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第四章 新しい国誕生!〜国の設立と同盟〜
4-49 あの扉と託されたもの
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【大聖霊】達と別れて声が導くまま私とお兄ちゃんは進んでいく。
すると...そこは何もない真っ白な壁しかなかった。
が...とても気になって仕方がなかった。
お兄ちゃんは、その壁を見て何かに気付いた様だが、私はわからなかった。
いや、分かっていたが気にしないうに無意識にしていたのかもしれない。
お兄ちゃんは急いで、私を壁から遠ざけようとしたが...遅かった。
何もなかった真っ白な壁から光が出てきて、気付いたら目の前に大きな扉が現れたのだった。
「駄目だ!リン!この扉は、絶対駄目だ!」
お兄ちゃんは、そう言って私を抱え込んだ。
お兄ちゃんには、以前この扉関係の記憶が残っていたため、かなり警戒していた。
それに比べて私は、この扉に関しての記憶がないと言うか、覚えてないのでお兄ちゃんがそこまで警戒する理由がわからなかった。
ただ、普段穏やかなお兄ちゃんがここまで警戒しているので、この扉には何かあるのだけはわかった。
しばらく私とお兄ちゃんは、現れた扉の前でじっとしていると、扉の中から声が聞こえてくる。
『大丈夫よ。何もしない。ただ、私達はあなた達の力になりたいだけ。』
その声と同時に扉が少しずつ開く。
お兄ちゃんの私を抱きしめる力は益々強くなる。
「お兄ちゃん?」
「駄目だ!リン。絶対駄目だ!」
「でも...。」
そう、押し問答していると扉の中からどこか懐かしい気配がする。
それは、以前ドラしゃんの過去の記憶を見た時に感じだ気配と同じ気配だと私は感じた。
私は力強く抱きしめるお兄ちゃんに対して声をかける。
「お兄ちゃん。だいじょうだよ。」
「駄目だ!絶対に駄目だ!」
「お兄ちゃん!リンが、だいじょぶって、いってるからだいじょうぶなの!!」
いつも以上に頑固なお兄ちゃんに対して私は少し強く言うと抱きしめていた力を少し緩める。
「でも...。」
それでも不安そうに見つめるので、私はニコッと笑って話しかける。
「お兄ちゃんもいっしょだから、だいじょうぶ!」
私はそう言って、お兄ちゃんの手を握りしめる。
すると、お兄ちゃんは少し驚きつつ私が握りしめた手と扉を交互に見つめた。
そして...。
「わかった!でも、この手は何があっても、離したら駄目だからね!」
「わかった!」
そう約束して、私達は手を繋いで扉の中へ入っていく。
私とお兄ちゃんが入ると、扉は自然に閉じる。
扉の中は一瞬真っ暗になったが、淡く光出したのだった。
「リン!大丈夫だからな!」
「うん!」
そう言いながら、お互いの手を強く握りしめながらゆっくりと足を進める。
お兄ちゃんも不安なのだろう、手が少し震えていた。
それでも、お兄ちゃんだからと頑張ってくれていた。
そのおかげもあってか、私は少し落ち着いていた。
落ち着いて周りを見る事ができた。
辺りをよく見ると、足元に壺の様な物が等間隔で置かれている。
恐る恐る、お兄ちゃんに手を引かれながら歩みを進めると、壺が光だす。
思わず私とお兄ちゃんはヒッと言う声をあげて、ふたりで抱き合い固まる。
しかし、よく見ると壺が光っているのではなく、壺の中で青っぽい炎が燃えているのに気付いた。
その炎の光が周りを照らしている。
そのためか、炎が燃えているのに全く暑くはなかった。
私達が歩みを進めるごとに、壺の中の炎が燃え出して灯りが強くなる。
とりあえず、私とお兄ちゃんは壺の先を目指して歩いていく。
歩くたびに、"ボッ!"と音を立てて燃える炎。
青い炎だけあって、幻想的な雰囲気が当たりを包む。
しばらく歩くと、目の前にアーチが見えてその奥に何かが置かれた台座の様な物が見えてきた。
私とお兄ちゃんは、ゆっくりと確実に一歩ずつ歩みを進める。
アーチを潜り、階段を登り台座を覗くとそこには沢山の卵があった。
大きさも色もバラバラだが、間違いなく何かの卵だった。
「えっ?卵?」
「なんの?」
私とお兄ちゃんが、思わずそう呟くと...その声に反応してか、どこからかあの声が聞こえてきた。
『良かった。やっとここまで来てくれたんだね。ここにあるのは、この世界の未来を大きく変える大事な卵だよ。
何が産まれるかはまだ、内緒なんだ。
この卵は、君より君の妹に大きく関わりがあるんだ。
今日はね、この卵を見せるのもあったけど、この奥にある泉に行って欲しいの。そこで待ってるから、ゆっくり来てね。』
その声が消えると、その泉の場所へと導く様に進む場所が青い炎によって照らされる。
卵を暫く眺めてから、照らされた道を進む事にした。
道を進んでいくと、水の匂いがしてきたので、歩くスピードを早めていく。
進んで行くと、そこに見知らぬ女の人がいた。
「お兄ちゃん。あの人かなぁ?」
「たぶん...。」
そう言いつつ、ゆっくりと歩みを進めると...
