異世界で家族と新たな生活?!〜ドラゴンの無敵執事も加わり、ニューライフを楽しみます〜

藤*鳳

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第二章 歩み〜生活基盤を整えましょう〜

2-21 新しい石窯で事件が?!

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 石窯の完成を喜んでいる私達の元に満面の笑顔を浮かべたお父さんとあ母さんがやって来る。
そして側にいるドムじぃーちゃんに確認をする。

「ドムじぃーちゃん。もう使えますか?」

その言葉にドムじぃーちゃんは驚きながらも答える。

「おう。一度火をさしたら使えるぞ。なんじゃい?!もう使う気か?!」

ドムじぃーちゃんの返事を聞いてお母さんは頷きながらお父さんに何かを伝えて家に戻って行った。
その姿をみんなで不思議そうに見つめる。

お父さんはドムじぃーちゃんに石窯に火を入れるようにお願いする。
お父さんに頼まれてドムじぃーちゃんは戸惑いながらも石窯に最初の火を入れてくれることに。

ドムじぃーちゃんが出来たての釜の中に窯用の魔石を入れようとした時だった。
私はドムじぃーちゃんのズボンの裾を引っ張り

「ドムじぃーちゃん。リンがしゅゆ。」

私は窯の中に魔石を入れてみたかったのでドムじぃーちゃんにお願いすると...なぜか怯むドムじぃーちゃん。
ドムじぃーちゃんはドラしゃん達に助けを求めるが皆なぜかドムじぃーちゃんから目線を逸らす。

"すまん。私ら、俺らでは無理だ"

そんな皆の心の声が聞こえたドムじぃーちゃんは諦めて私を抱き抱え石窯の前にいき

「今回だけだぞ。よし、リン。コレを窯の中に入れるんだ。それ以外は何もするなよ。」

ドムじぃーちゃんはそう言いながら私に窯用の魔石を渡してくれた。

私はドムじぃーちゃんから貰った魔石とふと思い出したポケットにしまった"石"の両方を窯の中に入れた。
幸いな事にポケットは前に付いていたのでドムじぃーちゃんにはバレなかった。

ドムじぃーちゃんは私が窯の中に魔石が入った事を確認してから私を地面に降ろし、お兄ちゃんと一緒に専用の椅子に座るよう促す。

私とお兄ちゃんはお父さんに連れられて専用の椅子にそれぞれ座らされてそこから眺める事に。

ドムじぃーちゃんは私とお兄ちゃんが安全な場所に行った事を確認してから魔石に魔力を流し出す。

ドムじぃーちゃんが魔石に魔力を流すと同時に、私も無意識に同じように自分の魔力を石窯に入れた"石"に流していた。

と...なると案の定とんでもない事が起こるよね?
入れた魔石は普通の反応を示し窯に火を灯していく。それは、通常の反応なので問題なかった。

問題は......そう、これからだった。
私が別に入れた"石"が原因となる。
魔石から発せられた熱と私が無意識に流した魔力に反応してとんでもない火力を発揮し石窯に備え付けてあった煙突と石窯の口から火柱が勢いよくあがったのだ。

咄嗟にドラしゃんがドムじぃーちゃんと私達に結界を張ってくれたので大事には至らなかったが火柱はかなりの勢いであがっている。

あまりの事にその場に居た全員が驚き固まる。
そして、私達の元には家に戻っていたお母さん以外駆け寄ってきた。

『何がおこった!』

ドラしゃん達はドムじぃーちゃんに何が起きたのかを確認するが...

「分からん。俺はいつも通り魔石に魔力を流しただけだ。それ以外は何もしとらん。こんな事初めてだ。」

通常通りの手順を"いつも通り"したドムじぃーちゃんにとっては異例の出来事で訳が分からない状況なので説明のしようもない。
だって、"ドムじぃーちゃん"は手順としては何も間違った事はしていなかったからね。

うん。原因は私なのだから。そんなことを知らない一同は火柱が上がる窯を見つめるしかなかった。

しばらく石窯を見つめていると火柱の勢いが弱まってくるではないか。
火の勢いが弱まるのと同時ぐらいに窯から"何か"が出てきたのだ。

『ふぅー、良い魔力だぜ!助かったぜぇ!イヤァー一時はどうなるかと思ったけどよ、質のいい魔力のお陰で力は以前以上だしよ、俺様のランクもついでに上がったみたいだし、いい事尽くしだ!』

燃え上がる火柱の中から炎を纏った男の人が出できたではないか。
しかも纏っている魔力は以前感じた三人と同等クラス。これは...まさか...のまさか???
あまりの出来事に皆は固まってしまう。

