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第五章〜私達兄妹は冒険者になります〜
5-56 特別編 ファイン国王編
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これはある日のファイン国王と私と私の家族との話である。
同盟国として交流を交わして幾日かたったある日のこと。
突然お忍びでファイン国王が私達の家に訪ねて来たのだ。
しかも朝早く...早朝に...。
不機嫌な顔のドラしゃんが玄関にて同盟国の国王の首を絞めて昇天させようとしていたのは...夢だと思う事にした。
早朝に叩き起こされたので、その日だけはいつもより早い朝食をとることになった。
朝ご飯を一緒に食べながらファイン国王に何があったのか尋ねると...返ってきた返事はしょうもない...いや、本人にしたら大問題なのだろう。
その訪ねてきた理由が...なんと夫婦喧嘩と言うのだ。
その原因が...。
「はっ?朝ご飯をいつ食べるか?ですか??」
「そうだ!!」
しょうもない理由で私達は唖然としてしまった。
ファイン国王の言うには...ファイン国王の家(城)では、家族が揃って食べる事はないのだという。
妻と子供達はファイン国王のいる屋敷とは別棟の屋敷を与えられて生活していて、それぞれ面々に好きな時に食事をとるようにしているというのだ。
なにせ、ファイン国王の所は一夫多妻制のため、日本で言う"大奥"と言うのが存在するのだとか。
ファイン国王の住む屋敷とは廊下で繋がれた別棟がいくつか存在するらしく、《花の宮》と呼ばれており、国王の奥さん方とその子供と侍女のみが住んでいるという。
そんな事もあり食事は全て別に食べているのだったのだが...。
「最近嫁さん達によ、お前達の話をしたのがいけなかったのか...一緒に飯を食いたいや、一緒に出かけたいとか言い出したんだ。」
ファイン国王は頭を抱えてそう話し出す。
話の内容的には私達としては当たり前のことの様な内容なので、なぜ喧嘩に発展するのかが分からなかった。
だから私はファイン国王の側に行き笑顔で、
「お父さんならいっしょにごはんたべないとだめなんだよ?
リンのお父さんもリンたちといっしょにごはんをたべてくれるよ?
ごはんたべないなんて...お父さんしっかくだね。」
私の言葉に衝撃を受けるファイン国王と驚く両親。
ドラしゃんは笑顔で拍手をしながら私を褒めてくれた。
衝撃を受けて灰化しかけているファイン国王に両親はなぜ一緒にご飯を食べるのが嫌なのかを慌てて聞く。
温かいお茶を入れ替えてファイン国王に進めながら話しかける両親。
私とお兄ちゃんは両親の指示でドラしゃんはと一緒にプレイペースで遊ぶことに。
ファイン国王は両親から受け取った温かいお茶を飲みながらゆっくりと話し出した。
ファイン国王は朝ご飯は昼近くに朝昼兼用で食べるそうなのだ。
「俺は朝は起きてからコティ(コーヒーの様な飲み物のこと)を一杯飲むだけなんだ。あとは仕事をしてから昼近くに朝昼晩兼用で飯を食うんだ。
夜は...仕事の終わりしだいになんだが...早く終われば食うし、遅くなったら飯は食わずに酒だけ飲んで寝るんだ。
しかし、嫁さんやガキ達は朝からしっかり飯を食って過ごすんだ。だから...。」
言い淀むファイン国王を見て何かを察した両親が優しい眼差しを向けて
「生活スタイル自体が違うから合わせるとなると大変よね...。」
「ああ。私達は生活パターンがずっと一緒だからね...無理に合わせる必要はなかったしね。」
なるべく優しい言葉をかけるが、その言葉を聞いてますます凹むファイン国王。
「もしかしてその事で喧嘩になったの?」
お母さんの質問にファイン国王は小さくコクっと頷いた。
その姿をみて困惑する両親。しかし、わざわざ離れた我が家に訪ねて来たのだから助けてあげたいのだろう。
両親は凹むファイン国王に優しい言葉をかける。
「とりあえず、解決策が見つかるまでここに泊まるといいよ。」
「私、ロドじぃーちゃんにお願いしてファイン国王の家に連絡してもらえないから頼んでみるわ。」
「すまない。迷惑をかける...。」
こうして、ファイン国王はしばらくの間私達の家に寝泊まりする事になった。
ファイン国王の家...城にはロドじぃーちゃん経由で私達の家に泊まる事を伝えてもらった。
城からはファイン国王が考えを改めるまで帰ってくるな!とお嫁さん達から返事が来たのは言うまでもない。
ファイン国王はその返事を聞いて最初は怒っていたが...私達家族が仲良く過ごしているのを見て寂しくなったようで真剣に物事を考える様になった。
