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第五章〜私達兄妹は冒険者になります〜
5-27 新しいもふもふゲット!!
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馬鹿王子二人を除いたメンバーで本日の依頼をこなしに街の外へ向かった私達。
高ランクの魔獣達を引き連れて歩く私達の姿は異様なのかすれ違う人達皆、遠巻きに見つめてくる。
私達は特に気にも止めずにひたすら歩いていく。
そんな中、道中メンバー達がそれぞれ魔獣達に質問していた。
私とお兄ちゃんが契約した子達は、契約主以外とも普通に会話ができるみたいで、楽しそうに会話をしている。
本来魔獣とは会話はできないもので、高ランクの魔獣のみ稀に契約主とだけ意思疎通がはかれることがあるそうだ。
しかし、私とお兄ちゃんが契約した子達は"最初"から契約主以外とも会話ができたり、契約後に他の人達とも会話がとれたりしている。
いわゆる"特殊個体"に分類されるそうだ。
何せ皆元来の魔獣と大きさや色合い等が微妙に違っていたりしてたしね。
私とお兄ちゃん、ムキじぃーちゃんすら知らなかった事で違和感を感じていたのはドラしゃんだけだった。
街に戻ってから国王様達に魔獣の話をして情報収集して、改めて私とお兄ちゃんの契約した魔獣が他の個体と違う事がはっきり判明したのだ。
まず大きさは通常の個体より1.5倍から2倍程大きい。
色合いもアルビノだったり、異なる色をしていたりする。
なにより"魔獣鑑定"をすると素材としての価値がSSS級から測定不能と出るというのだから凄い。
まるで歩く"国宝"みたいな感じで、かなり価値の高い魔獣となると結果が出たのだ。
この事は私達が冒険に出ている間、ギルドの会議室で密かに保護者達が話し合っていたらしい。
もちろん皆胃を押さえながら話をしているのだけどね...。
その話し合いにはあの馬鹿王子達も参加していたんだって。
改めて私とお兄ちゃんの存在がどれ程のものかを知る勉強として...というのは名目で、ただドラしゃんとのマンツーマンのお説教タイムを避けるためだったみたい。
大人達の話を部屋の隅(ラディじぃーちゃんの背後)で大人しく聞いている二人。
時折り怒りの視線をドラしゃんから感じながらも黙って座っていた。
『お嬢様とアキラ様の事ですから普通にはいかないのはわかりきっていましたけど、ここまで来ると何か対策をとならいといけませんね。』
ドラしゃんの言葉に保護者達全員が頷く。
「そうだな。リンやアキラ達はかなり目立つ存在の上に、どうやら自分達の娘や息子の結婚相手にって考えだしている輩もいるみたいだしな。」
「なんだって!あんたそれちゃんと阻止したんだろうね!!」
「ああ。もちろん。」
「私もお手伝いして変な気を起こさないように根回しもしてますから。」
ルミばぁーちゃんの言葉に悪い顔の笑みを浮かべたラミィお兄ちゃんが返事をしていた。
この会話聞いて二人の王子達は小刻みに震えていた。
『おや?どうされました?ご気分でも悪くなりました?
ああ~。確かお二人も馬鹿な考えをお持ちでしたよね?た・し・か。』
ドラしゃんがそう言って黒い笑みを浮かべながら二人の王子達に声をかけると二人の王子は顔面蒼白になり息するのもしんどいのかヒューヒューと変な息をし出した。
どうやらドラしゃんの"威圧"に耐えれなくなって気絶寸前の様でラディじぃーちゃんとカシムじぃーちゃんが慌てて防波堤となると不機嫌な表情となるドラしゃん。
「お前、大人気ないぞ!」
「大丈夫ですか?王子。」
カシムじぃーちゃんが声をかけるも王子二人は既に限界を迎えていた。
カシムじぃーちゃんがそっと肩に手をかけると二人の王子はヒッ!と言って飛び上がったと思ったらその場に崩れ落ちつのだった。
「あーあ~。失神したね。」
「したな。」
「まぁ~仕方がないですよ。」
「そうだな。」
「ちょっ!お前達!意地悪だなぁー。」
『そうですか?まだ優しいですよ?』
そうそうとドラしゃんの言葉に頷く保護者達。
ラディじぃーちゃんとカシムじぃーちゃんは大きな溜息を吐きながら、二人の王子の介抱をおこなう。
その側でドラしゃん達はこれでもかと意識のない二人に向けて嫌味を言い続けたていた。
『王子だからと言って、お嬢様の相手となれると思うのがおこがましいです!
たいした実力もないガキの分際で。』
「せめて俺からムキファーに一本取れるぐらいにならんと無理だな。」
「はっ?!その程度で良いのかい?金や力があっても中身がクソだと意味がないわよ!中身を磨かないとね。
今のままだと、ゴブリンとかの方がまだまだまっしだね。」
「それは言えてますね。見た目が良くて、金があって、地位があっても今の性格(なかみ)だとクソすぎて話になりませんね。リンちゃんが苦労するのが目に見えてますよ。」
「そうね。リンには本当に好きな相手と結ばれて欲しいからね。例え相手が貧乏でもリンが幸せを感じて生活してくれてたら良いわ。」
「えっ!私はまだまだリンが嫁に行くなんて嫌だよ!!
