上 下
39 / 664
第一章 

1-37 両親の友達が私の友達に?!

しおりを挟む
 お母さんは、日々落ち込んでいる私をある場所へと連れ立った。

それは、なんと人間の住んでいる場所だった。

広い草原の中にポツンと建っている家の近くに、お母さんは降りて、私を降ろした。

すると、家の中から数人のひとが現れた。

私は初めて見る人間に驚き、お母さんの足元に隠れた。

お母さんはそんな私を見て、微笑しながらも、警戒する事なく現れた人間と会話し出した。

"お久しぶり。元気にしてた?
あなた方に合わせたい子が居るから連れて来てみたの。
会ってくれるかしら?"

お母さんがそう言うと、人間たちは笑顔で答えた。

「本当に久しぶりだなぁー。ドラゴンの君にとったら数日ぐらいの感覚なんだろうなぁー...。俺たちにとったら、一年振りの再会だなぁー。
元気にしてたぜ。ちょうど、息子夫婦とマゴが来てたところだ。
タイミングが良いなぁー。
で、会わせたいのは...その足元にいる子かい?」

そう言って、柔かに話しかけてくる人。

纏う雰囲気は、怖い感じはしなかった。

それどころか、お父さんや伯父さん達からする雰囲気と同じモノを感じた。

もちろん、その人の側に居る人からもだ。

"ほら、出ておいでなさい。
大丈夫よ。彼らは、人間だけど悪い人間じゃーないわ。
お母さんとお父さんの友達の1人よ。
 だから、安心して。
彼らは、あなたの助けとなってくれるかも知れないから。ねぇ?"

お母さんにそう言われて、私はゆっくりと歩みでた。

お母さんの足元からでると、目の前に居る人間からそれぞれ声があがった。

「凄い!お前さんの子供かい?
そっくりじゃないかぁー?!」

「真っ白なドラゴンの子供だね。
可愛いじゃないかぁー。」

「本当に。"ぬいぐるみ"みたいね。」

「マーマ。ドラゴンしゃん?」

彼らは、身体をかがめてなるべく視線を私に合わせようとしてくれた。

私はお母さんに促されるまま、彼らの元へゆっくりと進んだ。

彼らは、私が動くたびに笑顔を見せてくれた。

そして私は、彼らが手を伸ばせばギリギリ自分に触れられるぐらいの距離まで近づいて止まった。

その位置で。
距離感で、彼らの様子を伺う事にしたのだ。

それを彼らも感じ取ったのか、無理に近づこうとはせずに、じっとその場に留まり私の様子を伺っていた。

「この子は、お前さんの子かい?そっくりだね。
しかし、ドラゴンにしては...翼が小さすぎないか?」

私をじっと見つめていた、年配の男の人がそう、お母さんに向かって話しかけた。

すると、お母さんはドラゴンの姿から彼ら、人間に似せた姿になり私を抱き抱え、彼らの前に歩み寄った。

"そうよ。この子は、私が初めて産んだ女の子よ。今までは、男の子ばかりだったけど。
やっと、女の子が産まれたの。
あー、この子以外にもあと男の子3人産んだけどね。"

お母さんは私を見ながら笑顔で、話している。

"えっ?お母さん?"

私は初めて見るお母さんの姿に驚きが隠せなかった。

"あっ。伝えてなかったわね。私達ドラゴン族。しかも、高位種族になるとこうやって、人型の姿になる事ができるのよ。完全に人型になる事もできるし、今みたいに、半分だけ人型にもなれるのよ。"

平然と答えるお母さん。

もう、何がなんだか分からず、硬直する私。

そんな私達を笑いを堪えながら見守る人間達。

凄い構図だった。

「しかし、いつもならお前さんは産んだ子供を全員連れて来るのに、今回は1人だって珍しいなぁー?なんか訳ありか?」

年配の男の人が、お母さんに笑いを押し殺しながら話しかける。

そんな男の人に、お母さんは苦笑いしながら答えた。

"この子、この通りドラゴンにしては翼が小さいでしょう?だから、普通に飛ぶ事ができないの。
 その代わりなのか、魔力値がえらい事になっていて、この歳で魔法がなんでも使えるのよ。
 そのせいとは言わないんだけど...。
ていうか、ほぼほぼ私が悪いんだけど、同じ年代の仲間...友達がね、出来なくて凹んでいたの。
だから、気分転換も兼ねてこの子を連れて来たのよ。
文句ある?"

お母さんの物言いに、多少驚きつつも、彼らは豪快に笑っていた。

「相変わらず、清々しい物言いだなぁー。そりゃまた大変そうで。
しかし、初めて作る友達が人間な上に、こんなおっさん連中でいいのか?
まぁ~彼奴らにも話したら、喜んて飛んでくるだろうがよ。」

そう話す男の人。

その傍らで、興味津々気にコチラを見る少し年若目の男の人と女の人と、その子供なのだろう。

その3人の視線が、私に集中するのだ。

お母さんは不敵な笑みをこぼしながらも、男の人へ言葉を放った。

"構わんだろう。いずれは、お前達と合わせるつもりだったんだから...。
それに。離れていても、友が居るのといないのでは、心持ちが違うからね。"

そう話すお母さんの言葉に、彼らは頷いていた。

当事者の私だけ、取り残された感じが、げせなかった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

俺を裏切り大切な人を奪った勇者達に復讐するため、俺は魔王の力を取り戻す

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:4,836pt お気に入り:95

チートを貰えなかった落第勇者の帰還〜俺だけ能力引き継いで現代最強〜

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:492

全校転移!異能で異世界を巡る!?

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:120pt お気に入り:886

足音

BL / 完結 24h.ポイント:227pt お気に入り:12

婚約破棄されたけど前世が伝説の魔法使いだったので楽勝です

sai
ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:3,535pt お気に入り:4,189

処理中です...