異世界で家族と新たな生活?!〜ドラゴンの無敵執事も加わり、ニューライフを楽しみます〜

藤*鳳

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第四章 新しい国誕生!〜国の設立と同盟〜

4-34 街を改善して新しい街に

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 街の構造に他の欠点がないかを、子供目線で探しに行く為に、自分を小さくするよう名乗り出たムキじぃーちゃん。

その言葉に、周りはかなり驚いていたが、安全確認のために私やお兄ちゃんを使うよりかはいいだろうと言うことにはなった。
何せムキじぃーちゃんは本気だったからね。

そのムキじぃーちゃんの提案に協力したのは、言い出しっぺでもある【時の大聖霊 オリジン】。

彼は、【大聖霊】の中でも高位種と言うのもあり、使える魔法も独特なのだ。

『お前だけ、時を戻し子供の姿にしてやる。もちろん、中身は今のままだ。
身体のみ、時を戻す。
 ただし、体を元に戻した時の反動はかなりキツいぞ。
私も、どうなるかは分からん。
それでもやるなら、まぁ~極力努力はしてやるが...どうする?』

オリジンの言葉に特に悩みもせずに、ムキじぃーちゃんは返事をした。

「かまわねぇ~。こんな体験滅多にできねえんだ。やる!」

ムキじぃーちゃんの言葉を聞いて、オリジンはムキじぃーちゃんの身体のみ時間を巻き戻していく。

すると、みるみる内にムキじぃーちゃんは子供の姿に。

『これでいいだろう。だいたい、5歳ぐらいの年代に戻したが...どうだ?』

オリジンの言葉を聞いて、ムキじぃーちゃんはとりあえず身体を動かしてみる。

すると...。

「スッゲェ~!軽い!視線も低いし!」

ムキじぃーちゃんは小さくなった体で飛び跳ねたり、走り回ったりして確かめていく。
姿もそうだが、声まで変わったムキじぃーちゃんの姿を周りで見ていた人達は、かなり驚きを隠せてなかった。