すると...炎の中から出てきた男性は、私達の方を見つめ何やら嬉しそうに話しかけてくるではないか。

『おっ!君かい?小さなレディー。俺様の新しい主人は!目覚めさせてくれてありがとうよ。俺様は【元火の大聖霊】 だ小さなレディーの魔力のお陰でランクが上がって、今は【炎の大聖霊 イフリート】に進化したんだ。これからよろしくな!』

私を見ながら元気よく情熱的に自己紹介をする【炎の大聖霊 イフリート】。
元気満点、豪胆な態度と風格漂う雰囲気からして...彼の言うことは嘘ではないようす。
彼の言葉を聞いていたドラしゃんを含め、皆が一斉に私の方を見つめる。

私は皆が見つめてくれるので照れる。

「はじゅかしいね。」

顔を真っ赤にしてハニカム私を見て何故か皆は呆れ顔を浮かべる。

『お嬢様。いったい何をされたのですか?』

「こいつは、本当に...。」

「いくらなんでもやりすぎだろう。」

「いったいこの子はなんだい?」

「本当に凄すぎますよ。心臓が持ちません。」

「何もするなと言ったのに...。」

「リン。お前は...。」

「リン!凄いぞ!自慢の妹だよ。」

ドラしゃん、ムキじぃーちゃん、ロドじぃーちゃん、ルミばぁーちゃん、ラミィお兄ちゃん、ドムじぃーちゃん、お父さんは溜息を吐きながら肩を落とす。
お兄ちゃんだけ満面の笑顔で私を褒めてくれた。

そんな皆を無視して"イフリート"と名乗った男の人は私に話しかけてくる。

『もう既に他の奴と契約してるんだなぁ。そしたら俺ともしてくれるよな?』

その言葉に私は何の疑問も湧かずに素直に笑顔で"いいよ"と返事をする。
すると...私の腕輪が光ったとおもったら飾りが変化した。
変化したと思ったら深紅の宝珠が増えていたのだ。

『コレで俺との契約は完了だ。それにしてもお嬢ちゃんの隣に居る小僧。お前も良い魔力持ってるなぁー。纏うものも良いものだ。
お前なら大丈夫そうだなぁ。』

そう言うと私とお兄ちゃんを炎が纏わりつき"イフリート"の前まで運んでいく。
さすがのドラしゃんも焦って止めに入ろうとしたが炎が邪魔をする。

『別にコイツらに危害は加えねぇよ。そこで大人しく見てろ。』

そうドラしゃんに言葉を放つイフリート。
ドラしゃん達が動かない事を確認して改めて私達に話をする。

『おっと、すまねぇなぁー。小僧、お前にコレをやる。』

"イフリート"はそう言うとお兄ちゃんにビー玉みたいな小さな赤い玉を渡す。
お兄ちゃんは貰った赤い玉を覗きこむ。
すると...玉の中心に揺らめく火が見えたのだ。
私とお兄ちゃんは"イフリート"を見つめるとイフリートはニカッと笑みを浮かべながら

『それは次の火の大聖霊の種だ。本当だったらお嬢ちゃんに渡すつもりだったがお嬢ちゃんには俺が居るからなぁー。
 変な奴に任せるより小僧の方が安心だ。素質もあるし側に俺も居るからな。
一から育てみな。育ったら契約も出来るしなぁー。どうだ?』

この内容に異議を申し立てようとドラしゃん達が声を出す前にお兄ちゃんが返事をする。

「僕やってみる!この子のお兄ちゃんになる。リン。新しい兄弟ができたよ。」

お兄ちゃんの満面の笑顔に誰も反対を言えなくなってしまった。
私はお兄ちゃんに"よかったね"と笑顔で返事をする。
 "イフリート"は返事を聞くとお兄ちゃんの腕にある私とお揃いの腕輪に【火の大聖霊の種】を嵌め込んでいく。
すると...お兄ちゃんの腕輪もデザインが少し変わったではないか。

『コレで俺の今日の役目は一応終わりだ。一旦休むぞ。あっ!そうだ言い忘れる所だった。
俺たちの仲間がまだまだ眠っていてな、中には俺たちの気配を感じて集まってくる奴らもいる。しかし、探しに行かないといけねぇー奴らもいる。良かったらそいつらの事も頼むな。』

そう言うと"イフリート"は腕輪の中に消えて行った。
"イフリート"が消えると私達を纏っていた炎も消え、宙に浮いていた私達はそのまま地面に落ちるのかと思ったがそこは違った。
優秀な執事のドラしゃんがしっかりと私達をキャッチしてくれたので怪我もなくすんだ。