『ようやく来てくれた。初めまして。』
そう言って、泉の中からゆっくり出てきた女の人。
その姿は、どこかで見たような姿だった。
「あっ!リュモさんとおんなじ!」
私がそう言うと、女の人が優しく微笑む。
女の人の姿は、リュモさんが海に入った時の姿とおんなじだったのだ。
『私はね、もう存在しないのよね。今の私は、魂だけの存在。
思いが強くてね、この姿を維持できているけど...それもそろそろ限界なのよね。
もう少しで、私の魂も転生の輪廻の輪に入らないといけないの...。』
そう言って、私とお兄ちゃんの前に降りて来た。
『私が消える前に、あなた達に私の力の一部をプレゼントしようと思ってね。
その為、ここに呼んだのよ。』
そう言って、その女の人は自分の事を簡単に話ししてくれた。
その女の人は、はるか昔のこの世界の【大精霊】の1人。
私とお兄ちゃんが契約している【大聖霊】とは、違って魔力もそこまで多くなく、使える魔法も数知れていたんだって。
ただ、普通の精霊よりは遥かに人に近い姿をとれていたと。
何より、【大聖霊】達より人間と身近に関わっていた存在だったそうだ。
『私ね、人間が凄く好きなの。
人間の中には、確かに悪い奴もいるわ。でもね、それだけでない事を知っているから...。だから、私は人間を嫌う事ができないのよ。』
そう言って寂しそうに微笑む。
『私のね、能力の一つに回復魔法と蘇生魔法。あと、どんな毒も無毒にする魔法とどんな攻撃も無効化する防御魔法があるの。』
「凄いです!!」
「すごいの?」
お兄ちゃんは興奮気味に食いつく。
その反対に、私は意味が分からずキョトンとしていた。
そんな私達の様子を楽しそうに見て微笑む女の人。
『この能力をあなた達に、渡したいの。
ずっと見てたの。ここで、輪廻の輪に戻るのを待ちながらね。
あなた達の周りには、常に誰かがいて笑顔に溢れている。
しかも種族関係なくね...。
私が理想とする形が、姿が、あなた達の周りにあるの。
それを知って、私はこの能力と共に、私の思いもあなた達に託そうと思ったの。』
そう言って、女の人は私とお兄ちゃんの手を優しく握りしめる。
『私みたいになって欲しくない。
私は人が好きすぎるあまり、"悪しき力を纏う者"の罠にかかり、大事な仲間や友、家族を失った。
この能力も使う間もなくね...。だから、あなた達にはそうなって欲しくない。あなた達なら、あの"悪しき力を纏う者"に負けずに、周りの大事な人達を守ってくれると。
私のこの能力を有効利用してくれると信じてるから。』
そう言って、私とお兄ちゃんの手を強く握る。
すると、女の人が喋るたびに手を通して暖かいものが流れ込んできた。
私とお兄ちゃんは、暖かいひかりに包まれ、光は大きく膨らんだと思ったら、ゆっくりと私とお兄ちゃんの中に溶け込んだ。
光が消えて目を開けると、女の人の姿が消えかけていた。
『良かった。これで、私の残っていた力(能力)全て、あなたに渡す事ができたわ。これで、私は思い残すものは何もないわ。まぁ~、できたら次生まれ変われるのならあなた達の側に生まれてきたいわね。
頑張ってね。まけ...ない...で...。』
そう言って、女の人は消えていったのだった。
女の人が消えた場所には、泉のみが静かに存在するだけだった。
私とお兄ちゃんは、しばらく目の前の泉を見つめる。
体の中に、今まで感じたことのないもが流れているのを静かに感じ、暖かいものと同時に、女の人の思いと記憶の一部が流れて来た。
人や色んな種族の者と楽しそうに笑う女の人の姿が...。
その光景は、今の私達の日々と同じだと感じた。
ドラゴンや人魚、ドワーフやオーガに人間。それ以外にも、獣人族や見たことない姿をした種族の人が、集まり語りあったり食事をする光景が繰り広げられる。
見ていてとても暖かい気持ちになる。しかし...そんな光景も長くは続かなかった。
楽しい日々に、暗雲が忍び寄ってきたからだ。
最初は、些細な口喧嘩の様なものから始まった。
私達でも普通にする事だから特に違和感を感じなかったが、それも最初の頃だけだった。
それが、だんだんと口喧嘩から殴り合いに。そして...いつの間にか種族同士の争いになり、いつしか国をも巻き込む戦争と発展していったのだ。
それは、以前私がドラしゃんの過去の記憶で見た光景とよく似ていた。
武装した人達が、争い傷つき命を落としていっていく。
女の人はその光景を見て嘆き悲しみつつも自分の能力を使い、せめて友だけでもと、家族だけでもと助けていた。
そんな彼女を凶々しいオーラを纏う人が近寄って来て、何やら女の人に魔法をかける。
最初は抵抗していた女の人だったが、いつしかその力に屈してしまった様で、自分の能力も使えなくなってしまった。
そして...目の前で次々と仲間や家族、友も失っていき、自らもその凶々しいオーラを纏う者の手によって...。
私とお兄ちゃんは手を握りあいながらも、涙を流す。
女の人の思いが、記憶がリアルに感じたのもあるし、身近に感じたからだ。
しかし、あることに私は気付いた。あの凶々しいオーラを纏う者を最近どこかで見た気がしたと。
そうだ...私とお兄ちゃんが最近遭遇した人物と似ていたことを思い出した。
黒のフード付きのロングのマントをしていて、顔を隠している。
全身黒色で統一された服。
何より、あの凶々しいオーラが印象的だった。
大精霊である女の人を助けようとした【大聖霊】や【聖獣】。
そして...【○○○】も、その凶々しいオーラを纏う者によって、傷つき眠りついたり、命を落としていっていた。
そこで、女の人の記憶は途絶えていた。
「お...兄ちゃ...ん。」
「リン...。」
私とお兄ちゃんは、ふたりで抱き合う。
ただただ悲しくて、悔しくて、辛くって...。
それが、自分達の感情なのかあの女の人の感情なのかわからなかった。
ただ、涙とこの感情だけが止まらない。
ひとしきり2人で泣き、流れる涙も枯れ、目もパンパンになってしまった。
「グズ...っ。か...えろう...。」
「ズズズっ...。そうだね。」
私とお兄ちゃんは、また手を取り合って来た道を戻る。
戻る途中、卵が乗った台座の所へきたが、私達は目も暮れずに通り過ぎた。
まだ、時ではないと本能がそう言っていた気がしたから...。
私とお兄ちゃんが卵が乗った台座を背に歩いていると、消えたあの女の人が一瞬現れて私とお兄ちゃんに深々と頭を下げて、また姿を消したのだった。
私とお兄ちゃんは、扉の前に着くと扉は何もせずに静かに開く。
私とお兄ちゃんは、後ろを振り返る事もせず前だけを向いて歩みを進めた。
扉から出ると、そこには【大聖霊】と【聖獣】達が待っていた。
『おかえり。』
『おかえり。主人。』
『ブッサイクになったな。』
『貰うものは、もらえたか?』
『大丈夫?』
そう言いながら、私とお兄ちゃんを取り囲む彼ら。
扉の中で...泉の前で...もう枯れるぐらい泣き腫らしたのに...なぜか自然とまた涙が溢れてきた。
「うん。あってきた。」
「貰ってきたよ。」
私とお兄ちゃんが、涙を流しながらそう言って微笑むと、【大聖霊】と【聖獣】達は、そっと私とお兄ちゃんを包み込んでくれた。
何も言わず、そっと優しくだ。
また、その行動が嬉しく、また歯痒く枯れたはずの涙が次から次へと溢れてきた。
扉の中、そして出てきても泣きまくった私とお兄ちゃんは、とうとう泣き疲れた上に、顔を泣き腫らしてパンパンにして眠ってしまった。
