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第四章 新しい国誕生!〜国の設立と同盟〜
4-58 緊張の走る夜に
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なんとか無事に南側の街まで道が完成した。
本来なら、このまま南側の街で一泊してから中央の街へ戻る予定だったが、いつまたアイツが現れるか分からないので、強行手段を取る事にした。
南側の街に着いた時点で、だいぶ日が暮れかけていたが、そんな事は言ってられない。
南側の街に着くと同時に、【大聖霊】達を腕輪の中に戻すようにドラしゃんに言われて、私とお兄ちゃんは言われた通りにした。
【大聖霊】達が腕輪の中に戻った事を確認して、ドラしゃんは皆に街の外へ出る様に促す。
皆が街の外に出るとドラしゃんはなんと本来のドラゴンの姿になる。
一同それを見て驚いていると
『時間がないので、この姿で皆さんを街まで運びます。全員私の背中に乗って下さい。』
私はドラしゃんの記憶を見た時に一度は、この姿を見た事があるのでたいして驚きはしなかたっが、他の人達は違っていた。
小さなドラゴン姿を見た事あるお兄ちゃんですら固まっていたからね。
他の人達は驚きと同時に恐怖すら感じている人もいた。
そんな彼らの姿を見て、少し苛立ちを感じたのだろう。
いつものドラしゃんらしくない口調で
『オイ!いつまでぼさっとしている!時間がない!!早くしろ!』
ドラしゃんにそう言われて、慌てて動き出す面々。
ドラしゃんの足を踏み台にして、背中によじ登っていく。
【聖獣】達も登り終えた事を確認すると、ドラしゃんは浮上し出す。
『スピードを出して飛ぶから、風魔法で保護はするが、多少の揺れは許せ。』
そう言い終わると同時に、ドラしゃんは中央の街を目指して滑空し出した。
段々と小さくなる南側の街。
そして、本来なら感じるはずの風の圧が全く感じないことに気付く。
それどころか、見えない壁に弾かれる様に動く風の線がリアルに見えるのだ。
「ドラしゃん。しゅごい?!」
私は満面の笑顔を浮かべて、はしゃいでしまった。
私以外の人達は、微動たりともせず固まっていた。
「リン。怖くないの?」
お兄ちゃんが、不安そうに話しかけてきたが、私は笑顔で大丈夫と答えた。
「だって、ドラしゃんよ?しんぱいしてない。」
私がそう答えると、皆の目が点に。
そして...。
「フッ。フ、フハハハハっ。そうだな。そうだった。」
「リン様の言う通りですね。」
ドムじぃーちゃんとセバしゃん。
そして、お兄ちゃんは笑い出す。
私はそんな3人をキョトンとした顔で見つめた。
「リンにとったら、どんな姿をしていてもフレアは、フレアか。さすがだ。」
「そうですね。フレアが、大事なリン様に危害が加わる様な事をするはずがないですよね。」
「そうだね。リンの言う通りだ。ドラしゃんだもんね。大丈夫だ。」
納得してのんびりし出した私達4人とは正反対に、同盟国の側近さん達はガチガチに固まったままだった。
何故なら、生きたドラゴンを見るのも初めてだし、本当にドラしゃんが"ドラゴン"だとは思ってもいなかった様だ。
それぞれの国王様達から話は聞いていた様だが、国王様自体がドラゴン姿のドラしゃんを見た事がないので、真実味がなかったとか...。
どこかの国の王様は、ドラしゃんのドラゴン姿を見ているので平気みたいだけどね。
あっという間に中央の街が見えて来た。
