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面会
翌々日、面会の許可が出て私は彼らの元に向かっていた。何故か皇子も一緒だ。一人で行くつもりだったから迎えの中にその姿を見て驚いた。
「殿下……どうしたんですか?」
「どうとは?」
「いえ、どうしてここにいるのかと思って」
そう言ったら盛大にため息をつかれた。何故だ?
「護衛だと思えばいい」
「殿下を護衛とか恐れ多すぎます」
「だったら立ち合いだ。気にするな」
「余計気になります」
何なんだと思うけど、気にするなと言われて押し切られてしまった。他の護衛騎士の表情が険しくなってきたから諦めた。いや、そんな表情するなら皇子を止めてくれればよかったんですけど。
「それで、誰から会うんだ?」
「三人ともです」
「三人だと?」
何故か驚かれてしまった。
「何で驚くんです?」
「いや、一番面倒そうだから」
「面倒事は早く片付けたい派なんです」
個別に会うことも考えたけれど、そうなると三回面会に行かなければならなくなる。実りある話し合いになるならまだしも、その可能性が低いなら一度に終わらせた方がいいだろう。もし気になることがあれば個別に会うことも出来るだろうし。
「そうか。まぁ、気持ちはわかる」
「そうなんですか?」
「当り前だ。面倒事は放っておけば置くほどより厄介になる。手を付けるなら面倒なことからだ。治政では人命がかかって来るのだからな」
そう思うならなぜ驚くのか。それってもしかして馬鹿にされているのだろうか。
「それで、彼らは今は?」
「王妃と姉の希望で三人一緒だ」
「そうですか」
まぁ、私とエリクを一緒にするわけにはいかないし、そうなるだろう。一人で死を待つなんて王妃や異母姉には無理だろうし。父はそうじゃないかもしれないけれど。
「ここだな」
辿り着いたのか地下牢でもなんでもない貴族牢だった。入り口には鉄格子の付いた扉があって、ただの部屋でないのは一目瞭然だ。重く軋む扉を過ぎると、一気に空気が重くなった。
「ここが、三人の……」
示された扉は鉄製で、その横には木で出来た窓があった。この窓から食事や日用品の出し入れ、面会などをするらしい。こちら側には立派なイスが二脚用意されていた。騎士が扉の側にある紐を引くと、奥でちりんちりんとベルが鳴り、それを合図に騎士たちが五人中に入っていった。窓を開けると鉄格子の向こうには客間のような空間が広がっていて、程なくして三人が騎士に連れられてやってきた。手足には鉄製の鎖が付いていて、その先を騎士が手にしていた。
「な! お前、どうしてここに!」
私の姿を視界に入れると王妃の顔が一気に赤くなった。王妃も異母姉も地味なワンピース姿で、化粧もしていないし髪も簡単に結んでいるだけ。肌も髪も艶を失くし、一層老けたように見える。牢では侍女が付かないらしいから仕方ないけれど、そうだと言われなかったら気付かなかったかもしれない。王妃の後ろで異母姉も同様に目をつり上げたが、皇子の姿を見ると途端に引っ込めた。頬を染めている姿は純朴な町娘のようでこちらの方が可愛らしく見える。少し遅れてやってきた父は人形のように表情がなく、目は虚ろで幽鬼のようだった。
「お久しぶりです」
「な、何しに来たのよ!」
「私たちを笑いに来たのね!」
顔を真っ赤にする王妃と異母姉に親子だなぁと妙に感心してしまった。仲がよかったけれど反応もそっくりだ。そういうところは少し羨ましく思えた。
「笑うつもりなどありませんよ。それよりも、お聞きしたい事があったので」
「聞きたいこと?」
王妃が警戒心を露わにした。ここで罪状を追加されると思ったのだろうか。もうそんな時期はとっくに過ぎているのだけど。
「ええ。母であるニーナ=ノルマンのことを」
「ニ、ニーナ……」
母の名前を出すと、王妃の表情が一層険しくなった。一方でその向こうでは父が目を見開いてこちらを見ていた。王妃の反応は想定内だったけれど、人形のようだった父の変化に驚いた。だって父は母が病に伏してからは別の女性を寵愛していたのだから。
「ああ、あの泥棒猫のことね」
王妃は憎々し気にそう吐き捨てた。
「その言い方も気になっていました」
「何ですって?」
「だって、母は一度も父を慕ったことはないと思いますよ?」
「な!」
「その証拠に、父が来た後の母はいつも不機嫌でしたし、時には泣いていましたわ。ユーアンごめんなさいと言って」
「ユーアンですって!?」
その名前に反応したのは王妃だった。私はその名の主を知らない。母の周りにはそんな人はいなかったし、そもそも母のことを殆ど知らない。母の実家は没落した伯爵家で、私が物心ついた頃には離散していたらしい。だから母の両親や兄弟と会ったこともないし、どうなったのかも知らない。だから王妃たちに会いに来たのだ。母の痕跡を少しでも掴みたくて。
「ユーアンという方をご存じなのですね?」
「そ、それは……」
珍しく王妃が動揺した。となれば王妃も知っている人物だったのか。その後ろでは父が茫然とした表情で立っていた。となると父も知っている人物だったのか。
「ユーアンって……お母様、もしかしてユーアンおじ様のことですの?」
「ア、 アンジェリカ……」
王妃が一層狼狽えた。異母姉も知っている人物だったのか。おじ様ということは父か王の兄弟に当たる人物ということか。
「王妃様、教えてくださいますか、そのユーアンという方について」
「殿下……どうしたんですか?」
「どうとは?」
「いえ、どうしてここにいるのかと思って」
そう言ったら盛大にため息をつかれた。何故だ?
