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広彬(四)
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こうして四代目紀堂の養子となった広彬は、十四の年の盛夏に江戸日本橋へと移り、広之助と名を変えた。
豪商が軒を連ねる本町四丁目にある大鳥屋本店は、間口十間に及ぶ重厚な土蔵造りの店構えと、並んで立つ表蔵が静かな威容を放つ大店だった。厨子二階の白壁は目に痛いほど白く、一階の壁を覆う繊細な出格子の濃茶と、小びさしの下に翻る暖簾のぱっきりとした濃紺との対比が風格を感じさせる。その店の裏手には広大な敷地が伸びていて、主筋の住まう母屋と庭、奉公人の住まい、それに蔵が立ち並んでいるのだという。
「これは花喰鳥文というんだよ」
暖簾に染め抜かれた屋号紋を指して四代目が言う。
丸の中に、花枝を嘴にくわえて羽ばたく美麗な鳥が描いてある紋だった。
「瑞鳥が花枝を運ぶ図案には吉祥の意味がある。大鳥屋はお客に吉を運ぶってわけだ。いい紋だと思わないかい?」
腕組みして誇らしげな義父を見上げ、広之助は曖昧に返事をした。
これが自分が受け継ぐ店なのだと言われても、戸惑いばかりが大きくなる。お客に吉を運ぶどころか、自身の身を立てることさえ覚束ない心地だった。ひどく場違いなところに来てしまったかのような不安がこみ上げてならない。
暖簾をくぐって戸口を一歩入れば、塵一つ落ちていないゆったりとした土間が広がり、右手に納戸、さらに見世庭を挟んで表蔵が続く。左手を見ると、土間に囲まれるようにして二十畳ほどの座敷が広がっている。帳場格子に囲われたそこには両替天秤がずらりと並べられてあって、天秤の真鍮製の皿と金具や、その周りの大小様々な後藤家分銅が、威圧するかのような鈍い輝きを放っている。そして、帳場の奥には重そうな千両箱や銭袋がいくつも積んであり、机の上には分厚い帳簿類が幾冊も重なっているのだった。
座敷を仕切る唐紙の向こうには二階へ上がる階段と商談のための座敷があり、さらに奥まったところに番頭衆と手代衆の詰所があった。土間や帳場をきびきびと動き回る小僧や、算盤を弾きながら分銅を動かすぴりっと鋭い目をした手代たち、威厳ある黒羽織姿で上客の応対や帳場の統括にあたる番頭衆を前に、広之助は圧倒されるばかりだった。
「これからは、お前さんは広之助。私はお前さんの親父として振る舞う」
母屋の座敷で向かい合い、四代目は穏やかに告げた。数寄屋造りの母屋は茶室や中庭を備えた風雅な作りだが、分限者の住まいにしてはこぢんまりとしたもので、内装にも贅を尽くすことなく落ち着いた佇まいをしている。社交のために江戸にはいくつか美麗な庭園を備える寮を有しているが、店主はあくまでも奢侈を慎むよう努めなくてはならぬという。
「店主ってのは勤勉を重んじ、お客様と奉公人を大切にし、誠実であればいいんだ」
と四代目が言ったので、広之助は内心ほっとした。
湯水のごとく金を費しお大尽らしく暮らせと言われても、自分の性にはまるで合っていない。かといって、周りの両替商と鎬を削り、三井越後屋や加賀屋、鴻池を追い落とせなどと言われた所で、そのような野心も蛮勇も持ち合わせてはいないのだ。
だが、勤勉で、お客と奉公人を大事にし、誠実であることは、必死にやればできるかもしれない。
「お武家様ではなく、ただの町人の子として扱われるのには、腹に据えかねることもあるだろうし、情けなく思うこともあるだろう。だが、短気を起こしちゃいけないよ。簡単にがっかりするのもなしだ。必ず、報われる日は来る。いいかね」
広之助となった広彬は、じっと義父の顔を見上げた。
