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第五章〜私達兄妹は冒険者になります〜
5-25 一度家に戻りますか?
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私とお兄ちゃんの悩みはともかく、魔獣の問題が解決したようなので無人島で一泊したのちに皆が待つ街へと戻る事にした。
もちろんそれについてはドラしゃんからそれぞれの国や街に伝言ドラゴンを飛ばしていち早く連絡を入れていてくれたのは言うまでもない。
「どうしたリン?アキラ?」
不貞腐れ気味の私とお兄ちゃんに声をかけるムキじぃーちゃん。
そんなムキじぃーちゃんに私とお兄ちゃんは
「なんもないですよ。」
「なんもないわ。」
ブスッとした表情で返事をするのでムキじぃーちゃんは苦笑いを浮かべる。
「せっかくの可愛い顔が台無しだぞ?」
ムキじぃーちゃんは私とお兄ちゃんの頬っぺたをツンツン突いて来るが、私とお兄ちゃんは相手にしなかった。
「せっかく問題は解決したんだ。皆んな無事たんだぜ?なぜそんなにむくれる必要があるんだ?」
やれやれと言った感じで私とお兄ちゃんに優しく話しかけるムキじぃーちゃん。
ムキじぃーちゃんの言っている事は分かっている。
わかっているんだけど...ってやつだ。
それをムキじぃーちゃんも感じ取れたようであえて口やかましくは言ってこなかった。
が...
「まぁ~リンの事だからまだまだもふもふした生き物を仲間にしたかったんだろ?」
ムキじぃーちゃんは揶揄うように私の耳元で囁いてくる。
「うっ。」
思わず反応した私を見てムキじぃーちゃんはニヤニヤ笑いだす。
実は言うと私としてはまだ物足りないものがあったのは本当だ。
もう少しもふもふが...。って!
「もう!!ムキじぃーちゃん!!」
私は慌ててムキじぃーちゃんに抗議する。
「ハハハッ。リン、アキラ。元気だせ。こんな事でむくれてても仕方がないぞ?これからもっといろんなことがある...といいたいのだが、お前さん達なら本当にありそうだからなぁー。ほどほどにしてくれよ。」
揶揄いながらも慰めてくれるムキじぃーちゃん。
私とお兄ちゃんは自分達がむくれているのが恥ずかしくなったので、機嫌を直して帰宅準備をする事にした。
「リン。お前は凄いよ。兄ちゃんも負けじと頑張るぞ!」
「えっ??どう言う事?私なんてお兄ちゃんみたいに強くないから、お兄ちゃんが羨ましいよ!!魔獣だって強そうな子が多いし!」
「えっ?そう?リンの方は...もふもふした子が多いよね?」
「そっ!!そうなのよ!肉球とか気持ちがいいのよ!!今度お兄ちゃんも触って見て!」
「マジ!肉球?!いいなぁー!」
「さっきまでふくれてたのになぁー。」
私とお兄ちゃんは魔獣の話で盛り上がっているとムキじぃーちゃんは呆れながら笑っていた。
そんななか私達の空気を読みながら
『お嬢様。アキラ様。こちらの方は連絡全て終わりましたよ。
どこも被害はないようですよ。』
ドラしゃんがしれっと入ってきて私達に声をかけてきた。
「おっ!フレア。仕事が早いなぁー。」
『ふん。当たり前です。それより、片付けは...進んでは...ないようですね。』
「今からするわ!」
「僕も!」
急いで片付けを終わらせると今後の話をドラしゃんがしだした。
『明日の昼までには街へと戻る段取りで動こうかと思ってます。』
「じゃー、夜明け前にまた移動か?」
『そのつもりです。夜活動可能な魔獣もいますので大丈夫でしょう。』
「私も大丈夫!」
「僕も!」
『分かりました。行きしよりは厳重な警戒をしなくても大丈夫でしょう。
それでも夜行性の魔獣はいますから気を付ける事にはこしたことはないでしょう。一応今日は早めに休んでください。
出発頃合いに起こして差し上げますから。』
ドラしゃんは優しく微笑みながら私とお兄ちゃんを見つめる。
そんなドラしゃんに私とお兄ちゃんは元気に答える。
「起きといても大丈夫よ!」
「僕も大丈夫です!」
私とお兄ちゃんがそう言うと...
