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第四章 新しい国誕生!〜国の設立と同盟〜
4-33 森??のような...街??
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私とお兄ちゃんが、目覚めた時にはとんでもない光景が視界いっぱいに広がっていた。
えっ?!いつのまに?って言う感じで驚きのあまりしばらく固まってしまったぐらい。
だって...私とお兄ちゃん、最後に記憶にあるのは、少し広めの休憩所の風景だからね。
そのあとはお腹がいっぱいになり、視界が真っ暗になっていたからね。
だから、目が覚めてもその休憩所...あるいは...移動道中で、誰かの腕の中で目が覚めるかなぁ...って思っていたんだけど...どうやらどれも違っていたみたい。
しかし、一体全体どうなっているんだろうか??そもそもここがどこで、どこにいるのかさえ分からなかった。
目が覚めた場所は、なんらかの建物中かも分からない。
???えっ??何で???
しかも、私とお兄ちゃんは、ちゃんと"お布団"に入っているし、今もお布団の上でいる。
起き抜けだが...全く状況が掴めずにいる。
布団に入ったまま、混乱していると目の前の扉?らしきものが開いたと思ったらお母さんが笑顔で入って来た。
「あっ!アキラ。リン。やっと起きたのね。どう?2人が寝ている間に、完成したのよ。」
そう言いながら、私達が寝ている間の事をお母さんは全て話してくれた。
まず、私とお兄ちゃんは3日間程眠っていたとの事だ。
ドラしゃん曰く、休憩所近くに"眠り花"と呼ばれる、眠りを誘う作用のある花が咲いていたので、その花粉を誤って吸い込んで、眠っているのでは?との事だった。
お母さんとお父さんが来たので、精神的にホッとしてなお、眠りが深くなったのだろうと。
言われてみれは、休憩所近くに少し大きめの綺麗な、花が咲いていたのは記憶にあった。
しかし、そんな作用のある花だとは思わなかった。
お母さんもしらなくって、あれからこの世界の植物について色々勉強していると教えてくれた。
"眠り花"は、大人には効果がなく、赤ちゃんや子供にしか効果がないのだとか。
その為、夜泣きの激しい赤ちゃんや寝付きの悪い子供がいると睡眠導入剤代わりに使われているそうだ。
副作用も全くなく、ねくじょもなくすんなり眠るので、一般的にも使われているものなんだって。
しかし、ここまで効果があるのは珍しいのだとか...。
だから、私とお兄ちゃんが起きるまで、皆が交代で様子を見ていたと教えてくれた。
あと、私とお兄ちゃんが寝ている間に、お父さん、ドムじぃーちゃん達に【大聖霊】や【聖獣】達が張り切って、街をたった2日で完成させたというのだ。
今度の街は、海から来る潮風による被害が出やすい事を懸念して、堤防や防波堤はもちろんのこと、防風林なども設置したりしたんだそうだ。
建物は、多少水没しても大丈夫な様に、高床式の建物にしているという。
ぱっと見は、"樹の家の森"だとか...。
いまいち光景が思い浮かばないが、"みれば感動するよ"ってお母さんが笑顔で言うので、わくわくして直ぐにでも見に行きたくなった。
お母さんの話を聞いている間、私とお兄ちゃんのお腹の虫が合唱しだす。
まる3日間なにも食べてないので、お腹が鳴るのは仕方がなかったが、あまりにも盛大にアピールするのでかなり恥ずかしかった。
お母さんは、私とお兄ちゃんのお腹の合唱を聞いて、クスクス笑い出す。
「そんな事だと思って、ご飯の準備もしてあるわ。皆んな、心配しているから会いにいく?」
お母さんの言葉に頷き、着替えをすませて、皆の待つ場所へとお母さんと一緒に向かった。
私達が居る建物は、全部"樹"を使って作られていた。床も壁も天井もだ。
歩く度に、樹々のいい匂いがする。
廊下を出てすぐの扉を開くと、なんと吊り橋があるではないか?!!
しかも、そこから見える景色は緑一色だった。
「えっ?!」
「凄ーーい!!!」
私とお兄ちゃんは思わず立ち止まり、周りを見渡した。
大きな大木を上手く活用して、樹の幹や太めの枝に家が造られていたのだ。
家だけでなく、移動できる様に廊下や吊り橋、橋に階段も木々や木の幹を上手く加工して作られている。
まるで、妖精やエルフの住処の様な風景だった。
お母さんがさっき言っていた、"樹の家の森"の意味が分かった。
私とお兄ちゃんが、景色に見惚れていると向かいの吊り橋にある人物の姿が見えた。
しかし、その人物は本来ならいないはずだった。
その人は、私とお兄ちゃんの姿を見て大きく手を振って声をかけてくれた。
「おーい。リンちゃん。アキラくん。起きたかぁーい!早くおいでよ。皆首を長くして待ちくたびれてくよ。」
なんと、街に居るはずのラミィお兄ちゃんがそこに立っていたのだ。
私とお兄ちゃんは、その場所が地上よりかなり離れている場所である事も忘れて、ラミィお兄ちゃんの方を目指して走り出す。
その姿を見て、お母さんもラミィお兄ちゃんも大慌て。
しっかり造っていると言っても、一歩間違えたら地上に落ちてしまうのだから。
「ちょっ!リン!アキラ!走らない!」
「リンちゃん!!アキラくん!!駄目だよ!走らないでぇー!!」
お母さんとラミィお兄ちゃんの叫び声に、部屋で待機していた面々も姿を現す。
そして、目の前で走りまわる私とお兄ちゃんの姿を見て、皆の顔は真っ青になった。
あと少しで、たどり着くと思った時だった。
私とお兄ちゃんは、吊り橋の板に躓いてしまい、走っていたのもあり勢いあまって、吊り橋の横の隙間から落ちてしまったのだ。
私とお兄ちゃんは、何が起きたのか分からず視界が下がっていくのを、不思議そうな顔をして見ていた。
見ていたお父さん、お母さん、ラミィお兄ちゃん達は、悲鳴を上げてる。
それを聞いて、私とお兄ちゃんは自分が落ちていることに気づいた。
あー、どうしよう...と思った瞬間だった。
樹々の隙間から蔦が網状に張り巡らせて、私とお兄ちゃんはその中に上手にすっぽり落ちたのだが...なんと蔦が籠状になっていて、私とお兄ちゃんの落下の衝撃で跳ね返り、今度は上に飛ばされることに。
ありゃ???
