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どういう意味?
(あ、あれって……あれって……キス、されたのよ、ね……)
皇子が去った後、私は一人クッションを抱えて呆然としていた。クッションを抱える手に力が入る。何が何だかよくわからない展開に頭が付いてこなかった。どうしてこうなった……今まで皇子から好意を向けられていると感じることは……なかった、と思う。いつも揶揄ってくるし、口は悪いしいい性格していると思うことなんか度々あった。例えば浮気しても丸め込まれる自信があるくらいには、向こうの方が上手だ。結婚したら苦労しそうだなと思っていたくらい何だけど……
(ダメだ、一人で考えても答えが見つからない……)
ここは第三者の意見が欲しいと思ってベルを鳴らすと、直ぐに隣の控室に続く扉からティアが現れた。ついでにドアの外で警護していたエドとグレンにも声をかけて室内に入って貰った。三人の第三者からの意見を聞くためだ。
「ティア。殿下のさっきのあれはどういう意味だったの?」
まずは一番側にいるティアの意見を求めた。知らない間に控室に下がっていたのも何かを察してだろう。普段は絶対に側を離れないのだから。
「どうって……ソフィ様のお考えの通りですわ」
「考えの通りって……じゃ、やっぱりあれは揶揄っているってこと?」
それとしか考えられないし、そうとしか思えない。
「まぁ、ソフィ様。そこでどうしてそういう話になりますの?」
ティアの方が驚きに目を丸めていた。え? 待って、それってどういう……
「あんなにあからさまにソフィ様に好意を示しておりましたのに……もしかしてソフィ様、全く気付かずに……」
ティアが信じられない物を見るような目で私を見た。待って……それって……
「あ、あれって……」
「あんなにせっせと贈り物も届けていましたのに」
「え? 贈り物……?」
それこそ記憶になかった。皇子から贈り物と言えばお菓子くらいしかなかったはず。私を見下ろすティアが益々困惑の表情を深めた。
「帝国にいた頃から贈られていたではありませんか」
「お、贈るって、何を……」
「ええ? ソフィ様が日々お召しになるドレスや宝石、お菓子や小物などですわ」
「ええっ!! それって、支給品だったんじゃ……」
そりゃあ、帝国に着いてから色んなものを頂いたけれど、それは普段使いの物ばかりだった。自分のドレスを持っていなかったから仕方なく用意されたものだとばかり……まさかあれが皇子からの贈り物だなんて。そう思えと言われても……
「あれらは全て、殿下が自らお選びになったものですわ。ですから殿下の色が必ずどこかに入っておりましたでしょう?」
皇子の色? 確かに頂いた品を思い返すと赤が入っていた様な気もする。だけど皇子は個人的な贈り物だなんて、一言も……
(言って、いた……?)
そう言えばティアは、いつも皇子からだと言っていた、よう、な……?
「あ、あれって、殿下の妃候補だからという意味だったんじゃ……」
ないかと思っていたのだけど、違ったらしい……ティアの表情は言葉以上に雄弁だった。
「あ、あの……エドとグレンも、同じ意見?」
恐る恐る声をかけてみたけれど、二人共間を置かず静かに頷いた。そこには僅かの戸惑いもなかったから、彼らにもはっきりわかっていたということで……
「えええ……じゃ、私……」
思いっきり好意を受け流していたということになる。え? それって物凄く失礼というか、酷くない? いやいや、はっきり言わない皇子も悪……くはない、かも……
「ど、どうしよう……」
これって私、思いっきり酷くない? いやでも、あの皇子が私に好意なんて持つ理由がわからないんだけど……!