そんな私とお兄ちゃんを前にして、どうしたもんかと悩んでいる【大聖霊】と【聖獣】達の前に静かに現れた人物が。
『いったい何が?なんで?こんなお姿に?』
そう。
私とお兄ちゃんの守護者にして、超が100個以上付く過保護な保護者であるドラしゃんだ。
家の外で、お父さんとお母さんの訓練に付き合っていたが、途中嫌な予感がして訓練を中断して家に入ってきたのだった。
しかし、何者か(神様)によって妨害にあい、中々2階にたどり着けなかった様で少しイラついていた。
やっとのこさ2階にたどり着いたと思ったら、見たこともない姿(泣き腫らして顔の原型を留めていない)私とお兄ちゃんの姿を見てしまった。
焦る【聖獣】達とは裏腹に、冷静な【大聖霊】達。
『私達の"古き友"の最期の願いを叶えさせて貰いました。』
『想いと、能力を主人たちに託して今逝ったよ。』
『あの子が託した想いと能力は、主人たちにとって実りあるものなるよ。』
『大丈夫。アイツらではなかったから。』
『アイツらの目覚めは、まだまだ先だ。』
『それよりも...彼女の方が...ね。』
『主人たちは、聡い子だからちゃんと想いも、力(能力)も受け入れてくれたよ。』
【大聖霊】達の言葉によって、放っていたオーラを引っ込めるドラしゃん。
【大聖霊】達の言葉に感じるものがあったのだろう。
特に咎める様な事をせずに、私とお兄ちゃんの元へ歩み寄る。
『そうですか。まだ、"彼女"の魂は...残っていたのですね。でも、どうやら無事に輪廻の輪に戻る事ができたみたいですね。』
そう言って、私とお兄ちゃんをそっと優しく抱き上げる。
『あの子は、あのまま消えるつもりだった様です。しかし、あの者が...あの凶々しいオーラを纏う者が、主人たちの前に現れて気持ちを変えた様です。
消える前に、託したかったようです。』
『大丈夫です。あの様な事は、二度と起こさないし、起こさせてない。
どんな手段を使ってもだ。』
ドラしゃんはそう言って【大聖霊】と【聖獣】達に背を向けて、私とお兄ちゃんを寝室へと連れていった。
『ええ。そうですわね。その気持ちは、我らも同じ。』
『多くの仲間と、家族。そして、友を失ったのは、僕たちも同じだ。』
『絶対に、あんな事は起こさせない。』
【大聖霊】と【聖獣】達は、私とお兄ちゃん。そして、ドラしゃんが入っていった部屋の扉を見つめながらそう呟く。
その呟きは、部屋の中に居るドラしゃんには届いていた。
ドラしゃんは、私とお兄ちゃんをお手製のベッドに寝かせると、目と顔の腫れをどうにかするために、癒しの魔法をかけつつタオルで冷やしてくれていた。
『あんな思いや体験。光景を見るのも、体験をするのも、年老いた我々だけで充分です。こんな、幼児まで...。
それは、あってはならない。そうですよね。』
ドラしゃんは、私とお兄ちゃんの寝顔を見つめながら呟く。
その呟きに応える人物が...。
『そうだな。だから、あの子はこの子達に託したんだ。この子達の能力は未知数。だから、少しでも自分の能力を託して逝きたかったんだ。
その気持ちは、汲んでくれよ。』
『だからと言って、私の邪魔をする必要は無かったと思いますが。』
『嫌だね。邪魔をしないと、絶対!!お前、止めていたからな。これは、自信持っていったやるよ!絶対!!!止めていた!!』
私とお兄ちゃんの寝室に、なんと神様が現れたのだ。
ドラしゃんが中々2階に上がらない様に妨害をしてくれていた、張本人だ。
『この子達の未来に関して、私はわからない。何せ、見る事ができないからね。』
神様の思わぬ発言に、珍しく驚くドラしゃん。
『神なのに?』
『あー。神様でもね、万能じゃないんだよ。ていぅーかぁー、この子達の能力の方が私より上なんだよね。
だから、見えないって言うのもあるよねぇ~。』
と、ちゃらけた様に喋る神様。
神様の喋り方にイライラしながらも、その言葉の内容には驚いていたドラしゃん。
そして、ベッドで眠る私とお兄ちゃんの顔をマジマジと見つめ出す。
『もしかしたら、この子達は色んな事を"良い意味"でやらかしてくれるかもしれないよ。』
そう言って、神様は姿を消したのだった。
翌朝起きると、思っていたより顔と目の周りの腫れはなかったが、全体的に重だるかった。
泣きすぎたのが原因かだろう。
私とお兄ちゃんが早くから寝ていることについては、ドラしゃんが上手いこと誤魔化してくれていた。
朝起きて行くと、いつもの様に一階のリビングにてお母さんとお父さんが朝食の準備をしていた。
ドラしゃんとムキじぃーちゃんは、畑と田んぼの確認と水やりには出かけているとのことだった。
私とお兄ちゃんは、お父さんに言われて顔を洗いに洗面所へ。
なんか久しぶりに家でゆっくり寛いでるって感じがした。
今までも、もちろん建物の中で寝起きをしていたが、それでも"家"で過ごす様な安心感はなかった。
家だと、心底ほっとする安心感みたいなのが感じられた。
顔を洗いながら思わずお兄ちゃんに、
「おうちって、いいね。」
と言ってしまった。
私のその言葉にお兄ちゃんも同意していた。
「そうだね。おちつくね。」
そんな会話をして、顔を洗ってリビングに戻るとドラしゃん達も戻って来ていた。
そして、みんな揃ってお母さん手作りの朝食を食べる。
家族で食べるご飯は本当に美味しかった。
特別な料理ではなかったのに...。
昨日見た映像が、脳裏にまだ残っているからだろうか...。
ちょっとしたことで、涙腺が緩くなってしまう。
短い間だったが、彼女から受け取ったものは、私とお兄ちゃんを精神的にも能力的にも大きく成長させてくれたみたいだ。
この世界へ来た当初は、事故との事がしばらくフラッシュバックして、家族の顔を見る度に"生きてて良かった。""生きてる!"って喜びを日々感じていた。
それなのに...。いつの間にか、今の生活が当たり前だと感じていた。
「あたりまえじゃないんだね...。」
「うん。当たり前じゃないんだ。」
私達の今の日常は、神様が救ってくれたから成り立っている。
ドラしゃんやムキじぃーちゃん達が、世話を焼いてくれてるから、成り立っている。
そもそも、彼女の様な犠牲があったからこの世界そのものが成り立っている。
幼いながらも、その現実を学んだ。
望んでも生きられない命がある事。
理不尽にも奪われる命がある事。
私達も生活する上で、何かの命を奪って生き繋いでいる。
それをしないと、生きていけないからだ。
その分、奪った命を自分達はなるべく有意義に活用しなければならない。
それは、両親からも教わった事。
"「私達は、お肉やお魚、お野菜や卵なんか食べるでしょう?それは、その生き物の命を貰ってるって事なの。
だから、食べ物は粗末にしてはいけないし、感謝をして食べるのよ。」"
"「ありがとうございます。あなたの分まで、この体で頑張りますって。
その気持ちは、大事だからね。
この事は、りんやあきらが大きくなって、父さんや母さんみたいに誰か素敵な人と出会って、子供をつくったらその子にも教えるんだぞ?」"
そんな風に繰り返し教えてくれた両親の言葉も、今リアルに蘇った。
『命は大切なもの。
誰しもが平等に授かれるもの。
しかし、誰もが平等にその命を使い切れるとは限らない...。
それも、また運命...。
しかし、理不尽に奪われてもいい命は1つもない。
かと言って、全ての命を守る程強くもない。
なら...せめて...せめて、自分の周りの人達だけでも!!
