異世界で家族と新たな生活?!〜ドラゴンの無敵執事も加わり、ニューライフを楽しみます〜

藤*鳳

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第五章〜私達兄妹は冒険者になります〜

5-57 特別編 サイスン国王編

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 ファイン国王が奥さん達と帰って数日後のこと。
いつものように家でのんびりしていると玄関のチャイムが鳴った。

家には私とお兄ちゃんと【大聖霊】と【聖獣】達しかいない。

お父さんとお母さんはそれぞれの工房へ。
ドラしゃんは買い出しに出かけていた。

ドラしゃんからは自分が戻ってくるまで誰が来ても無視で!と言われていたが...。

ピーンポン。ピーンポン。...。
しばらくなっていたのが急に止んだ。
??やんだか?!かえったのかなぁ?ともったら...?!!!

ピポピポピポって玄関の呼び鈴が連打されたのだ。
さすがにこれを無視できるほど神経は図太くないので、私とお兄ちゃんは玄関に向かった。

玄関のドアには人のシルエットが。
私とお兄ちゃんは勇気を出して声をかけてみた。

「どちらさん?」

「誰ですか?」

私とお兄ちゃんの声がわかったのか、チャイムの連打をやめて返事をしてくれた。

「あっ!その声はリンとアキラだね!私だよ。サイスンだよ。」

テンション高らかに返ってきた返事は聞き覚えのあるものだった。

「サイスン?」

「サイスンって...。」

「「国王様だ!!」」

「正解!開けてくれる?」

私とお兄ちゃんは慌てて玄関のドアを開けた。
ドラしゃんには自分が帰ってくるまで無視と言われたのにもかかわらず...。

ドアを開けると本物のサイスン国王が立っていたのだ。

私とお兄ちゃんはサイスン国王を招き入れた。

リビングでくつろいでいた【大聖霊】や【聖獣】達は私達と一緒に入ってきた人物を見て驚いていた。

「ヘェ~【大聖霊】様や【聖獣】様って普段はこんな風に君達と過ごしているんだね。」

リビングでのんびりくつろいでいる姿を初めて見たサイスン国王は興奮気味に呟く。

私とお兄ちゃんにとっては普通の日常光景なのでそこまで興奮するサイスン国王がわからなかったが、とりあえずお客様なのでリビングの椅子へ案内した。

「こっちどうぞ。」

「僕、お茶をだすね。」

「おや?ご丁寧に。お気遣いなく。」

サイスン国王は私に手を引かれながら椅子の方へ向かい腰をかける。

お兄ちゃんは台所へ行きお茶の用意を三人分して戻ってきた。

一生懸命お茶の用意をするお兄ちゃんと私の姿を見てサイスン国王は微笑んでいた。

そして、三人でお茶を飲みながら一息ついていると買い物へ出かけていたドラしゃんが帰って来た。

しかも凄い勢いで。

ドラしゃんいわく屋敷近くで私達以外の気配が屋敷の中からしたので慌てて戻って来たと言うのだ。

野盗や不審者にしては【大聖霊】達が慌ててない事に違和感しか感じなかったが、自分が帰って来るまで無視する様に言っておいたので私達が招き入れるとは思ってなかったようだ。

しかし、実際に帰ってみると玄関に見慣れない靴が並んでいる。
もしや....。

気配を消しながらリビングに近づくと楽しそうにお茶を楽しむ私とお兄ちゃん。
そして、本来ならここにいないはずのサイスン国王の姿が。

これにはさすがのドラしゃんも怒りたくなったが、私とお兄ちゃんが笑顔でいるので怒るに怒れなくなり複雑な表情で今私達の前に立っているのだった。

「おや?フレア殿ではないか。久方ぶりですね。」

『ええ。そうですね。しかし、なぜギルドでなくこちらへ?』

極めて丁寧に対応するドラしゃん。
しかし、言葉の端々には棘があるように感じるのは気のせい??

「いや~、ガジム国王やファイン国王がこちらのお宅に泊まったと嬉しげに自慢話をするものでね。
それなら私もお邪魔しようかと思ってね訪ねて来たんだ。
チャイム鳴らしても中々出ないものだから、壊れているのかと思い連打したらこの二人が声をかけてくれてね。
私だと分かると招き入れてくれたんですよ。」