私達との生活を共にする様になり、自分自身の生活スタイルを見直す様になったのだ。
...と言うか、私達の家に泊まるようになってから強制的に私やお兄ちゃんが起きる時間に起こされて、その上一緒にご飯を食べる事を義務付けるられたのだ。
(誰にって??そんなの一人しかいないじゃない。)
何せ、泊まる部屋が私とお兄ちゃんが寝ている部屋でもあるかね。
最初はドラしゃんに反対されたのだが、私とお兄ちゃんがどうしても一緒に寝たいと駄々をこねたので渋々了承してくれたのだ。
その代わりにと言って、ファインは私達の家に泊まっている間は私達と生活時間を共にする事を"ドラしゃん"によって約束(強制)されたのだ。
いきなり生活スタイルを変えるのはさすがのファイン国王でも大変そうだった。
しかしだ。
「はい!あーんして!!ダメよ!たべないと!めっ!」
「そうですよ!小さな僕達ですからちゃんとご飯を食べてるですよ!大人であるファイン国王も食べないと!」
と、私とお兄ちゃんから注意を受ける事により少しずつ朝食を食べるように。
その様子を実はお母さんはこっそりとロドじぃーちゃん経由で、ファイン国王の奥さん達に報告されていた。
ファイン国王が奥さん達と夫婦喧嘩して我が家に避難してきて約一週間が経とうとしていた。
我が家に来てから我が家の生活スタイルに強制的に合わせるようになってから、ファイン国王はかなり健康的になってきており、最初こそはヒーヒー泣き言を言いながら過ごしていたんだけど、今では普通に生活が送れるようになっていた。
まず、食生活が大きく変った。
朝昼晩兼用で食べて、夜は食べたり食べなかったりが...毎日三食きっちりと食べるように。
起床時間も臥床時間もいつも一定に。
そんな規則正しい生活を一週間送っただけでファイン国王の肌艶は生き返り、カサカサお肌からプルツヤお肌に。
顔色もかなり良くなり血色優良児ならぬ血色優良男に。
さらにさらに!!便秘症も改善されてぽっこりお腹がスッキリしたのだ。
これにはファイン国王も大喜びをしていた。
あらかた我が家の生活スタイルに慣れてきた頃に、なんとファイン国王の奥さん達が我が家に訪ねてきたのだ。
これにはファイン国王は驚いていたが、私達の両親は平然としていた。
それもそのはず。
ファイン国王柄我が家に来てから毎日奥さん達と連絡のやりとりを密かにしていたからだ。
特にお母さんがメインでやりとりをしてくれていたようで、ファイン国王の奥さん達は私達家族がいつも揃って仲良く食事をしたり買い物をしたり、会議にも参加している事をファイン国王ずてで話を聞いていてずっと羨ましく思っていてそうなのだ。
だから勇気を出してファイン国王にせめて朝ご飯だけでも一緒にとりたいと相談したら喧嘩になったと聞いていたのだった。
そこでお母さんよりファイン国王の生活スタイルを我が家の生活スタイルに改善させるので、良くなるまで待って欲しいとお願いしていたようだ。
奥さん達は最初は申し訳なさそうにして断りの言葉を述べていたのだが、ファイン国王の生活スタイルが改善すれば朝食と言わず、三食一緒に食べられる様になりますよって伝えると快く承諾してくれたのだった。
そんな事はファイン国王は知らずに我が家で過ごしていて、いきなり奥さん達が来たのでそれはそれは驚きを通り越して固まっていた。
ファイン国王の奥さん達は初めてお会いしたが、皆んな綺麗な人ばかり。
第一夫人のラティムさん。
第二夫人のラティネさん。
第三夫人のティネムさん。
ラティムさんとラティネさんは双子の姉妹で、幼い頃よりファイン国王とは幼馴染という関係で一緒に育ったそうだ。
ティネムさんは二人がファイン国王と結婚後、子供ができて乳母を募集してた時に来てファイン国王が惚れてしまい、二人の夫人を説得して嫁に迎えた人だった。
最初は敵対心を持っていたが、意外にも三人は好みが同じこともありすぐに仲良くなって、今ではファイン国王が焼きもちを焼くほど仲がいいんだって。
ラティムさんは姉御肌タイプで、ラティネさんは天然さんタイプで、ティネムさんはのんびりさんタイプで三人性格が違うのでなお良かったのだろうとお母さんが言っていた。
我が家に訪れたラティムさん達はお母さんとお父さんに丁寧な挨拶を交わして、お土産まで用意してくれていた。
せっかく奥さん達が来てくれたのだからしっかりお話する様にと両親に言われて、リビングにはファイン国王と奥さん達三人のはずが...。
なぜか私とお兄ちゃんもその話し合いに参加となったのだ。
なぜ??と思うでしょ?