私とお兄ちゃんは私達を抱えてくれているドラしゃんに御礼のハグをする。

『お嬢様。坊っちゃま。頼みますから何かをする前には私達に相談して下さいね。』

ドラしゃんは苦笑いしながらハグしている私達にダメ元で注意を促す。
私とお兄ちゃんは自信なさげに返事をすると複数の溜息が聞こえてきたのだった。

ここ数日で私の腕輪は段々豪華になってきた気がする...というか豪華になった!
今日はお兄ちゃんのも豪華になったしね。
私達の腕輪が豪華になる度に大人達の悩みの種が増えていくのは...諦めてもらおう。


 燃え上がっていた火柱もいつの間にか消え石窯の火は通常の火力に戻っていて、あんなに火柱に包まれていた石窯も無事だった。

数分前の出来事でドラしゃん達が落ち込んでいるなかに何も知らないお母さんが満面の笑顔で戻ってきた。
お母さんは両方手に一杯何かを抱えているではないか。

「あれれ?何があったの?大丈夫?」

お母さんの問いかけにお父さんが代表で答える。

「ちょっとな...色々あったんだ。訳は私達の子供達の腕輪を見てくれたら分かるよ。」

そうとしかお父さんは言えなかった。
お父さんの答えに首を傾げながら、お母さんは私達を抱えているドラしゃんの元まできて私とお兄ちゃんの腕輪を覗き込む。

「まぁ~。綺麗じゃない。あれ?少し雰囲気変わったかしら?アキラも格好良くなってるじゃない。2人とも似合ってるわよ。」

お母さんは満面の笑顔で私達の腕輪を褒めてくれた。
そして、その言葉を聞いてますます呆れかえるドラしゃん達。

「アンタねぇー...はぁー。子供がこうなら親もだね。
リンは新しいく【炎の大聖霊】と契約しちまったのさ。
そして、アキラは新しい【火の大聖霊】の種を貰っちまったのさ。」

ルミばぁーちゃんがお母さんに説明すると周りの人達は頷く。
お母さんはそんな皆の姿に驚きつつ私とお兄ちゃんに"本当?"と聞いてきたので笑顔で頷いた。

あまりの事にお母さんは手に持っていた荷物を全て落とす。
お母さんが落としたモノを見て私とお兄ちゃんは大きな声を上げる。

「マーマ!それ!」

「ママ!それもしかしてパンを作るの?」

お母さんが持ってきたものは小麦の束とボール類の食器など、パン作りに必要なものばかり。
お母さんは出来たての石窯でパンを作る気で、材料を取りに行っていたのだった。

それを知ってまたお父さん達はとことん呆れる。

お母さんが落とした材料を見て私とお兄ちゃんは大喜び。
ドラしゃん達はもうどうにでもなれと言わんばかりのやつれ状態。

お母さんは何かのリミッターが壊れたのか急にテンション上げて話しだす。

「はっ。ははははっ。大丈夫よ!そう!大丈夫!私達の子供ですもの。
よし、皆で気分転換でパンを作りましょう。
明日、新しい家族も増える事だしね。」

お母さんの明るい言葉にお父さんも気を取り直す。
ドラしゃん達も気持ちを切り替えてお母さんの言葉に頷き、落とした材料を拾い集めていく。

気を取り直したムキじぃーちゃんが即席でテーブルを作ってくれたので、そこに拾った材料を載せていく。

気分を切り替えて皆でパン作りを開始することに。
もちろん、私とお兄ちゃんは見学を命じられたのでドラしゃんお手製の椅子に逆戻り。
(これ以上のドラブルを防ぐためだって。失礼よね。)

お母さんが家から持ってきた小麦の束を見て、不思議そうにするムキじぃーちゃん達に小麦粉の作り方をお母さんが説明する。
すると、理解が早かったのがルミばぁーちゃんとラミィお兄ちゃんだった。

ルミばぁーちゃんとラミィお兄ちゃんはお母さんから小麦の束を預かると、ドムじぃーちゃんが作った籾落としの道具にセットした。
そして、何か呪文を唱えると籾殻も取れた状態で石の器の中に入っていった。

そして、ルミばぁーちゃんの指示でロドじぃーちゃんが籾殻が取れた小麦を石臼に持っていき、ムキじぃーちゃんが石臼を引いていくという連携作業がいつの間にか整っていた。

この一連の作業でお母さんの言った小麦が出来ていった。
しかし、何故かキラキラしていた。

ドラしゃんがそれを見てまた溜息を吐く。

『どうやら【炎の大聖霊 イフリート】と【土の大聖霊 ノーム】の影響を受けてますね。
そのせいであの菜園で実った野菜類は高級食材です。
そして、石窯と同時に作った道具は全て神級です。
必然的にそれらで作ったものは...。もう言わなくてもご理解頂けるかと思います。』