そうすれば、巡り巡ってどこかで...私の様な考えをする人が増えてくるはず...。
そう願いたい...。
この思い...どうか...つなげて...。』
能力と共に授かった彼女の想い(願い)、それを少しでも叶えていこう...。
私とお兄ちゃんは、そう決意していた。
朝ご飯を少し涙目で食べている私とお兄ちゃんの姿を見て、周りの大人達は何かを感じ取っていた様だ。
しかし、あえて何も声をかけなかった。
かけて来なかった...。
それは...。
幼い子供達が、少しずつ大人へと成長していっているのでは?
そう感じとれたからだと、のにち教えてくれた。
もし、間違った事をする様であれば全力で自分達が止めに入れば良いとも。
この話をのちに聞いて、私とお兄ちゃんは感動したのは言うまでもない...。
とりあえず、朝食をしっかりと食べ今与えられているこの幸せな時間を堪能した。
しばらくご飯を楽しんでいると...??
家の外が騒がしくなった。
そして、玄関ドアを誰かが叩く音がした。
お父さんが代表して見に行くと、慌てて戻ってきてムキじぃーちゃん達を呼んだ。
ムキじぃーちゃんとドラしゃんは呼ばれたので、玄関へ向かった。
私とお兄ちゃん、お母さんも気になり後を追った。
すると、玄関にはカカンさんが息を切らして座っていた。
「どうしたんだ?そんなに息を切らして?」
ムキじぃーちゃんが声をかけると、カカンさんは息を切らしながらも返事をした。
「た...大変...なんですっ...。まっ...街の...外にっ?!」
それを聞いただけで、何かを感じたムキじぃーちゃんとドラしゃんは家を飛び出した。
もちろん私もお兄ちゃんも【聖獣】達を連れて、後を追いかけていった。
家に残ったのは、お父さんとお母さん。
いきなりの状況に混乱しつつも、カカンさんの介抱をしながら、カカンさんが落ち着いてから話を聞いて、急ぎ私達の後を追ったようだ。
お母さん達がカカンさんを介抱している間、ムキじぃーちゃん達の後を追って【聖獣】達と走っていた。
「お兄ちゃん!」
「あー、リン。もしかしたら、"アイツ"が来たのかも知れないね。」
私とお兄ちゃんは、互いに頷き合い気を引き締めた。
もし"アイツ"なら何かしでかすかも...。
そう思って、私とお兄ちゃんは気を引き締めてムキじぃーちゃん達の後を追った。
私達がつく頃には、門の前でロドじぃーちゃんとラディじぃーちゃん達が武装して立っていた。
ムキじぃーちゃんとドラしゃんの姿を見て、ホッとしたのも束の間。
その後ろに、私とお兄ちゃんの姿を見て顔を青ざめていた。
「おっ?!ムキファー!フレア!待ってた...ぜぇーーー?!って、なんでお前たちも居るんだ?!」
ロドじぃーちゃんが、顎が外れんばかりに口を大きく開けて驚いていた。
私とお兄ちゃんは、平然とそんなロドじぃーちゃん達に声をかけた。
「ムキじぃーちゃんとドラしゃんがいくから。」
「同じく!」
そんな私とお兄ちゃんの返事に頭を抱えるロドじぃーちゃん達。
しかも笑顔で言うものだから、どう言っていいのか悩んでもいる様だった。
すると、門の見張り棟で見張りをしている人から、ロドじぃーちゃん宛に連絡が来た。
「ロドムカギルマス!黒い服を着た変な奴がこちらへ向かって来てます。
あっ...でも...今歩みを止めました。」
「あっ!ソイツの影から...えーー!?まっ、魔物が?!」
その声を聞いて、私とお兄ちゃんは確信を持った。
あの女の人を気付けた奴だって。
ムキじぃーちゃんとドラしゃんは、この街へ戻ってくる前に出会った人物だと確証を得た様だった。
「アイツはやばい。いいか手出しはするな。ワシとフレアで、出向く。」
「分かった。」
「僕と」
「リンも!」
私とお兄ちゃんの言葉に、さすがのムキじぃーちゃんとドラしゃんも止めに入った。
『駄目です!どんな奴かも分からないのに!』
「そうだ!駄目だ!」
そんなムキじぃーちゃんとドラしゃんに、私とお兄ちゃんは真剣に答えた。
「私とお兄ちゃんは知ってる!アイツ悪い奴!」
「そうです!悪い奴です!!そして、アイツの狙いは、僕とリンです!」
私とお兄ちゃんの言葉に、ざわつく皆んな。
ムキじぃーちゃんもドラしゃんもかなり驚いていた。
「悪い奴なら、尚更お前たちと合わせるわけにはいかない。」
『そうです!お2人に何かあっては、いけません。』
ムキじぃーちゃんとドラしゃんの言葉に、周りの大人達も頷いていた。
しかし、私とお兄ちゃんには確信があったから断固として譲らなかった。
「だいじょうぶ!」
「アイツ、今の僕とリンには絶対手出ししない!」
それだけは、はっきりと分かっていた。
私とお兄ちゃんのその言葉に、驚く皆。
私とお兄ちゃんが譲らないので、渋々折れるムキじぃーちゃんとドラしゃん。
『分かりました。ですが、絶対!私とムキファーから離れないで下さいね!』
そう注意するドラしゃんにハイと返事をして、私達4人は門の外へ出た。
リン:
涙が...