話し合うのはいいが一対三は武が悪いと半泣きのファイン国王が私達の両親に訴えたため、お守りがわりに私とお兄ちゃんが残ったのだ。
私とお兄ちゃんはファイン国王のお膝の上に座って三対三で向いあって座った。
奥さん達は綺麗な分纏うオーラが凄いためファイン国王は縮こまっていた。
私とお兄ちゃんは両親にとにかく静かにしているようにと言われたので、とりあえずは黙って見守る事に。
暫く沈黙が続いていたが、痺れを切らした奥さん達から声をかけてきた。
「陛下。少しは生活が改善されたとお伺いしましたが、それは本当ですか?」
ラティムさんの言葉にファイン国王は頷くだけで何も言葉を発しないので、私はファイン国王の鳩尾に一発入れてみた。
ファイン国王はグェっ!と情けない声をあげて私を睨んできたので、私は小声でファイン国王に注意した。
「だめよ!ちゃんとことばにしないと!」
静かにしている様に言われたので小声ならセーフだろうと思い小声でファイン国王に注意すると、ファイン国王はだって...とモジモジし出したので、私は溜息をついてファイン国王の代わりに奥さん達に返事をしてあげる事にした。
「あのね、ファイン国王は、まいにちね、わたしたちとねて、おきるのもいっしょなの。だから、ごはんもいっしょに食べてるからいまでは、まいしょく食べて、はやくねて、はやくおきてるわよ!」
私の言葉に奥さん達は目をパチクリさせながらも話の内容を理解してくれた様だった。
「まぁ~そうなの?貴方達と一緒に寝ているの?」
「そうなの!さいしょだけかとおもったらまいにちなのよ。わたしたちのベッド大きいからいいけど、すこしじゃまなの。」
「あっ!リン!ダメだよ!邪魔って言ったら。たまに頬ずりされたり、キスされそうになるけど、寂しいからしかたがないんだよ。」
「お父さんでもそんなことしてこないのよ?いやよぉ~。」
とんでもないことを暴露されて焦るファイン国王。
何故ならファイン国王の後ろには、私とお兄ちゃんの保護者の一人。
ドラしゃんが鬼の形相でファイン国王を睨んでいるからだ。
実はドラしゃんも私とお兄ちゃんのお守りのため残っていたのだ。
それなのに...思わぬ爆弾投下に超焦るファイン国王。
その様子を珍しいものを見るかの様な表情で見守る奥さん達。
私とお兄ちゃんのとんでも発言にで爆弾を投下されたファイン国王は蒼白い顔をして震えているなか、その後ろで鬼の形相でファイン国王を見つめるドラしゃん。
そんなファイン国王の両膝で楽しげにしている私とお兄ちゃんというとんでもない状況を見守る奥さん達。
我が家のリビングで一種の修羅場が起ころうとしていたのだが...。
「でもね、ファイン国王はさびしいんだよね?