ドラしゃんの説明を聞いてまた固まる大人達の皆様。
私とお兄ちゃんは新しくなった腕輪の見せ合いをしていたのであまり気にならなかった。

『暫くは身内だけで消費するしかないですね。どんな効果が出るかわからないですから。効果がある程度分かってから対応を考えた方が良いかと思います。』

ドラしゃんの説明で皆納得する。
とりあえずは作業を続行する事にした。
作ってみない事には分からないからだ。

ルミばぁーちゃんとラミィお兄ちゃんはお母さんが持ってきた小麦を全て籾落としにかける。

ロドじぃーちゃんとムキじぃーちゃんそして、ドムじぃーちゃんが交代で石臼を引いて粉にしていく。

そして、お父さんとお母さんで粉をドラしゃんに用意して貰った皮袋に入れていくことにした。

皆無言で作業にとりかっていたので少し不気味な光景だ。


 どれくらい時間が経っただろうか。
お母さんが持ってきた小麦が全て粉になり、たくさんの小麦袋が並んでいる。
なんと、ドラしゃんが最初に用意した皮袋が足りずに追加まで用意してもらったのだ。

なんと総数100個を超える小麦の袋が...。
なぜそうなったかは...お母さんが犯人だ。
魔法収納鞄を使いたくって家の食糧庫に置いてある小麦を全て持ってきていたからだ。

さすがに作業終了後には皆はヘトヘトになっていた。
その為、パンを作ろうにも誰も動く事が出来なかった。

「今日は...。コレぐらいにしないかい?」

「私も、もう...無理です...。」

「ワシもじゃ。」

「俺もだ。」

「俺も、無理だ。」

「私も無理です。」

「ごめん。私も無理よ。」

体力の限界を迎えたためパン作りは日を改めてとなった。
動けない面々に代わってドラしゃんが魔法で後始末をする事に。

使った道具を片付けて作り出した小麦粉の入った袋をお母さんの魔法収納鞄へと。

そして、石窯の火を消そうとしたがドラしゃんの魔法が弾かれた。
なんと、石窯には私とドムじぃーちゃんの印がいつの間にか刻まれていた。

それは、"イフリート"の仕業だった。
それに気づいたドラしゃんは思わず舌打ちをしてしまう。
そして、ドラしゃんは動けないドムじぃーちゃんを横目に私に声をかけた。

『お嬢様。私ではあの石窯の火は消せません。お嬢様のお力をお借りしてもよろしいでしょうか?』

ドラしゃんは私にお願いすると私を抱き抱えて石窯の前まで行く。
そして、私と私の腕輪に向かってドラしゃんは話しかける。

『この石窯。"何故か"お嬢様とドムの印が入ってます。その為、この石窯に火を入れたりできるのはお2人だけです。
 ですがドムは現在動けません。ですからお嬢様。お力をお借りしますね。』

ドラしゃんがそう言うので私はとりあえず"いいよ"と返事をした。
すると、私の腕輪が光ってミニサイズの"イフリート"が出できた。

『お前、露骨だな。せっかくゆっくりしようとしたのに。お嬢ちゃんはまだおチビなんだから無理だろう。
仕方がねぇ~なぁ~。俺が消してやるよ。特別だぞ。』

そう言うと"イフリート"は石窯に向かって指を鳴らした。
イフリートが指を鳴らすと赤々と燃えていた火が何事もなかったかのように消えたではないか。

『ついでに印も書き換えてある。お嬢ちゃんのは消してあるからいいだろう?じゃー寝るなからなぁー。』

ドラしゃんに小言を言うとまた腕輪の中に消えていった。
それを見てドラしゃんは満足そうな笑みを浮かべた。

それを見ていたドムじぃーちゃん達は少し顔色が悪かった気がする...ような...。

「あいつ、相変わらず凄いわ。」

「リンが絡むとてきなしだね。」

「私、何も見てません。聞いてません。」

「さすが最強のドラゴン様だ。」

「敵にだけは回したくないなぁー。」

ルミばぁーちゃん達の言葉にお父さんとお母さんは静かに頷く。
石窯も片付けが終わったのでお兄ちゃんを椅子から降ろして家に戻る事にした。

しかし、ルミばぁーちゃん達はまだ動けなかったので、仕方がなくドラしゃんが魔法で皆を浮かして家の中まで運ぶ事になった。

その光景を見て私はふと思ってしまったのだった。
"私もあんな風にできたらなぁー"と。
すると何処ともなく風が私をめがけて吹いてきたので、私は思わず目を閉じた。
すると...何かの声が聞こえた気がした。