『いいえ。お二人はまだまだ成長期ですからね。なるべく休んで下さい。寝る子は育ちますからね。』
ドラしゃんは笑みを浮かべながら話してはいるが目が全く笑っていない事に気付いたので、私とお兄ちゃんは素直に寝る事にした。
私とお兄ちゃんが寝る準備をしているのを見てドラしゃんは嬉しそうにしていた。
寝る準備が整うと...
「えっ?皆んな私達と一緒に居るの?」
「お前達も休んだ方がいいだろう?」
【大聖霊】達と【聖獣】達が私達を取り囲む様に陣取りだしたのだ。
それに対して驚いた表情を私とお兄ちゃんが浮かべていると
『大丈夫だよ。基本僕達は寝なくて大丈夫だからね。』
『そうですわ。休める時に休んでますから大丈夫ですよ。』
『主人達の方が寝ないと駄目なんだから寝てよね!』
『主人達が寝付くまで側で居るから。』
そう言ってテコでも動こうとはしない【大聖霊】達。
複雑な気持ちのまま私とお兄ちゃんは早いが寝床で横になる。
私とお兄ちゃんが横になるとフェンリルの兄妹が尻尾で私とお兄ちゃんの腹部辺りをぽんぽんとリズム良く叩いてくれた。
すると...いつの間にか私とお兄ちゃんは睡魔に身を委ね、スヤスヤと寝息をたてだしたのだった。
私とお兄ちゃんが寝息をたてて眠っても彼らは私達の側を離れなかったし、フェンリルの兄妹も尻尾の動きを止めなかった。
そんな光景をムキじぃーちゃんとドラしゃんは暖かい眼差しで見つめていた。
すやすや寝ているのに誰かが私とお兄ちゃんの体を揺らしてきた。
私とお兄ちゃんは気持ちがいい時間を邪魔されたくないため、目を開けようとしなかった。
「駄目だ。全く目を開けないぞこいつら。」
『いいですよ。そのまま連れていきましょう。お二人が寝ていても問題はないしでしょう。』
「わかった。ワシがアキラを連れて行くぞ。」
『ええ。私がお嬢様を連れて行きます。そう言う事なので...。』
《問題ない。主人を護るのは我らの役目。》
《雑魚ぐらい問題ない。》
『私達も問題ありませんわ。お二人は主人達をお願いします。』
『そうだな。他は気にするな。』
『いつまでも主人におんぶに抱っこは恥ずかしいからね!』
《我らも役に立たせて貰う。》
《そうだな。道案内は頼む。》
「じゃー行くとするか。」
『荷物は全て収納しました。この建物も私達がでたら消える様にしてあります。
二人をちゃんとこの布で包んでください。』
ドラしゃんはそう言って鞄よりいつも私とお兄ちゃんがお昼寝で使っているふかふか毛布を取り出しムキじぃーちゃんに手渡す。
ムキじぃーちゃんとドラしゃんはその毛布で私とお兄ちゃんを包むと建物から出た。
それに続いて【大聖霊】達や【聖獣】達、契約魔獣達もムキじぃーちゃん達の後を追って建物からでる。
すると..さっきまであった建物が何もなかった様に消えたのだ。
私とお兄ちゃんが目を覚ますと見慣れた風景が視界に入った。
私とお兄ちゃんが寝ている場所も寝慣れたベッドだった。
私達は周りをキョロキョロ見渡すと部屋のあちらこちらに契約した魔獣達が寝転がっている姿が視界に入ってきた。
という事は...。
「お兄ちゃん。もしかして。」
「ああ。リン。ここは家だ。」
お兄ちゃんがそう言った瞬間部屋のドアが静かに開いた。
『おや?二人とも起きられましたか?どうですか?疲れはありませんか?』
ドラしゃんが笑顔で入ってきたのだ。
「ドラしゃん!いつのまに戻ってきたの?!確か私とお兄ちゃん、あの建物で寝てたはず!」
「そう。無人島の家で寝てたはずです!起きた記憶がないし...。」
私とお兄ちゃんの言葉にドラしゃんは微笑しながら近寄ってきた。
すると寝ていた魔獣達も起き出し私達の周りに集まってくる。
ドラしゃんは私達の側まで来ると目線を合わせて私達が寝ている間の事を話してくれた。
あの無人島で寝ていた私とお兄ちゃんを一生懸命起こしたが、全く起きる気配がなかったのでお兄ちゃんはムキじぃーちゃんが、私はドラしゃんが抱き抱えて戻る事になった。