瞬きをして今度は上に上がる景色を見つめていると私とお兄ちゃんの前にドラゴンが。
ドラゴン姿のドラしゃんに見事キャッチされたのだった。
『お嬢様...坊っちゃま...お願いです。私達の寿命を縮めさせないでください...。
一歩間違ってたら、大怪我だけではすまないんですよ...。お願いですから...。』
ドラしゃんは、そう言いながら私とお兄ちゃんを安全な場所まで運んでくれた。
私とお兄ちゃんが無事なのを確認して、皆その場に座り込む。
『おてんばすぎるのは、かまいませんが...それは、時と場合によります。
この様な、地上からかなり離れた場所で、あの様に走り回るとどうなるか、もうわかりましたよね?二度目はありませんよ!!』
珍しく、強めにお説教するドラしゃん。
私とお兄ちゃんが涙目になっても、誰も止めなかった。
そりゃそうだろうなぁー...。
皆が思っている事を、ドラしゃんが代表して言っているのだから...。
私とお兄ちゃんは、素直にごめんなさいをした。
とりあえず、全身チェックを受け、怪我等がない事を確認すると、お母さんから会心の一撃...ゲンコツを貰った。
かなり痛かったが、自分達が悪い事をしたから仕方がなかった。
しかし、運良く蔦が張り巡らされたのはどうしてだろうか?
と、疑問に思っているたら...。
そりゃそうだよね。
蔦の犯人は、ドライアドだ。
樹々の多いこの場所は、ドライアドにとっては有利な場所なので、とっさの対処も余裕で出来たのだった。
とりあえず、私とお兄ちゃんは皆と一緒に食事をとることにした。
もちろん食事中も皆からはお説教の小言を沢山貰った。
ご飯を食べ終えて、一通り小言も貰ってから、改めて皆から色んな話を聞いた。
まず、なぜラミィお兄ちゃんが居るのか。
それは、私とお兄ちゃんが中々目覚めなかったからだ。
ラミィお兄ちゃんは、エルフなので植物に詳しい為、ドラしゃんが急いで連れて来たのという。
そして、眠っている私とお兄ちゃんは、ラミィお兄ちゃんに診察して貰らい、問題はないと分かったのだが、一応起きるまでは、ラミィお兄ちゃんもここに滞在してくれていたのだと言う。
そして、この街を作りにあたって協力もしてくれたのだ。
エルフは、自然に生えている樹々のや植物を上手に活用、加工して住処にして暮らしているので、その知恵をこの街に活用したのと話だった。
この街にも、もちろん船着場は造っている。
ノームの力を借りて、土地を少し段差をつけながら高めにしていた。
街の中心部のみが、この樹々の住処で周りは、段差を利用した段々畑の様な造りの家にしてあるとか。
常に、高波や暴風が襲うわけではないので、地上近くでも生活したい人もいるだろうと言う意見もあり、二段構えの造りの街にしたんだそうだ。
もし、高波が押し寄せて来たら中心部のこの樹々の住処へ避難できる様にしてあるんだとか。
あと、避難所としての空き家を多めに設置してあるという。
何より、樹々の住処ならエルフやハーフエルフでも住めるし、鳥系の獣人とかも住みやすいのだとか。
色んな種族が住める様にと考えられて造られた街になっていた。
外から見ると街の中心部に森がある感じに見えると、ラミィお兄ちゃんが話してくれた。
地上近くの家は、全て高床式にしてあり、多少の浸水しても大丈夫な作りにしたと、ドムじぃーちゃんが教えてくれた。
倉庫や食料庫など、水に浸かると困るものは、全て高めの位置に設置してあるという。
街のギルドは、もちろんこの樹々の住処に造ってあった。
「街の中心部だからな。災害が起きても起動できる様にしておかんとなぁー。
これも、ラミィーの意見だ。いや、今回も初めて尽くしだからよぉ~かなり助かったぜ。
最初は、地下に街を造ろうかと思っていたんだが、土的に向かないと【大聖霊】様方が言うので、こんな感じになったが。これもこれで、味があっていいだろう?」
ドムじぃーちゃんは、そう笑顔で語る。
私達が寝ている間に、色々あったみたいだが...。
それでも起きなかった私達って...。
「しっかし、寝てても心配はかけられるし、起きたら起きたらで、寿命を縮める様な事をするし...。お前さんらは、飽きさせないわ。
だか、ちゃんと起きてくれて良かったよ。やっぱり、お前さん達の元気な姿を見ないとな、俺たちは...なんだ?ほら、あれだよ、あれ!」
「落ち着かないんですよ。ソワソワしてね。ですから、無茶をしたりするのは、よして下さいね。」
ドムじぃーちゃんとラミィお兄ちゃんの言葉に、他の皆も"うんうん"って頷いていた。