しらないばしょでせいかつしなくちゃいけないし、かんきょうがいっきにかわっちゃったしね。」
「確かにそうですよね。ファイン国王がいくら大人であってもいきなりの環境の変化は堪えるものがありますよ。」
「わたしだったらないちゃうね。」
「ぼくも。」
「でも、リンやお兄ちゃんにはそばではげましてくれるお父さんやお母さんやドラしゃんがいたからだいじょうぶだったけど...。」
「ファイン国王には誰もいませんからね。それは本当に辛かったと思いますよ。」
「よくがんばりました。」
「はい。良く頑張りました。」
私とお兄ちゃんは周りの空気が読めないのか、あえて気付かないふりをしてそう言っているのか分からない感じで顔色悪く震えているファイン国王を慰めたのだ。
これにはさすがのドラしゃんも手出しができない様で苦虫を潰した様な表情へと変わった。
奥さん達はと言うと...。
自分達は何を見せられているのだ??って言う表情をしながら私達の成り行きを見守っていた。
「ねえねえ。お姉さんたち。ファイン国王ね、ちゃんとまいしょくたべるようになったし、はやねはやおきできるようになったからだいじょうぶだよ。」
「だから許してあげて貰えますか?でないと、いつまでも僕達一緒に寝ないといけないのでいやなんです。」
「そうそう。ファイン国王がきらいじゃないのよ。でも、いやなものはいやなの。」
「ですから今日よろしければ連れて帰ってもらえますか?」
私とお兄ちゃんがいきなり奥さん達に話しかけたと思ったらこれまた爆弾投下にファイン国王はタジタジ。
こんな状況を見ている奥さん達はもう笑うしかなかったようで、お腹を抱えて笑いだしたのだ。
私とお兄ちゃん的にはなぜ笑うのか分からず首を傾げる。
ファイン国王はもうどうにでもなれって感じでやけになりかけていた。
ドラしゃんはと言うと、私とお兄ちゃんの言葉が嬉しかったのか拍手をしているのだ。
とりあえず奥さん達が笑うのをやめるのを私とお兄ちゃんは待つことにした。
奥さん達は涙を流しながらも笑いをなんとか落ち着かせて私達の方を見て話しかけてきた。
「まさかこんな面白い光景をみたり、話を聞くとは思いもよりませんわ。
リンとアキラでしたっけ?」
「はい。」
「そうです。」
「陛下のそんな面白い姿を見せてくれてありがとうございます。」
「私からも御礼をいいますわ。ありがとうございます。」
「私からもありがとうございますですわ。」
三人の奥さん達はまだほんのり涙目で私とお兄ちゃんに御礼を言ってくれた。
そして。
「陛下。本来ならこの光景を私達の屋敷で見たかったですわ。子供達に囲まれてね。」
「そうですわ。親子で過ごすのは一日のうちでほんの僅か。」
「ですから、少しでも親子で過ごす時間が持ちたくて朝食をご一緒にとお声かけさせていただいたのですよ?」
「それなのに陛下ときたら...。こちらの意図も汲み取らずに家出をされるのですから...。」
「子供達は自分達のことが嫌いなのかとショックをうけてましたわ。」
「そうですわ。年長組はともかく幼い子供達にとっては陛下に断られた事はかなりの衝撃なんですよ?」
奥さん達の言葉を聞いてなぜ自分にいきなり朝食を一緒にとりたいと言ってきたのかの意味をようやく理解した感じのファイン国王だった。
私達家族は最初にファイン国王から話を聞いて奥さん達の訴えの意味がすぐにわかったのに...ファイン国王ときたら...。
「王さまなのに、かぞくのきもちもりかいできないと、こくみんのきもちはりかいできないのよ!」
私の言葉にファイン国王はもちろんの事、その場にいた皆が驚いていた。
幼い子供がそんな事を言うとは誰もが思わなかったからだろう。
しかし、私はそんな事お構いなしで話を続けたのだ。
「お母さんがね、よくよんでくれる絵本の王さまはね、わるい王さまと、いい王さまがいるの。
わるい王さまはね、かぞくやみじかな人たちのきもちを思いやらないしゃいていな人なの。でも、いい王さまはね、つねにかぞくやみじかな人たちのことを思いやっているの。
この人たちの国はどうなるかしってる?」
いきなりの私の言葉にファイン国王はわからないと答えた。
私は絵本の内容を思い出しながらファイン国王に伝えた。
「わるい王さまの国はね、かぞくもみじかな人たちも王さまにいやけがさしてお城に王さま一人残してみんなどっかにいっちゃうの。こくみんもみんなね。
でも、いい王さまはねみんなにしたわれて、国がゆたかになるの。
いい王さまのそばにはつねにえがおのかぞくやこくみんがいるのよ。
ファイン国王はどの王さまがいいと思う?」
私の言葉にハッとなるファイン国王。
今までの自分だと私の言う絵本のわるい王様の状況になってしまう。
それだけは嫌だとようやく気付いたのだ。