報われるとは、どういうことだろうか。自分は報われたいと思っているのか、それすらも今はわからない。自分が何者になろうとしているのかさえ、定かではない。
けれど、この男の言うことを、信じてみたい気がする。
「……よろしくお願い申し上げます」
不安を飲み下して腹を括り、広之助はきちんと両手を畳につき頭を下げた。
背筋を伸ばして顔を上げると、よし、と頷いた義父が目を細くして微笑む。
と、次の瞬間、和やかだった男の顔がぎゅっと歪んだ。
四代目が唇を引き結んで横を向くのを、広彬は不思議そうに見詰めた。
庭を睨むようにしている男の肩が、細かくふるえている。瞬きもせず見開いた目に、みるみる盛り上がるものがあった。
「……何でもないよ」
義父となった男は、咳払いしながら詰まった声で言う。そうして明るい夏の日差しが降り注ぐ庭を、何かに耐えるかのように凝視したまま、しばしの間動かなかった。
***
町人としての暮らしがはじまった。田舎の鎌倉で外の世界をまるで知らずに育った身には、日本橋の人通りの多さと、軒を連ねる大店の迫力は衝撃だった。長谷寺や鶴岡八幡宮の縁日の賑わいなぞ足元にも及ばない。
しかし江戸の暮らしに慣れる間もなく、広之助となった広彬は武家髷を町人のそれに変え、千川家から贈られた両刀を蔵の深くに仕舞い込み、藍のお仕着せに前掛けをつけ、他の小僧に混じって働きはじめた。
店の奉公人たちには、広之助は儒学者野月正国が縁戚から養子とした子であるという説明がなされた。その上で、学に秀でて抜きん出た商才を秘めていると義父が見込んだため、正国が逝去したこの機会に養子に望んだのだと周知されていた。だから武家の身ごなしと言葉遣いを不審に思う者はなかった。かわりに、徹底して町人らしい立ち居振る舞いを叩き込まれたのだが。
大鳥屋は享保の頃に大坂心斎橋の蔵元である近江屋から暖簾分けし、酒問屋や呉服商を営み蓄財すると、やがて本両替商へと転身して江戸日本橋に本店を移した富商である。現在は本店の他に大坂船場に支店を構え、大名貸しではなく町人貸付を主軸として大きな利益を上げる一方、江戸市中に町屋や寮を多く所有し、不動産の経営も手広く行っていた。
本両替商は個人を相手にする脇両替とは異なり、大口商家や大身の武家を顧客とするから、戸口をひっきりなしに客が出入りするようなことはないし、小僧が店先で呼び込みをすることもない。両替商を示す分銅と、丸の中に花喰鳥を描いた華麗な屋号紋を染め抜いた暖簾の下を、折々身なりのいい客が出入りするのが見えるくらいだ。
けれども、小判と丁銀の金銀両替に加え、為替や手形の発行、貸付、預かり金運用を行う大鳥屋では、一度に動かす金の額は時に桁違いのものとなる。両替商の分銅の印がなければ、いったい何の商いをしているのかわからぬように控えめな佇まいでありながら、その実、中では莫大な金銀の取引が日々行われているのだった。
大鳥屋は、踏み倒される危険のある大名貸しをほとんど行わない本両替商だ。鴻池や加賀屋といった大両替商が、大名貸しによって莫大な利子を稼ぎ出しているのとは対照的だ。では、大鳥屋がいかにして銀五百貫もの富を作り出しているのかといえば、顧客の預かり金の運用によるところが大きいのだという。
通常、本両替商は大口顧客から資産を預かることが多いが、これには利子がつかなかった。顧客にしてみれば、莫大な額を長期に預けておいたところで、自邸の蔵に隠しておくのと大差ないのだ。それでも本両替商に財産を預けるのは、自宅に死蔵しておくよりも安全であることに加え、本両替商への口座開設にはある程度の信用があることが必要条件であるためだ。本両替商に口座を持つこと自体が顧客の信用力を保証し、商取引において有利に働くのである。