そのまま中央の街に行くのかと思ったが、そうではないみたい。
ドラしゃんは、街の手前でスピードを落として地上に向かって降りたち私達を降ろした。
そのまま街へ行ってもいいが、街を壊さない自信がなかったとか...。
とりあえず、ドラしゃんの背中から私達が降りるとドラしゃんはいつもの姿に。
すると、セバしゃん以外の側近さん達は何故か白目を向いて倒れたのだった。
「えっ?いま?」
思わず私は、そう言ってしまった。
ドムじぃーちゃんとセバしゃんは、私の言葉に反応して笑いだす。
お兄ちゃんは、必死に笑いを堪えていた。
ドラしゃんは、やれやれと言いながら魔法で倒れた側近さん達を浮かせながら中央の街へと向かって移動を開始する。
街の入り口では、ロドじぃーちゃんとラディじぃーちゃん、カシムじぃーちゃんが出迎えてくれた。
「おっ?!やっぱりお前達だったか。」
「見張りから、ドラゴンが向かってくる!!って、大騒ぎしてたからよ。もしやってな。」
「皆無事...というか、その3人はどうしたんだ?」
笑顔で出迎えてくれたじぃーちゃん達に、私とお兄ちゃんは走って駆け寄った。
それぞれの言葉には、ドムじぃーちゃんとセバしゃんは苦笑いを。
ドラしゃんは、溜息を吐きながら説明した。
『こちらへ戻る前に例の黒い奴と出会したので、少しでも早くこちらへ戻る為に強行手段をとりました。その結果です。』
ドラしゃんはの説明に、ロドじぃーちゃん、ラディじぃーちゃんとカシムじぃーちゃんは、何となく意味を理解した様で納得してくれた。
しかし、再び例の黒い奴が接触を測ったと聞いて中央の街の警備も厳重にする事にした。
とりあえず、街の外半径1キロ以内に罠は仕掛けた様だ。
街を包む結界も更なる補強もした。
ドラしゃんは、気絶している3人をラディじぃーちゃん達に預けて、私とお兄ちゃんを家に連れていく。
道中の詳しい説明は、ドムじぃーちゃんとセバしゃんに託されたのだった。
2人は特に文句も言わずに引き受けてくれた。
私とお兄ちゃんは、皆に"おやすみなさい"と挨拶を交わして、ドラしゃんに連れられて家路に着いた。
私達がお父さん達が待つ家に向かっている間、ドムじぃーちゃんとセバしゃんは今迄の出来事をロドじぃーちゃん達に説明する。
説明内容は、とりあえず東側の街が完成した事と、例の黒服の奴が現れた事。
あと例の奴が、現段階では街には入れないと言う事を話していた事も伝える。
すると、最初は穏やかにウンウンって聞いていたのが一変して、ピリッとした緊張感が漂い出した。
それも1日に2度も接触があった事を伝えると、ロドじぃーちゃんは街の警備に当たっているメンバー全員に召集をかけた。
メンバーが集まると、ロドじぃーちゃんは皆に話を始めた。
「リンとアキラを付け狙っている奴がまた現れた。しかも今日は2度もだ!!
2度あると言う事は、もう1度接触をはかる可能性がある!
そこでだ!今日は全員で街の警備にあたる!
もちろん俺とラディーミル、カシムも参加する!持ち場はいつも通りだ。交代で当たってくれ!
今日の分、また後日改めて休みは振り分ける!キツいと思うが堪えてくれ!」
ロドじぃーちゃんの言葉に、皆馬真剣な表情で頷く。
「大丈夫ですよ!徹夜の一晩やふた晩ぐらい!」
「そうですぜぇ!いつも世話になってんだ!こんな事で少しでも恩返しが出来るなら安いもんだ!」
「そうだーそうだー!」
口々に皆が、声を上げ出した。
「いいか。相手はどんな技を使ってくるかはわからねぇー!能力値すら不明だ。見つけても、すぐに手を出すな!
