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態度の変化
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落ち着きを取り戻したガルアは、順調に回復していった。俺が怒らなかったから安心したのか、開き直ったのか、現在の境遇が前よりマシだったせいかはわからないが、あの警戒心はどこ行った? と思うほどだった。
(それにしても、生活力なさすぎだろ……)
あの二人の生活ぶりを聞いて、俺は愕然とした。よく今まで生きてられたな、と思う。あの大怪我の後で川に落ちたんだから瀕死の状態だったろうに。
(死ななかった俺の身体、えらい。よく頑張ったよ……)
既に他人の手に渡ってしまった俺の身体。以前よりも愛着を感じるのは、失ってからその大切さに気が付いたっていうアレだろうか。こんな形で知りたくなかった……
あの二人はあの小屋で、木の実や果物、食べられそうな草やレーレ川で獲った魚や小さい獣を食べて暮らしていた。栄養バランスもなにもあったもんじゃない。腹が膨れればそれでいい、そんな感じだったらしい。リューンもガルアと一緒にいられれば十分と、果物や木の実中心の食生活だったらしい。
(生活力なさ過ぎだろう、こいつら……)
いくら想い合って一緒にいられればそれだけで幸せだとは言っても、そんな生活してたら死ぬぞ。いや、死にかけてたな。どっちにしてもこの二人、もうちょっと生活力上げてやらないと野垂れ死にしそうだった。
「何と! 美味ではないか!」
そう言ってガルアが舌鼓を打つのは、アンザさんが作った野菜スープだった。目覚めて間もないガルアのためにと野菜と肉がトロトロになるまで煮込んだもので、それをガルアが大いに気に入ったのだ。
「人間とはこんな美味い物を食べているのか!」
(……今まで何食ってたんだよ……)
俺の身体が可哀相になって来た。きっと今までろくなもん、食べてなかったのは明白だ。しかも怪我も癒えていないのに……今だって渡す気はないが、欲しいと言うならもっと大事にしろよ! と思うのは当然だろう。
「とにかく傷が治るまではここで大人しくしていろ。でないと死ぬぞ。人間はぜい弱だからな」
「ぬ……ルークよ、棘のある言い方だな」
「んなことねぇよ」
「我が言ったことを気にしておるのか?」
「俺が気にしているのは俺の身体だ。もっと大事に扱えよ」
「う、うぬ……わかった」
随分と偉そうだったが、少しはしおらしいところもあるらしい。このままじゃ死ぬと言ったら大人しくなったし、気を付ける気になったのは前進と言えるだろうか。
「そんなんじゃ一年持たねぇ。リューンが大事なら身体を大事にしろ!」
俺が散々説教したせいだろう。リューンの名を出すと意外にも素直に従った。そしてリューンもそれを否定しなかった。それどころか「ガルアが死んだら私は一人ぼっちになっちゃう」な~んて泣きそうな顔で言ったのも大きいだろう。
(俺の前でいちゃつくなよ……)
これは絶対に僻みとかじゃない。俺の身体が純粋に心配なだけだ。そうは思うけれど、どうしようもない虚しさが胸に広がった。
ガルアの体力が戻るまで、彼らを街に滞在させることにしたが、その間俺はリューンに、治癒魔法の使い方を教えることにした。せっかくの才能があっても使い方を知らないのでは宝の持ち腐れだ。それに俺の身体を治すためにはリューンの力が必要だった。
「おい! 近づき過ぎだぞ!」
そう言ってリューンに魔術を教える俺に一々吠えるのはガルアだった。別に体に障ったわけでもなく、ただ教えるために会話する距離に近づいただけだ。
「煩いなぁ。別に触ってもいないだろうが」
「しかしだな……!」
「第一、この身体も元々はお前さんのだろうが」
「そ、それはそうだが……」
「それに、リューンが聖魔術を使えればお前さんの身体の治りも早くなる。早く治さないとリューンを守ることも出来ないんだぞ」
「う、うむ……」
ここでもリューンの名を出したら大人しくなった。ある意味操縦しやすくなったとも言える。それに治癒魔術が使えれば、これからの生活にも役に立つのは間違いない。