まだまだ私達の娘でいてくれないと...。
でも、リンもアキラもいずれかは離れて行くんだろうなぁー。グスッ。
そうなれば、二人が本当に好きで私達みたいに助け合って幸せに暮らせる相手が良いなぁー。」
ドラしゃんを筆頭に保護者達がそれぞれ言いたい放題。
父さんなんかは涙を流しながら話していたんだって。
皆苦笑いしていたけど、気持ちは父さんと同じだったって後になってムキじぃーちゃんからきいたんだよね。
「お前らそんな話はコイツらが起きている時に言ってやれよ。」
ラディじぃーちゃんがそう言っと皆は、はぁー?!っという感じでラディじぃーちゃんを見つめた。
「いつ言ってもそいつら自身が人の話を聞く気にならんかったら無駄だろう。」
ルミばぁーちゃんが皆を代表して言うと、ウンウンと頷く保護者達。
「それを言われては仕方がないですな。」
カシムじぃーちゃんはそう言って溜息を吐き、眠りこけている二人の王子の顔を見つめる。
そんな話がされている事なんか知らず、私達は依頼をせっせとこなして行った。
魔獣達の予想以上の活躍で素材も集まる上に、新しい魔獣もゲットした。
「えっ?!なんでって?」
「なんかね、向こうのほうから仲間になりたいってやって来たのよねぇ~。」
という感じで、お兄ちゃんが契約したんだ。
ちなみにその魔獣っていうのが、ゴーレムなの!
凄いでしょう?!
しかもただのゴーレムじゃなくて、ミスリルゴーレムってやつだったの。
これでまた保護者達の胃にダメージを与える事になるんだけど...。
そんな事はお構いなく私達は楽しく依頼をこなしていった。
新しい仲間のミスリルゴーレムは硬い地盤も掘ることができる上に何もなかった様に地形を元に戻す事もできる素晴らしいスキルの持ち主。
このスキルをふんだんに使って取れるだけ鉱石も集めた。
珍しくアサくんも興奮して作業に没頭していた。
お兄ちゃんをはじめとして男の子連中は新しい仲間のミスリルゴーレムに夢中になっていた。
(あんなにはしゃぐアサくんを見るのは久しぶりの様な気がする。)
昔【大聖霊】達や【聖獣】達を仲間にした時以来の様な気がする。
「男の子ってかっこい系好きよね。」
もふもふした自分の魔獣の毛を堪能しながら私が呟きながらお兄ちゃん達を見ていると...???
岩の裂け目からもふっとした何かが見えた。
えっ?!と思い目を凝らしながら再度岩の裂け目に目をやると、モフッと揺れる尻尾が見える。
思わず駆け寄ろうとしたら、魔獣達に遮られた。
なんで?!と思ったらゴーレムが掘った岩のかけらが私の方へ飛んできていたみたいで、それから護るために魔獣達が盾となってくれたのだ。
「ちょっと!お兄ちゃん!危ないじゃない!大丈夫?ありがとう。」
《大丈夫ですよ主人。防御魔法を使ったから。》
《主人こそ大丈夫?》
「ええ。大丈夫よ。」
「ごめん!リン。大丈夫?!」
「彼らが護ってくれたから大丈夫よ。でも...。」
そう言って私は岩の裂け目に目をやると、あのモフッとした尻尾が消えていたのだった。
先程見たもふもふの尻尾。
尻尾がもふもふって事は、全体ももふもふのはず!!
見失ってしまったが、色ももふもふ加減も私の脳裏にはリアルに記憶されているから次は絶対に見逃さい自信がある!
そう思って岩の裂け目を目にすると凝視して確認していく。
すると奥の岩壁の隙間にあのもふもふした尻尾がチラッと見えたのだ。
私は今度こそ逃すまいと無意識に魔法を使っていた。
もふもふした生き物を捕らえるように見えない籠を創り出して捕らえたのだ。
「やったぁー!!」
急にはしゃぐ私を見てお兄ちゃん達は驚く。
私はお兄ちゃん達をその場に残して魔獣達を連れて岩の裂け目を目指して駆け出した。
すると裂け目の中をもがくもふもふした生き物がいた。
その生き物は全身真っ白な毛をしたキツネの姿をした生き物で瞳は綺麗な紫色をしていた。
「綺麗!そして可愛い!」
私がそう言って目の前の生き物に触れようとしたら牙を剥いてきた。
私は寸前で手を引いたから噛まれる事はなかった。
それにしてもかなり興奮している。
なんでだろうとじっーと見つめると足元に小さな毛玉が三つほど見えた。
どうやら産まれたての子供のようだ。
この子は親で子供達を護りながらこの鉱山で過ごしていたようだ。
しかし、ここではとれる獲物も少ないはずなんで?と思っていたら。
《どうやらこの奴主人の匂いに惹かれてきたものの産気付いてここで子供を産んだ様です。》
《産後の疲れと子育てで身動きが取れなくなり、気づけば主人の匂いが消えて元の場所にも戻るに戻れなくなったみたいですよ。》
一緒にいた魔獣達がそう私に教えてくれた。
《本来なら主人に牙を剥く気はなかった見たいけど、産後と子育てのために気が立っているみたいだ。》
そう言われたら...目は何か言いたげな目をしている上に牙を剥いている割にはそこまでの殺意を感じられない。
私はしゃがみ込むようにして姿勢を低くしてキツネさんと目を合わせてゆっくり話しかけた。
「ねぇ~。私リンって言うの。ここは危険でしょう?子育てするなら安全な場所の方がいいわよ?