帰りは比較的楽だったそうだ。
【大聖霊】達が道の確保を行い襲って来る野生の魔獣達に関しては私とお兄ちゃんが契約した魔獣達や【聖獣】達が迎え打ってくれたようだ。
その為ドラしゃんとムキじぃーちゃんは倒した魔物を回収しつつ私とお兄ちゃんの様子を見るだけで良かったのだとか。
行きしの半分の時間で移動ができたと笑顔で教えてくれた。
街へ着くと皆が起きて待っていてくれたらしく、私とお兄ちゃんが寝ているにも関わらず、契約した魔獣達の登録も終わらせてくれた様だった。
契約の登録をしながらロドじぃーちゃんやルミばぁーちゃんは頭を抱えていたが、お父さんやお母さんは逆に喜んでいた様だ。
なぜなら私とお兄ちゃんは前の世界では常に動物と触れ合う日々だったのだが、この世界に来てからはそれが出来ていなかったのが両親的には心残りの様だった。
だが、【大聖霊】や【聖獣】達が仲間になって少しはホッとはしていたとも言っていたらしい。
が、触れ合う"動物(ペット)"というカテゴリーには当てはまりそうになかったので何回かムキじぃーちゃんに相談した事があったそうだ。
それが今回魔獣と契約して私やお兄ちゃんが触れ合う"動物(ペット)"として最適であると思った様だ。
魔獣達から
《主人達からは匂いが消えたからもうこの様なことは当分起きないであろうね。》
《でも気をつけるにはこしたことはないよ。今回みたいな事にはないけど、似た様なことはもしかしたら起こるかもしれないね。》
《いつかと聞かれたらわからない。匂いが強くなったら起こるね。》
《匂いに関しては我々でもわかるから大丈夫だ。》
《匂いが強くなる前に知らせる様にするよ。》
と言われたそうだ。
それを聞いて皆は納得してくれたようだった。
それぞれ街や国で警戒体制をとっていたのを解除して、しばらくは普段通りに過ごすこととなったという。
契約魔獣達はそのまま私達の家で過ごす事に。
闇属性の魔獣達は日中は私とお兄ちゃんの影の中で過ごしているそうだ。
影の中過ごしながらも私達の会話や様子はわかるのだとか。
他の魔獣達は私とお兄ちゃんと契約した事により大きさを自由に変えれるようになった様で、家の中では小型でいてくれる。
家の外や冒険に出るときは元の大きさに戻って一緒にいてくれるとのことだった。
『他にも色々あるかと思いますが、大まかな問題は解決したので良しとしましょう。
あと、後日改めて各国の王様達が話をしに来るそうです。
来る前には事前に連絡をしてくれるそうですよ。』
ドラしゃんから話を聞いて私とお兄ちゃんは少し恥ずかしくなった。
「ごめんなさいドラしゃん。」
「ごめんなさい。まさか起きなかったとは。」
そう。
もうある程度大人になったと思っていたのに...全く進歩していない事がわかったので恥ずかしくなった。
『えっ?そんな事ですか?何を言っているのですか?お二人はまだまだ幼いですよ。
それぐらいの事で...。気にする必要はありませんよ。』
ドラしゃんはそう言って私とお兄ちゃんの頭を優しく撫でてくれた。
『では着替えてギルドに顔出しますか?パーティーのメンバーもお二人をお待ちですよ。』
私とお兄ちゃんはハッとして急いで着替えをする。
『では、私は先に下に行ってご飯の用意をしておきますね。』
私とお兄ちゃんの様子を見てドラしゃんはそう告げると部屋を出た。
ドラしゃんが部屋を出たあと私とお兄ちゃんはクローゼットの中から今日着る服を取り出していく。
《主人。今日は何をするの?》
《主人、我々も行ってもいいの?》
《我々も頑張るよ!》
体を小さくした魔獣達が私とお兄ちゃんの足元で可愛く動き回る。
「もちろんよ。よろしくね。」
「君達がいる方が助かるよ。」
私とお兄ちゃんは着替えをしながら魔獣達に答えると、皆嬉しそうに尻尾を振ったり喉を鳴らす。