私の数歩前を歩いていたお兄ちゃんは私の足音が止んだのだった事に気付き振り向いた。
そして、風に煽られる私が視界に入り駆け寄ってきた。
すると、風は即座に止んだ。

そして、前を歩いていたドラしゃんも異変に気付いて近寄ってきた。

とりあえず、風も止み目も開けれるようになったので"大丈夫"とお兄ちゃんとドラしゃんにアピールした。

しかし、まだ心配そうな2人。
お兄ちゃんは私の手を引いて歩いてくれた。
その横をドラしゃんが歩く形で家に向かって再度歩き出す。

暫く歩いてふと胸のポケットを見るとなぜか透明なガラス玉の様なモノが入っていた。
私はそれをあえて皆に内緒にした。
今はそれが正解だと無意識に思ったからだ。

 それからはドラブルもなく無事に家に着く事ができた。
家の中に入りドラしゃんは皆を床に降ろした。
皆を床に降ろし終えるとドラしゃんは私の顔を覗き込んできた。
目や鼻や耳。頭や顎の下等も入念に確認し怪我等がない事が分かると安心した顔をする。

『良かったです。お怪我はないようで。』

ドラしゃんは私にそう声をかけると私とお兄ちゃんを抱き抱えて、いつものプレイスペースへ運んでくれた。
その後は勿論お父さん達も運んできた。

皆で体を休めているとドラしゃんが飲み物を持ってきてくれた。
面々に受け取り一息つくとムキじぃーちゃんが徐ろに話し出しす。

「ふと、思ったんじゃが。イフリートが言っていた言葉なんじゃが...。
やはり...今後も増えるのか?」

その言葉に皆はハッとして疲れきった顔をあげる。
今、私の腕輪に居る【大聖霊】は4人。
【森の賢者ともいわれるドライアド】
【大地の大聖霊のノーム】
【水の大聖霊のウンディーナ】
そして、今日新たに仲間になった【炎の大聖霊イフリート】だ。
それ以外にお兄ちゃんの腕輪に【火の大聖霊の種】が居る状態だ。

「あと、どれぐらいいるんだ?」

ロドじぃーちゃんはドラしゃんに尋ねると皆ドラしゃんに視線を集める。

『何故私に尋ねるのですか?』

ドラしゃんは少し不機嫌そうに答えた。

「そりゃー、お前さんがこの中で1番長生きしているからだな。」

ロドじぃーちゃんの言葉に嫌そうな顔をしながらもドラしゃんは質問に答える。

『私の記憶にある範囲では【大聖霊】だけでしたら【風の大聖霊 シルフ】【霞の大聖霊 ミスト】 【華の大聖霊 フリーネ】 【雷の大聖霊 ボルト】 【雪の大聖霊 セルシウス】 【氷の大聖霊 シヴァ】【光の大聖霊 ルナミス】 【闇の大聖霊 シャドウ】 【時の大聖霊 オリジン】 9人のはずです。
 しかし、彼らは時代と魔力により種類が増えたり減ったりしますので、正確な数は流石の私でも把握はできてません。
時に進化もしますのでね。
 それに、【大聖霊】が目覚めていると言うことは【聖獣】も目覚める、もしくは新たに誕生する可能性があります。そうなると...お手上げですね。』

その言葉に誰もが"聞くんじゃなかった"と思った。

しばらく長い沈黙が続いた。
その中で私とお兄ちゃんは顔を見合わせて2人で会話をする。

「お兄ちゃん?いっぱい?」

「どうだろう?でも楽しみだね。」

「うん。て、キラキラなの。」

「うん。リンの凄いよね。僕も負けないよ。」

私とお兄ちゃんは大人達の気持ちとは裏腹に、新しく増える仲間が楽しみで仕方がなかった。

平和そうに会話する私達を見てお父さんとお母さんは苦笑いをする。

「うちの子。平和ね。」

「あー。ああ言うのを"親の心、子知らず"って言うんだよなぁー。あいつらが羨ましいよ。」

そう話す、お父さんとお母さんを見ながら、ムキじぃーちゃん達は同じ事を思っていた。

"それは、お前たちにも言えるぞ。"

そして、私達を見ながらその日何度ついたかも分からない溜息を大人達は吐くのだった。











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