、アドリエンヌとベッドの上で言い合っているところを大勢の者に見られて…謹慎を命じられた。
「何て事なのっ!」
謹慎していた俺の元を訪れたのは、母上だった。いつも感情を押し殺した笑みを浮かべている母上は、これまでに見た事もないほどに動揺していた。
「ああ、エルネスト…」
「母上、どうしてこんな事に…」
「わからないわ。でも貴方は酔い過ぎてラフォンの息子に介抱されたそうね。それであの部屋に連れていかれたと侍女達に聞いたわ」
「な…」
「全く、よりにもよってどうしてあの部屋に…」
「で、では…もしかしてあの計画が…」
レティシアの兄が俺をあの部屋に連れて行ったという事は、あの計画が知られていたからだろうか。いや、そんな筈はない。計画は秘密裏に勧められたはずだ。でも、それを考えたのはあの狂犬王女だ…嫌な汗が背中を流れた。
「そんな筈はありません。いいえ、あってはならないのよ」
「しかし…」
「エルネスト、貴方はただお酒に酔って寝てしまっただけなのよ」
「は、母上、何を…」
「何も知らなかったのよ。いいわね?」
「でも…!それじゃ俺は女に襲われたと…」
「それでは、全てを話しますか?」
「そ、それはっ…!」
言われなくてもわかる。それだけは、絶対に知られてはいけない事だと。
「そんな事をしたら貴方だけでなく我が国は破滅です。いいわね、貴方はただお酒に酔って眠っていただけ。そこで何があったのかはあの王女の責任です」
そうだ、ここで本当の事を話しても何のメリットもない。それどころかあの計画まで知られてしまう事になり兼ねないが、そんな事をしたら終わりだ。あんな女を妻にするなんて冗談ではないが、それでも戦犯として全てを失うよりはマシ、なのだろう。
(レティシアと婚約破棄しなければ、今頃は…)
あの時の高揚感は既に失われた。突きつけられた現実と自ら手放した未来に、重い泥のような後悔が押し寄せてきた。
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