サイスン国王は綺麗な顔で微笑んで話すものだからめちゃくちゃ眩しかった。

私とお兄ちゃんはあまりの眩しさに目を閉じたけど、ドラしゃんは平然としていた。

『それはそれは。どの同盟国の国王も突発的に来られるので困ったものですよ。
普通、人様の家に来る時は事前に連絡するものですけどね。』

嫌味っぽく言い放つドラしゃん。
サイスン国王は笑顔でそうなの?って言葉を返しているのに私とお兄ちゃんはただ黙ってお茶を飲む事に集中した。

【大聖霊】達はいつのまにか腕輪の中に戻っているし、【聖獣】達は寝たふりを決め込んでしまっていた。

しばらくサイスン国王とドラしゃんの睨み合いは続いたが、いつまでも睨み合いをしているわけにもいかずドラしゃんは溜息を吐いて台所へと向かう。

『お嬢様。坊っちゃま。お昼の準備をしますからもう少しお待ち下さいね。』

「「はーい!」」

私とお兄ちゃんは素直に返事をするとサイスン国王が、

「私にはお昼ご飯はないのですか?」

とつかさず質問する。

ドラしゃんはチラッと睨むと...

『仕方なしに用意しますよ。文句は受け付けませんから。』

と、これまた溜息を吐きながら返事をした。

「良かった。では、楽しみにリン達と待ってるよ。」

と笑顔で話すサイスン国王。

あれ???
サイスン国王ってこんな感じの人だっけ???

私とお兄ちゃんはそう思いながら互いに顔を見合わせる。

私達が知るサイスン国王はお姉さんみたいに綺麗で優しい笑顔を常に浮かべている王様ってイメージだ。

しかし目の前にいるサイスン国王は見た目は綺麗なお姉さんなのだが、着ている服装がいつもと違って身軽なズボン系の服装をしているからだろうか...知らない人みたいに見えるのだ。

何よりこんな胡散臭い笑顔を浮かべる人なんて知らない...。

この顔はたまにモッケしゃんが同職者に向ける表情に似ていた。

私とお兄ちゃんは二人で身を寄せ合って目の前にいるサイスン国王をじっくり観察する。

それに気付いたのか...あえて私達に合わせてくれているのかわからないが、サイスン国王はいつもの笑顔を向けてきた。

「サイスン国王ですよね?」

「そうだね...。」

私とお兄ちゃんの言葉にサイスン国王は笑顔を崩さなかった。

「君達はいつ見ても可愛いよね。ガジム国王やファイン国王から君達の家に泊まったと自慢話を散々聞かされてね。ずるいと思って今日来たんだ。だって同じ同盟国の国王なのに私だけ除け者って酷くないかい?」

サイスン国王の言葉に私とお兄ちゃん。
そして台所で料理をしていたドラしゃんは驚きを通り越して呆れた。

「そんなりゆうで?」

「王様って暇なんですか?」

私とお兄ちゃんなら言葉にサイスン国王は笑顔のまま答えてくれた。

「同盟国の国王なんだよ?他の国王はよくって私だけダメなんてないよね?
暇ではないよ。この日のために纏めて仕事をしてきたよ。大変だったんだよ。一応二週間はここにお世話になるからね。」

サイスン国王のこの言葉はかなり驚いた。

思わず持っていたコップを床に落とすぐらいに。
中身は飲み干していたからよかったけど...。

ドラしゃんはサイスン国王の言葉に思わず力が入りすぎて包丁を粉々にしてしまった。

『はっ?!二週間!!あのファイン国王ですら一週間ですよ!それより多くいるつもりですか?!
あなた国王でしょう?!!!いすぎです!もう少し早く帰って下さい!!!』

ドラしゃんの言葉にえーーっと不満の声を上げるサイスン国王。

とりあえず父さん達が帰ってきてから再度話し合うと言う事で話を切り上げてお昼ご飯を食べる事に。

砕いた包丁はドラしゃんがまた魔法で修復した。


今日のお昼ご飯はトマトたっぷりのパスタとフルーツの盛り合わせ。

初めて食べるパスタにサイスン国王はテンションあげあげに。

「私の国では魚介類がメインだからね。こんな料理は初めてだよ。
君達は凄いね。今日から食事が楽しみだよ。あっ!ガジム国王やファイン国王が入ったと言う大浴場って奴にも私も入りたいからね!」

サイスン国王はいい歳した大人なのに初めてのお泊まり会に来た子供の様な感じだった。

相手をするドラしゃんだけが大きな溜息を吐いてげんなりしていた。

私とお兄ちゃんはと言うと...。

「どこでねるのかなぁ?」

「もしかして...。」

「それはいだよ。やっとゆっくり寝れると思ったのに...。」

そう。
ほんの数日前までファイン国王と一緒に寝ていたのだ。

やっとファイン国王が帰ってゆっくり兄妹二人で寝れると思っていたのに...。

その思いはあっけなく砕けることに。

「あっ!そうだ。私もリンやアキラと同じ部屋で寝るからね。
なんでも君達の寝床はすごいんだろ?
ファイン国王が自慢してたよ。家のベッドよりふわふわでよく寝れたってね。楽しみだよ。」

