10 / 219
第一章 運命のはじまりと新たな出会い
1-8 両親の訓練とテスト
しおりを挟む
前日にドラしゃんから貰った小冊子を元にお父さんとお母さんは訓練の日々に突入した。
まずは小冊子の前半部分の[基礎をマスター]する事と[生活魔法の初級]が安定して使えるようにする事を目標となった。
基礎が出来ていないとどうする事もできないのだ。
しかも[生活魔法の初級]は基本中の基本であり、魔法を習い出す10歳児から使える簡単なものだ。
それが使えないと[攻撃系魔法]や[回復系魔法]等は到底習得する事は不可能なのだった。
その日からは朝起きてから3食の食事の時間とお風呂、就寝の時間以外は全て訓練に費やされる事となった。
そのため家事全般と私達兄妹の相手はドラしゃんがメインで行う事となった。
寂しいかと聞かれたら周りが思っている程寂しくはなかった。
ドラしゃんが私達の周りに結界を張ってくれていたので訓練中でも安全にお父さん達の側に居る事ができたのだ。
それに、お父さん達の訓練を見ながら私もお兄ちゃんも真似をして遊んでいた。
そんな私達を見て当初お父さん達は心配したがドラしゃんが
『小さい頃から練習する方が後々楽なんですよ。
特にお嬢様ぐらいの年頃から遊びながら学ぶ方が体にも負担がなくて良いですよ。』
と言うので私達に関してはドラしゃんにお任せという形になった。
特に私達は魔力や魔法と無縁の生活をしていたから少しでも早めに慣れる方が良いのだと言われたらそうするしかなかった。
基本の魔力操作は自分の魔力の性質や魔力値を知る為に必要な事なので私達ぐらいの年代でも特に問題はないそうだ。
しかし、子供の私達よりお父さん達の方が問題だった。
魔力の力加減や練り出す量を間違えてすぐバテてしまうからだ。
それが、大人と子供の違いだとドラしゃんは苦笑いしながらお父さん達に話していたが納得していない様子だった。
(子供の方が大人ぬ比べて無理をしないからバテにくらしい。
大人はすぐ無理するから駄目なんですよって後になって教えたくたっけ。)
魔力操作が上手に出来ないと午後からする魔法の練習の時に困るので、午前中の訓練は休憩を挟みながら繰り返し何回も行なった。
(因みにこの世界の時間の流れは、私達が住んでいた世界と差ほど変わらない為不便はなかったのよね。
ただ、のどかな田舎だったのもありゆっくり時間が過ぎていた感じはしたかなぁー。)
訓練を開始してからお父さん達の食事の量は増えたし夜も死んだ様に熟睡するようになった。
それは、使用した魔力を回復するのに有効な事だとドラしゃんは私達に教えてくれた。
もちろんお父さん達にも伝えていたので遠慮なく食べて寝ていた。
そんなお父さん達の姿を私とお兄ちゃんはひたすら見つめていた。
普段のお父さん達も好きなのに今のお父さん達の姿の方が輝いて見えて益々好きになった。
そして、羨ましくもあった。
特にお兄ちゃんなんかはドラしゃんに自分もしたいと言い出していたのだ。
(あの時、お兄ちゃんを宥めるドラしゃんはお父さん達に魔法を教えるより大変だと嘆いたなぁ~。)
そんな生活を開始してから約1ヶ月が過ぎた頃だった。
訓練前に比べてお父さんとお母さんは見違えるようになっていて、食事の量も安定し夜も普通に眠れる様になっていた。
家事もお父さんとお母さんが簡単な生活魔法を使いながらこなしていた。
しかも、ドラしゃんの手助けも殆どなくしかも違和感を感じる事もなく。
そんな2人の姿をみてドラしゃんはある決心をしたのだ。
その日も最近慣れてきた簡単な生活魔法を使用して夕食の片付けをしていたお父さんとお母さんにドラしゃんからある定案が出された。
『旦那様も奥様も訓練初期の頃より大分魔力の使い方も生活魔法も安定してきましたので明日、一度テストをしましょう。』
ドラしゃんは夕食後いつものようにお兄ちゃんと一緒に絵本を読んでいる私を抱っこしながらお父さん達に伝えた。
「テストですか?」
お父さんとお母さんは互いの顔を見ながらドラしゃんに聞き返したのだ。
『ええ~。テストです。
小冊子に書かれている内容の基礎部分は現在私の助けなくとも出来ています。
しかも生活魔法の初級に関しては問題ないかと思います。
ですので、次のステップに進む前に復習する為に実戦テストを行います。
それを受かる事が出来たら一度ステータスを確認しましょう。』
訓練開始してからドラしゃんはお父さん達にある事を言っていた。
それは、ドラしゃんが良いと言うまでステータスを確認しない事だ。
ステータスを見る事によりより励む人も居れば慢心する人いるからだ。
お父さん達が後者だとは思ってはいないが念の為にそう約束したみたい。
テストの内容は以下の内容となった。
1.自分の魔力を練り出し自分の魔力属性を正確に当てる。
2.生活魔法の初級魔法を3つ用途に合わせ正確に発動させる。
3.現在存在する魔法属性を全て当てた上に自分の魔法属性に合った初級魔法を1つ発動させる。
の3点だった。
お父さん達は初日に自分達のステータスを見てから一切みてない。
その為自分達の魔力属性が何かは全く知らないし、魔力が使えたいので大体そうだろうと検討がつくぐらいだ。
しかし、しっかり自分の[魔力属性]を正確に把握していないと今後修得する予定の[攻撃系魔法]等を訓練する時に困るらしい。
[魔力属性]を正確に把握していると[攻撃系魔法]等を修得する時に便利なのだとドラしゃんは説明する。
何より[魔力属性]と[魔法属性]は似ているよで異なる部分があるからだ。
[魔力属性]は生まれつき決まっている魔力の源の属性の為、生涯増える事はないもの。
[魔法属性]はその人が使用可能な魔法の属性の事で、訓練次第で種類を増やす事は可能なもの。
(つまり、魔力属性は生涯固定されたもので、魔力属性は誰でも訓練次第で修得可能なものという事だ。)
そして、[魔力属性]にあった[魔法属性]の魔法を修得する方が、覚え易い・低燃費・効力が上がる等の特典があるのだった。
今回のテストで1と2は合格可能の自信があった2人だったが...3に関しては自信がなかったみたいで表情が少し暗い。
属性を当てるのは小冊子の中に書いてあったので、それを覚えているので問題ない。
しかし、属性に合わせた初級魔法は1度もした事が無いので発動するのかも分からない。
その事はドラしゃんも知っていた。