俺がカシムかロドムカに直ぐに報告を入れろ!いいな!」
騒ぎ立てるメンバーに、喝を入れるラディじぃーちゃん。
「「もちろんです!」」
皆気合い十分だった。
「夜食の心配はしなさんな。私らがちゃんと差し入れするからね。」
離れたところから、ナナばぁーちゃんとロナばぁーちゃんが声をかける。
「あんた達が頑張るなら、私らも頑張るよ。いつでも暖かい食事を用意してるから、交代で食べにおいで。」
「すまねぇーなぁー。頼むなぁー、母ちゃん。」
ラディじぃーちゃんがそう言うと、ナナばぁーちゃん達は"任しときな!"と言って兵舎食堂へ戻って行った。
「急な事ですまないが、いつも以上に気を引き締めてあたってくれ!
リンとアキラはもうこの街に戻っている。なら、現れるならこの街だ!
街を護りつつ、自分達の身も守れよ!」
「はい!」
ロドじぃーちゃんの激励を最後に、警備担当の皆馬それぞれ自分達の持ち場に散って行った。
「とりあえず、街の警備に関してはこれでなんとかなるだろう。
お前達もご苦労だった。今日はゆっくりしてくれ。」
ドムじぃーちゃんとセバしゃんにそう声をかけるロドじぃーちゃん。
すると...。
「俺は一度家に戻って、風呂に入って軽く飯を食ったら警備に参加するぞ!
1人でも多い方がいいだろう?」
ドムじぃーちゃんが、ニヤッと笑いながらロドじぃーちゃんに伝えた。
「しかしよ、お前...。」
ロドじぃーちゃんが何かを言おうとした時だった。
「それなら、私も今晩の警備に参加します。それなりに魔法も使えますし、戦闘経験もありますから。」
と、セバしゃんもそう言いだしたのだ。
「セバス。お前は、リン達との旅で疲れているだろう?今回は休んでろって。」
ラディじぃーちゃんが、そう言ってセバしゃんを説得しようとするが...。
「旅といっても、私は殆ど何もしてませんので、疲れてないんですよ。
それに、奴の気配はなんとなく覚えました。少しでも早く発見できる方がいいでしょ?なら、私がいる方がいいのでは?」
こうセバしゃんに言いくるめられてしまい、結局ドムじぃーちゃんもセバしゃんも今夜の警備に参加する事になった。
街でそんな事になっているとはつゆとも知らず私とお兄ちゃんは、ドラしゃんに運ばれて家に戻り両親との大瀬を楽しんでいた。
一応ドラしゃんには、ロドじぃーちゃんから今晩の警備について話はあったみたい。
しかし、家族で楽しそうに過ごしている私達を見て、あえてその事は私達に知らせなかったのだ。
家族でゆっくりと話をしながら晩御飯を食べ、久しぶりに家族でお風呂にも入り、使い慣れたベッドへ。
私とお兄ちゃんは皆が頑張っている事も知らず、夢の世界へと旅立ったのだ。
ドラしゃんは、私達が眠ったのを確認して家の結界をいつも以上に強化した。
そして、静かに家を出てロドじぃーちゃんの元へ。
今日の夜の街は、いつも以上に空気に緊張感が漂っていた。
いつもは、ほわほわとしたなんとも言えない平和的な空気感に包まれているのに...。
警備にあたる人達も、いつも以上に気合が入っていた。
街の隅から隅みまで巡回し、異常がないかをくまなく確認していく。
普段も巡回はしているが、基本この街を襲う輩や魔物がいないため、そこまで厳重な警備はしていない。
そうでなくても、最強のドラゴンの住む街だ。
誰が好き好んで攻めてくるだろうか?