私とお兄ちゃんは、少し照れくさかった。
でも、そう言ってもらえて嬉しかった。
『しかし、今回の件で吊り橋に改善余地がありましたね。
まぁ~、あんな事はそうそう無いと思いますが、全く無いとは言えないので、早急に対処しておきましょうか?』
ドラしゃんのその言葉に、ドムじぃーちゃん達は真剣な顔付きになる。
「確かに。今回は、運が良かったからいいけどよ、毎回あんな感じにはならないだろ?」
ドムじぃーちゃんの言葉に、いつのまにか出て来ていたドライアドが答える。
『当たり前ですわ。主人達だったから助けたまでの事ですわ。』
しれっと答えるドライアドの言葉に、大人達は"ですよね..."って言う表情を浮かべる。
「しかし、どうするよ。あまり囲いすぎると重くなって、ちぎれるぞ?」
「板にするにしても、無理がありますよね?」
「何か、他に代用出来るものないか?」
皆は、それぞれ意見を出し合っていた。
大人なら、今の吊り橋でも問題はない。
耐久性もそれなりにあるから。
だが、私やお兄ちゃんみたいな子供の場合は、そうもいかなかった。
予想外の行動はとるし、何より小柄なため隙間から簡単に体が抜け落ちるリスクが高いというのが、今日の出来事で判明したしね。
小柄なドワーフでも、厚みがあるので途中で引っ掛かるので、どうにかなるのだが...。
せっかく、完成したと思ったのだが...こちらもまた、改装が必要という意見になった。
せっかく、私とお兄ちゃんが寝ている間に完成した西側の街だったが、私とお兄ちゃんが起きて早々にやらかした騒動にて、欠点が発覚した。
まぁー、早めに分かったから対処はいくられでもできるので、早速その対応をすることに。
それは、街の中心部に多く設置してある吊り橋の改良だ。
耐久性と伸縮性が特化し、腐敗しにくい種類の蔦を何種類か組み合わせて造られた吊り橋。
見た目的にも、機能的にも申し分ないのだが...。
今回の件で、ある盲点がわかったのだ。
それはと言うと...小柄で、重さも幅もない子供にとっては、危険なものだと言う事だった。
普通に歩いて渡る分には、問題ない。
大抵の場合は、必ず側に保護者が居るからだ。
しかし、今回みたいに子供達だけで、走り回り躓く様な事が起きれば...。
そう考えると、何か対策をとらないといけない。
まず、そんな事は起こってはいけない事だし、起こらないはずなんだが...だが、実際に、しかもほんの数分前に、目の前で起きた出来事の為、今後同じ事が起きないとは、誰も断言できなくなった。
まぁ~、正直な話、子供はどんな行動をとるかは不明な生き物だからね。
現在進行形で子育て中のお母さんが、困り果てている皆に向かって愚痴をこぼす。
「我が子ですら、まさかあんな行動をするとは、私も想定外だったわ。
普段は、対して活発に動こうとはしない子なのに...。
よりにもよって、吊り橋の上で...。」
お母さんのその言葉に、他の人達は"うんうん"と頷いていた。
「でも...それはきっと、他の子供にも当てはまる事だと、私は思うの。
だって、相手は子供よ?
我が子ですらねぇー?だったら、なおさら他の子供なんて、どんな事をするかは予測なんかできないわ。」
「確かに、常に子供には親、もしくは大人が側に着くのは当たり前だが。
毎回そうとは限らない場合があるよね。
側にいても、子供ってほんのちょっとの差で、動きだすから。
しかも、すばしっこいたらありゃしない。駄目だと言っても止まらないし...。」
お母さんに続いて、お父さんまでもそう話出す。
私とお兄ちゃんにとっては、耳が痛い話だ。
「そうだなぁー。俺も、まさかあんな事が起きるとは、想定して造らなかったからなぁー...。
かと言って、子供は渡らすな...って制限はつけれんしなぁー。」
「そうなれば、やはり物自体をどうにかしないといけないですよね...。」
「実際に、子育て中の方がそう言ってますし、我々も先程その、想定外を目撃したばかりですし...。」
そう言って、皆で頭を捻りだす。
私とお兄ちゃんは、珍しくシュンっとなって、その場で小さくなる。
すると、ドラしゃんが優しく私達の頭を撫でた。
『しっかり反省されるのは、良い事です。しかし、我々にとって先程の事は、ある意味でありがたい事です。』
そう話すドラしゃん。
私とお兄ちゃんは、意味が分からずドラしゃんを不安気に見つめる。
すると、ドラしゃんはフッと微笑して言葉を続けた。
『確かに、先程の行動は誉められる行動ではありませんでした。
が。が、ですよ?