知った上でテストの内容に組み込んだのだった。
それは今後の2人の成長に大きく関わる事なのであえて心を鬼にしたのだ。
ドラしゃんは不安そうな顔をする2人を見てアドバイスをした。
『寝る前に再度、私の渡した小冊子を読み返して下さい。
そうすれば明日のテストは必ず合格できます。
"小冊子を読み返して下さい。"
それだけです。
私は、お嬢様達を御風呂に入れて寝かせ付けて参ります。
ご健闘を祈っております。』
そう伝えるとドラしゃんは私とお兄ちゃんを連れて2階に姿を消したのだった。
お父さん達を1階に置いて私とお兄ちゃんとドラしゃんは2階の私達の部屋に来た。
部屋のクローゼットを開けて今日のパジャマを選んでいるドラしゃんに私は声をかけた。
「ドラしゃん、だいじょぶ?」
私は何に対してそう言ったのか分からなかったがそう言わずに居れなかった。
私とお兄ちゃんは不安そうな顔でドラしゃんの返事を待っていた。
ドラしゃんは私達のパジャマを手にして優しく微笑んでいた。
『大丈夫ですよ。お嬢様、坊っちゃま。
旦那様と奥様はもう答えを見つけています。
あとは、自信をつけるだけです。
数年後はお嬢様と坊っちゃまの番ですね。
私はその時の方が不安です。』
そう語るドラしゃんの顔は成長を楽しむ親の顔をしていた気がした。
私とお兄ちゃんはドラしゃんが笑顔だったので安心した。
そしてドラしゃんと一緒にお風呂場へ向かって3人で仲良くお風呂に入った。
最近の楽しみの1つでドラしゃんとのお風呂はとても貴重。
3人で入る時のみドラしゃんは小さなドラゴンの姿になって、お風呂で一緒に遊んでくれるからだ。
それは、3人だけの秘密で大切な宝物の時間。
2階でそんな楽しい思いをしているとは知らず、1階ではお父さんとお母さんがドラしゃんから貰った小冊子の基礎編を読み返していた。
ドラしゃんが珍しく繰り返して言っていたからだろう、両親は小冊子を読見返し文字一つ一つに目を真剣に走らせていた。
すると、2人はある事に気づいた。
それを、確認する為お父さんはお母さんに自分の小冊子をお母さんはお父さんの小冊子を交換して読んでみた。
そして、再度自分の小冊子を読み返してみた。
やっぱりだ!
お父さんと、お母さんは小冊子から顔を上げて見つめ合った。
「解ったか?」
お父さんはお母さんに向かって確認した。
「勿論よ。お父さんこそ解ったの?」
お母さんは笑顔で答え、お父さんはお母さんの問いに勝ち誇った顔で頷く。
2人は心の中でドラしゃんに感謝をした。
本当にドラしゃんには感謝しかなかった。
「「これで、明日のテストは合格だ!」」
2人の顔には自信が漲っていた。
2人が1階で盛り上がっているなか2階ではお風呂で沢山遊んだ私とお兄ちゃんは眠たくなり、半分寝ながらドラしゃんにパジャマに着替えさせて貰っていた。
今日のパジャマはウサギの着ぐるみパジャマ。
私はピンクでお兄ちゃんは白のウサギだった。
それぞれの着替えが終わり私達を抱き抱えて部屋の前で扉を開けようとしたドラしゃんは何かを感じ取り微笑していた。
私は半分閉じかけた目でその姿を見てしまった。
「ドラしゃん、どちたの?」
私は眠たい目を擦りながらドラしゃんに聞くと、ドラしゃんは私を抱き直して小声で答えてくれた。
『明日、楽しみにしていてください。』
そう私に伝えると、部屋の扉を開けて私達をベッドに寝かせてくれた。
そして、私の頭を優しく撫でて眠った事を確認して部屋を後にした。
私は最後のドラしゃんの言葉をうまく聞き取れなかったが、きっといい事だと思い睡魔に身を任せる。
ドラしゃんは私達を寝かしつけると1階に降りて行った。
下ではお父さん達が小冊子を笑顔で読んでいた。
ドラしゃんは先程感じたのが当たったのだろう、2人の姿を嬉しそうにしばらく眺める。
しかし、明日はこれまでの結果を見せて貰わなくてはならないので、楽しそうしている2人には悪いが早めに休ませる為に声をかけた。
『もうそろそろ、身体を休めてはいかがですか?休める事もだいじですよ。』
ドラしゃんの声にお父さん達は驚いた。
まさか、いると思わなかったからだ。
「ドラしゃん!驚いた。リン達の事ありがとう。」
お父さんは声を上擦らせながら返事をし、お母さんも慌てて小冊子から顔を上げた。
『お嬢様達はもうお休みになられました。お2人も早めにお休みされて明日に備えて下さい。』
ドラしゃんは変わらない笑顔で2人を休ませるように促した。
そんなドラしゃんにお父さん達は
「あーもう休ませてもらうよ。ドラしゃん明日は期待してくれ。絶対合格を貰うよ。」
そう自信に漲った顔でお父さんとお母さんはドラしゃんに宣言し2階に向かった。
ドラしゃんは分りましたと伝えて2階に上がる2人を見送った。
2人を見送った後は家の結果の確認をし、1階の戸締りと消灯を済ませて自分も休む為に2階の子供達寝室に向かったのだった。
翌朝、しっかり休息をとったお父さんとお母さんはいつもより早めに起床し朝の支度をしに1階へ向かった。
が、既にドラしゃんと私とお兄ちゃんが起きて朝の支度を3人でしていた。
降りてきたお父さん達の元に私は走っていき「おはよう」と笑顔で駆け寄った私をお父さんは抱き抱えて、"おはよう"と笑顔で答えてくれた。
その横でお母さんも笑顔で"おはよう"と挨拶をしてくれたのだ。
「みんな早いなぁー。」
お父さんは、私を抱き抱えたまま朝食が置かれたテーブルに向かって行った。
お兄ちゃんは、ドラしゃんの手伝いをしながらキッチンからお皿を持って行く。
そんなお兄ちゃんからお母さんはお皿を受け取りテーブルの上に並べていった。
『おはようございます。旦那様、奥様。
本日は、お嬢様と坊っちゃまがえらく早く起きられまして、御二人の為に朝御飯を準備したいと言われましたので一緒に作らせて頂きました。』
朝食のおかずを作りながらドラしゃんが返事をした。
その日の朝食は、私が卵の殻を割ってドラしゃんが焼いた目玉焼きとお兄ちゃんがドラしゃんと一緒に切った野菜を使ったサラダ。
そして、私が選んだ魚をドラしゃんが焼いてお兄ちゃんが盛り付けをした。
とにかく3人で協力して作ったのだった。
お父さんとお母さんはすごく喜んで食べてくれた。
朝食後は、皆んなで家の外に出た。
家の外には、ドラしゃんが私達のために作ってくれた木のゴンドラ風ブランコがある。