しかし、今回の黒服の人間なのか、なんなのか正体がはっきりしない奴は、そんな事はお構いなしのようだ。
そのため、皆は普段私やお兄ちゃんに見せる顔とは違う顔をしていた。
『きっと、今日の皆の姿を見たらお嬢様とアキラ様は驚かれますね。
まぁ~、この姿が本来の彼らなんですがね...。』
そう呟きながら、街の様子を伺いながら歩くドラしゃん。
この街の警備にあたっている人は、殆どが兵士や冒険者の人達だ。
それ以外にも、自ら名乗り出てロドじぃーちゃんやラディじぃーちゃん達の戦闘訓練を受けて、警備隊についた者もいる。
そんな彼らは、普段私やお兄ちゃんの前では、虫も殺しそうにないほんわかな雰囲気を纏い、常に笑顔を見せている人達ばかり。
しかし、今や人1人ヤッた様な殺気だった顔付きと空気を纏っているのだ。
もちろんそれは、ロドじぃーちゃん達も同じだった。
気配を消して近寄ってくるドラしゃんに対して、迷わず剣を向ける。
「なんだ?!お前かぁ~。驚かすなよぉ~。」
剣を向けた相手が、ドラしゃんだと気付いて、いつもの口調になるロドじぃーちゃん。
『久しぶりに、その姿を見ましたね。懐かしいですね。』
ドラしゃんは平然とした様子で、ロドじぃーちゃんに声をかけた。
「リン達は?」
『もう眠ってます。本日の事は、一家には伝えてないです。家の結界もかなり強力なものにしてます。
ちなみに、私以外の者が敷地内に侵入すると危ないですよ。』
そう言い放つドラしゃん。
「大丈夫だ。あの辺りには、誰も逆に近づかない様に言ってある。
なんたって、世界最強の番人が居るんだ。他の警備なんぞ不要だろ?」
そうニヤッと笑いながら話すロドじぃーちゃんに、ドラしゃんは"さすがです"とにこやかな笑顔と共に呟いた。
『所で首尾は?』
「今のところ、反応はない。
全身黒なんだろう?夜はかなりこちらが不利だな。」
そう答えるロドじぃーちゃん。
しかし、そう言ってもこの街の護りはどこよりも強力なので、そうそう侵入は不可能なのだ。
しかし。
『相手の能力。素性共に未知。油断はできませんね。』
ドラしゃんのその言葉に、ロドじぃーちゃんは嫌そうな顔をする。
『何かあれば連絡を。私は彼らの側に居ます。もちろん寝ませんので、いつでも連絡を。』
それだけ言って、その場を離れていく。
「わかった。そっちは頼んだぜ!」
帰る背中に向かって、ロドじぃーちゃんが声をかけるとドラしゃんは右手を軽く上げた。
そして、また気配と共に姿も消した。
「あいつが味方で良かったぜ。敵なら、この街どころか、世界は今度こそ破滅だからなぁー。」
ドラしゃんが消えた方に向かって、ロドじぃーちゃんは頭を掻きながら呟くのだった。
ロドじぃーちゃん:
久々の徹夜かぁー。
ラディじぃーちゃん:
なんだ?自信がないのか?
ロドじぃーちゃん:
そんな事ないわ!
そんじょそこらの、若者には負けんぞ!
ラディじぃーちゃん:
無理はせんでいいんだぞ?
じぃーさん。
ロドじぃーちゃん:
はっ?!誰がじぃーさんだ!
そっちこそじじぃーだろうが!
ラディじぃーちゃん:
あー?!誰に向かってじじぃーっていってんだ?!
ロドじぃーちゃん:
お前だよ!お・ま・え!
なんだ?耳まで遠くなったのか?
ラディじぃーちゃん:
なんだと?!
舐め腐りやがって!