サイスン国王のこの言葉を聞いて、私とお兄ちゃんはファイン国王を呪いそうになった。

「あっ、でも今日だけでいいからね。翌日からは別の部屋で大丈夫だよ。
できたら水辺がある部屋がいいね。
一日はともかくそれ以上は水辺から離れるとかなりつらいからね。」

そう話すサイスン国王の顔は真剣だった。
そういえばサイスン国王は人魚の一族なのだ。

国では生活の大半が水と言うか、海水と一体の生活をおくっている。

「幼い子供や肌の弱い女性や高齢者は一日の大半を水中で生活しないといけないけど、私ぐらいなら一日ぐらい水から離れても大丈夫なんだ。
でも、さすがに二日目となるとキツイね。皮膚の乾燥だけでなく、体調も崩れ出すからね...。」

そう言って袖を捲るサイスン国王。
捲られた袖から見えたサイスン国王の腕には薄らと鱗が見えた。

キラキラと光るその腕はとても綺麗だった。

私が目を輝かせて見ているとサイスン国王は勘違いしたのか急いでそでを元に戻した。

「ごめんよ。こんな醜いものを見せて。」

サイスン国王は顔を少し歪ませて私に声をかけてきたので、私は驚きながらも素直に返事をした。

「えっ!どこが?キラキラしてきれいなのに!!リュモさんだってきれいなんだよ!サイスン国王もきれい!」

私が笑顔で言うとサイスン国王は驚いた顔をする。

「珍しいね。人間がそう言うなんて。大抵の人間はこの肌を見ると顔を顰めるのにね。」

サイスン国王はそう物悲しげな表情をしながら話す。

そんな事を言う人間がいるのに逆に驚く私。

「僕も綺麗だと思いました。リュモさんも人魚の姿の時キラキラ光ってて凄く綺麗なんです。
この前、生え変わって古くなったからって取れた鱗を僕とリンに一枚ずつくれましたが、とても綺麗でしたよ。」

お兄ちゃんのその言葉にサイスン国王は本当に驚いていた。

人魚族の鱗は万能薬になったり、武器や装飾品の加工に使われるそうだ。

人魚族の鱗を使った武器や装飾品はかなりの値打ちがあり、一度作られた劣化することが一切ないため高値で取引されている。

そのため鱗目的で幼い人魚の子供が拉致にあい残虐される事があったそうだ。

それを防ぐためサイスン国王の前の前の国は陸地に近くで住む事を諦めて海の中に国を作り直したそうだ。

しかし、産まれてくる子供の中には半人魚の子も産まれるため、サイスン国王の前の国王が今の国の形を作ったそうだ。

「私達の種族は今までの国王のおかげで昔ほどは乱獲されたりする事はなくなりました。それでも我々の鱗を狙う輩はあとを立ちません。
ですので、生え変わりで古くなった鱗を人間達に提供することによってなんとか生き抜いて来たんだ。
 我々の鱗は人魚族より直接手渡された物には特別な"加護"がつくのですよ。」

サイスン国王の言葉に私とお兄ちゃんはご飯を食べるのを中断して話を聞いた。

「その"加護"は"無病息災"だ。といってもまったく病気に罹らないと言うわけではない。死に至るような大病には罹らない程度だ。
それでも人間にとっては大事な事なのだろう?
 リュモはよほどお前さん達の事が気に入ったのだな。
あと、力をもつ人魚の鱗には他にも色んな効果を持っているのだ。
それは、貰った者にしか分からないのだがね...見たところ、海の加護と人魚の加護まで付いてるようだな。それ以外にも色んな加護を授けているようだが...君達二人なら他の人魚達も喜んでお前さん達を無条件で迎え入れるよ。」