お2人があの行動をとってくれたおかげで、大事故が起こる前に、欠点を見つける事が出来たのは、良い事です。
もし、あの行動がなく、ここがこのまま街として稼働して、ここに住んだ人達の子供が、先程のお2人の様な事をされたらどうなると思いますか?』
そう言って、私達を見つめるドラしゃん。
周りの人達も、ドラしゃんの言葉をじっと聞いていた。
そんな中、お兄ちゃんがボソッと呟く。
「落ちて...そのまま死んでしまう...。」
お兄ちゃんのその言葉に、私はゾッとした。
ドラしゃんは、静かに頷き言葉を続けた。
『そうです。今回は、お嬢様と坊っちゃまだたから。お2人が、【大聖霊】と契約をされているから、助かっただけです。
そうでないなら、今頃こうやって話もできなければ、触ることもできません。』
ドラしゃんの言葉を聴きながら、私はある事を思い出していた。
そう...この世界に来る前の出来事だ。
あの時も私達は、事故で死んでいた。
かろうじて、私は瀕死だったが...きっと死んでいただろう。
それを..."運良く"神様に救われて、この世界に来たんだ。
しかし、それが今後もあるとは限らないのだ...。
人間、いや...命あるもの死んだら終わりなんだ...。
幼いながらも、私は"本当の意味で"大人達が、心配していた理由を本能的に悟った。
私...いや...横でいるお兄ちゃんも、静かに涙を流していた。
『ようやく、お2人には意味を理解して頂けましたか...。
どうか、危険な行動は辞めてください。"命"は..."命"を大事にして下さいね。』
ドラしゃんはそう言って、涙を流す私とお兄ちゃんをそっと抱きしめてくれた。
私とお兄ちゃんは、しばらくドラしゃんの腕の中で泣いた。
そして、泣き疲れてまた眠ってしまった。
皆は、やれやれと言った表情を浮かべながら、泣きながら眠りにつく私とお兄ちゃんを見つめていた。
「これで、わかってくれたらいいんだが...。」
「あら?もう、2人とも理解したわよ。」
お父さんとお母さんは、そう言って私とお兄ちゃんの頭をそっと撫でる。
「しかし、どうする?どう変えるんだ?建物ごと変えるのは、また難しいぞ?」
「魔法で、...と言いたいところですが、かなりの膨大な魔力を消費する事になるので、難しいですね。」
ドムじぃーちゃんとラミィお兄ちゃんは、そう言って悩み出す。
「吊り橋以外にも、こいつらに走らせて、危険な部分がないか確かめるのはどうだ?」
ムキじぃーちゃんが、いきなりそんな事を言い出した。
さすがに、皆は反対した。
「確かに、子供にとっての危険は、子供で無いとわからんが、リスクが高すぎるわ!!」
「毎回、【大聖霊】様方が助けてくれるとは限りませんよ?!
そんな危険な事させれませんよ!!」
ドムじぃーちゃんとラミィお兄ちゃんに、責められるムキじぃーちゃん。
しかし、ムキじぃーちゃんはひかなかった。
「さっきも、フレアが言ってたじゃないか。実際に、他の誰かが住み出す前に気づけて良かったって。
だったら、他にも危険な物があるかも知れないだろう?
しかも、今回の造りは初めてなんだからよ。だったら、少しでも危険なものは排除しておく方がいいだろう?」
ムキじぃーちゃんの言葉に、間違いはなかった。
しかし...。
どうしたものかと、皆が思っていた時だった。
『だったら、お前達の誰かが小さくなって、体験したらいいだろう?』
いきなり、そんな声がした。
しかし、それは声だけで姿がない。
『主人と、その兄では危険なら、お前達の誰かが小さくなればいい。
なら、その2人に害はなかろうて?』
また、声だけでする。
皆は周りを警戒しながら、様子を伺う。
すると、【聖獣】のフウちゃんが、その声に異議を唱え出した。
『【大聖霊】様いきなり、その様な事を言っても駄目ですのう。
まず、誰か小さくするのう?
それに、我らも主人以外の人間を助ける気は、まったくないですのう。
それでもよろしいですのう?』
フウちゃんのその言葉に、ギョッとするお父さん達。
すると、私とお兄ちゃんの側に、声の主が現れた。
その人物とは...。
『フウよ。そんな事言うでない。
此奴らに害があれば、主人は悲しむぞ?
良いのか?』
その人物とは...と言うと、【時の大聖霊】だった。
『我なら、たやすくそ奴らを小さくできるぞ?
何、問題はない。身体の"時"を逆走させるだけだ。
まぁ~、多少の反動は元に戻った時に来るが、命に関わる程ではない。
どうする?やるか?やらないか?』
いきなり現れて、突拍子もない事を言い出す【大聖霊】に、皆は困り果てる。
【時の大聖霊】のオリジンが、皆からの返事を待ちながら、私とお兄ちゃんに悪戯をしようとすると、それをドラしゃんが妨害する。
『お前...やるなぁ~。私が、何者かわかってしたのか?』
『お2人の眠りを妨げる輩に対しては、たとえ神といえど、私は容赦は致しませんよ。』
ドラしゃんは、そう言って臨戦体勢をとる。
一触即発の事態になった時だった。
「なら、ワシをいっとき、子供に戻してくれ!ワシが試して、確認すれば良いじゃないか?!」
ムキじぃーちゃんがそう言って、名乗り出たのだ。
ムキじぃーちゃんの言葉に、皆は目が点となるが、ドラしゃんとオリジンは、勝負を妨害され少しムッとしていた。
オリジン:
ドラゴン風情が、私に逆らおうとはなぁ~。
ドラしゃん:
たかが【大聖霊】ごときが、何をいいますか?
お2人の眠りを妨げるなんて、許しませんよ^ ^
オリジン:
ほう...私の機嫌を損ねると、此奴らに害が及ぶかも知れんのにか?
ドラしゃん:
まさか?こんな事で?
どんだけ、ケツの●が小さいのでしょう?ʅ(◞‿◟)ʃ
痔持ちですか?
オリジン:
ほぅ~...よくもペラペラと...。
その皮剥いで、絨毯にしたろうか?
ドラしゃん:
出来るものならやってみろ...ですね。
フウちゃん:
いい歳をした大人が...やれやれですのう。
オリジン・ドラしゃん:
あーー?!なんかいったか?