ドラしゃん:
年寄り同士が醜いですね。
2人とも、そろそろ自分の歳を自覚した方がいいですよ。
本来なら、このまま南側の街で一泊してから中央の街へ戻る予定だったが、いつまたアイツが現れるか分からないので、強行手段を取る事にした。
南側の街に着いた時点で、だいぶ日が暮れかけていたが、そんな事は言ってられない。
南側の街に着くと同時に、【大聖霊】達を腕輪の中に戻すようにドラしゃんに言われて、私とお兄ちゃんは言われた通りにした。
【大聖霊】達が腕輪の中に戻った事を確認して、ドラしゃんは皆に街の外へ出る様に促す。
皆が街の外に出るとドラしゃんはなんと本来のドラゴンの姿になる。
一同それを見て驚いていると
『時間がないので、この姿で皆さんを街まで運びます。全員私の背中に乗って下さい。』
私はドラしゃんの記憶を見た時に一度は、この姿を見た事があるのでたいして驚きはしなかたっが、他の人達は違っていた。
小さなドラゴン姿を見た事あるお兄ちゃんですら固まっていたからね。
他の人達は驚きと同時に恐怖すら感じている人もいた。
そんな彼らの姿を見て、少し苛立ちを感じたのだろう。
いつものドラしゃんらしくない口調で
『オイ!いつまでぼさっとしている!時間がない!!早くしろ!』
ドラしゃんにそう言われて、慌てて動き出す面々。
ドラしゃんの足を踏み台にして、背中によじ登っていく。
【聖獣】達も登り終えた事を確認すると、ドラしゃんは浮上し出す。
『スピードを出して飛ぶから、風魔法で保護はするが、多少の揺れは許せ。』
そう言い終わると同時に、ドラしゃんは中央の街を目指して滑空し出した。
段々と小さくなる南側の街。
そして、本来なら感じるはずの風の圧が全く感じないことに気付く。
それどころか、見えない壁に弾かれる様に動く風の線がリアルに見えるのだ。
「ドラしゃん。しゅごい?!」
私は満面の笑顔を浮かべて、はしゃいでしまった。
私以外の人達は、微動たりともせず固まっていた。
「リン。怖くないの?」
お兄ちゃんが、不安そうに話しかけてきたが、私は笑顔で大丈夫と答えた。
「だって、ドラしゃんよ?しんぱいしてない。」
私がそう答えると、皆の目が点に。
そして...。
「フッ。フ、フハハハハっ。そうだな。そうだった。」
「リン様の言う通りですね。」
ドムじぃーちゃんとセバしゃん。
そして、お兄ちゃんは笑い出す。
私はそんな3人をキョトンとした顔で見つめた。
「リンにとったら、どんな姿をしていてもフレアは、フレアか。さすがだ。」
「そうですね。フレアが、大事なリン様に危害が加わる様な事をするはずがないですよね。」
「そうだね。リンの言う通りだ。ドラしゃんだもんね。大丈夫だ。」
納得してのんびりし出した私達4人とは正反対に、同盟国の側近さん達はガチガチに固まったままだった。
何故なら、生きたドラゴンを見るのも初めてだし、本当にドラしゃんが"ドラゴン"だとは思ってもいなかった様だ。
それぞれの国王様達から話は聞いていた様だが、国王様自体がドラゴン姿のドラしゃんを見た事がないので、真実味がなかったとか...。
どこかの国の王様は、ドラしゃんのドラゴン姿を見ているので平気みたいだけどね。
あっという間に中央の街が見えて来た。
そのまま中央の街に行くのかと思ったが、そうではないみたい。
ドラしゃんは、街の手前でスピードを落として地上に向かって降りたち私達を降ろした。
そのまま街へ行ってもいいが、街を壊さない自信がなかったとか...。
とりあえず、ドラしゃんの背中から私達が降りるとドラしゃんはいつもの姿に。
すると、セバしゃん以外の側近さん達は何故か白目を向いて倒れたのだった。
「えっ?いま?」
思わず私は、そう言ってしまった。
ドムじぃーちゃんとセバしゃんは、私の言葉に反応して笑いだす。