サイスン国王の言葉にドラしゃんも驚いていた。

「そうなの?しらなかった。」

「僕もだよ。リンも僕もリュモさんからもらった鱗はお母さんが作ってくれた袋に入れていつも持ち歩いているよ。」

私とお兄ちゃんは服の中を探ってお母さんが作ってくれた巾着袋を取り出した。

そして袋の中から貰ったリュモさんの鱗を取り出した。

取り出した鱗は虹色に光っていた。

それにはサイスン国王は本気で驚いていた。

「はっ!?本当にその鱗はおふるのなか?!てか、リュモの鱗か?!絶対違うだろう!!めちゃくちゃ綺麗だし!こんな綺麗な鱗は初めて見るぞ!!」

私とお兄ちゃんが袋から取り出した鱗は、サイスン国王が言うことには生え変わりを済ませたお古の鱗ではなく、それどころか生え変わりたての新鮮な鱗だと言うのだ。

しかも虹色の鱗は人魚族の中でも滅多と産まれないと言うのだ。

「こんな鱗を持つのは数代前の国王以来いないときく!本当にリュモから貰ったのか?!」

サイスン国王のあまりの食い気味の反応に私とお兄ちゃんは首を縦に振るしかなかった。

「これだけの鱗なら過剰なほどの加護がついたてもおかしくない...。
それは、絶対誰にも見せるな!
家族以外は絶対だ!こんな鱗を持っている事をバレたらお前たちの命が危ない!」

サイスン国王の言葉にドラしゃんが過剰に反応したのは言うまでもない。

鱗を捨てる!と言うとドラしゃんが私とお兄ちゃんの鱗に手を出すと寸前で鱗に弾かれたのだった。

これは鱗の加護が反応したものだった。

「無理だ。この鱗は完全にこの二人を主人と認めているようだ。
下手には誰も手出しはできぬぞ。」

『では、どうしろと!お嬢様と坊っちゃまの命があぶないのでしょ!』

「だ・か・ら!!家族以外にバレないようにすればいいのだ。
誰ばり見せびらかさねば大丈夫だ。
こんなものを見抜けるのは私か神かお主ぐらいだ。」

意地でも私達から鱗を奪おうと画策するドラしゃんを説得するようにサイスン国王は話しかけた。

ドラしゃんはサイスン国王の言葉に渋々引き下がったがまだ納得していない様子だった。

「心配ならお主がかけてある加護を強めたら良いではないか。今でも十分だがなぁ...これだけ頑丈に加護や保護結界を施されている子どもなんぞ見たことないですよ。国王の子供でもここまで過保護にしていないぞ。」

サイスン国王の言葉にドラしゃんははぁー?!!と信じられないと言わんばかりの表情をした。

『これで過保護ですか?まだ足りないぐらいですよ?こんな可愛らしいお二人ですよ!
どこで変態に目をつけられるかわかったものではないでふからね!』

ドラしゃんの言葉にサイスン国王は軽く引いていた。

私とお兄ちゃんはとりあえずサイスン国王とドラしゃんが話している間に貰った鱗をお母さんお手製の巾着袋に戻して服の中に隠した。

実は...鱗がこの状態になったのはお母さんの手作りの巾着袋にある事はこの時は誰も気づいたなかった。

なんと、お母さんが作った緊張袋には"再生"、"復活"、"保存"、"警告"、"危険感知"など複数の加護が組み込まれていたのだった。

そのため、リュモさんがくれた古びた鱗はこの巾着袋に入った瞬間からその加護によって今の状態になったのだ。

その事に気付いたのは、サイスン国王がお泊まりから帰る前に我が家で落ちたお古の鱗を私達にくれて同じように巾着袋に入れて、翌日に出した事によって判明することに。


 サイスン国王の宿泊は夕方仕事を終えて帰って来た両親と合流して話し合った結果、一週間ならと許可が降りた。

サイスン国王は不満をのべていたが、文句があるなら今日帰ってくれてもいいとドラしゃんが言うと渋々一週間の宿泊期間を承諾してくれた。

その日の夜は私とお兄ちゃんとサイスン国王の三人で大浴場にむかった。

サイスン国王は初めてみる大浴場に大興奮して、私やお兄ちゃんよりおおはしゃぎしていた。

サイスン国王は水魔法系が得意でお風呂に入りながら色んな水魔法を教えてくれた。

水を固定する方やお湯に変える方法。
水溜りから水滴にかける方法や水で球体を作り色んな形に変える方法など。

お風呂で遊べる水魔法など色々教えてくれたのだ。

おかげでいつも以上にお風呂に入っている時間...と言うか、お風呂で過ごす時間が長くなった。

気付いたら両親やドラしゃんまでお風呂に入って来て、遊んでいる私達の姿を見られてお風呂場にて三人裸で説教を受けるなどプチハプニングがあったが...それはご愛嬌という事に。