私とお兄ちゃんをそのブランコに乗せて周りに結界をドラしゃんは張った。
ブランコで楽しそうに遊ぶ私達を確認後、お父さん達のテストが開始となった。
『では、今からテストを開始します。
準備はよろしいでしょうか?』
ドラしゃんは、お父さんとお母さんに確認を取ると2人は自信満々に大丈夫だと答えた。
2人の顔には迷いはなかった。
それを確認しドラしゃんはテストをはじめた。
まず、問題1.〔自分の魔力を練り出し、自分の魔力属性を正確に当てる〕からだ。
最初に開始したのは、お父さんだった。静かに目を閉じて体の中を流れる魔力を感じ取っていた。
すると、お父さんの体の周りを薄い水の様な膜が覆い出した。足元の地面も少し盛り上がってきた。
それを、ドラしゃんとお母さんは静かに見守る。
お父さんの体を上からは水の幕が、下から地面が包み込もうとした時お父さんは目を開けた。
すると、先程まで覆っていた水も地面も消えて何事もなかったようになっていた。
お父さんは、ニカッと笑みを浮かべドラしゃんに向かって言葉を発した。
「私の魔力属性は水と土だ!」
その答えにドラしゃんは、笑顔で"正解です"と答えた。
その声を聞いてお父さんとお母さんは嬉しそうにハイタッチをしていた。
次は、お母さんの番だ。お父さんと同じように目を閉じて自分の体の中を流れる魔力を感じ取り出した。
お母さんの身体を上半身は光のベールが下半身は火の柱が覆っていた。
そして、完全に身体を覆う前に目を開けた。
「私の魔力属性は、火と光よ。」
その答えに、お父さんの時と同様にドラしゃんは笑顔で"正解です"と答えた。
2人揃って、1問目はクリアしたのだった。
そのまま次の問題に移った。
問題2.〔生活魔法の初級魔法を3つ、用途に合わせ正確に発動させる〕だ。
次は、お母さんから始めた。
ドラしゃんは、最初に半乾きのハンカチを手渡した。
お母さんは手渡されたハンカチを持って呪文を唱えた。
「スーフ」
するとハンカチの周りに風が吹いた。
風がやむとドラしゃんにハンカチを手渡す。
ドラしゃんは渡されたハンカチを確認すると半乾きのハンカチは乾燥していた。
『はい。合格です。あと、2つ続けていきますよ。』
そうドラしゃんは言うとお母さんの手元を暗くした。
お母さんは動じる事なく「トーチ」と呪文をいい手元を明るく灯した。これも合格した。
最後の3つ目は一部欠けた食器をお母さんに手渡した。
お母さんは食器を両手で持ち
「ラフス」
と唱えた。
欠けた食器は見事に直った。
ドラしゃんは笑顔でお母さんに"全て合格です"と伝えた。
お母さんはなんなく問題2をクリアした。
次は、お父さんの番だ。
お父さんは、3つ一気にする事にした。
それはお父さんがドラしゃんに言ったからだ。
ドラしゃんは特に異議を唱える事なく承諾した。
お父さんの前にドラしゃんは木の机を用意した。
木の机の上には物が入った小さめの麻袋が一つと、小石が一つ、一部が欠けたコップが置いてあった。
それを見てお父さんは迷う事なくそれぞれに呪文を唱えた。
「ウィーン」、「ホート」、「ラフス」
どれも問題なく発動し麻袋は浮き机から地面へ。小石は砕けて砂に。欠けたコップは元の姿に戻ったのだった。
お父さんはドラしゃんを見た。
ドラしゃんは笑顔て、"合格です"と伝えた。
ここまでは2人と合格して、テストはラストとなった。
最後の問題3.〔現在存在する魔法属性を全て当てた上に、自分の魔法属性に合った初級魔法を1つ発動させる〕だ。
これは2人同時に行った。
2人はドラしゃんに、魔法属性を答えた。
「「火、水、風、土、雷、氷、光、闇、毒、麻痺の8種類です。」」
勿論正解だった。
しかし、ここからが問題だった。
このテストの本来の目的でもある、自分の魔法属性にあった初級魔法を1つ発動させるだった。
でも、2人の顔は曇る事はなかった。
ドラしゃんは、2人に声を掛けた。
『では、ここからが本題です。お2人もお分かりだと思いますが、覚悟はよろしくでしょうか?』
ドラしゃんの問い掛けに2人は自信に満ちた顔で頷いて答えた。
『では、同時にで大丈夫です。魔法を発動させて下さい。
発動出来ましたら合格です。』
ドラしゃんの言葉に2人は一度、目を閉じた。自分の中の魔力を感じ取り出した。
その時、2人の中に昨晩の事が脳裏に蘇った。
ドラしゃんに言われて小冊子を読み返した時だった。
お父さんが、【攻撃系魔法】の初級編を読み直していたら、ある一文字が光、浮かび上がったのだった。
そして、その文字を、示す映像が頭の中にリアルに流れたのだった。
それは、お母さんも同じ事だった。
その為、一度お互いの小冊子を交換して試したが同じ現象は起きなかったのだ。
お陰で、2人は確信が持てたのだった。
問題3の最初の魔法はコレだと。
そして、初めからドラしゃんは教えてくれていたのだ。"イメージが大事"と。
2人は魔力を感じ取った。
両手を前に突き出し、昨日頭の中に浮かんだ文字にイメージを重ねて呪文を唱えた。
「ウォー」
「ラー」
すると、お父さんの手の前には火の玉が、お母さんの手の前には、光の玉がでてきたのだった。
ドラしゃんは、凄く嬉しそうだった。
私とお兄ちゃんは、ブランコの中からその光景を見ていた。
以前、テレビの中で私達の大好きな魔法使いが敵を倒すときにしていたのと一緒だった。
私もお兄ちゃんも目を輝かせていつのまにか、大声を出していた。
「「すごい!まほうつかいだ!」」
その答えにお父さんとお母さんは驚き、火の玉と光の玉は消えてしまった。
そして、お父さんとお母さんはその場に座り込んだのだった。
私とお兄ちゃんは、自分達のせいでお父さん達に何か起こったのだと思い、ブランコこら飛び出してお父さん達の元に駆け込んだのだった。
ドラしゃんも私達に続いてお父さん達の側に来た。
お父さんとお母さんは、少し疲れた顔をしていた。
初めて、自分の属性の攻撃系魔法の初級を使った為、MPを思ったりよ使い過ぎて疲れがきたのだった。
お父さんと、お母さんは駆け寄った私達を抱き抱えてドラしゃんを見つめた。
「あのーう。結果はどうですか?」
お父さん達と一緒に私達もドラしゃんを見た。
ドラしゃんは、屈んで私達と視線を合わせた。
『魔力量をもう少し抑えて、発動出来ましたら体に負担なく発動する事ができます。』
ドラしゃんの声に、お父さん達の顔は曇った。
『なぜそんな顔をされるのですか?