目の前で、ムキじぃーちゃんがリアルタイムで子供の姿になったのだから無理もない。

『服はサービスだ。元に戻す時も、服も一緒に戻してやるから。やる事が終わったら呼べ。じぁーなぁ~。』

オリジンは、そう言うと姿を消す。
ドラしゃんを含め、皆はどうしたものかと、固まっている。

1人だけ元気にはしゃぎ、話出すムキじぃーちゃん。

「よし!じゃぁー街の確認いこうぜ!
ワシ1人でも良いけどよ、改装とかするなら誰か一緒の方がいいだろう?
誰が行くんだ?!」

ムキじぃーちゃんの元気溌剌なその言葉に、周りで固まっていた大人達はハッとなり

「なら、私が行きます。」

「俺もだ。」

「なら、私達も一緒に。」

そう言って、お父さんとドムじぃーちゃん、カカン、カシンが名乗りをあげていく。

それ以外の人達もついていくと名乗りをあげたが、全員で動き回っても意味がないとなり、最初に名乗りをあげたメンバー以外はとりあえず待機となった。

私とお兄ちゃんが寝ているし、何かあった時に直ぐに動ける様にとのことでだ。

街の点検に行くメンバーも決まり、早々に活動を開始する。

小さくなったムキじぃーちゃんを先頭に歩いて行く一行。

しかし、どこかぎこちない雰囲気が...。

「しかし、子供の頃ってこんなに身軽なもんだったんだなぁー♪
  目線もここまで低いとは...。リンやアキラは、いつもこんな世界を見ていたんだなぁー。」

や。

「おっ!なんだアレは?!ヘェ~、視点が下がるとこんな風に見えるのかぁー...。意外だなぁー...。よっこらせっと...。おわわっ!!」

など...。

見た目は子供で、声も普段のムキじぃーちゃんとは違っているのに、喋り方行動はムキじぃーちゃんのままなのだ。

あまりにも違和感があって、なんとも言えない状況だったみたい。

こんなんで大丈夫か?と、皆が疑問に思い出した時だった。

「おっと!あっぶねぇー!!
おーい!誰がたすけてくれぇー!」

先頭きって歩いていた、チビムキじぃーちゃんが、吊り橋の板と板の隙間に足が抜けて落ち、挟まって身動きがとれなくなり助けを求めたのだ。

チビムキじぃーちゃんの声にハッと反応する一行。

助けを求めるチビムキじぃーちゃんの所に速やかに移動して救出作業を行う。
なんとか、救出して安全な場所まで移動して、全身チェックを行った。

特に怪我もない事がわかり、何が起きたかを一つ一つ確認する。
すると、また新たな事がわかった。

大人の時だと、ある程度の歩幅があるので板と板の多少の隙間は、特に気にならなかったのだが...。

「子供に戻ると身体も小さくなるのと同じで、歩幅も小さくなるんだよ。
それで、わかったんだが。
多少の板と板の隙間でも、歩幅の狭い子供では、さっきみたいに足がとられんだ。
 そんでもって、案外自力で脱出が出来ないもんだ。子供からだってよ、大人よりかなり軽くて身軽なんだけど踏ん張りが弱いんだ。自分が思っているよりかは動けねぇ~わ。」

その為、大人の時はなんともなかった隙間も、子供にとってはかなりの命取りの隙間である事に気付いたのだ。

チビムキじぃーちゃんの言葉に、一行は素直に驚く。

「あと、隙間でこんなんだから、段差とかもかなり危ないかもなぁー。
階段とかを走り回らない...と言う確証はないからなぁー...。」

チビムキじぃーちゃんの意見を、お父さんはメモを残して行く。

カカンとカシンは、早速吊り橋の改装を始めようとしたが、ドムじぃーちゃんが止めた。

「どうして止めるんですか?親方!!」

カカンは、ドムじぃーちゃんにそう質問すると、ドムじぃーちゃんが返事をする前にお父さんが答えた。

「まだ一つ目です。一回一回直していては、キリがないので全部確認してから一気に直しましょう。
その方が、材料や労働力の無駄が防げます。
 それに、いつまでもムキじぃーちゃんをこの姿にしておくのもどうかと思うので。」

お父さんの言葉に、ハッとするカカンとカシン。

確かし、いちいち立ち止まって直していては、時間も材料も無駄ができてしまう。

それに...ムキじぃーちゃんも、ずっと子供の姿に留めておくのも後々が...。

今回はお父さんの意見を素直に聞き入れ、確認作業を優先する事にした。
一行は、次々と街を全部歩き回った。
すると、出てくるわ出てくるわ。
チビムキじぃーちゃんの視点で確認した、落とし穴(欠点)が。