「ファイン国王は、いい王さまだとおもうよ。でもそれは、国をより良いものにしようとがんばっているからそうみえるの。でも、家族を大事にしていないとだめなんだよ。
家族もファイン国王が守らないといけない国のたみなんでしょ?」
私がそう言ってファイン国王を見つめると、ファイン国王は吹っ切れた顔で頷いた。
「ああ。そうだ。そうだよ。ありがとうリン。」
私に御礼を言うとファイン国王は奥さん達に向き合った。
そして。
「今まですまなかった。すぐに家に帰ってさっそく家族皆んなで食事を取ろう。今日だけじゃない。これから毎日だ。」
ファイン国王の言葉に涙を流して喜ぶ奥さん達。
ようやくファイン国王の家出は終わり、私達兄弟は安眠できるベッドを取り戻したのだった。
同盟国として交流を交わして幾日かたったある日のこと。
突然お忍びでファイン国王が私達の家に訪ねて来たのだ。
しかも朝早く...早朝に...。
不機嫌な顔のドラしゃんが玄関にて同盟国の国王の首を絞めて昇天させようとしていたのは...夢だと思う事にした。
早朝に叩き起こされたので、その日だけはいつもより早い朝食をとることになった。
朝ご飯を一緒に食べながらファイン国王に何があったのか尋ねると...返ってきた返事はしょうもない...いや、本人にしたら大問題なのだろう。
その訪ねてきた理由が...なんと夫婦喧嘩と言うのだ。
その原因が...。
「はっ?朝ご飯をいつ食べるか?ですか??」
「そうだ!!」
しょうもない理由で私達は唖然としてしまった。
ファイン国王の言うには...ファイン国王の家(城)では、家族が揃って食べる事はないのだという。
妻と子供達はファイン国王のいる屋敷とは別棟の屋敷を与えられて生活していて、それぞれ面々に好きな時に食事をとるようにしているというのだ。
なにせ、ファイン国王の所は一夫多妻制のため、日本で言う"大奥"と言うのが存在するのだとか。
ファイン国王の住む屋敷とは廊下で繋がれた別棟がいくつか存在するらしく、《花の宮》と呼ばれており、国王の奥さん方とその子供と侍女のみが住んでいるという。
そんな事もあり食事は全て別に食べているのだったのだが...。
「最近嫁さん達によ、お前達の話をしたのがいけなかったのか...一緒に飯を食いたいや、一緒に出かけたいとか言い出したんだ。」
ファイン国王は頭を抱えてそう話し出す。
話の内容的には私達としては当たり前のことの様な内容なので、なぜ喧嘩に発展するのかが分からなかった。
だから私はファイン国王の側に行き笑顔で、
「お父さんならいっしょにごはんたべないとだめなんだよ?
リンのお父さんもリンたちといっしょにごはんをたべてくれるよ?
ごはんたべないなんて...お父さんしっかくだね。」
私の言葉に衝撃を受けるファイン国王と驚く両親。
ドラしゃんは笑顔で拍手をしながら私を褒めてくれた。
衝撃を受けて灰化しかけているファイン国王に両親はなぜ一緒にご飯を食べるのが嫌なのかを慌てて聞く。
温かいお茶を入れ替えてファイン国王に進めながら話しかける両親。
私とお兄ちゃんは両親の指示でドラしゃんはと一緒にプレイペースで遊ぶことに。
ファイン国王は両親から受け取った温かいお茶を飲みながらゆっくりと話し出した。
ファイン国王は朝ご飯は昼近くに朝昼兼用で食べるそうなのだ。
「俺は朝は起きてからコティ(コーヒーの様な飲み物のこと)を一杯飲むだけなんだ。あとは仕事をしてから昼近くに朝昼晩兼用で飯を食うんだ。
夜は...仕事の終わりしだいになんだが...早く終われば食うし、遅くなったら飯は食わずに酒だけ飲んで寝るんだ。
しかし、嫁さんやガキ達は朝からしっかり飯を食って過ごすんだ。だから...。」
言い淀むファイン国王を見て何かを察した両親が優しい眼差しを向けて
「生活スタイル自体が違うから合わせるとなると大変よね...。」
「ああ。私達は生活パターンがずっと一緒だからね...無理に合わせる必要はなかったしね。」
なるべく優しい言葉をかけるが、その言葉を聞いてますます凹むファイン国王。
「もしかしてその事で喧嘩になったの?」
お母さんの質問にファイン国王は小さくコクっと頷いた。
その姿をみて困惑する両親。しかし、わざわざ離れた我が家に訪ねて来たのだから助けてあげたいのだろう。
両親は凹むファイン国王に優しい言葉をかける。
「とりあえず、解決策が見つかるまでここに泊まるといいよ。」
「私、ロドじぃーちゃんにお願いしてファイン国王の家に連絡してもらえないから頼んでみるわ。」
「すまない。迷惑をかける...。」
こうして、ファイン国王はしばらくの間私達の家に寝泊まりする事になった。
ファイン国王の家...城にはロドじぃーちゃん経由で私達の家に泊まる事を伝えてもらった。