お兄ちゃんは、必死に笑いを堪えていた。
ドラしゃんは、やれやれと言いながら魔法で倒れた側近さん達を浮かせながら中央の街へと向かって移動を開始する。
街の入り口では、ロドじぃーちゃんとラディじぃーちゃん、カシムじぃーちゃんが出迎えてくれた。
「おっ?!やっぱりお前達だったか。」
「見張りから、ドラゴンが向かってくる!!って、大騒ぎしてたからよ。もしやってな。」
「皆無事...というか、その3人はどうしたんだ?」
笑顔で出迎えてくれたじぃーちゃん達に、私とお兄ちゃんは走って駆け寄った。
それぞれの言葉には、ドムじぃーちゃんとセバしゃんは苦笑いを。
ドラしゃんは、溜息を吐きながら説明した。
『こちらへ戻る前に例の黒い奴と出会したので、少しでも早くこちらへ戻る為に強行手段をとりました。その結果です。』
ドラしゃんはの説明に、ロドじぃーちゃん、ラディじぃーちゃんとカシムじぃーちゃんは、何となく意味を理解した様で納得してくれた。
しかし、再び例の黒い奴が接触を測ったと聞いて中央の街の警備も厳重にする事にした。
とりあえず、街の外半径1キロ以内に罠は仕掛けた様だ。
街を包む結界も更なる補強もした。
ドラしゃんは、気絶している3人をラディじぃーちゃん達に預けて、私とお兄ちゃんを家に連れていく。
道中の詳しい説明は、ドムじぃーちゃんとセバしゃんに託されたのだった。
2人は特に文句も言わずに引き受けてくれた。
私とお兄ちゃんは、皆に"おやすみなさい"と挨拶を交わして、ドラしゃんに連れられて家路に着いた。
私達がお父さん達が待つ家に向かっている間、ドムじぃーちゃんとセバしゃんは今迄の出来事をロドじぃーちゃん達に説明する。
説明内容は、とりあえず東側の街が完成した事と、例の黒服の奴が現れた事。
あと例の奴が、現段階では街には入れないと言う事を話していた事も伝える。
すると、最初は穏やかにウンウンって聞いていたのが一変して、ピリッとした緊張感が漂い出した。
それも1日に2度も接触があった事を伝えると、ロドじぃーちゃんは街の警備に当たっているメンバー全員に召集をかけた。
メンバーが集まると、ロドじぃーちゃんは皆に話を始めた。
「リンとアキラを付け狙っている奴がまた現れた。しかも今日は2度もだ!!
2度あると言う事は、もう1度接触をはかる可能性がある!
そこでだ!今日は全員で街の警備にあたる!
もちろん俺とラディーミル、カシムも参加する!持ち場はいつも通りだ。交代で当たってくれ!
今日の分、また後日改めて休みは振り分ける!キツいと思うが堪えてくれ!」
ロドじぃーちゃんの言葉に、皆馬真剣な表情で頷く。
「大丈夫ですよ!徹夜の一晩やふた晩ぐらい!」
「そうですぜぇ!いつも世話になってんだ!こんな事で少しでも恩返しが出来るなら安いもんだ!」
「そうだーそうだー!」
口々に皆が、声を上げ出した。
「いいか。相手はどんな技を使ってくるかはわからねぇー!能力値すら不明だ。見つけても、すぐに手を出すな!
俺がカシムかロドムカに直ぐに報告を入れろ!いいな!」
騒ぎ立てるメンバーに、喝を入れるラディじぃーちゃん。
「「もちろんです!」」
皆気合い十分だった。
「夜食の心配はしなさんな。私らがちゃんと差し入れするからね。」
離れたところから、ナナばぁーちゃんとロナばぁーちゃんが声をかける。
「あんた達が頑張るなら、私らも頑張るよ。いつでも暖かい食事を用意してるから、交代で食べにおいで。」
「すまねぇーなぁー。頼むなぁー、母ちゃん。」
ラディじぃーちゃんがそう言うと、ナナばぁーちゃん達は"任しときな!"と言って兵舎食堂へ戻って行った。
「急な事ですまないが、いつも以上に気を引き締めてあたってくれ!
リンとアキラはもうこの街に戻っている。なら、現れるならこの街だ!