毛、むしるぞ!!
フウちゃん:
T^T
えっ?!いつのまに?って言う感じで驚きのあまりしばらく固まってしまったぐらい。
だって...私とお兄ちゃん、最後に記憶にあるのは、少し広めの休憩所の風景だからね。
そのあとはお腹がいっぱいになり、視界が真っ暗になっていたからね。
だから、目が覚めてもその休憩所...あるいは...移動道中で、誰かの腕の中で目が覚めるかなぁ...って思っていたんだけど...どうやらどれも違っていたみたい。
しかし、一体全体どうなっているんだろうか??そもそもここがどこで、どこにいるのかさえ分からなかった。
目が覚めた場所は、なんらかの建物中かも分からない。
???えっ??何で???
しかも、私とお兄ちゃんは、ちゃんと"お布団"に入っているし、今もお布団の上でいる。
起き抜けだが...全く状況が掴めずにいる。
布団に入ったまま、混乱していると目の前の扉?らしきものが開いたと思ったらお母さんが笑顔で入って来た。
「あっ!アキラ。リン。やっと起きたのね。どう?2人が寝ている間に、完成したのよ。」
そう言いながら、私達が寝ている間の事をお母さんは全て話してくれた。
まず、私とお兄ちゃんは3日間程眠っていたとの事だ。
ドラしゃん曰く、休憩所近くに"眠り花"と呼ばれる、眠りを誘う作用のある花が咲いていたので、その花粉を誤って吸い込んで、眠っているのでは?との事だった。
お母さんとお父さんが来たので、精神的にホッとしてなお、眠りが深くなったのだろうと。
言われてみれは、休憩所近くに少し大きめの綺麗な、花が咲いていたのは記憶にあった。
しかし、そんな作用のある花だとは思わなかった。
お母さんもしらなくって、あれからこの世界の植物について色々勉強していると教えてくれた。
"眠り花"は、大人には効果がなく、赤ちゃんや子供にしか効果がないのだとか。
その為、夜泣きの激しい赤ちゃんや寝付きの悪い子供がいると睡眠導入剤代わりに使われているそうだ。
副作用も全くなく、ねくじょもなくすんなり眠るので、一般的にも使われているものなんだって。
しかし、ここまで効果があるのは珍しいのだとか...。
だから、私とお兄ちゃんが起きるまで、皆が交代で様子を見ていたと教えてくれた。
あと、私とお兄ちゃんが寝ている間に、お父さん、ドムじぃーちゃん達に【大聖霊】や【聖獣】達が張り切って、街をたった2日で完成させたというのだ。
今度の街は、海から来る潮風による被害が出やすい事を懸念して、堤防や防波堤はもちろんのこと、防風林なども設置したりしたんだそうだ。
建物は、多少水没しても大丈夫な様に、高床式の建物にしているという。
ぱっと見は、"樹の家の森"だとか...。
いまいち光景が思い浮かばないが、"みれば感動するよ"ってお母さんが笑顔で言うので、わくわくして直ぐにでも見に行きたくなった。
お母さんの話を聞いている間、私とお兄ちゃんのお腹の虫が合唱しだす。
まる3日間なにも食べてないので、お腹が鳴るのは仕方がなかったが、あまりにも盛大にアピールするのでかなり恥ずかしかった。
お母さんは、私とお兄ちゃんのお腹の合唱を聞いて、クスクス笑い出す。
「そんな事だと思って、ご飯の準備もしてあるわ。皆んな、心配しているから会いにいく?」
お母さんの言葉に頷き、着替えをすませて、皆の待つ場所へとお母さんと一緒に向かった。
私達が居る建物は、全部"樹"を使って作られていた。床も壁も天井もだ。
歩く度に、樹々のいい匂いがする。
廊下を出てすぐの扉を開くと、なんと吊り橋があるではないか?!!
しかも、そこから見える景色は緑一色だった。
「えっ?!」
「凄ーーい!!!」
私とお兄ちゃんは思わず立ち止まり、周りを見渡した。
大きな大木を上手く活用して、樹の幹や太めの枝に家が造られていたのだ。
家だけでなく、移動できる様に廊下や吊り橋、橋に階段も木々や木の幹を上手く加工して作られている。
まるで、妖精やエルフの住処の様な風景だった。
お母さんがさっき言っていた、"樹の家の森"の意味が分かった。
私とお兄ちゃんが、景色に見惚れていると向かいの吊り橋にある人物の姿が見えた。
しかし、その人物は本来ならいないはずだった。
その人は、私とお兄ちゃんの姿を見て大きく手を振って声をかけてくれた。
「おーい。リンちゃん。アキラくん。起きたかぁーい!早くおいでよ。皆首を長くして待ちくたびれてくよ。」
なんと、街に居るはずのラミィお兄ちゃんがそこに立っていたのだ。
私とお兄ちゃんは、その場所が地上よりかなり離れている場所である事も忘れて、ラミィお兄ちゃんの方を目指して走り出す。
その姿を見て、お母さんもラミィお兄ちゃんも大慌て。
しっかり造っていると言っても、一歩間違えたら地上に落ちてしまうのだから。
「ちょっ!リン!アキラ!走らない!」
「リンちゃん!!アキラくん!!駄目だよ!走らないでぇー!!」
お母さんとラミィお兄ちゃんの叫び声に、部屋で待機していた面々も姿を現す。
そして、目の前で走りまわる私とお兄ちゃんの姿を見て、皆の顔は真っ青になった。
あと少しで、たどり着くと思った時だった。
私とお兄ちゃんは、吊り橋の板に躓いてしまい、走っていたのもあり勢いあまって、吊り橋の横の隙間から落ちてしまったのだ。
私とお兄ちゃんは、何が起きたのか分からず視界が下がっていくのを、不思議そうな顔をして見ていた。
見ていたお父さん、お母さん、ラミィお兄ちゃん達は、悲鳴を上げてる。
それを聞いて、私とお兄ちゃんは自分が落ちていることに気づいた。
あー、どうしよう...と思った瞬間だった。
樹々の隙間から蔦が網状に張り巡らせて、私とお兄ちゃんはその中に上手にすっぽり落ちたのだが...なんと蔦が籠状になっていて、私とお兄ちゃんの落下の衝撃で跳ね返り、今度は上に飛ばされることに。
ありゃ???