最終的には皆で露天風呂に入って大人達は熱燗を。
私とお兄ちゃんはオレンジジュースを飲んで過ごしたのだ。

お風呂から出ると、サイスン国王は予告通り私とお兄ちゃんのお部屋で一緒に寝る事に。

サイスン国王はファイン国王と違って寝相は良く、ほのかに良い香りがして寝ながら癒されたのだ。

その日の夢で私とお兄ちゃんは大きな海のを舟でゆっくり揺られながら過ごすとても不思議な夢を見たのだった。

周りには何もなく広い青い海が広がっていた。
時々魚が飛び跳ねたり、イルカや鯨に遭遇した。

海のあの独特の香りがリアルに感じて本当に海にいる感じだ。

朝目覚めるといつも以上に目がぱっちりとして気持ちよく目覚める事ができたのだ。

起きるとまだサイスン国王は眠っていた。
私とお兄ちゃんはサイスン国王を起こさない様にそーっとベッドから降り、物音を立てない様に服を着替えて部屋から出た。

部屋を出ると私とお兄ちゃんを起こしにドラしゃんがやって来ていたのだ。

自分が起こす前に起きて着替えも済ませている私とお兄ちゃんを見てドラしゃんは驚いていたが特に何も言わずに私とお兄ちゃんを抱き上げて一階へと降りて行った。

下へ行くとすでに両親は起きて朝ご飯の支度をしていた。

ドラしゃんと私達が降りて来たのには何も言わなかったが...。

「あれ?サイスン国王さんは?」

キッチンでご飯の支度をしているお母さんが私とお兄ちゃん、そしてドラしゃんに質問して来た。

私とお兄ちゃんが答える前にドラしゃんが、

『あの方は昨晩のうちに帰られましたよ。』

と平然と言ってのけたのだ。

すると...。

「そんなわけあるかぁ!!!ちょっと起きるのが遅くなっただけだ!」

と元気よくサイスン国王の声が真後ろからしたのだ。

ドラしゃんの肩越しに声がした方を見ると、先程までベッドで寝ていた姿のサイスン国王が息を切らして立っていたのだった。

「リン。アキラ。ひどいぞ!起きたのなら私も起こしてくれぬと困るではないか。」

サイスン国王がそう私とお兄ちゃんに言うと...。

『はっ?何を言っているのだ。良い歳をした大人が。自分で起きなさいよ。』

朝早くからドラしゃんとサイスン国王が火花バチバチしているのだ。

それにはお母さんもお父さんも呆れていた。

昨日から私とお兄ちゃんはサイスン国王の意外な一面ばかりを見ているため頭が追いつかなくなって来た。

ドラしゃんとサイスン国王がギャンギャン言い合っている間に、朝食の準備は完了してしまった。

私とお兄ちゃんでドラしゃんとサイスン国王をなだめて朝ごはんを食べる事に。

朝ごはんを食べた後は、サイスン国王はこの街をゆっくり見た事がないと言って案内を私とお兄ちゃんを指名して来たのだった。

ドラしゃんも一緒に行くと言ったが、運悪くギルドからの仕事が残っているため、ギルドに行かなければならなかったが!!

ドラしゃんにとっての最優先事項は私のためギルドの仕事は本日放棄して私達に付きそう事にしたのだ。

サイスン国王は不服そうだったが、ドラしゃんがまったく引かないため渋々おれたのだ。

こうして今日は私とお兄ちゃん。
サイスン国王とドラしゃんの四人で街を見て回る事に。

サイスン国王はお兄ちゃんを抱っこして、私はドラしゃんに抱っこされた状態で街を回る。

なぜかって?
サイスン国王がいいだしたからだ。

本当は私とお兄ちゃんを両手に抱えて街を歩くと言ったのだが...ドラしゃんが断固拒否。

それでサイスン国王と言い争いから喧嘩に発展しそうになったのだが...それを回避する策としてそうなったのだ。

私達が街を歩くと視線が集中するのだが...気にせずに過ごす事にした。

私とお兄ちゃんの今日の仕事は、二人が喧嘩せずに過ごせる様にすること。

街を案内してトラブルなく家に帰ってくること。

これは両親から家から出る時に約束されたのだ。

私とお兄ちゃんは一生懸命街を案内して二人が喧嘩しないようにしたのだった。

サイスン国王が我が家に泊まっている間、なぜか終始ドラしゃんと張り合う日々が続いた。

私とお兄ちゃんはサイスン国王が帰る頃にはヘトヘトになっていた。

なぜかサイスン国王は来た時より数倍肌艶良くなって元気に帰って行ったのが解せなかったが...。

「お兄ちゃん...。」

「どうしたリン?」

「もう...あの人達がとまりにくるのはいやだ。」

「...同感。」

「きてもいっぱくにしてほしい...。」

「そうだね。」

私とお兄ちゃんの心の奥底からのお願いが果たして国王達に通じるかは...誰にもわからなかったのだった。









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