アキラ:
うん...
リン:
生きてるって...良いね...。
アキラ:
そうだね...。
すると...そこは何もない真っ白な壁しかなかった。
が...とても気になって仕方がなかった。
お兄ちゃんは、その壁を見て何かに気付いた様だが、私はわからなかった。
いや、分かっていたが気にしないうに無意識にしていたのかもしれない。
お兄ちゃんは急いで、私を壁から遠ざけようとしたが...遅かった。
何もなかった真っ白な壁から光が出てきて、気付いたら目の前に大きな扉が現れたのだった。
「駄目だ!リン!この扉は、絶対駄目だ!」
お兄ちゃんは、そう言って私を抱え込んだ。
お兄ちゃんには、以前この扉関係の記憶が残っていたため、かなり警戒していた。
それに比べて私は、この扉に関しての記憶がないと言うか、覚えてないのでお兄ちゃんがそこまで警戒する理由がわからなかった。
ただ、普段穏やかなお兄ちゃんがここまで警戒しているので、この扉には何かあるのだけはわかった。
しばらく私とお兄ちゃんは、現れた扉の前でじっとしていると、扉の中から声が聞こえてくる。
『大丈夫よ。何もしない。ただ、私達はあなた達の力になりたいだけ。』
その声と同時に扉が少しずつ開く。
お兄ちゃんの私を抱きしめる力は益々強くなる。
「お兄ちゃん?」
「駄目だ!リン。絶対駄目だ!」
「でも...。」
そう、押し問答していると扉の中からどこか懐かしい気配がする。
それは、以前ドラしゃんの過去の記憶を見た時に感じだ気配と同じ気配だと私は感じた。
私は力強く抱きしめるお兄ちゃんに対して声をかける。
「お兄ちゃん。だいじょうだよ。」
「駄目だ!絶対に駄目だ!」
「お兄ちゃん!リンが、だいじょぶって、いってるからだいじょうぶなの!!」
いつも以上に頑固なお兄ちゃんに対して私は少し強く言うと抱きしめていた力を少し緩める。
「でも...。」
それでも不安そうに見つめるので、私はニコッと笑って話しかける。
「お兄ちゃんもいっしょだから、だいじょうぶ!」
私はそう言って、お兄ちゃんの手を握りしめる。
すると、お兄ちゃんは少し驚きつつ私が握りしめた手と扉を交互に見つめた。
そして...。
「わかった!でも、この手は何があっても、離したら駄目だからね!」
「わかった!」
そう約束して、私達は手を繋いで扉の中へ入っていく。
私とお兄ちゃんが入ると、扉は自然に閉じる。
扉の中は一瞬真っ暗になったが、淡く光出したのだった。
「リン!大丈夫だからな!」
「うん!」
そう言いながら、お互いの手を強く握りしめながらゆっくりと足を進める。
お兄ちゃんも不安なのだろう、手が少し震えていた。
それでも、お兄ちゃんだからと頑張ってくれていた。
そのおかげもあってか、私は少し落ち着いていた。
落ち着いて周りを見る事ができた。
辺りをよく見ると、足元に壺の様な物が等間隔で置かれている。
恐る恐る、お兄ちゃんに手を引かれながら歩みを進めると、壺が光だす。
思わず私とお兄ちゃんはヒッと言う声をあげて、ふたりで抱き合い固まる。
しかし、よく見ると壺が光っているのではなく、壺の中で青っぽい炎が燃えているのに気付いた。
その炎の光が周りを照らしている。
そのためか、炎が燃えているのに全く暑くはなかった。
私達が歩みを進めるごとに、壺の中の炎が燃え出して灯りが強くなる。
とりあえず、私とお兄ちゃんは壺の先を目指して歩いていく。
歩くたびに、"ボッ!"と音を立てて燃える炎。
青い炎だけあって、幻想的な雰囲気が当たりを包む。
しばらく歩くと、目の前にアーチが見えてその奥に何かが置かれた台座の様な物が見えてきた。
私とお兄ちゃんは、ゆっくりと確実に一歩ずつ歩みを進める。
アーチを潜り、階段を登り台座を覗くとそこには沢山の卵があった。
大きさも色もバラバラだが、間違いなく何かの卵だった。
「えっ?卵?」
「なんの?」
私とお兄ちゃんが、思わずそう呟くと...その声に反応してか、どこからかあの声が聞こえてきた。
『良かった。やっとここまで来てくれたんだね。ここにあるのは、この世界の未来を大きく変える大事な卵だよ。
何が産まれるかはまだ、内緒なんだ。
この卵は、君より君の妹に大きく関わりがあるんだ。
今日はね、この卵を見せるのもあったけど、この奥にある泉に行って欲しいの。そこで待ってるから、ゆっくり来てね。』
その声が消えると、その泉の場所へと導く様に進む場所が青い炎によって照らされる。
卵を暫く眺めてから、照らされた道を進む事にした。
道を進んでいくと、水の匂いがしてきたので、歩くスピードを早めていく。
進んで行くと、そこに見知らぬ女の人がいた。
「お兄ちゃん。あの人かなぁ?」
「たぶん...。」
そう言いつつ、ゆっくりと歩みを進めると...