瞬きをして今度は上に上がる景色を見つめていると私とお兄ちゃんの前にドラゴンが。
ドラゴン姿のドラしゃんに見事キャッチされたのだった。
『お嬢様...坊っちゃま...お願いです。私達の寿命を縮めさせないでください...。
一歩間違ってたら、大怪我だけではすまないんですよ...。お願いですから...。』
ドラしゃんは、そう言いながら私とお兄ちゃんを安全な場所まで運んでくれた。
私とお兄ちゃんが無事なのを確認して、皆その場に座り込む。
『おてんばすぎるのは、かまいませんが...それは、時と場合によります。
この様な、地上からかなり離れた場所で、あの様に走り回るとどうなるか、もうわかりましたよね?二度目はありませんよ!!』
珍しく、強めにお説教するドラしゃん。
私とお兄ちゃんが涙目になっても、誰も止めなかった。
そりゃそうだろうなぁー...。
皆が思っている事を、ドラしゃんが代表して言っているのだから...。
私とお兄ちゃんは、素直にごめんなさいをした。
とりあえず、全身チェックを受け、怪我等がない事を確認すると、お母さんから会心の一撃...ゲンコツを貰った。
かなり痛かったが、自分達が悪い事をしたから仕方がなかった。
しかし、運良く蔦が張り巡らされたのはどうしてだろうか?
と、疑問に思っているたら...。
そりゃそうだよね。
蔦の犯人は、ドライアドだ。
樹々の多いこの場所は、ドライアドにとっては有利な場所なので、とっさの対処も余裕で出来たのだった。
とりあえず、私とお兄ちゃんは皆と一緒に食事をとることにした。
もちろん食事中も皆からはお説教の小言を沢山貰った。
ご飯を食べ終えて、一通り小言も貰ってから、改めて皆から色んな話を聞いた。
まず、なぜラミィお兄ちゃんが居るのか。
それは、私とお兄ちゃんが中々目覚めなかったからだ。
ラミィお兄ちゃんは、エルフなので植物に詳しい為、ドラしゃんが急いで連れて来たのという。
そして、眠っている私とお兄ちゃんは、ラミィお兄ちゃんに診察して貰らい、問題はないと分かったのだが、一応起きるまでは、ラミィお兄ちゃんもここに滞在してくれていたのだと言う。
そして、この街を作りにあたって協力もしてくれたのだ。
エルフは、自然に生えている樹々のや植物を上手に活用、加工して住処にして暮らしているので、その知恵をこの街に活用したのと話だった。
この街にも、もちろん船着場は造っている。
ノームの力を借りて、土地を少し段差をつけながら高めにしていた。
街の中心部のみが、この樹々の住処で周りは、段差を利用した段々畑の様な造りの家にしてあるとか。
常に、高波や暴風が襲うわけではないので、地上近くでも生活したい人もいるだろうと言う意見もあり、二段構えの造りの街にしたんだそうだ。
もし、高波が押し寄せて来たら中心部のこの樹々の住処へ避難できる様にしてあるんだとか。
あと、避難所としての空き家を多めに設置してあるという。
何より、樹々の住処ならエルフやハーフエルフでも住めるし、鳥系の獣人とかも住みやすいのだとか。
色んな種族が住める様にと考えられて造られた街になっていた。
外から見ると街の中心部に森がある感じに見えると、ラミィお兄ちゃんが話してくれた。
地上近くの家は、全て高床式にしてあり、多少の浸水しても大丈夫な作りにしたと、ドムじぃーちゃんが教えてくれた。
倉庫や食料庫など、水に浸かると困るものは、全て高めの位置に設置してあるという。
街のギルドは、もちろんこの樹々の住処に造ってあった。
「街の中心部だからな。災害が起きても起動できる様にしておかんとなぁー。
これも、ラミィーの意見だ。いや、今回も初めて尽くしだからよぉ~かなり助かったぜ。
最初は、地下に街を造ろうかと思っていたんだが、土的に向かないと【大聖霊】様方が言うので、こんな感じになったが。これもこれで、味があっていいだろう?」
ドムじぃーちゃんは、そう笑顔で語る。
私達が寝ている間に、色々あったみたいだが...。
それでも起きなかった私達って...。
「しっかし、寝てても心配はかけられるし、起きたら起きたらで、寿命を縮める様な事をするし...。お前さんらは、飽きさせないわ。
だか、ちゃんと起きてくれて良かったよ。やっぱり、お前さん達の元気な姿を見ないとな、俺たちは...なんだ?ほら、あれだよ、あれ!」
「落ち着かないんですよ。ソワソワしてね。ですから、無茶をしたりするのは、よして下さいね。」
ドムじぃーちゃんとラミィお兄ちゃんの言葉に、他の皆も"うんうん"って頷いていた。