いつもの冒険に行く時の服装に着替えてた私とお兄ちゃんは皆んなを連れてドラしゃんが待つ一階へと向かった。
リン:
めちゃくちゃ恥ずかしいね
アキラ:
うん。全然進歩してなかったね。
リン:
こんなんで一人前の冒険者になれるのかなぁー
アキラ:
頑張るしかないね。
もちろんそれについてはドラしゃんからそれぞれの国や街に伝言ドラゴンを飛ばしていち早く連絡を入れていてくれたのは言うまでもない。
「どうしたリン?アキラ?」
不貞腐れ気味の私とお兄ちゃんに声をかけるムキじぃーちゃん。
そんなムキじぃーちゃんに私とお兄ちゃんは
「なんもないですよ。」
「なんもないわ。」
ブスッとした表情で返事をするのでムキじぃーちゃんは苦笑いを浮かべる。
「せっかくの可愛い顔が台無しだぞ?」
ムキじぃーちゃんは私とお兄ちゃんの頬っぺたをツンツン突いて来るが、私とお兄ちゃんは相手にしなかった。
「せっかく問題は解決したんだ。皆んな無事たんだぜ?なぜそんなにむくれる必要があるんだ?」
やれやれと言った感じで私とお兄ちゃんに優しく話しかけるムキじぃーちゃん。
ムキじぃーちゃんの言っている事は分かっている。
わかっているんだけど...ってやつだ。
それをムキじぃーちゃんも感じ取れたようであえて口やかましくは言ってこなかった。
が...
「まぁ~リンの事だからまだまだもふもふした生き物を仲間にしたかったんだろ?」
ムキじぃーちゃんは揶揄うように私の耳元で囁いてくる。
「うっ。」
思わず反応した私を見てムキじぃーちゃんはニヤニヤ笑いだす。
実は言うと私としてはまだ物足りないものがあったのは本当だ。
もう少しもふもふが...。って!
「もう!!ムキじぃーちゃん!!」
私は慌ててムキじぃーちゃんに抗議する。
「ハハハッ。リン、アキラ。元気だせ。こんな事でむくれてても仕方がないぞ?これからもっといろんなことがある...といいたいのだが、お前さん達なら本当にありそうだからなぁー。ほどほどにしてくれよ。」
揶揄いながらも慰めてくれるムキじぃーちゃん。
私とお兄ちゃんは自分達がむくれているのが恥ずかしくなったので、機嫌を直して帰宅準備をする事にした。
「リン。お前は凄いよ。兄ちゃんも負けじと頑張るぞ!」
「えっ??どう言う事?私なんてお兄ちゃんみたいに強くないから、お兄ちゃんが羨ましいよ!!魔獣だって強そうな子が多いし!」
「えっ?そう?リンの方は...もふもふした子が多いよね?」
「そっ!!そうなのよ!肉球とか気持ちがいいのよ!!今度お兄ちゃんも触って見て!」
「マジ!肉球?!いいなぁー!」
「さっきまでふくれてたのになぁー。」
私とお兄ちゃんは魔獣の話で盛り上がっているとムキじぃーちゃんは呆れながら笑っていた。
そんななか私達の空気を読みながら
『お嬢様。アキラ様。こちらの方は連絡全て終わりましたよ。
どこも被害はないようですよ。』
ドラしゃんがしれっと入ってきて私達に声をかけてきた。
「おっ!フレア。仕事が早いなぁー。」
『ふん。当たり前です。それより、片付けは...進んでは...ないようですね。』
「今からするわ!」
「僕も!」
急いで片付けを終わらせると今後の話をドラしゃんがしだした。
『明日の昼までには街へと戻る段取りで動こうかと思ってます。』
「じゃー、夜明け前にまた移動か?」
『そのつもりです。夜活動可能な魔獣もいますので大丈夫でしょう。』
「私も大丈夫!」
「僕も!」
『分かりました。行きしよりは厳重な警戒をしなくても大丈夫でしょう。
それでも夜行性の魔獣はいますから気を付ける事にはこしたことはないでしょう。一応今日は早めに休んでください。
出発頃合いに起こして差し上げますから。』
ドラしゃんは優しく微笑みながら私とお兄ちゃんを見つめる。
そんなドラしゃんに私とお兄ちゃんは元気に答える。
「起きといても大丈夫よ!」
「僕も大丈夫です!」
私とお兄ちゃんがそう言うと...