私達と来ない?私の周りは安全よ。」
そう言って微笑みかけると、目の前のキツネは警戒しながらも私の言葉に耳を傾けているようだった。
私と足元の毛玉三つとを交互に見比べている。
「大丈夫よ。大丈夫。」
私がそう言い聞かせると逆立ていた毛を元に戻して私の方へ近づいて来た。
《本当に私の子供を助けてくれますか?》
「もちろんよ。」
《なら貴女を信じてついていきますわ。》
そう言ってキツネさんは私しに頭(コウベ)を下げた。
そうした瞬間私とキツネさん親子を光が包んだ。
私は一気にこのもふもふした真っ白なキツネの親子と契約を結ぶことができたのだった。
光が消えたら私は彼女らを囲っていた透明の籠を消した。
そして小さな毛玉三つを抱えて隙間から出る。
親ギツネは私の足元を歩いてくる。
狐と言ってもかなり大きい。
下手したらライオンぐらいの大きさはあるんじゃない?と改めて思った。
しかし、しなやかでふわふわした毛をしている。
三つの毛玉も超超超ふわふわしている。
私が毛玉とキツネを連れてお兄ちゃんの方へ向かうと皆呆れ顔で待っていた。
「やっぱりか。」
「そう来ましたか。」
「リン。」
「飽きないねぇー。」
「何よ!いいじゃない!!」
私は少し不貞腐れ気味で返事をすると、皆は微笑しながら集まってきた。
「これまたふわふわした生き物だね。」
「リンは好きだよね。もふもふした生き物。」
「なんて魔獣なんだろう?」
「親は一匹だけなのか?」
そういえば...。私は足元にいる母親キツネさんに声をかけた。
「この子達のお父さんはいないの?」
私の質問に母親キツネは首を傾げながら答えてくれた。
《私達の種族は種付けさえ終えれば相手は去るわ。一人で子供を産んで育てるのよ。》
「えっ!!何それ!最低じゃない!!」
私は思わず叫んでしまった。
《まぁ~魔獣には多いな。》
《生涯パートナーと一緒って言うのは少ないね。》
《そうだな。発情期の時になったら相手を探しに行くって感じだな。》
「えっ?!そうなの?だって、出産、育児って大変なのよ!
私はまだした事ないけど、お父さんやお母さん二人で私達を育ててくれてたけど毎日ヘトヘトになってたのよ!
それを一人なって...。ゆっくりしてね!子育て手伝うから!」
思わず私はそう言っていた。
「リン。お前が子育てしてたら皆今頃荒れ狂うぞ。」
「そうだね。彼氏ができたってだけでも大変だろうなぁ~。」
「ああ。戦になるんじゃないか?」
「リン!好きな人できたのか?!お兄ちゃん聞いてないよ!」
「はっ!何言ってるの!いないわよ!」
私達がこんな会話をしている間、魔獣は魔獣達で何やら会話をしていた。
《主人の所凄いよ。【大聖霊】や【聖獣】まで居るし。》
《何より伝説級のドラゴンまでいるぞ。》
《えっ?!そうなの??!》
《ああ。あと、主人の毛繕いは最高に気持ちがいい。》
《そうそう。主人と契約してから我々毛艶が良くなっよなぁー。》
《食べるものも美味しいしね。》
《ただ、主人は鈍感な部分があるから周りが大変だけどね。》
《そうだね。やる事がいきなりすぎるからね。後先考えてないから危ないよ。》
《それは...大丈夫なのですか?》
《大丈夫だろう。ああ見えて主人は強いからね。》
魔獣達はそう話ししながら私の方を見つめていた。
私は彼らの視線を感じて笑顔を向ける。
「リン。そろそろ帰るか?」
「そうだな。依頼の内容は完了したしな。」
「腹も減ったし。」
「あの二人の様子も気になるしね。」
「えっ?二人って??まぁ~この子達の登録もしないといけないから戻りますか。」
私達は集めた素材等を荷にして街へと戻る事にした。
受けた依頼をこなし新しい仲間も増やして私達は街へと戻った。
が。
やはり門で止められましたよ。
ですよねぇ~。
何せゴーレムを。
しかもミスリルゴーレムを連れて帰って来たしね。
私も大型のキツネ型魔獣を連れて帰って来たしね。
門兵さんは大慌てしてギルドに連絡をとっていた。
案の定いつものメンバーがごそっとやって来ましたよ。
「なぁーお前達は"普通"に依頼をこなすって事ができんのか?」
「今度はなんだい!"ミスリルゴーレム"じゃないか!これはアキラかい?!