『ようやく来てくれた。初めまして。』
そう言って、泉の中からゆっくり出てきた女の人。
その姿は、どこかで見たような姿だった。
「あっ!リュモさんとおんなじ!」
私がそう言うと、女の人が優しく微笑む。
女の人の姿は、リュモさんが海に入った時の姿とおんなじだったのだ。
『私はね、もう存在しないのよね。今の私は、魂だけの存在。
思いが強くてね、この姿を維持できているけど...それもそろそろ限界なのよね。
もう少しで、私の魂も転生の輪廻の輪に入らないといけないの...。』
そう言って、私とお兄ちゃんの前に降りて来た。
『私が消える前に、あなた達に私の力の一部をプレゼントしようと思ってね。
その為、ここに呼んだのよ。』
そう言って、その女の人は自分の事を簡単に話ししてくれた。
その女の人は、はるか昔のこの世界の【大精霊】の1人。
私とお兄ちゃんが契約している【大聖霊】とは、違って魔力もそこまで多くなく、使える魔法も数知れていたんだって。
ただ、普通の精霊よりは遥かに人に近い姿をとれていたと。
何より、【大聖霊】達より人間と身近に関わっていた存在だったそうだ。
『私ね、人間が凄く好きなの。
人間の中には、確かに悪い奴もいるわ。でもね、それだけでない事を知っているから...。だから、私は人間を嫌う事ができないのよ。』
そう言って寂しそうに微笑む。
『私のね、能力の一つに回復魔法と蘇生魔法。あと、どんな毒も無毒にする魔法とどんな攻撃も無効化する防御魔法があるの。』
「凄いです!!」
「すごいの?」
お兄ちゃんは興奮気味に食いつく。
その反対に、私は意味が分からずキョトンとしていた。
そんな私達の様子を楽しそうに見て微笑む女の人。
『この能力をあなた達に、渡したいの。
ずっと見てたの。ここで、輪廻の輪に戻るのを待ちながらね。
あなた達の周りには、常に誰かがいて笑顔に溢れている。
しかも種族関係なくね...。
私が理想とする形が、姿が、あなた達の周りにあるの。
それを知って、私はこの能力と共に、私の思いもあなた達に託そうと思ったの。』
そう言って、女の人は私とお兄ちゃんの手を優しく握りしめる。
『私みたいになって欲しくない。
私は人が好きすぎるあまり、"悪しき力を纏う者"の罠にかかり、大事な仲間や友、家族を失った。
この能力も使う間もなくね...。だから、あなた達にはそうなって欲しくない。あなた達なら、あの"悪しき力を纏う者"に負けずに、周りの大事な人達を守ってくれると。
私のこの能力を有効利用してくれると信じてるから。』
そう言って、私とお兄ちゃんの手を強く握る。
すると、女の人が喋るたびに手を通して暖かいものが流れ込んできた。
私とお兄ちゃんは、暖かいひかりに包まれ、光は大きく膨らんだと思ったら、ゆっくりと私とお兄ちゃんの中に溶け込んだ。
光が消えて目を開けると、女の人の姿が消えかけていた。
『良かった。これで、私の残っていた力(能力)全て、あなたに渡す事ができたわ。これで、私は思い残すものは何もないわ。まぁ~、できたら次生まれ変われるのならあなた達の側に生まれてきたいわね。
頑張ってね。まけ...ない...で...。』
そう言って、女の人は消えていったのだった。
女の人が消えた場所には、泉のみが静かに存在するだけだった。
私とお兄ちゃんは、しばらく目の前の泉を見つめる。
体の中に、今まで感じたことのないもが流れているのを静かに感じ、暖かいものと同時に、女の人の思いと記憶の一部が流れて来た。
人や色んな種族の者と楽しそうに笑う女の人の姿が...。
その光景は、今の私達の日々と同じだと感じた。
ドラゴンや人魚、ドワーフやオーガに人間。それ以外にも、獣人族や見たことない姿をした種族の人が、集まり語りあったり食事をする光景が繰り広げられる。
見ていてとても暖かい気持ちになる。しかし...そんな光景も長くは続かなかった。
楽しい日々に、暗雲が忍び寄ってきたからだ。
最初は、些細な口喧嘩の様なものから始まった。
私達でも普通にする事だから特に違和感を感じなかったが、それも最初の頃だけだった。
それが、だんだんと口喧嘩から殴り合いに。そして...いつの間にか種族同士の争いになり、いつしか国をも巻き込む戦争と発展していったのだ。
それは、以前私がドラしゃんの過去の記憶で見た光景とよく似ていた。
武装した人達が、争い傷つき命を落としていっていく。
女の人はその光景を見て嘆き悲しみつつも自分の能力を使い、せめて友だけでもと、家族だけでもと助けていた。
そんな彼女を凶々しいオーラを纏う人が近寄って来て、何やら女の人に魔法をかける。
最初は抵抗していた女の人だったが、いつしかその力に屈してしまった様で、自分の能力も使えなくなってしまった。
そして...目の前で次々と仲間や家族、友も失っていき、自らもその凶々しいオーラを纏う者の手によって...。
私とお兄ちゃんは手を握りあいながらも、涙を流す。
女の人の思いが、記憶がリアルに感じたのもあるし、身近に感じたからだ。
しかし、あることに私は気付いた。あの凶々しいオーラを纏う者を最近どこかで見た気がしたと。
そうだ...私とお兄ちゃんが最近遭遇した人物と似ていたことを思い出した。
黒のフード付きのロングのマントをしていて、顔を隠している。
全身黒色で統一された服。
何より、あの凶々しいオーラが印象的だった。
大精霊である女の人を助けようとした【大聖霊】や【聖獣】。
そして...【○○○】も、その凶々しいオーラを纏う者によって、傷つき眠りついたり、命を落としていっていた。
そこで、女の人の記憶は途絶えていた。
「お...兄ちゃ...ん。」
「リン...。」
私とお兄ちゃんは、ふたりで抱き合う。
ただただ悲しくて、悔しくて、辛くって...。
それが、自分達の感情なのかあの女の人の感情なのかわからなかった。
ただ、涙とこの感情だけが止まらない。
ひとしきり2人で泣き、流れる涙も枯れ、目もパンパンになってしまった。
「グズ...っ。か...えろう...。」
「ズズズっ...。そうだね。」
私とお兄ちゃんは、また手を取り合って来た道を戻る。
戻る途中、卵が乗った台座の所へきたが、私達は目も暮れずに通り過ぎた。
まだ、時ではないと本能がそう言っていた気がしたから...。
私とお兄ちゃんが卵が乗った台座を背に歩いていると、消えたあの女の人が一瞬現れて私とお兄ちゃんに深々と頭を下げて、また姿を消したのだった。
私とお兄ちゃんは、扉の前に着くと扉は何もせずに静かに開く。
私とお兄ちゃんは、後ろを振り返る事もせず前だけを向いて歩みを進めた。
扉から出ると、そこには【大聖霊】と【聖獣】達が待っていた。
『おかえり。』
『おかえり。主人。』
『ブッサイクになったな。』
『貰うものは、もらえたか?』
『大丈夫?』
そう言いながら、私とお兄ちゃんを取り囲む彼ら。
扉の中で...泉の前で...もう枯れるぐらい泣き腫らしたのに...なぜか自然とまた涙が溢れてきた。
「うん。あってきた。」
「貰ってきたよ。」
私とお兄ちゃんが、涙を流しながらそう言って微笑むと、【大聖霊】と【聖獣】達は、そっと私とお兄ちゃんを包み込んでくれた。
何も言わず、そっと優しくだ。
また、その行動が嬉しく、また歯痒く枯れたはずの涙が次から次へと溢れてきた。
扉の中、そして出てきても泣きまくった私とお兄ちゃんは、とうとう泣き疲れた上に、顔を泣き腫らしてパンパンにして眠ってしまった。