街を護りつつ、自分達の身も守れよ!」
「はい!」
ロドじぃーちゃんの激励を最後に、警備担当の皆馬それぞれ自分達の持ち場に散って行った。
「とりあえず、街の警備に関してはこれでなんとかなるだろう。
お前達もご苦労だった。今日はゆっくりしてくれ。」
ドムじぃーちゃんとセバしゃんにそう声をかけるロドじぃーちゃん。
すると...。
「俺は一度家に戻って、風呂に入って軽く飯を食ったら警備に参加するぞ!
1人でも多い方がいいだろう?」
ドムじぃーちゃんが、ニヤッと笑いながらロドじぃーちゃんに伝えた。
「しかしよ、お前...。」
ロドじぃーちゃんが何かを言おうとした時だった。
「それなら、私も今晩の警備に参加します。それなりに魔法も使えますし、戦闘経験もありますから。」
と、セバしゃんもそう言いだしたのだ。
「セバス。お前は、リン達との旅で疲れているだろう?今回は休んでろって。」
ラディじぃーちゃんが、そう言ってセバしゃんを説得しようとするが...。
「旅といっても、私は殆ど何もしてませんので、疲れてないんですよ。
それに、奴の気配はなんとなく覚えました。少しでも早く発見できる方がいいでしょ?なら、私がいる方がいいのでは?」
こうセバしゃんに言いくるめられてしまい、結局ドムじぃーちゃんもセバしゃんも今夜の警備に参加する事になった。
街でそんな事になっているとはつゆとも知らず私とお兄ちゃんは、ドラしゃんに運ばれて家に戻り両親との大瀬を楽しんでいた。
一応ドラしゃんには、ロドじぃーちゃんから今晩の警備について話はあったみたい。
しかし、家族で楽しそうに過ごしている私達を見て、あえてその事は私達に知らせなかったのだ。
家族でゆっくりと話をしながら晩御飯を食べ、久しぶりに家族でお風呂にも入り、使い慣れたベッドへ。
私とお兄ちゃんは皆が頑張っている事も知らず、夢の世界へと旅立ったのだ。
ドラしゃんは、私達が眠ったのを確認して家の結界をいつも以上に強化した。
そして、静かに家を出てロドじぃーちゃんの元へ。
今日の夜の街は、いつも以上に空気に緊張感が漂っていた。
いつもは、ほわほわとしたなんとも言えない平和的な空気感に包まれているのに...。
警備にあたる人達も、いつも以上に気合が入っていた。
街の隅から隅みまで巡回し、異常がないかをくまなく確認していく。
普段も巡回はしているが、基本この街を襲う輩や魔物がいないため、そこまで厳重な警備はしていない。
そうでなくても、最強のドラゴンの住む街だ。
誰が好き好んで攻めてくるだろうか?
しかし、今回の黒服の人間なのか、なんなのか正体がはっきりしない奴は、そんな事はお構いなしのようだ。
そのため、皆は普段私やお兄ちゃんに見せる顔とは違う顔をしていた。
『きっと、今日の皆の姿を見たらお嬢様とアキラ様は驚かれますね。
まぁ~、この姿が本来の彼らなんですがね...。』
そう呟きながら、街の様子を伺いながら歩くドラしゃん。
この街の警備にあたっている人は、殆どが兵士や冒険者の人達だ。
それ以外にも、自ら名乗り出てロドじぃーちゃんやラディじぃーちゃん達の戦闘訓練を受けて、警備隊についた者もいる。
そんな彼らは、普段私やお兄ちゃんの前では、虫も殺しそうにないほんわかな雰囲気を纏い、常に笑顔を見せている人達ばかり。
しかし、今や人1人ヤッた様な殺気だった顔付きと空気を纏っているのだ。
もちろんそれは、ロドじぃーちゃん達も同じだった。
気配を消して近寄ってくるドラしゃんに対して、迷わず剣を向ける。
「なんだ?!お前かぁ~。驚かすなよぉ~。」
剣を向けた相手が、ドラしゃんだと気付いて、いつもの口調になるロドじぃーちゃん。
『久しぶりに、その姿を見ましたね。懐かしいですね。』
ドラしゃんは平然とした様子で、ロドじぃーちゃんに声をかけた。
「リン達は?」
『もう眠ってます。本日の事は、一家には伝えてないです。家の結界もかなり強力なものにしてます。
ちなみに、私以外の者が敷地内に侵入すると危ないですよ。』
そう言い放つドラしゃん。
「大丈夫だ。あの辺りには、誰も逆に近づかない様に言ってある。
なんたって、世界最強の番人が居るんだ。他の警備なんぞ不要だろ?」
そうニヤッと笑いながら話すロドじぃーちゃんに、ドラしゃんは"さすがです"とにこやかな笑顔と共に呟いた。