そしてリンは...はっ!!!"フィリアフォックス"じゃないかい!まだ生存していたのかい?!」
「えっ!"フィリアフォックス"だと!!絶滅したと言われた生き物じゃないか!」
「しかもなんだいリン!フィリアフォックスの子供まで仲間にしたのかい?!」
「どこまで規格外なんでしょうね。」
「お前らがついていながらなんでこんなことに。」
『お嬢様。アキラ様。さすがですね。しかしご無事で何より。ロドムカ登録したのか?まだなら早くしろ!』
「ハッ!なんでお前はそうやって二人に甘いんだ!わかったよ。登録するわ!」
門でいつも通りわいわい言いながら作業をこなすロドじぃーちゃん達。
街の人達は慣れたもんで苦笑いしながら通り過ぎて行っていた。
なんやかんやあったが無事に新しい仲間の登録が終わった。
されて街の中に入れるようになったが、ミスリルゴーレムはデカ過ぎて門をくぐることができなかったので身体を小さくしてもらった。
身体の大きさを自由に変えれるのも契約魔獣の特徴の一つらしい。
縮んでもかなり大きなミスリルゴーレム。
街に入ると予想通り子供達から大人まで群がってきた。
しかも男ばかり。
なんで男ってこういう生き物が好きなのか私には分からなかった。
もふもふしてないし、ゴツいし。
まぁ~可愛いと言えば...可愛いのかなぁ??
でもやっぱり私が契約したこの子達の方が可愛い!!
もふもふ、ふわふわしてて。
はぁ~。
腕の中にいる三つの毛玉に頬ずりをするとプニッとした触感が...?!
なんと毛玉が動いて小さな手足を私のほっぺに押しつけていたのだった。
思わず私は倒れてしまった。
側にいたドラしゃんがナイスキャッチした。
私は微笑みながら気絶をしてしまっていた。
『お嬢様...。はぁー。相変わらずですね。アサ。ギルドの方へはお前から報告頼む。私はお嬢様を連れて先に戻る。
アキラ様。私共は先に戻りますね。』
「あっ!はい!僕は後から帰ります!リンをお願いします!」
お兄ちゃんはゴーレムを見に集まった人だかりの中から返事をした。
「アキラはワシが後から一緒に連れて帰るわ。リンを頼んだぞ。」
ムキじぃーちゃんがドラしゃんにそう言ってお兄ちゃんの側へ向かった。
ドラしゃんは気絶した私を抱き抱えて家の方へ向かう。
その後を魔獣達がついていく。
『お前達はお嬢様がどのような方か知っていて契約を結んでいるのか?』
後ろをついて歩く魔獣達に話しかけるドラしゃん。
魔獣達は平然とドラしゃんの言葉に返答した。
《どんな人物なのかは知らんが、この世界の生き物でないのはわかっておる。》
《匂いが違いますからね。》
《何より我々のような存在に無知過ぎるからな。本来人間は我々のような生き物を見たら悲鳴を上げて逃げるか、武器を構えて攻撃する生き物だろう。》
《しかし主人はそのような事は一切しない。それどころか無防備に歩み寄って来る。》
《下手したら命を落としかねないのに。》
《こんな無防備で変わった生き物は産まれて初めて見たな。》
魔獣達は尻尾を振りながら話していた。
魔獣達の言葉をドラしゃんは微笑しながら聞いていたようだ。
『ならお前達の役割はわかるだろう?お嬢様とアキラ様はこの世界の"常識"を全く知らない方だ。
まぁ~あえて詳しく教えてこなかっただけたのだがな。
なぜかこのお二人にはこの世界の"常識"を押し付けるものでないと思ったからな。
だからこそ周りに居る人間の苦労が半端ないのだがね。』
ドラしゃんの言葉に魔獣達は目をパチクリさせていた。
『お二人には自由に生きて欲しいのですよ。自分が思うがまま自由に。
その為に周りに居る大人達が苦労するのはせんなき事。
逆に苦労とも思わないですよ。
お嬢様一家には私を含め数多くの人々や生き物が救われました。
救われた形はそれぞれ異なるが救われたのには変わりない。
救われた分恩を返すのは当たり前だろう?』
ドラしゃんは私の寝姿を見つめながら話をする。
魔獣達は静かにドラしゃんの言葉を聞いていた。
『なら、お嬢様やアキラ様が楽しく元気に幸せいっぱい過ごす姿が見れるならそれに越した事はないのですよ。
そな為にはお前達も頑張ってもらうからな。』
ドラしゃんは少しドラゴンの威嚇をして魔獣達に自分の意思表明をした。
魔獣達は一瞬怯んだが、敵意がないのに気付いて警戒をといた。
そして。
《主人の為になるなら我々は頑張るのみ。》
《そうだな。》
魔獣達はそう言ってドラしゃんに返事した。
あれよあれよと話しながら歩いているうちに家に着いた。
家に着くと魔獣達は玄関に置いてある足拭きマットで足を拭いて家に上がる。
新しく仲間になったフィリアフォックスは見様見真似で対応していた。
家に上がるとお父さんが作ったそれぞれの水飲み場へ。
フィリアフォックスの分はドラしゃんが用意した。
水分をとると二階へと向かう。
私とお兄ちゃんの部屋へ向かうとドラしゃんは私の服を脱がせて寝巻きに着替えさせてベッドに寝かせる。
なぜか三匹のフィリアフォックスの子供達もだ。
母親のフィリアフォックスはドラしゃんに視線を送る。
ドラしゃんは溜息を吐きながらもフィリアフォックスが寛げるように専用のクッションを出した。
『ここで休め。他のものもお嬢様が目覚めるまで側にいてくれ。私は下で食事の準備をしておくので。』
魔獣達は素直に頷き自分達に用意されたクッションの上に乗って休むのだった。
リン:
やばい!なんなもふもふやばい!
プニッて!
