【完結】悪役令嬢だって真実の愛を手に入れたい~本来の私に戻って初恋の君を射止めます!

灰銀猫

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番外編~リシャール④

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 レティとの婚姻まであと二月に迫った。ドレスなどの準備も殆ど終わり、私もレティも結婚後の休暇のために忙しくしていた。半月ほどゆっくりする予定なので、それぞれの仕事を前もって準備し、手を打つ必要がある。
 私の場合、義父となる公爵の秘書は他の者がいるので問題ないが、商会はそういう訳にもいかない。レティの提案で店の移転準備もあり、予想していた以上に忙しくなっていた。

「ダニエル、移転の進捗具合はどうだ?」
「そうですね…屋敷の改装は完了して、後は内装が少し残っているだけです。職人が住む寮も目処がつきました。ただ…カフェの方は食器類を集めるのに少々難儀していますね」
「食器が?」
「はい。予定していたリスナールから輸入した食器の一部が割れていて…数が足りないので今急いで手配しているところです」
「そうか」
「幸い最低限の数は確保出来ているので、間に合わなくても何とかなるでしょう」

 店の移転に合わせてカフェもオープンするが、初めて開くカフェの準備が思った以上に大変だった。市井には庶民向けのカフェはあるが、上位貴族向けのものがないからだ。上位貴族向けのカフェは画期的だが、うちの商会は下位貴族出身の者ばかりなので、そこがネックになっていた。

「でも…上位貴族の方がここにはいないので、どのレベルが適切なのかわからないんですよね」

 ダニエルも下位貴族の出なので、上位貴族相手の商売に及び腰だった。でも仕方がない。それくらい上位貴族と下位貴族の差は大きいのだ。内装などは業者に聞けばわかるが、一番のネックは給仕の確保だった。上位貴族に通じるマナーが身についている者を雇うのは簡単ではなかった。



 屋敷に戻って夕食後、レティや義母となる侯爵夫人にカフェについて聞かれた。二人共貴族向けのカフェを楽しみにしてくれているのは嬉しいが、一方でその期待に応えられるかが不安になってくる。だが、こうして話題になったのならチャンスかもしれない。俺は思い切って今の悩みを話してみた。

「そういうことなら…コレットが適任じゃない?」

 レティから出た名前が思いがけなかったが、近くにいた当人を見ると彼女も戸惑っているように見えた。彼女はレティの乳兄弟で専属侍女だが、こんなところでその名が出るとは思わなかった。だが…

「あら、それはそうね。コレットはカフェ巡りが趣味でしょう?」
「え?ええ、奥様。それはそうですが…」
「コレットは上位貴族のマナーに通じているし、カフェの事も詳しいわ」
「そうね、コレットも前に言っていたじゃない。私だったらこんなカフェにするのに、って」
「それはそうですが…」

 意外なところに意外な適任者がいたらしい。確かにコレットは筆頭侯爵家の次期当主の侍女を務めるくらい優秀だ。上位貴族の侍女はマナーに通じているのが必須だし、主の好みを把握して茶葉やスイーツを準備できなければ務まらない。
 結局、あれよこれよという間に彼女がアドバイザーとして協力してくれることになった。また、侯爵家にはカフェで働いてみたいと言っている侍女もいるらしく、カフェの給仕として暫く働いてもらいながら店員の教育もお願いする事になった。

「我が家のカフェですもの。中途半端はダメよ」

 侯爵夫人にそう言われて益々プレッシャーを感じたが、ラフォン侯爵家、いやレティの名を汚すようなことはしたくなかった。それに、純粋にカフェを楽しみにしているレティを喜ばせたいとの思いが一層強くなった。強くて努力家で弱音など吐かない彼女だが、その細い身に背負うものはとてつもなく大きい。そんな彼女を支え癒せるのは自分でありたいし、出来る事なら唯一の存在でいたい。

「リシャール様、リシャール様のカフェ、私も連れて行ってくださいます?」
「勿論ですよ、レティ。貴族向けですが、私の中では貴女のためのカフェです。貴女が喜んでくれなければ意味がありませんよ」
「え…あ、ありがとう…ございます…」

 珍しい彼女の可愛らしいおねだりに、思わず愛しいと思うままにそう告げると、彼女は真っ赤になって口ごもってしまった。

「まぁ、リシャールったら。私達もいるのを忘れないで欲しいわ」

 侯爵夫人にからかう様にそう言われて、そう言えば夫人や侍女たちもいる事を思い出した。もう、リシャール様はお嬢様キラーですわねとコレットが呆れたように言い、その場にいた者達が破顔した。



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