『いいえ。お二人はまだまだ成長期ですからね。なるべく休んで下さい。寝る子は育ちますからね。』
ドラしゃんは笑みを浮かべながら話してはいるが目が全く笑っていない事に気付いたので、私とお兄ちゃんは素直に寝る事にした。
私とお兄ちゃんが寝る準備をしているのを見てドラしゃんは嬉しそうにしていた。
寝る準備が整うと...
「えっ?皆んな私達と一緒に居るの?」
「お前達も休んだ方がいいだろう?」
【大聖霊】達と【聖獣】達が私達を取り囲む様に陣取りだしたのだ。
それに対して驚いた表情を私とお兄ちゃんが浮かべていると
『大丈夫だよ。基本僕達は寝なくて大丈夫だからね。』
『そうですわ。休める時に休んでますから大丈夫ですよ。』
『主人達の方が寝ないと駄目なんだから寝てよね!』
『主人達が寝付くまで側で居るから。』
そう言ってテコでも動こうとはしない【大聖霊】達。
複雑な気持ちのまま私とお兄ちゃんは早いが寝床で横になる。
私とお兄ちゃんが横になるとフェンリルの兄妹が尻尾で私とお兄ちゃんの腹部辺りをぽんぽんとリズム良く叩いてくれた。
すると...いつの間にか私とお兄ちゃんは睡魔に身を委ね、スヤスヤと寝息をたてだしたのだった。
私とお兄ちゃんが寝息をたてて眠っても彼らは私達の側を離れなかったし、フェンリルの兄妹も尻尾の動きを止めなかった。
そんな光景をムキじぃーちゃんとドラしゃんは暖かい眼差しで見つめていた。
すやすや寝ているのに誰かが私とお兄ちゃんの体を揺らしてきた。
私とお兄ちゃんは気持ちがいい時間を邪魔されたくないため、目を開けようとしなかった。
「駄目だ。全く目を開けないぞこいつら。」
『いいですよ。そのまま連れていきましょう。お二人が寝ていても問題はないしでしょう。』
「わかった。ワシがアキラを連れて行くぞ。」
『ええ。私がお嬢様を連れて行きます。そう言う事なので...。』
《問題ない。主人を護るのは我らの役目。》
《雑魚ぐらい問題ない。》
『私達も問題ありませんわ。お二人は主人達をお願いします。』
『そうだな。他は気にするな。』
『いつまでも主人におんぶに抱っこは恥ずかしいからね!』
《我らも役に立たせて貰う。》
《そうだな。道案内は頼む。》
「じゃー行くとするか。」
『荷物は全て収納しました。この建物も私達がでたら消える様にしてあります。
二人をちゃんとこの布で包んでください。』
ドラしゃんはそう言って鞄よりいつも私とお兄ちゃんがお昼寝で使っているふかふか毛布を取り出しムキじぃーちゃんに手渡す。
ムキじぃーちゃんとドラしゃんはその毛布で私とお兄ちゃんを包むと建物から出た。
それに続いて【大聖霊】達や【聖獣】達、契約魔獣達もムキじぃーちゃん達の後を追って建物からでる。
すると..さっきまであった建物が何もなかった様に消えたのだ。
私とお兄ちゃんが目を覚ますと見慣れた風景が視界に入った。
私とお兄ちゃんが寝ている場所も寝慣れたベッドだった。
私達は周りをキョロキョロ見渡すと部屋のあちらこちらに契約した魔獣達が寝転がっている姿が視界に入ってきた。
という事は...。
「お兄ちゃん。もしかして。」
「ああ。リン。ここは家だ。」
お兄ちゃんがそう言った瞬間部屋のドアが静かに開いた。
『おや?二人とも起きられましたか?どうですか?疲れはありませんか?』
ドラしゃんが笑顔で入ってきたのだ。
「ドラしゃん!いつのまに戻ってきたの?!確か私とお兄ちゃん、あの建物で寝てたはず!」
「そう。無人島の家で寝てたはずです!起きた記憶がないし...。」
私とお兄ちゃんの言葉にドラしゃんは微笑しながら近寄ってきた。
すると寝ていた魔獣達も起き出し私達の周りに集まってくる。
ドラしゃんは私達の側まで来ると目線を合わせて私達が寝ている間の事を話してくれた。
あの無人島で寝ていた私とお兄ちゃんを一生懸命起こしたが、全く起きる気配がなかったのでお兄ちゃんはムキじぃーちゃんが、私はドラしゃんが抱き抱えて戻る事になった。
帰りは比較的楽だったそうだ。
【大聖霊】達が道の確保を行い襲って来る野生の魔獣達に関しては私とお兄ちゃんが契約した魔獣達や【聖獣】達が迎え打ってくれたようだ。