アキラ:
よく鼻血を出さなかったね。
リン:
我慢したよ。
鼻血を出したらやばいでしょう!
アキラ:
確かに!
高ランクの魔獣達を引き連れて歩く私達の姿は異様なのかすれ違う人達皆、遠巻きに見つめてくる。
私達は特に気にも止めずにひたすら歩いていく。
そんな中、道中メンバー達がそれぞれ魔獣達に質問していた。
私とお兄ちゃんが契約した子達は、契約主以外とも普通に会話ができるみたいで、楽しそうに会話をしている。
本来魔獣とは会話はできないもので、高ランクの魔獣のみ稀に契約主とだけ意思疎通がはかれることがあるそうだ。
しかし、私とお兄ちゃんが契約した子達は"最初"から契約主以外とも会話ができたり、契約後に他の人達とも会話がとれたりしている。
いわゆる"特殊個体"に分類されるそうだ。
何せ皆元来の魔獣と大きさや色合い等が微妙に違っていたりしてたしね。
私とお兄ちゃん、ムキじぃーちゃんすら知らなかった事で違和感を感じていたのはドラしゃんだけだった。
街に戻ってから国王様達に魔獣の話をして情報収集して、改めて私とお兄ちゃんの契約した魔獣が他の個体と違う事がはっきり判明したのだ。
まず大きさは通常の個体より1.5倍から2倍程大きい。
色合いもアルビノだったり、異なる色をしていたりする。
なにより"魔獣鑑定"をすると素材としての価値がSSS級から測定不能と出るというのだから凄い。
まるで歩く"国宝"みたいな感じで、かなり価値の高い魔獣となると結果が出たのだ。
この事は私達が冒険に出ている間、ギルドの会議室で密かに保護者達が話し合っていたらしい。
もちろん皆胃を押さえながら話をしているのだけどね...。
その話し合いにはあの馬鹿王子達も参加していたんだって。
改めて私とお兄ちゃんの存在がどれ程のものかを知る勉強として...というのは名目で、ただドラしゃんとのマンツーマンのお説教タイムを避けるためだったみたい。
大人達の話を部屋の隅(ラディじぃーちゃんの背後)で大人しく聞いている二人。
時折り怒りの視線をドラしゃんから感じながらも黙って座っていた。
『お嬢様とアキラ様の事ですから普通にはいかないのはわかりきっていましたけど、ここまで来ると何か対策をとならいといけませんね。』
ドラしゃんの言葉に保護者達全員が頷く。
「そうだな。リンやアキラ達はかなり目立つ存在の上に、どうやら自分達の娘や息子の結婚相手にって考えだしている輩もいるみたいだしな。」
「なんだって!あんたそれちゃんと阻止したんだろうね!!」
「ああ。もちろん。」
「私もお手伝いして変な気を起こさないように根回しもしてますから。」
ルミばぁーちゃんの言葉に悪い顔の笑みを浮かべたラミィお兄ちゃんが返事をしていた。
この会話聞いて二人の王子達は小刻みに震えていた。
『おや?どうされました?ご気分でも悪くなりました?
ああ~。確かお二人も馬鹿な考えをお持ちでしたよね?た・し・か。』
ドラしゃんがそう言って黒い笑みを浮かべながら二人の王子達に声をかけると二人の王子は顔面蒼白になり息するのもしんどいのかヒューヒューと変な息をし出した。
どうやらドラしゃんの"威圧"に耐えれなくなって気絶寸前の様でラディじぃーちゃんとカシムじぃーちゃんが慌てて防波堤となると不機嫌な表情となるドラしゃん。
「お前、大人気ないぞ!」
「大丈夫ですか?王子。」
カシムじぃーちゃんが声をかけるも王子二人は既に限界を迎えていた。
カシムじぃーちゃんがそっと肩に手をかけると二人の王子はヒッ!と言って飛び上がったと思ったらその場に崩れ落ちつのだった。
「あーあ~。失神したね。」
「したな。」
「まぁ~仕方がないですよ。」
「そうだな。」
「ちょっ!お前達!意地悪だなぁー。」
『そうですか?まだ優しいですよ?』
そうそうとドラしゃんの言葉に頷く保護者達。
ラディじぃーちゃんとカシムじぃーちゃんは大きな溜息を吐きながら、二人の王子の介抱をおこなう。
その側でドラしゃん達はこれでもかと意識のない二人に向けて嫌味を言い続けたていた。
『王子だからと言って、お嬢様の相手となれると思うのがおこがましいです!
たいした実力もないガキの分際で。』
「せめて俺からムキファーに一本取れるぐらいにならんと無理だな。」
「はっ?!その程度で良いのかい?金や力があっても中身がクソだと意味がないわよ!中身を磨かないとね。
今のままだと、ゴブリンとかの方がまだまだまっしだね。」
「それは言えてますね。見た目が良くて、金があって、地位があっても今の性格(なかみ)だとクソすぎて話になりませんね。リンちゃんが苦労するのが目に見えてますよ。」
「そうね。リンには本当に好きな相手と結ばれて欲しいからね。例え相手が貧乏でもリンが幸せを感じて生活してくれてたら良いわ。」
「えっ!私はまだまだリンが嫁に行くなんて嫌だよ!!