「ちょっと待ってティア。これまでの私たちの間に、好意に繋がるものなんてあったかしら?」
皇子に好かれる理由がわからない。最初っから印象は悪かったはずだ。敵国の王女で側妃腹、見た目も残念だったし、それ以上にサイズ違いのドレスを着こんだ私はきっと頓珍漢に見えただろう。帝国の授業が始まってからも成績は散々だったし、忙しすぎて見た目を構う暇もなかった。お茶会だって真っ当な受け答えが出来た記憶がない……そんな私に好意? 皇子の趣味を疑う。いや、それって私のことなんだけど……それとも皇子って、誰にでも優しくしちゃうタイプとか? そりゃあ、あんなに見目もいいし条件としては最高級レベルだけど……
「どうしたら殿下が私に好意を持つのよ? 敵国の王女よ? 滅んだ王族の残りカスみたいなものよ? アンジェリカみたいに美人でもないし教養もないのに、どうしたら好かれるのよ?」
自分で言っていて悲しくなってきたけれど、それくらい信じられなかった。
「まぁ、ソフィ様ったら。自分を卑下し過ぎですわ」
「そうは言うけど相手は殿下よ。超優良物件よ? 女性なんて選び放題の立場にいるのに……」
顔よし、身分よし、意地悪だけど性格は特別冷酷でも変態でもなく世間的にも許容範囲、いや、十分に上等の類だろう。
「ソフィ様、殿下は今まで他の女性に贈り物なんて、花一輪も贈ったことはありませんわ」
「え?」
皇子が女性に贈り物をしたことがない? でも、エヴェリーナ様とは仲がよかったし、花やお菓子くらいは贈ったことがあったんじゃ……
「……本当に、ないの?」
「はい。私の知る範囲では一度も。ご本人もそう仰っておいでですから間違いはないかと」
「本人が……」
そう言っているのなら間違いはないのだろうけど、やっぱり納得いかない。
「一体何がどうして私なの?」
「そこまでは私も……お気になるなら殿下に直接お尋ねになって下さい」
「直接って……」
こんなこと、聞いていいのだろうか。いや、恥ずかしくて聞けそうもないのだけど。そう言えば……
「ねぇ、ティア」
「どうなさいましたか?」
「その、殿下なんだけど……覚悟しておけって仰っていたのよ。あれって、どういう意味なのかしら……」
「え?」
「……全力でわからせるとも、言っていた気がするわ……」
今になってさっきの会話が思い出されてきた。そう、確かにそう言っていた。
「まぁ、殿下ったら。ソフィ様、それでしたらご心配はいりませんわ。殿下がきっとソフィ様にもわかるように教えて下さるでしょうから」
そう言ってティアがにっこり笑った。その笑顔に妙な圧を感じた気がして、どういう意味だと尋ねることが出来なかった。
皇子が去った後、私は一人クッションを抱えて呆然としていた。クッションを抱える手に力が入る。何が何だかよくわからない展開に頭が付いてこなかった。どうしてこうなった……今まで皇子から好意を向けられていると感じることは……なかった、と思う。いつも揶揄ってくるし、口は悪いしいい性格していると思うことなんか度々あった。例えば浮気しても丸め込まれる自信があるくらいには、向こうの方が上手だ。結婚したら苦労しそうだなと思っていたくらい何だけど……
(ダメだ、一人で考えても答えが見つからない……)
ここは第三者の意見が欲しいと思ってベルを鳴らすと、直ぐに隣の控室に続く扉からティアが現れた。ついでにドアの外で警護していたエドとグレンにも声をかけて室内に入って貰った。三人の第三者からの意見を聞くためだ。
「ティア。殿下のさっきのあれはどういう意味だったの?」
まずは一番側にいるティアの意見を求めた。知らない間に控室に下がっていたのも何かを察してだろう。普段は絶対に側を離れないのだから。
「どうって……ソフィ様のお考えの通りですわ」
「考えの通りって……じゃ、やっぱりあれは揶揄っているってこと?」
それとしか考えられないし、そうとしか思えない。
「まぁ、ソフィ様。そこでどうしてそういう話になりますの?」
ティアの方が驚きに目を丸めていた。え? 待って、それってどういう……
「あんなにあからさまにソフィ様に好意を示しておりましたのに……もしかしてソフィ様、全く気付かずに……」
ティアが信じられない物を見るような目で私を見た。待って……それって……
「あ、あれって……」
「あんなにせっせと贈り物も届けていましたのに」
「え? 贈り物……?」
それこそ記憶になかった。皇子から贈り物と言えばお菓子くらいしかなかったはず。私を見下ろすティアが益々困惑の表情を深めた。
「帝国にいた頃から贈られていたではありませんか」
「お、贈るって、何を……」
「ええ? ソフィ様が日々お召しになるドレスや宝石、お菓子や小物などですわ」
「ええっ!! それって、支給品だったんじゃ……」
そりゃあ、帝国に着いてから色んなものを頂いたけれど、それは普段使いの物ばかりだった。自分のドレスを持っていなかったから仕方なく用意されたものだとばかり……まさかあれが皇子からの贈り物だなんて。そう思えと言われても……
「あれらは全て、殿下が自らお選びになったものですわ。ですから殿下の色が必ずどこかに入っておりましたでしょう?」
皇子の色? 確かに頂いた品を思い返すと赤が入っていた様な気もする。だけど皇子は個人的な贈り物だなんて、一言も……
(言って、いた……?)