大人であるお父さん達だと、えっ?こんな事が?って言う事ばかりだったが、実際に子供姿をしたムキじぃーちゃんが言うのだからそうなのだろう。

大きな怪我はしなかったが、何回か命の危機を感じるトラブルがあったし...。
全てを見て回る頃には、日が暮れて来ていた。

とりあえず全て確認して終えたので一行は、私達が居る場所へ戻る事にした。
なんとか無事に戻って来た頃には、私もお兄ちゃんも目覚めていた。

そして、チビムキじぃーちゃんを見て大興奮したのは、言うまでもない。

チビムキじぃーちゃんを私とお兄ちゃんの2人がかりで揉みくちゃにして、ズタボロになっているムキじぃーちゃんを、なんとかお母さんが救出した。

とりあえず、街の点検が終わった事をお父さん達から確認できたので、お母さんは私にオリジンを呼ぶ様に言う。

もっとチビムキじぃーちゃんと遊びたい私とお兄ちゃんは、反対したが...お母さんの頭にツノが生えてきている気配を感じたので、急いで呼んだ。

『おや?もう用はすんだのか?』

私が呼ぶと、どことなく現れるオリジン。

「あー、ありがとうよ。おかげで、全て確認できたわ。元の姿に戻してくれるか?」

ムキじぃーちゃんは、オリジンにそう伝えるとオリジンは素直に頷き

『かまわないよ。ただし、この反動は必ずくるから...覚悟しておくんだよ。』

そう言って、オリジンはムキじぃーちゃんを元の姿に戻す。
あんなに可愛かったのが...いつものじぃーちゃん姿に。

私とお兄ちゃんは、がっかり。
すると...。バタンッ!!
大きな物音がしたと思ったら、ムキじぃーちゃんが倒れたのだった。

「ムキじぃーちゃん!!」

皆いっせいにムキじぃーちゃんの側に駆け寄る。

「グヴェーーッ。かっ、からだが...。」

どうやら意識はあるようだが、ムキじぃーちゃんは倒れた姿のまま動こうとしない。

『いったろう。反動がくるって...。本来ならじじぃの身体なんだ。
それを、無理矢理魔法で若返らせたんだ。ただですむわけないだろう?
まぁ~、命がなくなるわけではないんだ。4~5日動けなる程度だろうよ。
じぁー、私は仕事に戻るよ。』

