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無知なお願い

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ジスラン殿下からお茶会に誘われた日、私は王宮を訪れました。
正直言って胡散臭いことこの上ないお誘いです。
お父様はよくよく気を付けるように、と何度も言ってくださいました。

「フェリエール嬢、こちらへ」
「え…?こちらは…」

庭でお茶会と伺っていましたが…案内されたのはジスラン殿下の私室でした。
おかしいです、既に婚約は解消されたのに、私室に招くなどあり得ません。

「あの…私は婚約を解消しています。殿下の私室に入るのは…」
「ご心配なく。私も侍女も一緒ですので」

案内して下さった護衛の方はそう仰いますが…それで安心出来る筈がありません。
だって、私室に入ってもいいのは家族か婚約者だけですし、私は婚約者の頃にだって、殿下の私室に入った事はないのです。
それでも一介の伯爵家の身では断る事も出来ません。

「やぁ、久しぶりだね、アルレット」

部屋では、既に殿下がリアーヌ様と一緒にいらっしゃいました。
お二人でソファに座られるお姿はやはり絵になりますね。
リアーナ様がいらっしゃった事で、私は僅かですがホッと胸をな撫で下ろしました。

「お久しぶりでございます、ジスラン殿下」

久しぶりに見た殿下は、以前よりも痩せてお疲れのように見えました。
もしかすると、心配していた通りリアーヌ様の力が足りないのでしょうか…

「今日お前を呼んだのは他でもない。私の呪いを解け」
「は?」

挨拶もなく、いきなり本題に入ったのも驚きでしたが、呪いを説けと言われるとは思いませんでした。
確かに私は呪いが解けますが、それは私が婚約者だったから。
婚約が解消された今、私にはその義務はありませんし、陛下からもその様に伺っています。
実際、呪いを解くのは大変な労力が必要ですし、呪いの強さによっては命の危険もあります。
だからこそ王家は婚約という形で私を保護したのですが…殿下はそんな事は何もご存じなかったようです。

「陛下からは、今後はオランド侯爵家のご令嬢が、殿下の呪いを解かれると伺っておりますが…」
「ああ、そうだ。リアーヌが解くはずだった。だが、呪いが思いのほか強力で、彼女一人の力では無理なんだ」
「左様でございますか」
「分かったならさっさと解け」

いやだ、この人全然わかっていらっしゃらないわ…

「それは無理です」
「何だと?!」
「聖女の力は相性があります。既にオランド侯爵令嬢のお力を受けていらっしゃるのであれば、私が力を使う事は出来ません」
「何故だ?!」
「聖女の力を二人から同時に受ける事は出来ないのです。もし力が反発すれば、殿下のお命が危険に晒されるからです」
「何だって?!」

今言った事は本当です。
聖女の力は一人一人質が違うので、同じ人に同時に複数の聖女の力を使う事は出来ないのです。
青虹玉が作った本人の力しか受け付けないのも、その為なのですが…
本当にご存じなかったとは…予想の斜め上を行かれていました。
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