初めてにしては、上出来ですよ。
しっかり、小冊子も確認させたようですし。今回のテストは全て合格です。』
ドラしゃんは笑顔で、合格を言い渡したのだった。
私達家族は、"やった~!"と大声を出して喜び合った。
『なぜ、最後の魔法はアレを選ばれたのですか?』
ドラしゃんは、喜び合っているお父さんに質問した。
その時のドラしゃんの顔は、返ってくる言葉が分かってるように見えた。
「ドラしゃんのアドバイスが役だったんだ。」
お父さんは、お兄ちゃんを抱き抱えながら答えた。
「ドラしゃんが、"小冊子をただ読み返すだけです"って言ってくれたからその通りにしたのよ。」
今度はお母さんか、私を抱き抱えてドラしゃんに答えた。
しかし、それだけではないのでは?というドラしゃんの視線にお父さんとお母さんは言葉を続けたのだった。
「読み返していたら、文字が光ったんだ。そして魔法が浮かび上がったんだよ。」
「私もそうなの。そして、思い出したの。」
『何をですか?』
ドラしゃんが静かに確認した。
「出会った初日からずっと私達に言ってくれていた言葉よ。」
「「魔力を使うにはイメージが大事ですよ。」」
「その言葉で確信したんだ。魔力と属性を理解できたら後はイメージだけだって。」
お父さん達の言葉にドラしゃんは嬉しそうだった。
『全て御理解して頂けて何よりです。魔力があっても、イメージする事が出来なければ魔力も魔法も使えません。
だからといって、イメージが出来ていても、それを発動させる魔力がなくては駄目です。
魔力とイメージがバランス良く合わさって初めて発動します。
それは、これから使用していく魔法全てに共通する事です。
私の手引書に記載している魔法はあくまでも、基本魔法です。
それを応用してオリジナル魔法も編み出す事が可能です。』
ここまで聞いてドラしゃんの意図がなんとなく読めてきた。
お父さんとお母さんは私達を抱く力を少し強めた。
『つまり魔力量が多くしかも多感な時期のお2人は特に色々と気をつけなければなりません。
その時に、親であるお二人の導きが重要となります。
今後は、特に訓練は行いません。日々の生活の中で活用して慣れていって下さい。
間違った事や危険が及びましたら私が対処しますので安心して頑張っていきましょう。』
ドラしゃんは話を終えるとお父さんとお母さんの肩にそれぞれ手を置いた。
ドラしゃんの話を聞いていた、2人の目から大粒の涙が流れていた。
しかし、それは悲しみでも悔しみの涙でもなかった。
歓喜の涙だった。
ドラしゃんから、この世界でも生活が出来ることを認められた、第一歩だったからだ。
お父さんとお母さんは、私達を抱きしめたままドラしゃんに抱きついたのだった。
ドラしゃんは、咄嗟のことだったのでバランスを崩しそのまま地面に倒れ込んだのだった。
私とお兄ちゃんはお父さんとお母さんそしてドラしゃんの間に挟まれたのだった。
少し苦しかったが何処か安心するものがあった。
まずは小冊子の前半部分の[基礎をマスター]する事と[生活魔法の初級]が安定して使えるようにする事を目標となった。
基礎が出来ていないとどうする事もできないのだ。
しかも[生活魔法の初級]は基本中の基本であり、魔法を習い出す10歳児から使える簡単なものだ。
それが使えないと[攻撃系魔法]や[回復系魔法]等は到底習得する事は不可能なのだった。
その日からは朝起きてから3食の食事の時間とお風呂、就寝の時間以外は全て訓練に費やされる事となった。
そのため家事全般と私達兄妹の相手はドラしゃんがメインで行う事となった。
寂しいかと聞かれたら周りが思っている程寂しくはなかった。
ドラしゃんが私達の周りに結界を張ってくれていたので訓練中でも安全にお父さん達の側に居る事ができたのだ。
それに、お父さん達の訓練を見ながら私もお兄ちゃんも真似をして遊んでいた。
そんな私達を見て当初お父さん達は心配したがドラしゃんが
『小さい頃から練習する方が後々楽なんですよ。
特にお嬢様ぐらいの年頃から遊びながら学ぶ方が体にも負担がなくて良いですよ。』
と言うので私達に関してはドラしゃんにお任せという形になった。
特に私達は魔力や魔法と無縁の生活をしていたから少しでも早めに慣れる方が良いのだと言われたらそうするしかなかった。
基本の魔力操作は自分の魔力の性質や魔力値を知る為に必要な事なので私達ぐらいの年代でも特に問題はないそうだ。
しかし、子供の私達よりお父さん達の方が問題だった。
魔力の力加減や練り出す量を間違えてすぐバテてしまうからだ。
それが、大人と子供の違いだとドラしゃんは苦笑いしながらお父さん達に話していたが納得していない様子だった。
(子供の方が大人ぬ比べて無理をしないからバテにくらしい。
大人はすぐ無理するから駄目なんですよって後になって教えたくたっけ。)
魔力操作が上手に出来ないと午後からする魔法の練習の時に困るので、午前中の訓練は休憩を挟みながら繰り返し何回も行なった。
(因みにこの世界の時間の流れは、私達が住んでいた世界と差ほど変わらない為不便はなかったのよね。
ただ、のどかな田舎だったのもありゆっくり時間が過ぎていた感じはしたかなぁー。)
訓練を開始してからお父さん達の食事の量は増えたし夜も死んだ様に熟睡するようになった。
それは、使用した魔力を回復するのに有効な事だとドラしゃんは私達に教えてくれた。
もちろんお父さん達にも伝えていたので遠慮なく食べて寝ていた。
そんなお父さん達の姿を私とお兄ちゃんはひたすら見つめていた。
普段のお父さん達も好きなのに今のお父さん達の姿の方が輝いて見えて益々好きになった。
そして、羨ましくもあった。