そう言うと、オリジンはまたどこかに消えていった。

「まさか子供の姿に戻るのに、そんな反動がくるとは予想しなかったわい。
多少の筋肉痛程度だと思っていたのだが...ここまでとは...。」

苦悶の表情を浮かべながら呟くムキじぃーちゃん。
それは、当の本人もそうだが、周りの人達も同じ気持ちだった。

「迂闊に若返りたいとは...言えませんね。」

ラミィお兄ちゃんの言葉に、皆は無言で頷いた。

「ちっ、チキショウ...。まっ、全く...力が...はい...らねぇー...。」

どうやら話すのもキツそうなムキじぃーちゃん。

とりあえず、ドラしゃんがデカイのがそのまま寝転がられては邪魔と言って、魔法で浮かせて場所を移動させた。

それを見てお母さんはお布団を用意し、とりあえず今日は布団に寝たままムキじぃーちゃんはご飯を食べる事に。

もちろんお母さんの介助付きだ。

皆で夕食を食べながら、街を点検してわかった事を話し合う。

そして、翌日から手分けして改装作業を行う事に。

ムキじぃーちゃんは、動ける様になるまで大人しく...というか、動けないので仕方がない。

そして、交代で1人ずつムキじぃーちゃんの側について、介助(介護)を行なう事が決まった。

 チビムキじぃーちゃんの活躍により、街の欠点(修繕箇所)を細かく知る事が出来た。

それは、皆が想像していたよりかなり多く、"えっ?こんな事が?!"って言う内容がほとんどだった。

でも、"そんな事が?!"がって言うのは、あくまでも"大人目線"でのものだ。

今回チビムキじぃーちゃん達が調べたのは、"子供目線"でのものだからね。

内容には、吊り橋の板と板の隙間や階段の段差。
階段の角度、手すり、吊り橋の繋ぎの隙間、廊下から階段への繋ぎの段差など多数あった。

しかも、確認時にはチビムキじぃーちゃん自身が、怪我をしそうになっていたので、間違いはない...。

付き添って行ったお父さん達も、ドラしゃん達にどれだけ確認してきた内容が大事なことかを熱意を込めてアピールしていた。

そのおかげもあって、全員が今回確認して来た部分の改装をする事を承諾してくれた。

チビムキじぃーちゃんの努力は、報われたのだった。

まぁ~、頑張ってくれた分、ムキじぃーちゃんの身体には大きなダメージが加わり、暫く身体を動かす事ができなくなったが...。

自力で身体を動かす事ができなくなった為、しばらくムキじぃーちゃんは戦線離脱を余儀なくされた。

その分、残りの皆で手分けして作業を行う事に。

もちろん私とお兄ちゃんもだ。
...と、言いたい所が...。へへへっ。

私とお兄ちゃんの役割は、改装途中に不備がないか"試し"と言うなの確認をするのと、改装後の安全性の確認作業だけだった。

あとは、呼ばれるまでムキじぃーちゃんの側に居た。

私とお兄ちゃんの代わりに、無理をしたので付き添い役をお母さんに命じられたのだった。

別に嫌ではなかったので、心よく了承した。

それに何より、私とお兄ちゃんが身体をさする方がムキじぃーちゃん的には、良かった様だ。

力加減も絶妙で、私とお兄ちゃんが触った所は心なしか痛みが引いていくと、ムキじぃーちゃんが教えてくれたからね。

その事もあり、私とお兄ちゃんは心を込めて、ムキじぃーちゃんのお世話をしたのだった。

少しでも早くよくなる様にと、願いを込めて...。

さすれるだけ、さすり通したのだった。

その甲斐もあったのかは....?分からないが、ムキじぃーちゃんの回復は、オリジンの予想を遥かに超える速さで回復する事ができた。

最初オリジンは、4~5日かかると言っていたが...。
なんと...たったの3日で回復した。
それには、さすがのオリジンも驚いていた。

回復の兆候は、私とお兄ちゃんが身体をさする様になった初日の晩からだ。

ムキじぃーちゃんが寝込んでから私とお兄ちゃんは、ムキじぃーちゃんの側から離れなかったので、夜も一緒に寝ていた。

自力で寝返りも打つこともできないので、べったり私とお兄ちゃんがくっ付いていても問題ないだろうと、言う事でだ。

しかし...。
まぁ~案の定と言うか...でしょうねって感じで...。

約1人様が、不機嫌になっていた。
が、...今回は...渋々の渋々で、目を瞑ってくれる事に。

そんなこんながありながらも、私とお兄ちゃんがべったりくっついて寝た初日から、ムキじぃーちゃんの身体には異変が少しずつ起きていた。

最初に気付いた時は、ムキじぃーちゃん自身、気のせい?と思っていた様だ。

が...。それが確信に変わったのは、翌日の昼食前の時だった。


 いつものように、私とお兄ちゃんはムキじぃーちゃんの身体をさすっていた。

「いや~、きもちがいいわぁ~。リン、アキラ。しんどくなったら、休めよ。」

ムキじぃーちゃんは、そう言いながらも本当に気持ちよさそうな表情をしていた。
心なしか、喋るのも苦痛そうではなかったしね。

その為、お母さんがお昼ご飯を持ってくるまで、私とお兄ちゃんはムキじぃーちゃんの身体をさすり通した。

なんと、その行為が奇跡を起こすとは知らず...。

動けなくなってからムキじぃーちゃんは、ドラしゃんに魔法で体の向きや首の位置を変えてもらって過ごしていたしね。

その日もご飯を食べるために、ドラしゃんがお母さんとやって来て、魔法で首と体の向きを変えようとした。

すると何故か、ムキじぃーちゃんが止めたのだ。

「ちょっと待て。一回試したい事があるんだ。」

そう言って、ムキじぃーちゃんはゆっくりと自力で、首を動かしたのだ。

『えっ?!おい!痛みは?他は動かせるのか?!』

首を動かしたムキじぃーちゃんに、たたみかける様に質問攻めするドラしゃん。

そんなドラしゃんに、ムキじぃーちゃんは苦笑いしながら答えた。

「恥ずかしい話がよぉ~。どうやら首だけの様だ。あとは、痛くて...ダメだ。」

それでも、たった1日で首が動かせるまでに回復したのだから大したものだと、ドラしゃんは珍しくムキじぃーちゃんを褒めた。

『しかし、なんでだ?回復するには4~5日かかると言ってなかったか?』

ドラしゃんの言葉に、ムキじぃーちゃんは恐る恐る答えた。

「確証はないんだが...。あくまでも、ワシの予想だぞ。」

焦らし気味に話すムキじぃーちゃんに、イラっとしながらも堪えて次の言葉を待つドラしゃん。

「リンとアキラのおかげかもしれん。
2人が摩ってくれると、嘘のように痛みが和らぐんだ。
しかも、夜なんか2人が触っている所は全く痛みがなく、少しばかりだが動かす事ができたんだ。
 今日は、朝から首辺りの痛みが全くなかったから、もしかしても思って...。」