まだまだ私達の娘でいてくれないと...。
でも、リンもアキラもいずれかは離れて行くんだろうなぁー。グスッ。
そうなれば、二人が本当に好きで私達みたいに助け合って幸せに暮らせる相手が良いなぁー。」
ドラしゃんを筆頭に保護者達がそれぞれ言いたい放題。
父さんなんかは涙を流しながら話していたんだって。
皆苦笑いしていたけど、気持ちは父さんと同じだったって後になってムキじぃーちゃんからきいたんだよね。
「お前らそんな話はコイツらが起きている時に言ってやれよ。」
ラディじぃーちゃんがそう言っと皆は、はぁー?!っという感じでラディじぃーちゃんを見つめた。
「いつ言ってもそいつら自身が人の話を聞く気にならんかったら無駄だろう。」
ルミばぁーちゃんが皆を代表して言うと、ウンウンと頷く保護者達。
「それを言われては仕方がないですな。」
カシムじぃーちゃんはそう言って溜息を吐き、眠りこけている二人の王子の顔を見つめる。
そんな話がされている事なんか知らず、私達は依頼をせっせとこなして行った。
魔獣達の予想以上の活躍で素材も集まる上に、新しい魔獣もゲットした。
「えっ?!なんでって?」
「なんかね、向こうのほうから仲間になりたいってやって来たのよねぇ~。」
という感じで、お兄ちゃんが契約したんだ。
ちなみにその魔獣っていうのが、ゴーレムなの!
凄いでしょう?!
しかもただのゴーレムじゃなくて、ミスリルゴーレムってやつだったの。
これでまた保護者達の胃にダメージを与える事になるんだけど...。
そんな事はお構いなく私達は楽しく依頼をこなしていった。
新しい仲間のミスリルゴーレムは硬い地盤も掘ることができる上に何もなかった様に地形を元に戻す事もできる素晴らしいスキルの持ち主。
このスキルをふんだんに使って取れるだけ鉱石も集めた。
珍しくアサくんも興奮して作業に没頭していた。
お兄ちゃんをはじめとして男の子連中は新しい仲間のミスリルゴーレムに夢中になっていた。
(あんなにはしゃぐアサくんを見るのは久しぶりの様な気がする。)
昔【大聖霊】達や【聖獣】達を仲間にした時以来の様な気がする。
「男の子ってかっこい系好きよね。」
もふもふした自分の魔獣の毛を堪能しながら私が呟きながらお兄ちゃん達を見ていると...???
岩の裂け目からもふっとした何かが見えた。
えっ?!と思い目を凝らしながら再度岩の裂け目に目をやると、モフッと揺れる尻尾が見える。
思わず駆け寄ろうとしたら、魔獣達に遮られた。
なんで?!と思ったらゴーレムが掘った岩のかけらが私の方へ飛んできていたみたいで、それから護るために魔獣達が盾となってくれたのだ。
「ちょっと!お兄ちゃん!危ないじゃない!大丈夫?ありがとう。」
《大丈夫ですよ主人。防御魔法を使ったから。》
《主人こそ大丈夫?》
「ええ。大丈夫よ。」
「ごめん!リン。大丈夫?!」
「彼らが護ってくれたから大丈夫よ。でも...。」
そう言って私は岩の裂け目に目をやると、あのモフッとした尻尾が消えていたのだった。
先程見たもふもふの尻尾。
尻尾がもふもふって事は、全体ももふもふのはず!!
見失ってしまったが、色ももふもふ加減も私の脳裏にはリアルに記憶されているから次は絶対に見逃さい自信がある!
そう思って岩の裂け目を目にすると凝視して確認していく。
すると奥の岩壁の隙間にあのもふもふした尻尾がチラッと見えたのだ。
私は今度こそ逃すまいと無意識に魔法を使っていた。
もふもふした生き物を捕らえるように見えない籠を創り出して捕らえたのだ。
「やったぁー!!」
急にはしゃぐ私を見てお兄ちゃん達は驚く。
私はお兄ちゃん達をその場に残して魔獣達を連れて岩の裂け目を目指して駆け出した。
すると裂け目の中をもがくもふもふした生き物がいた。
その生き物は全身真っ白な毛をしたキツネの姿をした生き物で瞳は綺麗な紫色をしていた。
「綺麗!そして可愛い!」
私がそう言って目の前の生き物に触れようとしたら牙を剥いてきた。
私は寸前で手を引いたから噛まれる事はなかった。
それにしてもかなり興奮している。
なんでだろうとじっーと見つめると足元に小さな毛玉が三つほど見えた。
どうやら産まれたての子供のようだ。
この子は親で子供達を護りながらこの鉱山で過ごしていたようだ。
しかし、ここではとれる獲物も少ないはずなんで?と思っていたら。
《どうやらこの奴主人の匂いに惹かれてきたものの産気付いてここで子供を産んだ様です。》
《産後の疲れと子育てで身動きが取れなくなり、気づけば主人の匂いが消えて元の場所にも戻るに戻れなくなったみたいですよ。》
一緒にいた魔獣達がそう私に教えてくれた。
《本来なら主人に牙を剥く気はなかった見たいけど、産後と子育てのために気が立っているみたいだ。》
そう言われたら...目は何か言いたげな目をしている上に牙を剥いている割にはそこまでの殺意を感じられない。
私はしゃがみ込むようにして姿勢を低くしてキツネさんと目を合わせてゆっくり話しかけた。
「ねぇ~。私リンって言うの。ここは危険でしょう?子育てするなら安全な場所の方がいいわよ?