『所で首尾は?』
「今のところ、反応はない。
全身黒なんだろう?夜はかなりこちらが不利だな。」
そう答えるロドじぃーちゃん。
しかし、そう言ってもこの街の護りはどこよりも強力なので、そうそう侵入は不可能なのだ。
しかし。
『相手の能力。素性共に未知。油断はできませんね。』
ドラしゃんのその言葉に、ロドじぃーちゃんは嫌そうな顔をする。
『何かあれば連絡を。私は彼らの側に居ます。もちろん寝ませんので、いつでも連絡を。』
それだけ言って、その場を離れていく。
「わかった。そっちは頼んだぜ!」
帰る背中に向かって、ロドじぃーちゃんが声をかけるとドラしゃんは右手を軽く上げた。
そして、また気配と共に姿も消した。
「あいつが味方で良かったぜ。敵なら、この街どころか、世界は今度こそ破滅だからなぁー。」
ドラしゃんが消えた方に向かって、ロドじぃーちゃんは頭を掻きながら呟くのだった。
ロドじぃーちゃん:
久々の徹夜かぁー。
ラディじぃーちゃん:
なんだ?自信がないのか?
ロドじぃーちゃん:
そんな事ないわ!
そんじょそこらの、若者には負けんぞ!
ラディじぃーちゃん:
無理はせんでいいんだぞ?
じぃーさん。
ロドじぃーちゃん:
はっ?!誰がじぃーさんだ!
そっちこそじじぃーだろうが!
ラディじぃーちゃん:
あー?!誰に向かってじじぃーっていってんだ?!
ロドじぃーちゃん:
お前だよ!お・ま・え!
なんだ?耳まで遠くなったのか?
ラディじぃーちゃん:
なんだと?!
舐め腐りやがって!
ドラしゃん:
年寄り同士が醜いですね。
2人とも、そろそろ自分の歳を自覚した方がいいですよ。
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そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
若返ったオバさんは異世界でもうどん職人になりました
mabu
ファンタジー
聖女召喚に巻き込まれた普通のオバさんが無能なスキルと判断され追放されるが国から貰ったお金と隠されたスキルでお店を開き気ままにのんびりお気楽生活をしていくお話。
なるべく1日1話進めていたのですが仕事で不規則な時間になったり投稿も不規則になり週1や月1になるかもしれません。
不定期投稿になりますが宜しくお願いします🙇
感想、ご指摘もありがとうございます。
なるべく修正など対応していきたいと思っていますが皆様の広い心でスルーして頂きたくお願い致します。
読み進めて不快になる場合は履歴削除をして頂けると有り難いです。
お返事は何方様に対しても控えさせて頂きますのでご了承下さいます様、お願い致します。
優の異世界ごはん日記
風待 結
ファンタジー
月森優はちょっと料理が得意な普通の高校生。
ある日、帰り道で謎の光に包まれて見知らぬ森に転移してしまう。
未知の世界で飢えと恐怖に直面した優は、弓使いの少女・リナと出会う。
彼女の導きで村へ向かう道中、優は「料理のスキル」がこの世界でも通用すると気づく。
モンスターの肉や珍しい食材を使い、異世界で新たな居場所を作る冒険が始まる。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ
天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。
ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。
そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。
よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。
そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。
こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。
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