『で、試してみたら首がうごいたと...。』

「あー。その通りだ。」

その会話に、私とお兄ちゃんはびっくり。

特にこれと言ってやってはいない。
本当に、摩っているだけだった。

私とお兄ちゃんは、自分達の手のひらを見つめた。

すると、お母さんから思いがけない言葉が。

「昔から、"手当て"って言って。
人の手って不思議な効果をもたらすのよ?
 お医者さんでも、治すことの出来ない痛みを、なんの資格もない普通のお母さんが、気持ちを込めて摩るだけで痛みを治したって言う逸話があるぐらいだからね。
 人の手って、それだけ優れてるものよ。特に、リンとアキラは"早くよくなりますように"って、気持ちを込めて摩っているでしょう?
だったら、尚更その効果が出たんじゃない?」

あまりにも突拍子もない話だが、現実そうなんだろうと思えた。

「だから、リンとアキラがもっと気持ちを込めて摩ってあげたら、意外にも早く治るかもね。」

お母さんは、そう笑顔で冗談混じりで言ったのだが...。
私とお兄ちゃんは、その言葉を本気にしてしまった。

ムキじぃーちゃんがご飯を食べ終えると、今まで以上に心を込めて摩り倒した。

どんな作用があるのかは知らないが、私とお兄ちゃんが摩っている間ムキじぃーちゃんは爆睡していた。

そして、お母さんの冗談で言った言葉が現実となったのだった。

その日の夕方には、自力で寝返りが打てる様に。
翌朝には自力で座れ、昼には歩ける様になり、夕方には、完全回復していたのだった。

そんなムキじぃーちゃんに、ドラしゃんが一言。

『お前、人間辞めたんだな。』

あまりの超人的な回復に、誰もドラしゃんの言葉を否定しなかったし、出来なかった。

何せ当の本人すら、若干そう感じたからだった。

何はともあれ、無事に回復しムキじぃーちゃんも作業に参加出来るようになった。

が、...。
代わりに、私とお兄ちゃんが今度は眠りにつくハメに...。

死んだ様に眠りにつく私とお兄ちゃんの姿に、ドラしゃんは超焦り。

お母さんとお父さんは、自分達の代わりに焦ってくれているドラしゃんがいたので、返って冷静に対応できた。

焦るドラしゃんに見かねて、【大精霊】達が一言。

『摩っている時に、無意識ながらも魔力を流し込んだみたいですね。』

『不足した魔力の回復を促す為に寝ているだけだから、心配ないよ。』

『あれだけ、毎日摩っていたんだから仕方がない。』

『よく持った方だな。』

『回復したら普通に起きるから心配ないよ。』

『...慌てるだけ...ムダ...。』

『主人たち寝ている間に、今度こそ街を仕上げるわよ!』

『寝る子は育つのよ。』

『そうね。』

『そうだね。』

『そう言う事だ。』

ドラしゃんは、不服そうだが気持ちよさそうな顔をして眠る私とお兄ちゃんの顔を見て、何かをグッと堪えた。

それから私とお兄ちゃんは、丸2日眠った。
今度目が覚めた時には、完全に街が完成していたのだった。

 再度の眠りについて、次に目を覚ますと...今度こそ西側の街が完成していた。

街の造りとしては、最初とは大きく変わっては居なかったが...どことなく雰囲気が変わっていた。

街の中心部は緑中心の街(妖精やエルフの街)で、外側は水害対策を施した高床式の建造物というコンセプトは変わってなかった。

しかし、よく見ると雰囲気がどことなく変わっていた。

子供からお年寄りまで安全に、安心して暮らせる街感が、どことなく漂っていた。

まぁ~実在に暮らしてみると、また違った問題点が見つかるかも知れないが、それはそれで後々対応して行くので問題ない様だった。

ぱっと見では、以前の街とどう違うの?って思われるが、細かく注意して見ると変化がわかった。

外観を大事にしながらも、安全性を重視された仕組みになっていた。

100%安全かと言ったら、まぁ~無理な部分があるが、最初より断然良くなっていた。

ムキじぃーちゃんが身を犠牲にして確認して回った効果はあったのだ。

以前、私とお兄ちゃんがすり落ちた吊り橋の所も、子供でもよっぽどの事がない限り途中で引っかかる様になっていた。

階段も2層式になっていた。
1つの階段が2つに区切られていて、子供とお年寄り用と普通の階段に分けられていた。

子供とお年寄り用の階段は、階段の角度が緩やかで、幅もゆとりある幅になっていた。
そして何より、手すりと滑り止めが付けられていたのだ。

それは、他の段差部分にもみてとれた。
誰が考案したの?と質問すると、皆がお母さんを見つめた。
なんと、滑り止めと手すりに関しては、お母さんの案だった。

幅や角度を変えるだけでも、かなり良いものになるのだが、手すりや滑り止めを付けるか付けないかによって、安全性が変わってくるからだと言う意見を参考にしたと、ドムじぃーちゃんが教えてくれた。