「護衛だと思えばいい」
「殿下を護衛とか恐れ多すぎます」
「だったら立ち合いだ。気にするな」
「余計気になります」
何なんだと思うけど、気にするなと言われて押し切られてしまった。他の護衛騎士の表情が険しくなってきたから諦めた。いや、そんな表情するなら皇子を止めてくれればよかったんですけど。
「それで、誰から会うんだ?」
「三人ともです」
「三人だと?」
何故か驚かれてしまった。
「何で驚くんです?」
「いや、一番面倒そうだから」
「面倒事は早く片付けたい派なんです」
個別に会うことも考えたけれど、そうなると三回面会に行かなければならなくなる。実りある話し合いになるならまだしも、その可能性が低いなら一度に終わらせた方がいいだろう。もし気になることがあれば個別に会うことも出来るだろうし。
「そうか。まぁ、気持ちはわかる」
「そうなんですか?」
「当り前だ。面倒事は放っておけば置くほどより厄介になる。手を付けるなら面倒なことからだ。治政では人命がかかって来るのだからな」
そう思うならなぜ驚くのか。それってもしかして馬鹿にされているのだろうか。
「それで、彼らは今は?」
「王妃と姉の希望で三人一緒だ」
「そうですか」
まぁ、私とエリクを一緒にするわけにはいかないし、そうなるだろう。一人で死を待つなんて王妃や異母姉には無理だろうし。父はそうじゃないかもしれないけれど。
「ここだな」
辿り着いたのか地下牢でもなんでもない貴族牢だった。入り口には鉄格子の付いた扉があって、ただの部屋でないのは一目瞭然だ。重く軋む扉を過ぎると、一気に空気が重くなった。
「ここが、三人の……」
示された扉は鉄製で、その横には木で出来た窓があった。この窓から食事や日用品の出し入れ、面会などをするらしい。こちら側には立派なイスが二脚用意されていた。騎士が扉の側にある紐を引くと、奥でちりんちりんとベルが鳴り、それを合図に騎士たちが五人中に入っていった。窓を開けると鉄格子の向こうには客間のような空間が広がっていて、程なくして三人が騎士に連れられてやってきた。手足には鉄製の鎖が付いていて、その先を騎士が手にしていた。
「な! お前、どうしてここに!」
私の姿を視界に入れると王妃の顔が一気に赤くなった。王妃も異母姉も地味なワンピース姿で、化粧もしていないし髪も簡単に結んでいるだけ。肌も髪も艶を失くし、一層老けたように見える。牢では侍女が付かないらしいから仕方ないけれど、そうだと言われなかったら気付かなかったかもしれない。王妃の後ろで異母姉も同様に目をつり上げたが、皇子の姿を見ると途端に引っ込めた。頬を染めている姿は純朴な町娘のようでこちらの方が可愛らしく見える。少し遅れてやってきた父は人形のように表情がなく、目は虚ろで幽鬼のようだった。
「お久しぶりです」
「な、何しに来たのよ!」
「私たちを笑いに来たのね!」
顔を真っ赤にする王妃と異母姉に親子だなぁと妙に感心してしまった。仲がよかったけれど反応もそっくりだ。そういうところは少し羨ましく思えた。
「笑うつもりなどありませんよ。それよりも、お聞きしたい事があったので」
「聞きたいこと?」
王妃が警戒心を露わにした。ここで罪状を追加されると思ったのだろうか。もうそんな時期はとっくに過ぎているのだけど。
「ええ。母であるニーナ=ノルマンのことを」
「ニ、ニーナ……」
母の名前を出すと、王妃の表情が一層険しくなった。一方でその向こうでは父が目を見開いてこちらを見ていた。王妃の反応は想定内だったけれど、人形のようだった父の変化に驚いた。だって父は母が病に伏してからは別の女性を寵愛していたのだから。
「ああ、あの泥棒猫のことね」
王妃は憎々し気にそう吐き捨てた。
「その言い方も気になっていました」
「何ですって?」
「だって、母は一度も父を慕ったことはないと思いますよ?」
「な!」
「その証拠に、父が来た後の母はいつも不機嫌でしたし、時には泣いていましたわ。ユーアンごめんなさいと言って」
「ユーアンですって!?」
その名前に反応したのは王妃だった。私はその名の主を知らない。母の周りにはそんな人はいなかったし、そもそも母のことを殆ど知らない。母の実家は没落した伯爵家で、私が物心ついた頃には離散していたらしい。だから母の両親や兄弟と会ったこともないし、どうなったのかも知らない。だから王妃たちに会いに来たのだ。母の痕跡を少しでも掴みたくて。
「ユーアンという方をご存じなのですね?」
「そ、それは……」
珍しく王妃が動揺した。となれば王妃も知っている人物だったのか。その後ろでは父が茫然とした表情で立っていた。となると父も知っている人物だったのか。
「ユーアンって……お母様、もしかしてユーアンおじ様のことですの?」
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