義父である四代目紀堂は、この預け入れられた預金に利子をつけて運用するという奇策を考えついた。これはすぐに江戸と大坂の商家の耳目を引き、莫大な預金が大鳥屋に集まった。これを同業の両替商や商家に低利で融資し、利鞘を顧客に還元したので、口座開設希望者は増加し、預け入れの額もますます増えた。富が富を呼ぶ。大鳥屋は瞬く間に、江戸屈指の大両替商へとのし上がった。
この循環を支えたのは、義父の発想と同時に大鳥屋の真贋鑑定の正確さだった。金銀の不具合や真贋を見極める技術があることは両替商にとって不可欠だが、誰もが高い鑑定力を持つわけではない。大鳥屋には、従来の那智黒と呼ばれる黒い石に小判を擦り付け、その色や感触、また痕跡を見本と照合する方法の他に、表面を天眼鏡で丹念に調べて見分ける術や、水に沈めて比重を測るといった門外不出の技術があった。
贋金の混入を見極めるための手間と手数料は甚大なものだから、誰もがこれを忌避したがる。しかし万が一にも混入があれば死活問題である。時に数百、数千両を動かすとなれば取引の度に鑑定を行うことは取引の遅延を招き、商機を逃すことにもつながる。だから両替商の扱う金銀に保証があればあるほど、当然そこに顧客は集まってくる。大鳥屋はこの真贋判定の技術を極めて高い水準にまで磨きをかけ、一種の信用通貨である包金銀を調製するまでに至っていた。
この包金銀は一定額の小判を紙に包んで封をした上、調製者名、金額、金包日などを合印などと共に記したもので、金を包んだものを包金、銀を包んだものを包銀と呼ぶ。包金銀はそれ自体が信用通貨として扱われ、開封されることなく取引された。
包金銀には金座・銀座が調製する後藤包と常是包、三井越後屋の次郎右衛門包、鴻池の鴻善包など主だった本両替商が独自に発行するものの他に、脇両替の町包なども存在する。そして、「大鳥包」の名で市中に流通する大鳥屋の包金銀は、ことに高い信用があることから大きな需要を保っていた。
こうした努力によって、今や大鳥屋は主従関係にある子両替を数十抱え、取引関係にない大店はおよそ江戸にも大坂にもないと言われる豪商となった。
広之助が受け継ぐはずの大鳥屋とは、そのような店だった。
豪商が軒を連ねる本町四丁目にある大鳥屋本店は、間口十間に及ぶ重厚な土蔵造りの店構えと、並んで立つ表蔵が静かな威容を放つ大店だった。厨子二階の白壁は目に痛いほど白く、一階の壁を覆う繊細な出格子の濃茶と、小びさしの下に翻る暖簾のぱっきりとした濃紺との対比が風格を感じさせる。その店の裏手には広大な敷地が伸びていて、主筋の住まう母屋と庭、奉公人の住まい、それに蔵が立ち並んでいるのだという。
「これは花喰鳥文というんだよ」
暖簾に染め抜かれた屋号紋を指して四代目が言う。
丸の中に、花枝を嘴にくわえて羽ばたく美麗な鳥が描いてある紋だった。
「瑞鳥が花枝を運ぶ図案には吉祥の意味がある。大鳥屋はお客に吉を運ぶってわけだ。いい紋だと思わないかい?」
腕組みして誇らしげな義父を見上げ、広之助は曖昧に返事をした。
これが自分が受け継ぐ店なのだと言われても、戸惑いばかりが大きくなる。お客に吉を運ぶどころか、自身の身を立てることさえ覚束ない心地だった。ひどく場違いなところに来てしまったかのような不安がこみ上げてならない。
暖簾をくぐって戸口を一歩入れば、塵一つ落ちていないゆったりとした土間が広がり、右手に納戸、さらに見世庭を挟んで表蔵が続く。左手を見ると、土間に囲まれるようにして二十畳ほどの座敷が広がっている。帳場格子に囲われたそこには両替天秤がずらりと並べられてあって、天秤の真鍮製の皿と金具や、その周りの大小様々な後藤家分銅が、威圧するかのような鈍い輝きを放っている。そして、帳場の奥には重そうな千両箱や銭袋がいくつも積んであり、机の上には分厚い帳簿類が幾冊も重なっているのだった。