特にお兄ちゃんなんかはドラしゃんに自分もしたいと言い出していたのだ。
(あの時、お兄ちゃんを宥めるドラしゃんはお父さん達に魔法を教えるより大変だと嘆いたなぁ~。)
そんな生活を開始してから約1ヶ月が過ぎた頃だった。
訓練前に比べてお父さんとお母さんは見違えるようになっていて、食事の量も安定し夜も普通に眠れる様になっていた。
家事もお父さんとお母さんが簡単な生活魔法を使いながらこなしていた。
しかも、ドラしゃんの手助けも殆どなくしかも違和感を感じる事もなく。
そんな2人の姿をみてドラしゃんはある決心をしたのだ。
その日も最近慣れてきた簡単な生活魔法を使用して夕食の片付けをしていたお父さんとお母さんにドラしゃんからある定案が出された。
『旦那様も奥様も訓練初期の頃より大分魔力の使い方も生活魔法も安定してきましたので明日、一度テストをしましょう。』
ドラしゃんは夕食後いつものようにお兄ちゃんと一緒に絵本を読んでいる私を抱っこしながらお父さん達に伝えた。
「テストですか?」
お父さんとお母さんは互いの顔を見ながらドラしゃんに聞き返したのだ。
『ええ~。テストです。
小冊子に書かれている内容の基礎部分は現在私の助けなくとも出来ています。
しかも生活魔法の初級に関しては問題ないかと思います。
ですので、次のステップに進む前に復習する為に実戦テストを行います。
それを受かる事が出来たら一度ステータスを確認しましょう。』
訓練開始してからドラしゃんはお父さん達にある事を言っていた。
それは、ドラしゃんが良いと言うまでステータスを確認しない事だ。
ステータスを見る事によりより励む人も居れば慢心する人いるからだ。
お父さん達が後者だとは思ってはいないが念の為にそう約束したみたい。
テストの内容は以下の内容となった。
1.自分の魔力を練り出し自分の魔力属性を正確に当てる。
2.生活魔法の初級魔法を3つ用途に合わせ正確に発動させる。
3.現在存在する魔法属性を全て当てた上に自分の魔法属性に合った初級魔法を1つ発動させる。
の3点だった。
お父さん達は初日に自分達のステータスを見てから一切みてない。
その為自分達の魔力属性が何かは全く知らないし、魔力が使えたいので大体そうだろうと検討がつくぐらいだ。
しかし、しっかり自分の[魔力属性]を正確に把握していないと今後修得する予定の[攻撃系魔法]等を訓練する時に困るらしい。
[魔力属性]を正確に把握していると[攻撃系魔法]等を修得する時に便利なのだとドラしゃんは説明する。
何より[魔力属性]と[魔法属性]は似ているよで異なる部分があるからだ。
[魔力属性]は生まれつき決まっている魔力の源の属性の為、生涯増える事はないもの。
[魔法属性]はその人が使用可能な魔法の属性の事で、訓練次第で種類を増やす事は可能なもの。
(つまり、魔力属性は生涯固定されたもので、魔力属性は誰でも訓練次第で修得可能なものという事だ。)
そして、[魔力属性]にあった[魔法属性]の魔法を修得する方が、覚え易い・低燃費・効力が上がる等の特典があるのだった。
今回のテストで1と2は合格可能の自信があった2人だったが...3に関しては自信がなかったみたいで表情が少し暗い。
属性を当てるのは小冊子の中に書いてあったので、それを覚えているので問題ない。
しかし、属性に合わせた初級魔法は1度もした事が無いので発動するのかも分からない。
その事はドラしゃんも知っていた。
知った上でテストの内容に組み込んだのだった。
それは今後の2人の成長に大きく関わる事なのであえて心を鬼にしたのだ。
ドラしゃんは不安そうな顔をする2人を見てアドバイスをした。
『寝る前に再度、私の渡した小冊子を読み返して下さい。
そうすれば明日のテストは必ず合格できます。
"小冊子を読み返して下さい。"
それだけです。
私は、お嬢様達を御風呂に入れて寝かせ付けて参ります。
ご健闘を祈っております。』
そう伝えるとドラしゃんは私とお兄ちゃんを連れて2階に姿を消したのだった。
お父さん達を1階に置いて私とお兄ちゃんとドラしゃんは2階の私達の部屋に来た。
部屋のクローゼットを開けて今日のパジャマを選んでいるドラしゃんに私は声をかけた。
「ドラしゃん、だいじょぶ?」
私は何に対してそう言ったのか分からなかったがそう言わずに居れなかった。
私とお兄ちゃんは不安そうな顔でドラしゃんの返事を待っていた。
ドラしゃんは私達のパジャマを手にして優しく微笑んでいた。
『大丈夫ですよ。お嬢様、坊っちゃま。
旦那様と奥様はもう答えを見つけています。
あとは、自信をつけるだけです。
数年後はお嬢様と坊っちゃまの番ですね。
私はその時の方が不安です。』
そう語るドラしゃんの顔は成長を楽しむ親の顔をしていた気がした。
私とお兄ちゃんはドラしゃんが笑顔だったので安心した。
そしてドラしゃんと一緒にお風呂場へ向かって3人で仲良くお風呂に入った。
最近の楽しみの1つでドラしゃんとのお風呂はとても貴重。
3人で入る時のみドラしゃんは小さなドラゴンの姿になって、お風呂で一緒に遊んでくれるからだ。
それは、3人だけの秘密で大切な宝物の時間。
2階でそんな楽しい思いをしているとは知らず、1階ではお父さんとお母さんがドラしゃんから貰った小冊子の基礎編を読み返していた。
ドラしゃんが珍しく繰り返して言っていたからだろう、両親は小冊子を読見返し文字一つ一つに目を真剣に走らせていた。
すると、2人はある事に気づいた。
それを、確認する為お父さんはお母さんに自分の小冊子をお母さんはお父さんの小冊子を交換して読んでみた。
そして、再度自分の小冊子を読み返してみた。
やっぱりだ!