私達と来ない?私の周りは安全よ。」
そう言って微笑みかけると、目の前のキツネは警戒しながらも私の言葉に耳を傾けているようだった。
私と足元の毛玉三つとを交互に見比べている。
「大丈夫よ。大丈夫。」
私がそう言い聞かせると逆立ていた毛を元に戻して私の方へ近づいて来た。
《本当に私の子供を助けてくれますか?》
「もちろんよ。」
《なら貴女を信じてついていきますわ。》
そう言ってキツネさんは私しに頭(コウベ)を下げた。
そうした瞬間私とキツネさん親子を光が包んだ。
私は一気にこのもふもふした真っ白なキツネの親子と契約を結ぶことができたのだった。
光が消えたら私は彼女らを囲っていた透明の籠を消した。
そして小さな毛玉三つを抱えて隙間から出る。
親ギツネは私の足元を歩いてくる。
狐と言ってもかなり大きい。
下手したらライオンぐらいの大きさはあるんじゃない?と改めて思った。
しかし、しなやかでふわふわした毛をしている。
三つの毛玉も超超超ふわふわしている。
私が毛玉とキツネを連れてお兄ちゃんの方へ向かうと皆呆れ顔で待っていた。
「やっぱりか。」
「そう来ましたか。」
「リン。」
「飽きないねぇー。」
「何よ!いいじゃない!!」
私は少し不貞腐れ気味で返事をすると、皆は微笑しながら集まってきた。
「これまたふわふわした生き物だね。」
「リンは好きだよね。もふもふした生き物。」
「なんて魔獣なんだろう?」
「親は一匹だけなのか?」
そういえば...。私は足元にいる母親キツネさんに声をかけた。
「この子達のお父さんはいないの?」
私の質問に母親キツネは首を傾げながら答えてくれた。
《私達の種族は種付けさえ終えれば相手は去るわ。一人で子供を産んで育てるのよ。》
「えっ!!何それ!最低じゃない!!」
私は思わず叫んでしまった。
《まぁ~魔獣には多いな。》
《生涯パートナーと一緒って言うのは少ないね。》
《そうだな。発情期の時になったら相手を探しに行くって感じだな。》
「えっ?!そうなの?だって、出産、育児って大変なのよ!
私はまだした事ないけど、お父さんやお母さん二人で私達を育ててくれてたけど毎日ヘトヘトになってたのよ!
それを一人なって...。ゆっくりしてね!子育て手伝うから!」
思わず私はそう言っていた。
「リン。お前が子育てしてたら皆今頃荒れ狂うぞ。」
「そうだね。彼氏ができたってだけでも大変だろうなぁ~。」
「ああ。戦になるんじゃないか?」
「リン!好きな人できたのか?!お兄ちゃん聞いてないよ!」
「はっ!何言ってるの!いないわよ!」
私達がこんな会話をしている間、魔獣は魔獣達で何やら会話をしていた。
《主人の所凄いよ。【大聖霊】や【聖獣】まで居るし。》
《何より伝説級のドラゴンまでいるぞ。》
《えっ?!そうなの??!》
《ああ。あと、主人の毛繕いは最高に気持ちがいい。》
《そうそう。主人と契約してから我々毛艶が良くなっよなぁー。》
《食べるものも美味しいしね。》
《ただ、主人は鈍感な部分があるから周りが大変だけどね。》
《そうだね。やる事がいきなりすぎるからね。後先考えてないから危ないよ。》
《それは...大丈夫なのですか?》
《大丈夫だろう。ああ見えて主人は強いからね。》
魔獣達はそう話ししながら私の方を見つめていた。
私は彼らの視線を感じて笑顔を向ける。
「リン。そろそろ帰るか?」
「そうだな。依頼の内容は完了したしな。」
「腹も減ったし。」
「あの二人の様子も気になるしね。」
「えっ?二人って??まぁ~この子達の登録もしないといけないから戻りますか。」
私達は集めた素材等を荷にして街へと戻る事にした。
受けた依頼をこなし新しい仲間も増やして私達は街へと戻った。
が。
やはり門で止められましたよ。
ですよねぇ~。
何せゴーレムを。
しかもミスリルゴーレムを連れて帰って来たしね。
私も大型のキツネ型魔獣を連れて帰って来たしね。
門兵さんは大慌てしてギルドに連絡をとっていた。
案の定いつものメンバーがごそっとやって来ましたよ。
「なぁーお前達は"普通"に依頼をこなすって事ができんのか?」
「今度はなんだい!"ミスリルゴーレム"じゃないか!これはアキラかい?!