私とお兄ちゃんは、少し照れくさかった。
でも、そう言ってもらえて嬉しかった。
『しかし、今回の件で吊り橋に改善余地がありましたね。
まぁ~、あんな事はそうそう無いと思いますが、全く無いとは言えないので、早急に対処しておきましょうか?』
ドラしゃんのその言葉に、ドムじぃーちゃん達は真剣な顔付きになる。
「確かに。今回は、運が良かったからいいけどよ、毎回あんな感じにはならないだろ?」
ドムじぃーちゃんの言葉に、いつのまにか出て来ていたドライアドが答える。
『当たり前ですわ。主人達だったから助けたまでの事ですわ。』
しれっと答えるドライアドの言葉に、大人達は"ですよね..."って言う表情を浮かべる。
「しかし、どうするよ。あまり囲いすぎると重くなって、ちぎれるぞ?」
「板にするにしても、無理がありますよね?」
「何か、他に代用出来るものないか?」
皆は、それぞれ意見を出し合っていた。
大人なら、今の吊り橋でも問題はない。
耐久性もそれなりにあるから。
だが、私やお兄ちゃんみたいな子供の場合は、そうもいかなかった。
予想外の行動はとるし、何より小柄なため隙間から簡単に体が抜け落ちるリスクが高いというのが、今日の出来事で判明したしね。
小柄なドワーフでも、厚みがあるので途中で引っ掛かるので、どうにかなるのだが...。
せっかく、完成したと思ったのだが...こちらもまた、改装が必要という意見になった。
せっかく、私とお兄ちゃんが寝ている間に完成した西側の街だったが、私とお兄ちゃんが起きて早々にやらかした騒動にて、欠点が発覚した。
まぁー、早めに分かったから対処はいくられでもできるので、早速その対応をすることに。
それは、街の中心部に多く設置してある吊り橋の改良だ。
耐久性と伸縮性が特化し、腐敗しにくい種類の蔦を何種類か組み合わせて造られた吊り橋。
見た目的にも、機能的にも申し分ないのだが...。
今回の件で、ある盲点がわかったのだ。
それはと言うと...小柄で、重さも幅もない子供にとっては、危険なものだと言う事だった。
普通に歩いて渡る分には、問題ない。
大抵の場合は、必ず側に保護者が居るからだ。
しかし、今回みたいに子供達だけで、走り回り躓く様な事が起きれば...。
そう考えると、何か対策をとらないといけない。
まず、そんな事は起こってはいけない事だし、起こらないはずなんだが...だが、実際に、しかもほんの数分前に、目の前で起きた出来事の為、今後同じ事が起きないとは、誰も断言できなくなった。
まぁ~、正直な話、子供はどんな行動をとるかは不明な生き物だからね。
現在進行形で子育て中のお母さんが、困り果てている皆に向かって愚痴をこぼす。
「我が子ですら、まさかあんな行動をするとは、私も想定外だったわ。
普段は、対して活発に動こうとはしない子なのに...。
よりにもよって、吊り橋の上で...。」
お母さんのその言葉に、他の人達は"うんうん"と頷いていた。
「でも...それはきっと、他の子供にも当てはまる事だと、私は思うの。
だって、相手は子供よ?
我が子ですらねぇー?だったら、なおさら他の子供なんて、どんな事をするかは予測なんかできないわ。」
「確かに、常に子供には親、もしくは大人が側に着くのは当たり前だが。
毎回そうとは限らない場合があるよね。
側にいても、子供ってほんのちょっとの差で、動きだすから。
しかも、すばしっこいたらありゃしない。駄目だと言っても止まらないし...。」
お母さんに続いて、お父さんまでもそう話出す。
私とお兄ちゃんにとっては、耳が痛い話だ。
「そうだなぁー。俺も、まさかあんな事が起きるとは、想定して造らなかったからなぁー...。
かと言って、子供は渡らすな...って制限はつけれんしなぁー。」
「そうなれば、やはり物自体をどうにかしないといけないですよね...。」
「実際に、子育て中の方がそう言ってますし、我々も先程その、想定外を目撃したばかりですし...。」
そう言って、皆で頭を捻りだす。
私とお兄ちゃんは、珍しくシュンっとなって、その場で小さくなる。
すると、ドラしゃんが優しく私達の頭を撫でた。
『しっかり反省されるのは、良い事です。しかし、我々にとって先程の事は、ある意味でありがたい事です。』
そう話すドラしゃん。
私とお兄ちゃんは、意味が分からずドラしゃんを不安気に見つめる。
すると、ドラしゃんはフッと微笑して言葉を続けた。
『確かに、先程の行動は誉められる行動ではありませんでした。
が。が、ですよ?
