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王妃の罪
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「ラフォン侯爵お呼び夫人、そしてレティシア嬢。すまなかった」
王妃様を一喝した陛下は、王妃様に向けていた視線をこちらに向けると、静かに頭を下げられました。一国の王が臣下に頭を下げるなど、あってはならない事です。私達だけでなく、王太子殿下や王妃様までもが、そんな陛下の姿を驚きの表情で見ていました。
「へ、陛下…」
「ラフォン侯爵、これまでの貴公とその一族の献身は重々理解し、有難く思っている。しかし、それをいい事に無理を強いてきたのも確かだ。謝罪する」
王妃様の呼びかけを無視して、陛下は更に続けられました。その言葉には苦みが濃く現れ、陛下の今の心境をそのまま表しているようにも見えました。
「お待ちください、陛下。そしてラフォン侯爵も。謝罪すべきは私なのです」
「オーギュスト。待て!」
そんな中、声を上げたのはこれまで黙っていた王太子殿下でした。陛下が何かを発言しようとされましたが、殿下は首を横に振ってそれを制しました。
「全ては私の責なのです、ラフォン侯爵」
「…どういう事ですかな?」
「私が…エルネストに厳しく接しようとする陛下をお止めしていたのです」
そう言って殿下は苦しそうな表情を浮かべました。殿下は凛々しい中にも厳しさが感じられるお方ですが、実は家族思いのお優しい人柄だと伺っています。実際、私がエルネスト様に冷遇されていた時も私に声をかけ、何かと配慮して下さっていました。
そんな殿下はエルネスト様を案じ、何かと手助けしていらっしゃったのだそうです。いずれは王籍を離れて臣下に下る事も不安材料だったのでしょう。何か起こす度に厳しく断じようとする陛下でしたが、エルネスト様には酷だと思われた殿下は、何かとお庇いになっていたそうです。
「だが、その甘さがここまでエルを増長させてしまったのだろう…」
そう言って王太子殿下が苦しそうな表情を浮かべられました。殿下としてはエルネスト様を折に触れて諫め、自分の立場をわかりやすく説明していたそうです。
「すまぬ。わしもオーギュストがエルネストを諫めている場面を何度も見ていたし、あ奴もそれを素直に聞き入れていたから問題ないと思っていたのだ。わしが言うよりも、あ奴が慕っていた兄から話をした方が聞き入れやすいだろうから、と」
そう言って陛下はいったん言葉を区切られると、その視線を今度は王妃様に向けました。
「まさか、実母がそれを台無しにしていたとは思わなんだがな」
「へ、陛下…」
「お前はあ奴に、王子なのだから問題ないと、諫められるたびにそう言っていたそうだな」
「そ、それは…」
「ああ、言い訳は不要だ。侍女達から同じような証言が上がっている」
「な…」
陛下の切り捨てる様な視線と言葉を受け、王妃様が呆然とした表情を浮かべました。
「それだけならよかったのだがな」
「陛、下…?」
陛下の呟きに王妃様が青褪めた表情のまま呼びかけようとしましたが、一端目を閉じた陛下が再び目を開き、それを目にした王妃様が息を飲みました。
「よりにもよって、リスナール国の王太子殿下であらせられるセレスティーヌ様を襲う計画までしていたとはな」
「ひっ…」
「このような重大事、とてもではないが看過出来ぬ。よって王妃であるそなたを廃妃とし、北の離宮に終身幽閉とする。実際に何もしなかったとはいえ、エルネストも同罪。子が成せぬ処置をした上で生涯幽閉とする」
それは予め聞かされていた内容ではありましたが…陛下から直々にその旨を聞かされるのは予想以上に重いものとして受け取られました。
王妃様を一喝した陛下は、王妃様に向けていた視線をこちらに向けると、静かに頭を下げられました。一国の王が臣下に頭を下げるなど、あってはならない事です。私達だけでなく、王太子殿下や王妃様までもが、そんな陛下の姿を驚きの表情で見ていました。
「へ、陛下…」
「ラフォン侯爵、これまでの貴公とその一族の献身は重々理解し、有難く思っている。しかし、それをいい事に無理を強いてきたのも確かだ。謝罪する」
王妃様の呼びかけを無視して、陛下は更に続けられました。その言葉には苦みが濃く現れ、陛下の今の心境をそのまま表しているようにも見えました。
「お待ちください、陛下。そしてラフォン侯爵も。謝罪すべきは私なのです」
「オーギュスト。待て!」
そんな中、声を上げたのはこれまで黙っていた王太子殿下でした。陛下が何かを発言しようとされましたが、殿下は首を横に振ってそれを制しました。
「全ては私の責なのです、ラフォン侯爵」
「…どういう事ですかな?」
「私が…エルネストに厳しく接しようとする陛下をお止めしていたのです」
そう言って殿下は苦しそうな表情を浮かべました。殿下は凛々しい中にも厳しさが感じられるお方ですが、実は家族思いのお優しい人柄だと伺っています。実際、私がエルネスト様に冷遇されていた時も私に声をかけ、何かと配慮して下さっていました。
そんな殿下はエルネスト様を案じ、何かと手助けしていらっしゃったのだそうです。いずれは王籍を離れて臣下に下る事も不安材料だったのでしょう。何か起こす度に厳しく断じようとする陛下でしたが、エルネスト様には酷だと思われた殿下は、何かとお庇いになっていたそうです。
「だが、その甘さがここまでエルを増長させてしまったのだろう…」
そう言って王太子殿下が苦しそうな表情を浮かべられました。殿下としてはエルネスト様を折に触れて諫め、自分の立場をわかりやすく説明していたそうです。
「すまぬ。わしもオーギュストがエルネストを諫めている場面を何度も見ていたし、あ奴もそれを素直に聞き入れていたから問題ないと思っていたのだ。わしが言うよりも、あ奴が慕っていた兄から話をした方が聞き入れやすいだろうから、と」
そう言って陛下はいったん言葉を区切られると、その視線を今度は王妃様に向けました。
「まさか、実母がそれを台無しにしていたとは思わなんだがな」
「へ、陛下…」
「お前はあ奴に、王子なのだから問題ないと、諫められるたびにそう言っていたそうだな」
「そ、それは…」
「ああ、言い訳は不要だ。侍女達から同じような証言が上がっている」
「な…」
陛下の切り捨てる様な視線と言葉を受け、王妃様が呆然とした表情を浮かべました。
「それだけならよかったのだがな」
「陛、下…?」
陛下の呟きに王妃様が青褪めた表情のまま呼びかけようとしましたが、一端目を閉じた陛下が再び目を開き、それを目にした王妃様が息を飲みました。
「よりにもよって、リスナール国の王太子殿下であらせられるセレスティーヌ様を襲う計画までしていたとはな」
「ひっ…」
「このような重大事、とてもではないが看過出来ぬ。よって王妃であるそなたを廃妃とし、北の離宮に終身幽閉とする。実際に何もしなかったとはいえ、エルネストも同罪。子が成せぬ処置をした上で生涯幽閉とする」
それは予め聞かされていた内容ではありましたが…陛下から直々にその旨を聞かされるのは予想以上に重いものとして受け取られました。
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