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雲行きが怪しくなってきた?
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ハンクはダールマイヤー公爵とブランゲ公爵の妹との子だが、ダールマイヤー公爵にはもう一人息子がいた。ハンクより五つ上で異母兄に当たる。彼は侯爵令嬢との間に生まれているので、血統的にも後継者になるのに問題はないが、それに待ったをかけているのがブランゲ公爵家だった。
「ブレンゲ公爵はハンクを後継にするべきだと言っているんだ」
「公爵家にそう言われれば、中々無下にも出来ませんものね」
「そういうこと。ダールマイヤー公爵もハンクも、後継は兄にと思っているらしいが……」
ハンクの兄のレナートは穏やかな気質だが優秀で、今は父から伯爵位を得て順調に領地経営を行っている。目立つような功績はないが、堅実に領地の収益を上げていた。
それでもブランゲ公爵家とハンクの母親は、後継はハンクだと言って憚らない。ダールマイヤー公爵は他家のことには口出し無用と突っぱねているが、やかまし屋のブランゲに手を焼いているらしい。
「お家騒動に巻き込まれるのも面倒だからな。父上はあの二家は除外しているんだ」
ブランゲにも息子が二人いるが、二人とも私たちよりも一回り上だ。次男は未婚だが我が国一の色男と言われていて身持ちも悪く、その様な男を王家に迎え入れることは出来ない。どんな病気を持っているかわからないと、ソフィアも言っていたし。
「こうなると、五大公爵家から婿を迎えるのは難しそうですわね」
「ええ。でも、我がエーデルマン公爵家とザックス公爵家が支持致しますわ。だったら婿を公爵家に限定する必要はないのではありませんか?」
レイニーにそう言われると、確かにそうかもしれない。五大公爵家のうちの三家が支持してくれるなら安泰だ。父の場合は母の実家のリーベルト公爵家一家だけだったし、ディアークもエーデルマン公爵家とザックス公爵家の二家の予定だったのだから。
「そうなると、婿は侯爵家でも構いませんわよね。アリーセ様なら女王としてお一人でお立ちになれますもの」
「まぁ、多分ね」
「だったら、お好きな方をお迎えしてもいいのでは?」
「は?」
ローゼの言葉に思わず固まってしまった。何を言っているのか……
「まぁ、素敵ですわ! 後見としての役目をそれほど求めないのであれば、アリーセ様が望む相手でも問題ありませんものね」
「そうですよ! それにアリーセ様が女王になられるのなら、レイニー様が女性初の宰相におなりになられては?」
「まぁ! 私が?」
「ええ。だってレイニー様が学園でも首席争いをなさっていたのでしょう? しかも次期エーデルマン公爵ですもの。宰相は公爵家から出すのが通例ですから、レイニー様にだって十分資格はおありですわ!
何だか二人が異様に盛り上がっていた。何だろう、この異様な熱は。
「ふふっ! そうしたらディアーク様だけでなくイーゴン様もこき使って差し上げればいいんですわ」
「まぁ、それはいいわね。でも、あまり役に立ちそうにないけれど」
「確かに!」
二人はすっかりその気だった。いや、元よりこの二人は男性顔負けの才女で、しかも行動力も人脈もあるのだ。多分この二人が組めばディアークなんぞ太刀打ち出来ないだろう。彼が今まで上にいられたのは王太子に内定していたからだ。
「さ! アリーセ様! どなたかいいなぁと思われる殿方はいないのですか?」
「い、いや、そういう相手は特には……」
正直言って、そういうことには興味がなかったし、そんな風に思う相手もいなかった。元より王女として政略結婚しか想定していなかったし、結婚とはそういうものだと思っていたのだ。
「まぁ、だったら是非恋をなさって下さいませ」
「そうですね! 女王になるのは大変な重圧と危険がのしかかってきますわ。そんな時はやはり心の拠り所と支えになる方を側に置けば随分変わってきますもの」
「いや、しかしだな……」
「アリーセ様。まずは恋について知って下さい」
「は?」
「お勧めの恋愛小説をお貸ししますわ! アレを呼んで是非予習なさって下さい!」
「まぁ、それはいい考えね。説明するのは難しいけれど、小説ならわかりやすいものね」