一通り説明を受けてから、新しくなった街を皆んなで見てまわったが、とても素敵な街になっていた。

お父さんとお母さん曰く、"ゲームの世界"みたいだと言っていたが、私とお兄ちゃんにとっては、大好きなアニメの世界に見えた。

街を見て回る道中、私とお兄ちゃんは走り回ったが以前みたいに、事故が起きる事はなかった。

多少の躓きなどは、あったが普通に生活していても予想できる出来事なので、特に問題視されなかった。

「どうだ?この街は。」

ドムじぃーちゃんは、私とお兄ちゃんに質問した。

その質問に対して、私とお兄ちゃんはと言うと...。

「すごい!いい!」

「気に入ったよ!緑もあって、秘密基地みたいだし!」

「ようせいさんや"とろろ"がでてきそうなところだね!」

笑顔で、しかも興奮気味に答えた。
私とお兄ちゃんの回答に、皆は大喜び。

しかし、ふと疑問を感じたカシンが私達に質問してきた。

「あのう...妖精はわかりますが、"とろろ"ってなんですか?」

カシンの質問に、お父さんが苦笑いしながら答えてくれた。

「あー、それはね。この子達が好きな絵本のキャラクターだよ。
こんな感じの森に住む妖精の一種なんだ。
 木のみや花の種を子供達にプレゼントしてくれる良い妖精でね。
子供しか見る事ができない妖精なんだ。
特に、"リン"が"1番好き"でね。
よく絵本を読んでくれってせがまれるんだよ。」