リューンの才能は大したものだった。全く知識がないのに想いだけでその力を使っていたのも驚きだったけど、教えたら驚くほどに力を伸ばしていった。
「ガルアのためなら頑張れます」
そう言って恥ずかしそうな笑みを浮かべるリューンは恋する乙女そのまんまで、文句なしに可愛かった。
(それにしても、生活力なさすぎだろ……)
あの二人の生活ぶりを聞いて、俺は愕然とした。よく今まで生きてられたな、と思う。あの大怪我の後で川に落ちたんだから瀕死の状態だったろうに。
(死ななかった俺の身体、えらい。よく頑張ったよ……)
既に他人の手に渡ってしまった俺の身体。以前よりも愛着を感じるのは、失ってからその大切さに気が付いたっていうアレだろうか。こんな形で知りたくなかった……
あの二人はあの小屋で、木の実や果物、食べられそうな草やレーレ川で獲った魚や小さい獣を食べて暮らしていた。栄養バランスもなにもあったもんじゃない。腹が膨れればそれでいい、そんな感じだったらしい。リューンもガルアと一緒にいられれば十分と、果物や木の実中心の食生活だったらしい。
(生活力なさ過ぎだろう、こいつら……)
いくら想い合って一緒にいられればそれだけで幸せだとは言っても、そんな生活してたら死ぬぞ。いや、死にかけてたな。どっちにしてもこの二人、もうちょっと生活力上げてやらないと野垂れ死にしそうだった。
「何と! 美味ではないか!」
そう言ってガルアが舌鼓を打つのは、アンザさんが作った野菜スープだった。目覚めて間もないガルアのためにと野菜と肉がトロトロになるまで煮込んだもので、それをガルアが大いに気に入ったのだ。
「人間とはこんな美味い物を食べているのか!」
(……今まで何食ってたんだよ……)
俺の身体が可哀相になって来た。きっと今までろくなもん、食べてなかったのは明白だ。しかも怪我も癒えていないのに……今だって渡す気はないが、欲しいと言うならもっと大事にしろよ! と思うのは当然だろう。
「とにかく傷が治るまではここで大人しくしていろ。でないと死ぬぞ。人間はぜい弱だからな」
「ぬ……ルークよ、棘のある言い方だな」
「んなことねぇよ」
「我が言ったことを気にしておるのか?」
「俺が気にしているのは俺の身体だ。もっと大事に扱えよ」
「う、うぬ……わかった」
随分と偉そうだったが、少しはしおらしいところもあるらしい。このままじゃ死ぬと言ったら大人しくなったし、気を付ける気になったのは前進と言えるだろうか。
「そんなんじゃ一年持たねぇ。リューンが大事なら身体を大事にしろ!」
俺が散々説教したせいだろう。リューンの名を出すと意外にも素直に従った。そしてリューンもそれを否定しなかった。それどころか「ガルアが死んだら私は一人ぼっちになっちゃう」な~んて泣きそうな顔で言ったのも大きいだろう。
(俺の前でいちゃつくなよ……)
これは絶対に僻みとかじゃない。俺の身体が純粋に心配なだけだ。そうは思うけれど、どうしようもない虚しさが胸に広がった。
ガルアの体力が戻るまで、彼らを街に滞在させることにしたが、その間俺はリューンに、治癒魔法の使い方を教えることにした。せっかくの才能があっても使い方を知らないのでは宝の持ち腐れだ。それに俺の身体を治すためにはリューンの力が必要だった。
「おい! 近づき過ぎだぞ!」
そう言ってリューンに魔術を教える俺に一々吠えるのはガルアだった。別に体に障ったわけでもなく、ただ教えるために会話する距離に近づいただけだ。
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「しかしだな……!」
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「そ、それはそうだが……」
「それに、リューンが聖魔術を使えればお前さんの身体の治りも早くなる。早く治さないとリューンを守ることも出来ないんだぞ」
「う、うむ……」
ここでもリューンの名を出したら大人しくなった。ある意味操縦しやすくなったとも言える。それに治癒魔術が使えれば、これからの生活にも役に立つのは間違いない。
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