何というか、拒否出来る雰囲気ではなかった。結局私はローゼお勧めの小説を目の前に、暫く砂糖菓子のような甘ったるい物語を読まされて、何も食べていないのに胸やけを起こすことになった。
「ブレンゲ公爵はハンクを後継にするべきだと言っているんだ」
「公爵家にそう言われれば、中々無下にも出来ませんものね」
「そういうこと。ダールマイヤー公爵もハンクも、後継は兄にと思っているらしいが……」
ハンクの兄のレナートは穏やかな気質だが優秀で、今は父から伯爵位を得て順調に領地経営を行っている。目立つような功績はないが、堅実に領地の収益を上げていた。
それでもブランゲ公爵家とハンクの母親は、後継はハンクだと言って憚らない。ダールマイヤー公爵は他家のことには口出し無用と突っぱねているが、やかまし屋のブランゲに手を焼いているらしい。
「お家騒動に巻き込まれるのも面倒だからな。父上はあの二家は除外しているんだ」
ブランゲにも息子が二人いるが、二人とも私たちよりも一回り上だ。次男は未婚だが我が国一の色男と言われていて身持ちも悪く、その様な男を王家に迎え入れることは出来ない。どんな病気を持っているかわからないと、ソフィアも言っていたし。
「こうなると、五大公爵家から婿を迎えるのは難しそうですわね」
「ええ。でも、我がエーデルマン公爵家とザックス公爵家が支持致しますわ。だったら婿を公爵家に限定する必要はないのではありませんか?」
レイニーにそう言われると、確かにそうかもしれない。五大公爵家のうちの三家が支持してくれるなら安泰だ。父の場合は母の実家のリーベルト公爵家一家だけだったし、ディアークもエーデルマン公爵家とザックス公爵家の二家の予定だったのだから。
「そうなると、婿は侯爵家でも構いませんわよね。アリーセ様なら女王としてお一人でお立ちになれますもの」
「まぁ、多分ね」
「だったら、お好きな方をお迎えしてもいいのでは?」
「は?」
ローゼの言葉に思わず固まってしまった。何を言っているのか……
「まぁ、素敵ですわ! 後見としての役目をそれほど求めないのであれば、アリーセ様が望む相手でも問題ありませんものね」
「そうですよ! それにアリーセ様が女王になられるのなら、レイニー様が女性初の宰相におなりになられては?」
「まぁ! 私が?」
「ええ。だってレイニー様が学園でも首席争いをなさっていたのでしょう? しかも次期エーデルマン公爵ですもの。宰相は公爵家から出すのが通例ですから、レイニー様にだって十分資格はおありですわ!
何だか二人が異様に盛り上がっていた。何だろう、この異様な熱は。
「ふふっ! そうしたらディアーク様だけでなくイーゴン様もこき使って差し上げればいいんですわ」
「まぁ、それはいいわね。でも、あまり役に立ちそうにないけれど」
「確かに!」
二人はすっかりその気だった。いや、元よりこの二人は男性顔負けの才女で、しかも行動力も人脈もあるのだ。多分この二人が組めばディアークなんぞ太刀打ち出来ないだろう。彼が今まで上にいられたのは王太子に内定していたからだ。
「さ! アリーセ様! どなたかいいなぁと思われる殿方はいないのですか?」
「い、いや、そういう相手は特には……」
正直言って、そういうことには興味がなかったし、そんな風に思う相手もいなかった。元より王女として政略結婚しか想定していなかったし、結婚とはそういうものだと思っていたのだ。
「まぁ、だったら是非恋をなさって下さいませ」
「そうですね! 女王になるのは大変な重圧と危険がのしかかってきますわ。そんな時はやはり心の拠り所と支えになる方を側に置けば随分変わってきますもの」
「いや、しかしだな……」
「アリーセ様。まずは恋について知って下さい」
「は?」
「お勧めの恋愛小説をお貸ししますわ! アレを呼んで是非予習なさって下さい!」
「まぁ、それはいい考えね。説明するのは難しいけれど、小説ならわかりやすいものね」
何というか、拒否出来る雰囲気ではなかった。結局私はローゼお勧めの小説を目の前に、暫く砂糖菓子のような甘ったるい物語を読まされて、何も食べていないのに胸やけを起こすことになった。
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