そう言えばティアは、いつも皇子からだと言っていた、よう、な……?
「あ、あれって、殿下の妃候補だからという意味だったんじゃ……」
ないかと思っていたのだけど、違ったらしい……ティアの表情は言葉以上に雄弁だった。
「あ、あの……エドとグレンも、同じ意見?」
恐る恐る声をかけてみたけれど、二人共間を置かず静かに頷いた。そこには僅かの戸惑いもなかったから、彼らにもはっきりわかっていたということで……
「えええ……じゃ、私……」
思いっきり好意を受け流していたということになる。え? それって物凄く失礼というか、酷くない? いやいや、はっきり言わない皇子も悪……くはない、かも……
「ど、どうしよう……」
これって私、思いっきり酷くない? いやでも、あの皇子が私に好意なんて持つ理由がわからないんだけど……!
「ちょっと待ってティア。これまでの私たちの間に、好意に繋がるものなんてあったかしら?」
皇子に好かれる理由がわからない。最初っから印象は悪かったはずだ。敵国の王女で側妃腹、見た目も残念だったし、それ以上にサイズ違いのドレスを着こんだ私はきっと頓珍漢に見えただろう。帝国の授業が始まってからも成績は散々だったし、忙しすぎて見た目を構う暇もなかった。お茶会だって真っ当な受け答えが出来た記憶がない……そんな私に好意? 皇子の趣味を疑う。いや、それって私のことなんだけど……それとも皇子って、誰にでも優しくしちゃうタイプとか? そりゃあ、あんなに見目もいいし条件としては最高級レベルだけど……
「どうしたら殿下が私に好意を持つのよ? 敵国の王女よ? 滅んだ王族の残りカスみたいなものよ? アンジェリカみたいに美人でもないし教養もないのに、どうしたら好かれるのよ?」
自分で言っていて悲しくなってきたけれど、それくらい信じられなかった。
「まぁ、ソフィ様ったら。自分を卑下し過ぎですわ」
「そうは言うけど相手は殿下よ。超優良物件よ? 女性なんて選び放題の立場にいるのに……」
顔よし、身分よし、意地悪だけど性格は特別冷酷でも変態でもなく世間的にも許容範囲、いや、十分に上等の類だろう。
「ソフィ様、殿下は今まで他の女性に贈り物なんて、花一輪も贈ったことはありませんわ」
「え?」
皇子が女性に贈り物をしたことがない? でも、エヴェリーナ様とは仲がよかったし、花やお菓子くらいは贈ったことがあったんじゃ……
「……本当に、ないの?」
「はい。私の知る範囲では一度も。ご本人もそう仰っておいでですから間違いはないかと」
「本人が……」
そう言っているのなら間違いはないのだろうけど、やっぱり納得いかない。
「一体何がどうして私なの?」
「そこまでは私も……お気になるなら殿下に直接お尋ねになって下さい」
「直接って……」
こんなこと、聞いていいのだろうか。いや、恥ずかしくて聞けそうもないのだけど。そう言えば……
「ねぇ、ティア」
「どうなさいましたか?」
「その、殿下なんだけど……覚悟しておけって仰っていたのよ。あれって、どういう意味なのかしら……」
「え?」
「……全力でわからせるとも、言っていた気がするわ……」
今になってさっきの会話が思い出されてきた。そう、確かにそう言っていた。
「まぁ、殿下ったら。ソフィ様、それでしたらご心配はいりませんわ。殿下がきっとソフィ様にもわかるように教えて下さるでしょうから」
そう言ってティアがにっこり笑った。その笑顔に妙な圧を感じた気がして、どういう意味だと尋ねることが出来なかった。
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