お父さんと、お母さんは小冊子から顔を上げて見つめ合った。
「解ったか?」
お父さんはお母さんに向かって確認した。
「勿論よ。お父さんこそ解ったの?」
お母さんは笑顔で答え、お父さんはお母さんの問いに勝ち誇った顔で頷く。
2人は心の中でドラしゃんに感謝をした。
本当にドラしゃんには感謝しかなかった。
「「これで、明日のテストは合格だ!」」
2人の顔には自信が漲っていた。
2人が1階で盛り上がっているなか2階ではお風呂で沢山遊んだ私とお兄ちゃんは眠たくなり、半分寝ながらドラしゃんにパジャマに着替えさせて貰っていた。
今日のパジャマはウサギの着ぐるみパジャマ。
私はピンクでお兄ちゃんは白のウサギだった。
それぞれの着替えが終わり私達を抱き抱えて部屋の前で扉を開けようとしたドラしゃんは何かを感じ取り微笑していた。
私は半分閉じかけた目でその姿を見てしまった。
「ドラしゃん、どちたの?」
私は眠たい目を擦りながらドラしゃんに聞くと、ドラしゃんは私を抱き直して小声で答えてくれた。
『明日、楽しみにしていてください。』
そう私に伝えると、部屋の扉を開けて私達をベッドに寝かせてくれた。
そして、私の頭を優しく撫でて眠った事を確認して部屋を後にした。
私は最後のドラしゃんの言葉をうまく聞き取れなかったが、きっといい事だと思い睡魔に身を任せる。
ドラしゃんは私達を寝かしつけると1階に降りて行った。
下ではお父さん達が小冊子を笑顔で読んでいた。
ドラしゃんは先程感じたのが当たったのだろう、2人の姿を嬉しそうにしばらく眺める。
しかし、明日はこれまでの結果を見せて貰わなくてはならないので、楽しそうしている2人には悪いが早めに休ませる為に声をかけた。
『もうそろそろ、身体を休めてはいかがですか?休める事もだいじですよ。』
ドラしゃんの声にお父さん達は驚いた。
まさか、いると思わなかったからだ。
「ドラしゃん!驚いた。リン達の事ありがとう。」
お父さんは声を上擦らせながら返事をし、お母さんも慌てて小冊子から顔を上げた。
『お嬢様達はもうお休みになられました。お2人も早めにお休みされて明日に備えて下さい。』
ドラしゃんは変わらない笑顔で2人を休ませるように促した。
そんなドラしゃんにお父さん達は
「あーもう休ませてもらうよ。ドラしゃん明日は期待してくれ。絶対合格を貰うよ。」
そう自信に漲った顔でお父さんとお母さんはドラしゃんに宣言し2階に向かった。
ドラしゃんは分りましたと伝えて2階に上がる2人を見送った。
2人を見送った後は家の結果の確認をし、1階の戸締りと消灯を済ませて自分も休む為に2階の子供達寝室に向かったのだった。
翌朝、しっかり休息をとったお父さんとお母さんはいつもより早めに起床し朝の支度をしに1階へ向かった。
が、既にドラしゃんと私とお兄ちゃんが起きて朝の支度を3人でしていた。
降りてきたお父さん達の元に私は走っていき「おはよう」と笑顔で駆け寄った私をお父さんは抱き抱えて、"おはよう"と笑顔で答えてくれた。
その横でお母さんも笑顔で"おはよう"と挨拶をしてくれたのだ。
「みんな早いなぁー。」
お父さんは、私を抱き抱えたまま朝食が置かれたテーブルに向かって行った。
お兄ちゃんは、ドラしゃんの手伝いをしながらキッチンからお皿を持って行く。
そんなお兄ちゃんからお母さんはお皿を受け取りテーブルの上に並べていった。
『おはようございます。旦那様、奥様。
本日は、お嬢様と坊っちゃまがえらく早く起きられまして、御二人の為に朝御飯を準備したいと言われましたので一緒に作らせて頂きました。』
朝食のおかずを作りながらドラしゃんが返事をした。
その日の朝食は、私が卵の殻を割ってドラしゃんが焼いた目玉焼きとお兄ちゃんがドラしゃんと一緒に切った野菜を使ったサラダ。
そして、私が選んだ魚をドラしゃんが焼いてお兄ちゃんが盛り付けをした。
とにかく3人で協力して作ったのだった。
お父さんとお母さんはすごく喜んで食べてくれた。
朝食後は、皆んなで家の外に出た。
家の外には、ドラしゃんが私達のために作ってくれた木のゴンドラ風ブランコがある。
私とお兄ちゃんをそのブランコに乗せて周りに結界をドラしゃんは張った。
ブランコで楽しそうに遊ぶ私達を確認後、お父さん達のテストが開始となった。
『では、今からテストを開始します。
準備はよろしいでしょうか?』
ドラしゃんは、お父さんとお母さんに確認を取ると2人は自信満々に大丈夫だと答えた。
2人の顔には迷いはなかった。
それを確認しドラしゃんはテストをはじめた。
まず、問題1.〔自分の魔力を練り出し、自分の魔力属性を正確に当てる〕からだ。
最初に開始したのは、お父さんだった。静かに目を閉じて体の中を流れる魔力を感じ取っていた。
すると、お父さんの体の周りを薄い水の様な膜が覆い出した。足元の地面も少し盛り上がってきた。
それを、ドラしゃんとお母さんは静かに見守る。
お父さんの体を上からは水の幕が、下から地面が包み込もうとした時お父さんは目を開けた。
すると、先程まで覆っていた水も地面も消えて何事もなかったようになっていた。
お父さんは、ニカッと笑みを浮かべドラしゃんに向かって言葉を発した。
「私の魔力属性は水と土だ!」