座敷を仕切る唐紙の向こうには二階へ上がる階段と商談のための座敷があり、さらに奥まったところに番頭衆と手代衆の詰所があった。土間や帳場をきびきびと動き回る小僧や、算盤を弾きながら分銅を動かすぴりっと鋭い目をした手代たち、威厳ある黒羽織姿で上客の応対や帳場の統括にあたる番頭衆を前に、広之助は圧倒されるばかりだった。
「これからは、お前さんは広之助。私はお前さんの親父として振る舞う」
母屋の座敷で向かい合い、四代目は穏やかに告げた。数寄屋造りの母屋は茶室や中庭を備えた風雅な作りだが、分限者の住まいにしてはこぢんまりとしたもので、内装にも贅を尽くすことなく落ち着いた佇まいをしている。社交のために江戸にはいくつか美麗な庭園を備える寮を有しているが、店主はあくまでも奢侈を慎むよう努めなくてはならぬという。
「店主ってのは勤勉を重んじ、お客様と奉公人を大切にし、誠実であればいいんだ」
と四代目が言ったので、広之助は内心ほっとした。
湯水のごとく金を費しお大尽らしく暮らせと言われても、自分の性にはまるで合っていない。かといって、周りの両替商と鎬を削り、三井越後屋や加賀屋、鴻池を追い落とせなどと言われた所で、そのような野心も蛮勇も持ち合わせてはいないのだ。
だが、勤勉で、お客と奉公人を大事にし、誠実であることは、必死にやればできるかもしれない。
「お武家様ではなく、ただの町人の子として扱われるのには、腹に据えかねることもあるだろうし、情けなく思うこともあるだろう。だが、短気を起こしちゃいけないよ。簡単にがっかりするのもなしだ。必ず、報われる日は来る。いいかね」
広之助となった広彬は、じっと義父の顔を見上げた。
報われるとは、どういうことだろうか。自分は報われたいと思っているのか、それすらも今はわからない。自分が何者になろうとしているのかさえ、定かではない。
けれど、この男の言うことを、信じてみたい気がする。
「……よろしくお願い申し上げます」
不安を飲み下して腹を括り、広之助はきちんと両手を畳につき頭を下げた。
背筋を伸ばして顔を上げると、よし、と頷いた義父が目を細くして微笑む。
と、次の瞬間、和やかだった男の顔がぎゅっと歪んだ。
四代目が唇を引き結んで横を向くのを、広彬は不思議そうに見詰めた。
庭を睨むようにしている男の肩が、細かくふるえている。瞬きもせず見開いた目に、みるみる盛り上がるものがあった。
「……何でもないよ」
義父となった男は、咳払いしながら詰まった声で言う。そうして明るい夏の日差しが降り注ぐ庭を、何かに耐えるかのように凝視したまま、しばしの間動かなかった。
***
町人としての暮らしがはじまった。田舎の鎌倉で外の世界をまるで知らずに育った身には、日本橋の人通りの多さと、軒を連ねる大店の迫力は衝撃だった。長谷寺や鶴岡八幡宮の縁日の賑わいなぞ足元にも及ばない。
しかし江戸の暮らしに慣れる間もなく、広之助となった広彬は武家髷を町人のそれに変え、千川家から贈られた両刀を蔵の深くに仕舞い込み、藍のお仕着せに前掛けをつけ、他の小僧に混じって働きはじめた。
店の奉公人たちには、広之助は儒学者野月正国が縁戚から養子とした子であるという説明がなされた。その上で、学に秀でて抜きん出た商才を秘めていると義父が見込んだため、正国が逝去したこの機会に養子に望んだのだと周知されていた。だから武家の身ごなしと言葉遣いを不審に思う者はなかった。かわりに、徹底して町人らしい立ち居振る舞いを叩き込まれたのだが。
大鳥屋は享保の頃に大坂心斎橋の蔵元である近江屋から暖簾分けし、酒問屋や呉服商を営み蓄財すると、やがて本両替商へと転身して江戸日本橋に本店を移した富商である。現在は本店の他に大坂船場に支店を構え、大名貸しではなく町人貸付を主軸として大きな利益を上げる一方、江戸市中に町屋や寮を多く所有し、不動産の経営も手広く行っていた。