城からはファイン国王が考えを改めるまで帰ってくるな!とお嫁さん達から返事が来たのは言うまでもない。
ファイン国王はその返事を聞いて最初は怒っていたが...私達家族が仲良く過ごしているのを見て寂しくなったようで真剣に物事を考える様になった。
私達との生活を共にする様になり、自分自身の生活スタイルを見直す様になったのだ。
...と言うか、私達の家に泊まるようになってから強制的に私やお兄ちゃんが起きる時間に起こされて、その上一緒にご飯を食べる事を義務付けるられたのだ。
(誰にって??そんなの一人しかいないじゃない。)
何せ、泊まる部屋が私とお兄ちゃんが寝ている部屋でもあるかね。
最初はドラしゃんに反対されたのだが、私とお兄ちゃんがどうしても一緒に寝たいと駄々をこねたので渋々了承してくれたのだ。
その代わりにと言って、ファインは私達の家に泊まっている間は私達と生活時間を共にする事を"ドラしゃん"によって約束(強制)されたのだ。
いきなり生活スタイルを変えるのはさすがのファイン国王でも大変そうだった。
しかしだ。
「はい!あーんして!!ダメよ!たべないと!めっ!」
「そうですよ!小さな僕達ですからちゃんとご飯を食べてるですよ!大人であるファイン国王も食べないと!」
と、私とお兄ちゃんから注意を受ける事により少しずつ朝食を食べるように。
その様子を実はお母さんはこっそりとロドじぃーちゃん経由で、ファイン国王の奥さん達に報告されていた。
ファイン国王が奥さん達と夫婦喧嘩して我が家に避難してきて約一週間が経とうとしていた。
我が家に来てから我が家の生活スタイルに強制的に合わせるようになってから、ファイン国王はかなり健康的になってきており、最初こそはヒーヒー泣き言を言いながら過ごしていたんだけど、今では普通に生活が送れるようになっていた。
まず、食生活が大きく変った。
朝昼晩兼用で食べて、夜は食べたり食べなかったりが...毎日三食きっちりと食べるように。
起床時間も臥床時間もいつも一定に。
そんな規則正しい生活を一週間送っただけでファイン国王の肌艶は生き返り、カサカサお肌からプルツヤお肌に。
顔色もかなり良くなり血色優良児ならぬ血色優良男に。
さらにさらに!!便秘症も改善されてぽっこりお腹がスッキリしたのだ。
これにはファイン国王も大喜びをしていた。
あらかた我が家の生活スタイルに慣れてきた頃に、なんとファイン国王の奥さん達が我が家に訪ねてきたのだ。
これにはファイン国王は驚いていたが、私達の両親は平然としていた。
それもそのはず。
ファイン国王柄我が家に来てから毎日奥さん達と連絡のやりとりを密かにしていたからだ。
特にお母さんがメインでやりとりをしてくれていたようで、ファイン国王の奥さん達は私達家族がいつも揃って仲良く食事をしたり買い物をしたり、会議にも参加している事をファイン国王ずてで話を聞いていてずっと羨ましく思っていてそうなのだ。
だから勇気を出してファイン国王にせめて朝ご飯だけでも一緒にとりたいと相談したら喧嘩になったと聞いていたのだった。
そこでお母さんよりファイン国王の生活スタイルを我が家の生活スタイルに改善させるので、良くなるまで待って欲しいとお願いしていたようだ。
奥さん達は最初は申し訳なさそうにして断りの言葉を述べていたのだが、ファイン国王の生活スタイルが改善すれば朝食と言わず、三食一緒に食べられる様になりますよって伝えると快く承諾してくれたのだった。
そんな事はファイン国王は知らずに我が家で過ごしていて、いきなり奥さん達が来たのでそれはそれは驚きを通り越して固まっていた。
ファイン国王の奥さん達は初めてお会いしたが、皆んな綺麗な人ばかり。
第一夫人のラティムさん。
第二夫人のラティネさん。
第三夫人のティネムさん。
ラティムさんとラティネさんは双子の姉妹で、幼い頃よりファイン国王とは幼馴染という関係で一緒に育ったそうだ。
ティネムさんは二人がファイン国王と結婚後、子供ができて乳母を募集してた時に来てファイン国王が惚れてしまい、二人の夫人を説得して嫁に迎えた人だった。
最初は敵対心を持っていたが、意外にも三人は好みが同じこともありすぐに仲良くなって、今ではファイン国王が焼きもちを焼くほど仲がいいんだって。
ラティムさんは姉御肌タイプで、ラティネさんは天然さんタイプで、ティネムさんはのんびりさんタイプで三人性格が違うのでなお良かったのだろうとお母さんが言っていた。
我が家に訪れたラティムさん達はお母さんとお父さんに丁寧な挨拶を交わして、お土産まで用意してくれていた。
せっかく奥さん達が来てくれたのだからしっかりお話する様にと両親に言われて、リビングにはファイン国王と奥さん達三人のはずが...。
なぜか私とお兄ちゃんもその話し合いに参加となったのだ。
なぜ??と思うでしょ?