お2人があの行動をとってくれたおかげで、大事故が起こる前に、欠点を見つける事が出来たのは、良い事です。
もし、あの行動がなく、ここがこのまま街として稼働して、ここに住んだ人達の子供が、先程のお2人の様な事をされたらどうなると思いますか?』
そう言って、私達を見つめるドラしゃん。
周りの人達も、ドラしゃんの言葉をじっと聞いていた。
そんな中、お兄ちゃんがボソッと呟く。
「落ちて...そのまま死んでしまう...。」
お兄ちゃんのその言葉に、私はゾッとした。
ドラしゃんは、静かに頷き言葉を続けた。
『そうです。今回は、お嬢様と坊っちゃまだたから。お2人が、【大聖霊】と契約をされているから、助かっただけです。
そうでないなら、今頃こうやって話もできなければ、触ることもできません。』
ドラしゃんの言葉を聴きながら、私はある事を思い出していた。
そう...この世界に来る前の出来事だ。
あの時も私達は、事故で死んでいた。
かろうじて、私は瀕死だったが...きっと死んでいただろう。
それを..."運良く"神様に救われて、この世界に来たんだ。
しかし、それが今後もあるとは限らないのだ...。
人間、いや...命あるもの死んだら終わりなんだ...。
幼いながらも、私は"本当の意味で"大人達が、心配していた理由を本能的に悟った。
私...いや...横でいるお兄ちゃんも、静かに涙を流していた。
『ようやく、お2人には意味を理解して頂けましたか...。
どうか、危険な行動は辞めてください。"命"は..."命"を大事にして下さいね。』
ドラしゃんはそう言って、涙を流す私とお兄ちゃんをそっと抱きしめてくれた。
私とお兄ちゃんは、しばらくドラしゃんの腕の中で泣いた。
そして、泣き疲れてまた眠ってしまった。
皆は、やれやれと言った表情を浮かべながら、泣きながら眠りにつく私とお兄ちゃんを見つめていた。
「これで、わかってくれたらいいんだが...。」
「あら?もう、2人とも理解したわよ。」
お父さんとお母さんは、そう言って私とお兄ちゃんの頭をそっと撫でる。
「しかし、どうする?どう変えるんだ?建物ごと変えるのは、また難しいぞ?」
「魔法で、...と言いたいところですが、かなりの膨大な魔力を消費する事になるので、難しいですね。」
ドムじぃーちゃんとラミィお兄ちゃんは、そう言って悩み出す。
「吊り橋以外にも、こいつらに走らせて、危険な部分がないか確かめるのはどうだ?」
ムキじぃーちゃんが、いきなりそんな事を言い出した。
さすがに、皆は反対した。
「確かに、子供にとっての危険は、子供で無いとわからんが、リスクが高すぎるわ!!」
「毎回、【大聖霊】様方が助けてくれるとは限りませんよ?!
そんな危険な事させれませんよ!!」
ドムじぃーちゃんとラミィお兄ちゃんに、責められるムキじぃーちゃん。
しかし、ムキじぃーちゃんはひかなかった。
「さっきも、フレアが言ってたじゃないか。実際に、他の誰かが住み出す前に気づけて良かったって。
だったら、他にも危険な物があるかも知れないだろう?
しかも、今回の造りは初めてなんだからよ。だったら、少しでも危険なものは排除しておく方がいいだろう?」
ムキじぃーちゃんの言葉に、間違いはなかった。
しかし...。
どうしたものかと、皆が思っていた時だった。
『だったら、お前達の誰かが小さくなって、体験したらいいだろう?』
いきなり、そんな声がした。
しかし、それは声だけで姿がない。
『主人と、その兄では危険なら、お前達の誰かが小さくなればいい。
なら、その2人に害はなかろうて?』
また、声だけでする。
皆は周りを警戒しながら、様子を伺う。
すると、【聖獣】のフウちゃんが、その声に異議を唱え出した。
『【大聖霊】様いきなり、その様な事を言っても駄目ですのう。
まず、誰か小さくするのう?
それに、我らも主人以外の人間を助ける気は、まったくないですのう。
それでもよろしいですのう?』
フウちゃんのその言葉に、ギョッとするお父さん達。
すると、私とお兄ちゃんの側に、声の主が現れた。
その人物とは...。
『フウよ。そんな事言うでない。
此奴らに害があれば、主人は悲しむぞ?
良いのか?』
その人物とは...と言うと、【時の大聖霊】だった。
『我なら、たやすくそ奴らを小さくできるぞ?
何、問題はない。身体の"時"を逆走させるだけだ。
まぁ~、多少の反動は元に戻った時に来るが、命に関わる程ではない。
どうする?やるか?やらないか?』
いきなり現れて、突拍子もない事を言い出す【大聖霊】に、皆は困り果てる。
【時の大聖霊】のオリジンが、皆からの返事を待ちながら、私とお兄ちゃんに悪戯をしようとすると、それをドラしゃんが妨害する。
『お前...やるなぁ~。私が、何者かわかってしたのか?』
『お2人の眠りを妨げる輩に対しては、たとえ神といえど、私は容赦は致しませんよ。』
ドラしゃんは、そう言って臨戦体勢をとる。
一触即発の事態になった時だった。
「なら、ワシをいっとき、子供に戻してくれ!ワシが試して、確認すれば良いじゃないか?!」
ムキじぃーちゃんがそう言って、名乗り出たのだ。
ムキじぃーちゃんの言葉に、皆は目が点となるが、ドラしゃんとオリジンは、勝負を妨害され少しムッとしていた。
オリジン:
ドラゴン風情が、私に逆らおうとはなぁ~。
ドラしゃん:
たかが【大聖霊】ごときが、何をいいますか?
お2人の眠りを妨げるなんて、許しませんよ^ ^
オリジン:
ほう...私の機嫌を損ねると、此奴らに害が及ぶかも知れんのにか?
ドラしゃん:
まさか?こんな事で?
どんだけ、ケツの●が小さいのでしょう?ʅ(◞‿◟)ʃ
痔持ちですか?
オリジン:
ほぅ~...よくもペラペラと...。
その皮剥いで、絨毯にしたろうか?
ドラしゃん:
出来るものならやってみろ...ですね。
フウちゃん:
いい歳をした大人が...やれやれですのう。
オリジン・ドラしゃん:
あーー?!なんかいったか?
毛、むしるぞ!!
フウちゃん:
T^T
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