お父さんの言葉に、なるほどって感心しているカシン。

ただ、また1人だけ腑に落ちない顔をしている人物が...。
お父さん達が話している中、1人私の元へ。

そして...。

『お嬢様。私とその"とろろ"どっちがすきですか?!』

真剣な表情で、質問するドラしゃん。
ドラしゃんのその言葉に、その場が一気にシーンとなった。

「えっ?」

私は一瞬何を言われたのかわからず、キョトンとしてしまった。
それは、隣にいたお兄ちゃんもだ。

私が中々返事をしないので、ドラしゃんら同じ言葉をもう一度繰り返した。

『お嬢様。私とその"とろろ"どっちがすきですか?!』

今度はさすがに意味が理解できた。

お父さん達は、呆れ気味に...。
お兄ちゃんは、えっ?!と言う表情をしていたのだ。

私はと言うと...。

「とろろは、あそんでくれないし、いっしょにねてもくれないの。
でも、ドラしゃんはそうじゃないから、ドラしゃんがいちばんスキ!」

と、笑顔で答えた。

もちろんその返事を聞いて、質問した当の本人は御満悦だ。

『それは、良かったです。では、お嬢様私と一緒に歩きましょうか?』

そう言って、笑顔で私を抱っこして歩き出したのだった。

「アイツ、かなり変わったなぁー。」

ムキじぃーちゃんの言葉に、ドラしゃんの事を知っている人達は頷くのだった。

先を行くドラしゃんの後を、皆はやれやれといった感じて付いて歩くのだった。

 
 こうして、街を見て周り特にこれ以上不備がない事を確認して、ドラしゃんは中心の街へ伝言ドラゴンを飛ばした。

西側の街も完成した事と、あと数日したらそちらに一度戻る事をだ。

その日は、ドラしゃんはいつも通り私にべったりだった。

暫くムキじぃーちゃんに貸出し状態だったので、なおべったりとなった。

しかし、誰も咎めるものはいなかった。

何故なら、ムキじぃーちゃんに私とお兄ちゃんが付きっきりの間、ドラしゃんのストレスの吐け口になっていたからだ...。

威圧、威嚇ならまだ可愛いものだ...。

皆んな、自分の命が大切なので見て見ぬふりを決め込む事にしたのだった。

黙々とご飯を食べてゆっくり寛ぎ出した頃、ドムじぃーちゃんがふとある事を言い出した。

「ずっと考えてたんだが...この街の名前はなんにするんだ?」

そうだった。
街は完成したものの、まだ街に名前を付けてなかったのだった。

ドムじぃーちゃんの言葉を聞いて、皆んなハッとした。

どうやら、皆んな忘れていた様だった。

そこで、急遽皆んなで街の名前を決める事になった。

「どうする?何か良い案はあるか?」

ドムじぃーちゃんを中心にして、意見を出し合った。

「北側の街に似た様な名前にした方がいいのか?」

と、カカンが。

「別にかまんだろう。この街らしい名前をつけてやれば。なぁ?」

と、ムキじぃーちゃんが。

「良いと思うわ。この街にぴったりの名前にしてあげる方がいいわね。」

と、お母さんが。

「でも、名付けって難しいですね...。どんな事を考えて付けたら良いんですか?」

と、カシンが。

「そうだなぁー。子供の名前とかだと、この子がどんな子になって欲しいか。
どんな風に育って欲しいか、なんかを考えて付けましたね。」

と、お父さんが。

『では、この街がどんな街になって欲しいか。どんな風に発展して欲しいかを思って、名前を付けたらどうですか?
なら、考えやすいのでは?』

と、ドラしゃんが言うと、皆がそれなら考えやすいと言い出した。

「じぁー、とりあえず思い付いた名前を皆で言ってくれ。
その中で、しっくりくる奴をこの街の名前にしよう!」

ドムじぃーちゃんの言葉に、皆んな口々に名前になりそうな言葉を言い出した。

「海の見える街」

「秘密基地のような街」

「森?いや街だ!」

など、なるほどと言うものから、えっ?!と言うものまであった。

私とお兄ちゃんは、暫く静かに聞いていた。

すると、ドムじぃーちゃんと目が合った。

そして。

「リンやアキラは、どうだ?なんかあるか?」

ドムじぃーちゃんにそう言われて、私とお兄ちゃんは首をひねりながら答えた。

先に答えたのは、お兄ちゃんだった。

「海に浮かぶ森」

そして、それに続いて私が。

「海の中の森」

私とお兄ちゃんの言葉を聞いて、お母さんは暫く考え込みある言葉を呟いた。

「海...浮かぶ...。森...街...。!?
それなら、街の名前は"メーア・フォルスト"にして、ギルド名を"マルティニーク"にしましょう!」

そう言うお母さんに、皆馬不思議そうに見つめた。

「おい?その意味は?」

ドムじぃーちゃんがそう聞くと、お母さんはスラスラと答えた。

「リンとアキラのアイデアをまとめてみたの。
"メーア・フォルスト"は海の森って言うの。"マルティニーク"は、海に浮かぶ島って言うの。
 皆んな、森や街って言葉を使いたいみたいだし、なんかしっくりする気がするのよ。
どう?」

お母さんが笑顔でそう言うと、皆んな暫く考えて口々に呟いていた。

「いいな。」

「うん。しっくりする。」

「名前を聞いただけで、ここが思い浮かぶよ。」

『良いですね。それにしましょう。』

皆んなで、決めた名前。

今日からこの街は、"メーア・フォルスト"。ギルド名は、"マルティニーク"となった。

これも、ドラしゃんが伝言ドラゴンによって中心の街へ伝えられたのだった。












リン:
やったね^ ^
西側も完成したね♪

アキラ:
うん!
やったね。

リン:
でも、今回あまり活躍できなかったね

アキラ:
そうだね。
でも、次は頑張るよ!

リン:
リンも!

ユイカ:
次は、皆んなの居る街へ一度戻るから、忘れ物のない様にしてね^ ^

リン・アキラ:
はーい!(*^▽^*)











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