その為ドラしゃんとムキじぃーちゃんは倒した魔物を回収しつつ私とお兄ちゃんの様子を見るだけで良かったのだとか。
行きしの半分の時間で移動ができたと笑顔で教えてくれた。
街へ着くと皆が起きて待っていてくれたらしく、私とお兄ちゃんが寝ているにも関わらず、契約した魔獣達の登録も終わらせてくれた様だった。
契約の登録をしながらロドじぃーちゃんやルミばぁーちゃんは頭を抱えていたが、お父さんやお母さんは逆に喜んでいた様だ。
なぜなら私とお兄ちゃんは前の世界では常に動物と触れ合う日々だったのだが、この世界に来てからはそれが出来ていなかったのが両親的には心残りの様だった。
だが、【大聖霊】や【聖獣】達が仲間になって少しはホッとはしていたとも言っていたらしい。
が、触れ合う"動物(ペット)"というカテゴリーには当てはまりそうになかったので何回かムキじぃーちゃんに相談した事があったそうだ。
それが今回魔獣と契約して私やお兄ちゃんが触れ合う"動物(ペット)"として最適であると思った様だ。
魔獣達から
《主人達からは匂いが消えたからもうこの様なことは当分起きないであろうね。》
《でも気をつけるにはこしたことはないよ。今回みたいな事にはないけど、似た様なことはもしかしたら起こるかもしれないね。》
《いつかと聞かれたらわからない。匂いが強くなったら起こるね。》
《匂いに関しては我々でもわかるから大丈夫だ。》
《匂いが強くなる前に知らせる様にするよ。》
と言われたそうだ。
それを聞いて皆は納得してくれたようだった。
それぞれ街や国で警戒体制をとっていたのを解除して、しばらくは普段通りに過ごすこととなったという。
契約魔獣達はそのまま私達の家で過ごす事に。
闇属性の魔獣達は日中は私とお兄ちゃんの影の中で過ごしているそうだ。
影の中過ごしながらも私達の会話や様子はわかるのだとか。
他の魔獣達は私とお兄ちゃんと契約した事により大きさを自由に変えれるようになった様で、家の中では小型でいてくれる。
家の外や冒険に出るときは元の大きさに戻って一緒にいてくれるとのことだった。
『他にも色々あるかと思いますが、大まかな問題は解決したので良しとしましょう。
あと、後日改めて各国の王様達が話をしに来るそうです。
来る前には事前に連絡をしてくれるそうですよ。』
ドラしゃんから話を聞いて私とお兄ちゃんは少し恥ずかしくなった。
「ごめんなさいドラしゃん。」
「ごめんなさい。まさか起きなかったとは。」
そう。
もうある程度大人になったと思っていたのに...全く進歩していない事がわかったので恥ずかしくなった。
『えっ?そんな事ですか?何を言っているのですか?お二人はまだまだ幼いですよ。
それぐらいの事で...。気にする必要はありませんよ。』
ドラしゃんはそう言って私とお兄ちゃんの頭を優しく撫でてくれた。
『では着替えてギルドに顔出しますか?パーティーのメンバーもお二人をお待ちですよ。』
私とお兄ちゃんはハッとして急いで着替えをする。
『では、私は先に下に行ってご飯の用意をしておきますね。』
私とお兄ちゃんの様子を見てドラしゃんはそう告げると部屋を出た。
ドラしゃんが部屋を出たあと私とお兄ちゃんはクローゼットの中から今日着る服を取り出していく。
《主人。今日は何をするの?》
《主人、我々も行ってもいいの?》
《我々も頑張るよ!》
体を小さくした魔獣達が私とお兄ちゃんの足元で可愛く動き回る。
「もちろんよ。よろしくね。」
「君達がいる方が助かるよ。」
私とお兄ちゃんは着替えをしながら魔獣達に答えると、皆嬉しそうに尻尾を振ったり喉を鳴らす。
いつもの冒険に行く時の服装に着替えてた私とお兄ちゃんは皆んなを連れてドラしゃんが待つ一階へと向かった。
リン:
めちゃくちゃ恥ずかしいね
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うん。全然進歩してなかったね。
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頑張るしかないね。
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