そんな私とお兄ちゃんを前にして、どうしたもんかと悩んでいる【大聖霊】と【聖獣】達の前に静かに現れた人物が。
『いったい何が?なんで?こんなお姿に?』
そう。
私とお兄ちゃんの守護者にして、超が100個以上付く過保護な保護者であるドラしゃんだ。
家の外で、お父さんとお母さんの訓練に付き合っていたが、途中嫌な予感がして訓練を中断して家に入ってきたのだった。
しかし、何者か(神様)によって妨害にあい、中々2階にたどり着けなかった様で少しイラついていた。
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焦る【聖獣】達とは裏腹に、冷静な【大聖霊】達。
『私達の"古き友"の最期の願いを叶えさせて貰いました。』
『想いと、能力を主人たちに託して今逝ったよ。』
『あの子が託した想いと能力は、主人たちにとって実りあるものなるよ。』
『大丈夫。アイツらではなかったから。』
『アイツらの目覚めは、まだまだ先だ。』
『それよりも...彼女の方が...ね。』
『主人たちは、聡い子だからちゃんと想いも、力(能力)も受け入れてくれたよ。』
【大聖霊】達の言葉によって、放っていたオーラを引っ込めるドラしゃん。
【大聖霊】達の言葉に感じるものがあったのだろう。
特に咎める様な事をせずに、私とお兄ちゃんの元へ歩み寄る。
『そうですか。まだ、"彼女"の魂は...残っていたのですね。でも、どうやら無事に輪廻の輪に戻る事ができたみたいですね。』
そう言って、私とお兄ちゃんをそっと優しく抱き上げる。
『あの子は、あのまま消えるつもりだった様です。しかし、あの者が...あの凶々しいオーラを纏う者が、主人たちの前に現れて気持ちを変えた様です。
消える前に、託したかったようです。』
『大丈夫です。あの様な事は、二度と起こさないし、起こさせてない。
どんな手段を使ってもだ。』
ドラしゃんはそう言って【大聖霊】と【聖獣】達に背を向けて、私とお兄ちゃんを寝室へと連れていった。
『ええ。そうですわね。その気持ちは、我らも同じ。』
『多くの仲間と、家族。そして、友を失ったのは、僕たちも同じだ。』
『絶対に、あんな事は起こさせない。』
【大聖霊】と【聖獣】達は、私とお兄ちゃん。そして、ドラしゃんが入っていった部屋の扉を見つめながらそう呟く。
その呟きは、部屋の中に居るドラしゃんには届いていた。
ドラしゃんは、私とお兄ちゃんをお手製のベッドに寝かせると、目と顔の腫れをどうにかするために、癒しの魔法をかけつつタオルで冷やしてくれていた。
『あんな思いや体験。光景を見るのも、体験をするのも、年老いた我々だけで充分です。こんな、幼児まで...。
それは、あってはならない。そうですよね。』
ドラしゃんは、私とお兄ちゃんの寝顔を見つめながら呟く。
その呟きに応える人物が...。
『そうだな。だから、あの子はこの子達に託したんだ。この子達の能力は未知数。だから、少しでも自分の能力を託して逝きたかったんだ。
その気持ちは、汲んでくれよ。』
『だからと言って、私の邪魔をする必要は無かったと思いますが。』
『嫌だね。邪魔をしないと、絶対!!お前、止めていたからな。これは、自信持っていったやるよ!絶対!!!止めていた!!』
私とお兄ちゃんの寝室に、なんと神様が現れたのだ。
ドラしゃんが中々2階に上がらない様に妨害をしてくれていた、張本人だ。
『この子達の未来に関して、私はわからない。何せ、見る事ができないからね。』
神様の思わぬ発言に、珍しく驚くドラしゃん。
『神なのに?』
『あー。神様でもね、万能じゃないんだよ。ていぅーかぁー、この子達の能力の方が私より上なんだよね。
だから、見えないって言うのもあるよねぇ~。』
と、ちゃらけた様に喋る神様。
神様の喋り方にイライラしながらも、その言葉の内容には驚いていたドラしゃん。
そして、ベッドで眠る私とお兄ちゃんの顔をマジマジと見つめ出す。
『もしかしたら、この子達は色んな事を"良い意味"でやらかしてくれるかもしれないよ。』
そう言って、神様は姿を消したのだった。
翌朝起きると、思っていたより顔と目の周りの腫れはなかったが、全体的に重だるかった。
泣きすぎたのが原因かだろう。
私とお兄ちゃんが早くから寝ていることについては、ドラしゃんが上手いこと誤魔化してくれていた。
朝起きて行くと、いつもの様に一階のリビングにてお母さんとお父さんが朝食の準備をしていた。
ドラしゃんとムキじぃーちゃんは、畑と田んぼの確認と水やりには出かけているとのことだった。
私とお兄ちゃんは、お父さんに言われて顔を洗いに洗面所へ。
なんか久しぶりに家でゆっくり寛いでるって感じがした。
今までも、もちろん建物の中で寝起きをしていたが、それでも"家"で過ごす様な安心感はなかった。
家だと、心底ほっとする安心感みたいなのが感じられた。
顔を洗いながら思わずお兄ちゃんに、
「おうちって、いいね。」
と言ってしまった。
私のその言葉にお兄ちゃんも同意していた。
「そうだね。おちつくね。」
そんな会話をして、顔を洗ってリビングに戻るとドラしゃん達も戻って来ていた。
そして、みんな揃ってお母さん手作りの朝食を食べる。
家族で食べるご飯は本当に美味しかった。
特別な料理ではなかったのに...。
昨日見た映像が、脳裏にまだ残っているからだろうか...。
ちょっとしたことで、涙腺が緩くなってしまう。
短い間だったが、彼女から受け取ったものは、私とお兄ちゃんを精神的にも能力的にも大きく成長させてくれたみたいだ。
この世界へ来た当初は、事故との事がしばらくフラッシュバックして、家族の顔を見る度に"生きてて良かった。""生きてる!"って喜びを日々感じていた。
それなのに...。いつの間にか、今の生活が当たり前だと感じていた。
「あたりまえじゃないんだね...。」
「うん。当たり前じゃないんだ。」
私達の今の日常は、神様が救ってくれたから成り立っている。
ドラしゃんやムキじぃーちゃん達が、世話を焼いてくれてるから、成り立っている。
そもそも、彼女の様な犠牲があったからこの世界そのものが成り立っている。
幼いながらも、その現実を学んだ。
望んでも生きられない命がある事。
理不尽にも奪われる命がある事。
私達も生活する上で、何かの命を奪って生き繋いでいる。
それをしないと、生きていけないからだ。
その分、奪った命を自分達はなるべく有意義に活用しなければならない。
それは、両親からも教わった事。
"「私達は、お肉やお魚、お野菜や卵なんか食べるでしょう?それは、その生き物の命を貰ってるって事なの。
だから、食べ物は粗末にしてはいけないし、感謝をして食べるのよ。」"
"「ありがとうございます。あなたの分まで、この体で頑張りますって。
その気持ちは、大事だからね。
この事は、りんやあきらが大きくなって、父さんや母さんみたいに誰か素敵な人と出会って、子供をつくったらその子にも教えるんだぞ?」"
そんな風に繰り返し教えてくれた両親の言葉も、今リアルに蘇った。
『命は大切なもの。
誰しもが平等に授かれるもの。
しかし、誰もが平等にその命を使い切れるとは限らない...。
それも、また運命...。
しかし、理不尽に奪われてもいい命は1つもない。
かと言って、全ての命を守る程強くもない。
なら...せめて...せめて、自分の周りの人達だけでも!!