話し合うのはいいが一対三は武が悪いと半泣きのファイン国王が私達の両親に訴えたため、お守りがわりに私とお兄ちゃんが残ったのだ。
私とお兄ちゃんはファイン国王のお膝の上に座って三対三で向いあって座った。
奥さん達は綺麗な分纏うオーラが凄いためファイン国王は縮こまっていた。
私とお兄ちゃんは両親にとにかく静かにしているようにと言われたので、とりあえずは黙って見守る事に。
暫く沈黙が続いていたが、痺れを切らした奥さん達から声をかけてきた。
「陛下。少しは生活が改善されたとお伺いしましたが、それは本当ですか?」
ラティムさんの言葉にファイン国王は頷くだけで何も言葉を発しないので、私はファイン国王の鳩尾に一発入れてみた。
ファイン国王はグェっ!と情けない声をあげて私を睨んできたので、私は小声でファイン国王に注意した。
「だめよ!ちゃんとことばにしないと!」
静かにしている様に言われたので小声ならセーフだろうと思い小声でファイン国王に注意すると、ファイン国王はだって...とモジモジし出したので、私は溜息をついてファイン国王の代わりに奥さん達に返事をしてあげる事にした。
「あのね、ファイン国王は、まいにちね、わたしたちとねて、おきるのもいっしょなの。だから、ごはんもいっしょに食べてるからいまでは、まいしょく食べて、はやくねて、はやくおきてるわよ!」
私の言葉に奥さん達は目をパチクリさせながらも話の内容を理解してくれた様だった。
「まぁ~そうなの?貴方達と一緒に寝ているの?」
「そうなの!さいしょだけかとおもったらまいにちなのよ。わたしたちのベッド大きいからいいけど、すこしじゃまなの。」
「あっ!リン!ダメだよ!邪魔って言ったら。たまに頬ずりされたり、キスされそうになるけど、寂しいからしかたがないんだよ。」
「お父さんでもそんなことしてこないのよ?いやよぉ~。」
とんでもないことを暴露されて焦るファイン国王。
何故ならファイン国王の後ろには、私とお兄ちゃんの保護者の一人。
ドラしゃんが鬼の形相でファイン国王を睨んでいるからだ。
実はドラしゃんも私とお兄ちゃんのお守りのため残っていたのだ。
それなのに...思わぬ爆弾投下に超焦るファイン国王。
その様子を珍しいものを見るかの様な表情で見守る奥さん達。
私とお兄ちゃんのとんでも発言にで爆弾を投下されたファイン国王は蒼白い顔をして震えているなか、その後ろで鬼の形相でファイン国王を見つめるドラしゃん。
そんなファイン国王の両膝で楽しげにしている私とお兄ちゃんというとんでもない状況を見守る奥さん達。
我が家のリビングで一種の修羅場が起ころうとしていたのだが...。
「でもね、ファイン国王はさびしいんだよね?