そしてリンは...はっ!!!"フィリアフォックス"じゃないかい!まだ生存していたのかい?!」
「えっ!"フィリアフォックス"だと!!絶滅したと言われた生き物じゃないか!」
「しかもなんだいリン!フィリアフォックスの子供まで仲間にしたのかい?!」
「どこまで規格外なんでしょうね。」
「お前らがついていながらなんでこんなことに。」
『お嬢様。アキラ様。さすがですね。しかしご無事で何より。ロドムカ登録したのか?まだなら早くしろ!』
「ハッ!なんでお前はそうやって二人に甘いんだ!わかったよ。登録するわ!」
門でいつも通りわいわい言いながら作業をこなすロドじぃーちゃん達。
街の人達は慣れたもんで苦笑いしながら通り過ぎて行っていた。
なんやかんやあったが無事に新しい仲間の登録が終わった。
されて街の中に入れるようになったが、ミスリルゴーレムはデカ過ぎて門をくぐることができなかったので身体を小さくしてもらった。
身体の大きさを自由に変えれるのも契約魔獣の特徴の一つらしい。
縮んでもかなり大きなミスリルゴーレム。
街に入ると予想通り子供達から大人まで群がってきた。
しかも男ばかり。
なんで男ってこういう生き物が好きなのか私には分からなかった。
もふもふしてないし、ゴツいし。
まぁ~可愛いと言えば...可愛いのかなぁ??
でもやっぱり私が契約したこの子達の方が可愛い!!
もふもふ、ふわふわしてて。
はぁ~。
腕の中にいる三つの毛玉に頬ずりをするとプニッとした触感が...?!
なんと毛玉が動いて小さな手足を私のほっぺに押しつけていたのだった。
思わず私は倒れてしまった。
側にいたドラしゃんがナイスキャッチした。
私は微笑みながら気絶をしてしまっていた。
『お嬢様...。はぁー。相変わらずですね。アサ。ギルドの方へはお前から報告頼む。私はお嬢様を連れて先に戻る。
アキラ様。私共は先に戻りますね。』
「あっ!はい!僕は後から帰ります!リンをお願いします!」
お兄ちゃんはゴーレムを見に集まった人だかりの中から返事をした。
「アキラはワシが後から一緒に連れて帰るわ。リンを頼んだぞ。」
ムキじぃーちゃんがドラしゃんにそう言ってお兄ちゃんの側へ向かった。
ドラしゃんは気絶した私を抱き抱えて家の方へ向かう。
その後を魔獣達がついていく。
『お前達はお嬢様がどのような方か知っていて契約を結んでいるのか?』
後ろをついて歩く魔獣達に話しかけるドラしゃん。
魔獣達は平然とドラしゃんの言葉に返答した。
《どんな人物なのかは知らんが、この世界の生き物でないのはわかっておる。》
《匂いが違いますからね。》
《何より我々のような存在に無知過ぎるからな。本来人間は我々のような生き物を見たら悲鳴を上げて逃げるか、武器を構えて攻撃する生き物だろう。》
《しかし主人はそのような事は一切しない。それどころか無防備に歩み寄って来る。》
《下手したら命を落としかねないのに。》
《こんな無防備で変わった生き物は産まれて初めて見たな。》
魔獣達は尻尾を振りながら話していた。
魔獣達の言葉をドラしゃんは微笑しながら聞いていたようだ。
『ならお前達の役割はわかるだろう?お嬢様とアキラ様はこの世界の"常識"を全く知らない方だ。
まぁ~あえて詳しく教えてこなかっただけたのだがな。
なぜかこのお二人にはこの世界の"常識"を押し付けるものでないと思ったからな。
だからこそ周りに居る人間の苦労が半端ないのだがね。』
ドラしゃんの言葉に魔獣達は目をパチクリさせていた。
『お二人には自由に生きて欲しいのですよ。自分が思うがまま自由に。
その為に周りに居る大人達が苦労するのはせんなき事。
逆に苦労とも思わないですよ。
お嬢様一家には私を含め数多くの人々や生き物が救われました。
救われた形はそれぞれ異なるが救われたのには変わりない。
救われた分恩を返すのは当たり前だろう?』
ドラしゃんは私の寝姿を見つめながら話をする。
魔獣達は静かにドラしゃんの言葉を聞いていた。
『なら、お嬢様やアキラ様が楽しく元気に幸せいっぱい過ごす姿が見れるならそれに越した事はないのですよ。
そな為にはお前達も頑張ってもらうからな。』
ドラしゃんは少しドラゴンの威嚇をして魔獣達に自分の意思表明をした。
魔獣達は一瞬怯んだが、敵意がないのに気付いて警戒をといた。
そして。
《主人の為になるなら我々は頑張るのみ。》
《そうだな。》
魔獣達はそう言ってドラしゃんに返事した。
あれよあれよと話しながら歩いているうちに家に着いた。
家に着くと魔獣達は玄関に置いてある足拭きマットで足を拭いて家に上がる。
新しく仲間になったフィリアフォックスは見様見真似で対応していた。
家に上がるとお父さんが作ったそれぞれの水飲み場へ。
フィリアフォックスの分はドラしゃんが用意した。
水分をとると二階へと向かう。
私とお兄ちゃんの部屋へ向かうとドラしゃんは私の服を脱がせて寝巻きに着替えさせてベッドに寝かせる。
なぜか三匹のフィリアフォックスの子供達もだ。
母親のフィリアフォックスはドラしゃんに視線を送る。
ドラしゃんは溜息を吐きながらもフィリアフォックスが寛げるように専用のクッションを出した。
『ここで休め。他のものもお嬢様が目覚めるまで側にいてくれ。私は下で食事の準備をしておくので。』
魔獣達は素直に頷き自分達に用意されたクッションの上に乗って休むのだった。
リン:
やばい!なんなもふもふやばい!
プニッて!
アキラ:
よく鼻血を出さなかったね。
リン:
我慢したよ。
鼻血を出したらやばいでしょう!
アキラ:
確かに!
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