そうすれば、巡り巡ってどこかで...私の様な考えをする人が増えてくるはず...。
そう願いたい...。
この思い...どうか...つなげて...。』
能力と共に授かった彼女の想い(願い)、それを少しでも叶えていこう...。
私とお兄ちゃんは、そう決意していた。
朝ご飯を少し涙目で食べている私とお兄ちゃんの姿を見て、周りの大人達は何かを感じ取っていた様だ。
しかし、あえて何も声をかけなかった。
かけて来なかった...。
それは...。
幼い子供達が、少しずつ大人へと成長していっているのでは?
そう感じとれたからだと、のにち教えてくれた。
もし、間違った事をする様であれば全力で自分達が止めに入れば良いとも。
この話をのちに聞いて、私とお兄ちゃんは感動したのは言うまでもない...。
とりあえず、朝食をしっかりと食べ今与えられているこの幸せな時間を堪能した。
しばらくご飯を楽しんでいると...??
家の外が騒がしくなった。
そして、玄関ドアを誰かが叩く音がした。
お父さんが代表して見に行くと、慌てて戻ってきてムキじぃーちゃん達を呼んだ。
ムキじぃーちゃんとドラしゃんは呼ばれたので、玄関へ向かった。
私とお兄ちゃん、お母さんも気になり後を追った。
すると、玄関にはカカンさんが息を切らして座っていた。
「どうしたんだ?そんなに息を切らして?」
ムキじぃーちゃんが声をかけると、カカンさんは息を切らしながらも返事をした。
「た...大変...なんですっ...。まっ...街の...外にっ?!」
それを聞いただけで、何かを感じたムキじぃーちゃんとドラしゃんは家を飛び出した。
もちろん私もお兄ちゃんも【聖獣】達を連れて、後を追いかけていった。
家に残ったのは、お父さんとお母さん。
いきなりの状況に混乱しつつも、カカンさんの介抱をしながら、カカンさんが落ち着いてから話を聞いて、急ぎ私達の後を追ったようだ。
お母さん達がカカンさんを介抱している間、ムキじぃーちゃん達の後を追って【聖獣】達と走っていた。
「お兄ちゃん!」
「あー、リン。もしかしたら、"アイツ"が来たのかも知れないね。」
私とお兄ちゃんは、互いに頷き合い気を引き締めた。
もし"アイツ"なら何かしでかすかも...。
そう思って、私とお兄ちゃんは気を引き締めてムキじぃーちゃん達の後を追った。
私達がつく頃には、門の前でロドじぃーちゃんとラディじぃーちゃん達が武装して立っていた。
ムキじぃーちゃんとドラしゃんの姿を見て、ホッとしたのも束の間。
その後ろに、私とお兄ちゃんの姿を見て顔を青ざめていた。
「おっ?!ムキファー!フレア!待ってた...ぜぇーーー?!って、なんでお前たちも居るんだ?!」
ロドじぃーちゃんが、顎が外れんばかりに口を大きく開けて驚いていた。
私とお兄ちゃんは、平然とそんなロドじぃーちゃん達に声をかけた。
「ムキじぃーちゃんとドラしゃんがいくから。」
「同じく!」
そんな私とお兄ちゃんの返事に頭を抱えるロドじぃーちゃん達。
しかも笑顔で言うものだから、どう言っていいのか悩んでもいる様だった。
すると、門の見張り棟で見張りをしている人から、ロドじぃーちゃん宛に連絡が来た。
「ロドムカギルマス!黒い服を着た変な奴がこちらへ向かって来てます。
あっ...でも...今歩みを止めました。」
「あっ!ソイツの影から...えーー!?まっ、魔物が?!」
その声を聞いて、私とお兄ちゃんは確信を持った。
あの女の人を気付けた奴だって。
ムキじぃーちゃんとドラしゃんは、この街へ戻ってくる前に出会った人物だと確証を得た様だった。
「アイツはやばい。いいか手出しはするな。ワシとフレアで、出向く。」
「分かった。」
「僕と」
「リンも!」
私とお兄ちゃんの言葉に、さすがのムキじぃーちゃんとドラしゃんも止めに入った。
『駄目です!どんな奴かも分からないのに!』
「そうだ!駄目だ!」
そんなムキじぃーちゃんとドラしゃんに、私とお兄ちゃんは真剣に答えた。
「私とお兄ちゃんは知ってる!アイツ悪い奴!」
「そうです!悪い奴です!!そして、アイツの狙いは、僕とリンです!」
私とお兄ちゃんの言葉に、ざわつく皆んな。
ムキじぃーちゃんもドラしゃんもかなり驚いていた。
「悪い奴なら、尚更お前たちと合わせるわけにはいかない。」
『そうです!お2人に何かあっては、いけません。』
ムキじぃーちゃんとドラしゃんの言葉に、周りの大人達も頷いていた。
しかし、私とお兄ちゃんには確信があったから断固として譲らなかった。
「だいじょうぶ!」
「アイツ、今の僕とリンには絶対手出ししない!」
それだけは、はっきりと分かっていた。
私とお兄ちゃんのその言葉に、驚く皆。
私とお兄ちゃんが譲らないので、渋々折れるムキじぃーちゃんとドラしゃん。
『分かりました。ですが、絶対!私とムキファーから離れないで下さいね!』
そう注意するドラしゃんにハイと返事をして、私達4人は門の外へ出た。
リン:
涙が...
アキラ:
うん...
リン:
生きてるって...良いね...。
アキラ:
そうだね...。
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