しらないばしょでせいかつしなくちゃいけないし、かんきょうがいっきにかわっちゃったしね。」
「確かにそうですよね。ファイン国王がいくら大人であってもいきなりの環境の変化は堪えるものがありますよ。」
「わたしだったらないちゃうね。」
「ぼくも。」
「でも、リンやお兄ちゃんにはそばではげましてくれるお父さんやお母さんやドラしゃんがいたからだいじょうぶだったけど...。」
「ファイン国王には誰もいませんからね。それは本当に辛かったと思いますよ。」
「よくがんばりました。」
「はい。良く頑張りました。」
私とお兄ちゃんは周りの空気が読めないのか、あえて気付かないふりをしてそう言っているのか分からない感じで顔色悪く震えているファイン国王を慰めたのだ。
これにはさすがのドラしゃんも手出しができない様で苦虫を潰した様な表情へと変わった。
奥さん達はと言うと...。
自分達は何を見せられているのだ??って言う表情をしながら私達の成り行きを見守っていた。
「ねえねえ。お姉さんたち。ファイン国王ね、ちゃんとまいしょくたべるようになったし、はやねはやおきできるようになったからだいじょうぶだよ。」
「だから許してあげて貰えますか?でないと、いつまでも僕達一緒に寝ないといけないのでいやなんです。」
「そうそう。ファイン国王がきらいじゃないのよ。でも、いやなものはいやなの。」
「ですから今日よろしければ連れて帰ってもらえますか?」
私とお兄ちゃんがいきなり奥さん達に話しかけたと思ったらこれまた爆弾投下にファイン国王はタジタジ。
こんな状況を見ている奥さん達はもう笑うしかなかったようで、お腹を抱えて笑いだしたのだ。
私とお兄ちゃん的にはなぜ笑うのか分からず首を傾げる。
ファイン国王はもうどうにでもなれって感じでやけになりかけていた。
ドラしゃんはと言うと、私とお兄ちゃんの言葉が嬉しかったのか拍手をしているのだ。
とりあえず奥さん達が笑うのをやめるのを私とお兄ちゃんは待つことにした。
奥さん達は涙を流しながらも笑いをなんとか落ち着かせて私達の方を見て話しかけてきた。
「まさかこんな面白い光景をみたり、話を聞くとは思いもよりませんわ。
リンとアキラでしたっけ?」
「はい。」
「そうです。」
「陛下のそんな面白い姿を見せてくれてありがとうございます。」
「私からも御礼をいいますわ。ありがとうございます。」
「私からもありがとうございますですわ。」
三人の奥さん達はまだほんのり涙目で私とお兄ちゃんに御礼を言ってくれた。
そして。
「陛下。本来ならこの光景を私達の屋敷で見たかったですわ。子供達に囲まれてね。」
「そうですわ。親子で過ごすのは一日のうちでほんの僅か。」
「ですから、少しでも親子で過ごす時間が持ちたくて朝食をご一緒にとお声かけさせていただいたのですよ?」
「それなのに陛下ときたら...。こちらの意図も汲み取らずに家出をされるのですから...。」
「子供達は自分達のことが嫌いなのかとショックをうけてましたわ。」
「そうですわ。年長組はともかく幼い子供達にとっては陛下に断られた事はかなりの衝撃なんですよ?」
奥さん達の言葉を聞いてなぜ自分にいきなり朝食を一緒にとりたいと言ってきたのかの意味をようやく理解した感じのファイン国王だった。
私達家族は最初にファイン国王から話を聞いて奥さん達の訴えの意味がすぐにわかったのに...ファイン国王ときたら...。
「王さまなのに、かぞくのきもちもりかいできないと、こくみんのきもちはりかいできないのよ!」
私の言葉にファイン国王はもちろんの事、その場にいた皆が驚いていた。
幼い子供がそんな事を言うとは誰もが思わなかったからだろう。
しかし、私はそんな事お構いなしで話を続けたのだ。
「お母さんがね、よくよんでくれる絵本の王さまはね、わるい王さまと、いい王さまがいるの。
わるい王さまはね、かぞくやみじかな人たちのきもちを思いやらないしゃいていな人なの。でも、いい王さまはね、つねにかぞくやみじかな人たちのことを思いやっているの。
この人たちの国はどうなるかしってる?」
いきなりの私の言葉にファイン国王はわからないと答えた。
私は絵本の内容を思い出しながらファイン国王に伝えた。
「わるい王さまの国はね、かぞくもみじかな人たちも王さまにいやけがさしてお城に王さま一人残してみんなどっかにいっちゃうの。こくみんもみんなね。
でも、いい王さまはねみんなにしたわれて、国がゆたかになるの。
いい王さまのそばにはつねにえがおのかぞくやこくみんがいるのよ。
ファイン国王はどの王さまがいいと思う?」
私の言葉にハッとなるファイン国王。
今までの自分だと私の言う絵本のわるい王様の状況になってしまう。
それだけは嫌だとようやく気付いたのだ。
「ファイン国王は、いい王さまだとおもうよ。でもそれは、国をより良いものにしようとがんばっているからそうみえるの。でも、家族を大事にしていないとだめなんだよ。
家族もファイン国王が守らないといけない国のたみなんでしょ?」
私がそう言ってファイン国王を見つめると、ファイン国王は吹っ切れた顔で頷いた。
「ああ。そうだ。そうだよ。ありがとうリン。」
私に御礼を言うとファイン国王は奥さん達に向き合った。
そして。
「今まですまなかった。すぐに家に帰ってさっそく家族皆んなで食事を取ろう。今日だけじゃない。これから毎日だ。」
ファイン国王の言葉に涙を流して喜ぶ奥さん達。
ようやくファイン国王の家出は終わり、私達兄弟は安眠できるベッドを取り戻したのだった。
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