その答えにドラしゃんは、笑顔で"正解です"と答えた。
その声を聞いてお父さんとお母さんは嬉しそうにハイタッチをしていた。
次は、お母さんの番だ。お父さんと同じように目を閉じて自分の体の中を流れる魔力を感じ取り出した。
お母さんの身体を上半身は光のベールが下半身は火の柱が覆っていた。
そして、完全に身体を覆う前に目を開けた。
「私の魔力属性は、火と光よ。」
その答えに、お父さんの時と同様にドラしゃんは笑顔で"正解です"と答えた。
2人揃って、1問目はクリアしたのだった。
そのまま次の問題に移った。
問題2.〔生活魔法の初級魔法を3つ、用途に合わせ正確に発動させる〕だ。
次は、お母さんから始めた。
ドラしゃんは、最初に半乾きのハンカチを手渡した。
お母さんは手渡されたハンカチを持って呪文を唱えた。
「スーフ」
するとハンカチの周りに風が吹いた。
風がやむとドラしゃんにハンカチを手渡す。
ドラしゃんは渡されたハンカチを確認すると半乾きのハンカチは乾燥していた。
『はい。合格です。あと、2つ続けていきますよ。』
そうドラしゃんは言うとお母さんの手元を暗くした。
お母さんは動じる事なく「トーチ」と呪文をいい手元を明るく灯した。これも合格した。
最後の3つ目は一部欠けた食器をお母さんに手渡した。
お母さんは食器を両手で持ち
「ラフス」
と唱えた。
欠けた食器は見事に直った。
ドラしゃんは笑顔でお母さんに"全て合格です"と伝えた。
お母さんはなんなく問題2をクリアした。
次は、お父さんの番だ。
お父さんは、3つ一気にする事にした。
それはお父さんがドラしゃんに言ったからだ。
ドラしゃんは特に異議を唱える事なく承諾した。
お父さんの前にドラしゃんは木の机を用意した。
木の机の上には物が入った小さめの麻袋が一つと、小石が一つ、一部が欠けたコップが置いてあった。
それを見てお父さんは迷う事なくそれぞれに呪文を唱えた。
「ウィーン」、「ホート」、「ラフス」
どれも問題なく発動し麻袋は浮き机から地面へ。小石は砕けて砂に。欠けたコップは元の姿に戻ったのだった。
お父さんはドラしゃんを見た。
ドラしゃんは笑顔て、"合格です"と伝えた。
ここまでは2人と合格して、テストはラストとなった。
最後の問題3.〔現在存在する魔法属性を全て当てた上に、自分の魔法属性に合った初級魔法を1つ発動させる〕だ。
これは2人同時に行った。
2人はドラしゃんに、魔法属性を答えた。
「「火、水、風、土、雷、氷、光、闇、毒、麻痺の8種類です。」」
勿論正解だった。
しかし、ここからが問題だった。
このテストの本来の目的でもある、自分の魔法属性にあった初級魔法を1つ発動させるだった。
でも、2人の顔は曇る事はなかった。
ドラしゃんは、2人に声を掛けた。
『では、ここからが本題です。お2人もお分かりだと思いますが、覚悟はよろしくでしょうか?』
ドラしゃんの問い掛けに2人は自信に満ちた顔で頷いて答えた。
『では、同時にで大丈夫です。魔法を発動させて下さい。
発動出来ましたら合格です。』
ドラしゃんの言葉に2人は一度、目を閉じた。自分の中の魔力を感じ取り出した。
その時、2人の中に昨晩の事が脳裏に蘇った。
ドラしゃんに言われて小冊子を読み返した時だった。
お父さんが、【攻撃系魔法】の初級編を読み直していたら、ある一文字が光、浮かび上がったのだった。
そして、その文字を、示す映像が頭の中にリアルに流れたのだった。
それは、お母さんも同じ事だった。
その為、一度お互いの小冊子を交換して試したが同じ現象は起きなかったのだ。
お陰で、2人は確信が持てたのだった。
問題3の最初の魔法はコレだと。
そして、初めからドラしゃんは教えてくれていたのだ。"イメージが大事"と。
2人は魔力を感じ取った。
両手を前に突き出し、昨日頭の中に浮かんだ文字にイメージを重ねて呪文を唱えた。
「ウォー」
「ラー」
すると、お父さんの手の前には火の玉が、お母さんの手の前には、光の玉がでてきたのだった。
ドラしゃんは、凄く嬉しそうだった。
私とお兄ちゃんは、ブランコの中からその光景を見ていた。
以前、テレビの中で私達の大好きな魔法使いが敵を倒すときにしていたのと一緒だった。
私もお兄ちゃんも目を輝かせていつのまにか、大声を出していた。
「「すごい!まほうつかいだ!」」
その答えにお父さんとお母さんは驚き、火の玉と光の玉は消えてしまった。
そして、お父さんとお母さんはその場に座り込んだのだった。
私とお兄ちゃんは、自分達のせいでお父さん達に何か起こったのだと思い、ブランコこら飛び出してお父さん達の元に駆け込んだのだった。
ドラしゃんも私達に続いてお父さん達の側に来た。
お父さんとお母さんは、少し疲れた顔をしていた。
初めて、自分の属性の攻撃系魔法の初級を使った為、MPを思ったりよ使い過ぎて疲れがきたのだった。
お父さんと、お母さんは駆け寄った私達を抱き抱えてドラしゃんを見つめた。
「あのーう。結果はどうですか?」
お父さん達と一緒に私達もドラしゃんを見た。
ドラしゃんは、屈んで私達と視線を合わせた。
『魔力量をもう少し抑えて、発動出来ましたら体に負担なく発動する事ができます。』
ドラしゃんの声に、お父さん達の顔は曇った。
『なぜそんな顔をされるのですか?