本両替商は個人を相手にする脇両替とは異なり、大口商家や大身の武家を顧客とするから、戸口をひっきりなしに客が出入りするようなことはないし、小僧が店先で呼び込みをすることもない。両替商を示す分銅と、丸の中に花喰鳥を描いた華麗な屋号紋を染め抜いた暖簾の下を、折々身なりのいい客が出入りするのが見えるくらいだ。
けれども、小判と丁銀の金銀両替に加え、為替や手形の発行、貸付、預かり金運用を行う大鳥屋では、一度に動かす金の額は時に桁違いのものとなる。両替商の分銅の印がなければ、いったい何の商いをしているのかわからぬように控えめな佇まいでありながら、その実、中では莫大な金銀の取引が日々行われているのだった。
大鳥屋は、踏み倒される危険のある大名貸しをほとんど行わない本両替商だ。鴻池や加賀屋といった大両替商が、大名貸しによって莫大な利子を稼ぎ出しているのとは対照的だ。では、大鳥屋がいかにして銀五百貫もの富を作り出しているのかといえば、顧客の預かり金の運用によるところが大きいのだという。
通常、本両替商は大口顧客から資産を預かることが多いが、これには利子がつかなかった。顧客にしてみれば、莫大な額を長期に預けておいたところで、自邸の蔵に隠しておくのと大差ないのだ。それでも本両替商に財産を預けるのは、自宅に死蔵しておくよりも安全であることに加え、本両替商への口座開設にはある程度の信用があることが必要条件であるためだ。本両替商に口座を持つこと自体が顧客の信用力を保証し、商取引において有利に働くのである。
義父である四代目紀堂は、この預け入れられた預金に利子をつけて運用するという奇策を考えついた。これはすぐに江戸と大坂の商家の耳目を引き、莫大な預金が大鳥屋に集まった。これを同業の両替商や商家に低利で融資し、利鞘を顧客に還元したので、口座開設希望者は増加し、預け入れの額もますます増えた。富が富を呼ぶ。大鳥屋は瞬く間に、江戸屈指の大両替商へとのし上がった。
この循環を支えたのは、義父の発想と同時に大鳥屋の真贋鑑定の正確さだった。金銀の不具合や真贋を見極める技術があることは両替商にとって不可欠だが、誰もが高い鑑定力を持つわけではない。大鳥屋には、従来の那智黒と呼ばれる黒い石に小判を擦り付け、その色や感触、また痕跡を見本と照合する方法の他に、表面を天眼鏡で丹念に調べて見分ける術や、水に沈めて比重を測るといった門外不出の技術があった。
贋金の混入を見極めるための手間と手数料は甚大なものだから、誰もがこれを忌避したがる。しかし万が一にも混入があれば死活問題である。時に数百、数千両を動かすとなれば取引の度に鑑定を行うことは取引の遅延を招き、商機を逃すことにもつながる。だから両替商の扱う金銀に保証があればあるほど、当然そこに顧客は集まってくる。大鳥屋はこの真贋判定の技術を極めて高い水準にまで磨きをかけ、一種の信用通貨である包金銀を調製するまでに至っていた。
この包金銀は一定額の小判を紙に包んで封をした上、調製者名、金額、金包日などを合印などと共に記したもので、金を包んだものを包金、銀を包んだものを包銀と呼ぶ。包金銀はそれ自体が信用通貨として扱われ、開封されることなく取引された。
包金銀には金座・銀座が調製する後藤包と常是包、三井越後屋の次郎右衛門包、鴻池の鴻善包など主だった本両替商が独自に発行するものの他に、脇両替の町包なども存在する。そして、「大鳥包」の名で市中に流通する大鳥屋の包金銀は、ことに高い信用があることから大きな需要を保っていた。
こうした努力によって、今や大鳥屋は主従関係にある子両替を数十抱え、取引関係にない大店はおよそ江戸にも大坂にもないと言われる豪商となった。
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