初めてにしては、上出来ですよ。
しっかり、小冊子も確認させたようですし。今回のテストは全て合格です。』
ドラしゃんは笑顔で、合格を言い渡したのだった。
私達家族は、"やった~!"と大声を出して喜び合った。
『なぜ、最後の魔法はアレを選ばれたのですか?』
ドラしゃんは、喜び合っているお父さんに質問した。
その時のドラしゃんの顔は、返ってくる言葉が分かってるように見えた。
「ドラしゃんのアドバイスが役だったんだ。」
お父さんは、お兄ちゃんを抱き抱えながら答えた。
「ドラしゃんが、"小冊子をただ読み返すだけです"って言ってくれたからその通りにしたのよ。」
今度はお母さんか、私を抱き抱えてドラしゃんに答えた。
しかし、それだけではないのでは?というドラしゃんの視線にお父さんとお母さんは言葉を続けたのだった。
「読み返していたら、文字が光ったんだ。そして魔法が浮かび上がったんだよ。」
「私もそうなの。そして、思い出したの。」
『何をですか?』
ドラしゃんが静かに確認した。
「出会った初日からずっと私達に言ってくれていた言葉よ。」
「「魔力を使うにはイメージが大事ですよ。」」
「その言葉で確信したんだ。魔力と属性を理解できたら後はイメージだけだって。」
お父さん達の言葉にドラしゃんは嬉しそうだった。
『全て御理解して頂けて何よりです。魔力があっても、イメージする事が出来なければ魔力も魔法も使えません。
だからといって、イメージが出来ていても、それを発動させる魔力がなくては駄目です。
魔力とイメージがバランス良く合わさって初めて発動します。
それは、これから使用していく魔法全てに共通する事です。
私の手引書に記載している魔法はあくまでも、基本魔法です。
それを応用してオリジナル魔法も編み出す事が可能です。』
ここまで聞いてドラしゃんの意図がなんとなく読めてきた。
お父さんとお母さんは私達を抱く力を少し強めた。
『つまり魔力量が多くしかも多感な時期のお2人は特に色々と気をつけなければなりません。
その時に、親であるお二人の導きが重要となります。
今後は、特に訓練は行いません。日々の生活の中で活用して慣れていって下さい。
間違った事や危険が及びましたら私が対処しますので安心して頑張っていきましょう。』
ドラしゃんは話を終えるとお父さんとお母さんの肩にそれぞれ手を置いた。
ドラしゃんの話を聞いていた、2人の目から大粒の涙が流れていた。
しかし、それは悲しみでも悔しみの涙でもなかった。
歓喜の涙だった。
ドラしゃんから、この世界でも生活が出来ることを認められた、第一歩だったからだ。
お父さんとお母さんは、私達を抱きしめたままドラしゃんに抱きついたのだった。
ドラしゃんは、咄嗟のことだったのでバランスを崩しそのまま地面に倒れ込んだのだった。
私とお兄ちゃんはお父さんとお母さんそしてドラしゃんの間に挟まれたのだった。
少し苦しかったが何処か安心するものがあった。
63
あなたにおすすめの小説
万物争覇のコンバート 〜回帰後の人生をシステムでやり直す〜
黒城白爵
ファンタジー
異次元から現れたモンスターが地球に侵攻してくるようになって早数十年。
魔力に目覚めた人類である覚醒者とモンスターの戦いによって、人類の生息圏は年々減少していた。
そんな中、瀕死の重体を負い、今にもモンスターに殺されようとしていた外神クロヤは、これまでの人生を悔いていた。
自らが持つ異能の真価を知るのが遅かったこと、異能を積極的に使おうとしなかったこと……そして、一部の高位覚醒者達の横暴を野放しにしてしまったことを。
後悔を胸に秘めたまま、モンスターの攻撃によってクロヤは死んだ。
そのはずだったが、目を覚ますとクロヤは自分が覚醒者となった日に戻ってきていた。
自らの異能が構築した新たな力〈システム〉と共に……。
異世界へ行って帰って来た
バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。
そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。
氷河期世代のおじさん異世界に降り立つ!
本条蒼依
ファンタジー
氷河期世代の大野将臣(おおのまさおみ)は昭和から令和の時代を細々と生きていた。しかし、工場でいつも一人残業を頑張っていたがとうとう過労死でこの世を去る。
死んだ大野将臣は、真っ白な空間を彷徨い神様と会い、その神様の世界に誘われ色々なチート能力を貰い異世界に降り立つ。
大野将臣は異世界シンアースで将臣の将の字を取りショウと名乗る。そして、その能力の錬金術を使い今度の人生は組織や権力者の言いなりにならず、ある時は権力者に立ち向かい、又ある時は闇ギルド五竜(ウーロン)に立ち向かい、そして、神様が護衛としてつけてくれたホムンクルスを最強の戦士に成長させ、昭和の堅物オジサンが自分の人生を楽しむ物語。
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
若返ったオバさんは異世界でもうどん職人になりました
mabu
ファンタジー
聖女召喚に巻き込まれた普通のオバさんが無能なスキルと判断され追放されるが国から貰ったお金と隠されたスキルでお店を開き気ままにのんびりお気楽生活をしていくお話。
なるべく1日1話進めていたのですが仕事で不規則な時間になったり投稿も不規則になり週1や月1になるかもしれません。
不定期投稿になりますが宜しくお願いします🙇
感想、ご指摘もありがとうございます。
なるべく修正など対応していきたいと思っていますが皆様の広い心でスルーして頂きたくお願い致します。
読み進めて不快になる場合は履歴削除をして頂けると有り難いです。
お返事は何方様に対しても控えさせて頂きますのでご了承下さいます様、お願い致します。
優の異世界ごはん日記
風待 結
ファンタジー
月森優はちょっと料理が得意な普通の高校生。
ある日、帰り道で謎の光に包まれて見知らぬ森に転移してしまう。
未知の世界で飢えと恐怖に直面した優は、弓使いの少女・リナと出会う。
彼女の導きで村へ向かう道中、優は「料理のスキル」がこの世界でも通用すると気づく。
モンスターの肉や珍しい食材を使い、異世界で新たな居場所を作る冒険が始まる。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ
天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。
ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。
そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。
よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。
そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。
こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる