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第一章
結末と予兆4『意外としたたかだ』
しおりを挟む領主邸で戦闘をした翌朝。
俺は王都に出立する御令嬢たちを町の外れまで見送りに来ていた。
「おい、オレを解放しやがれ! オレはマリサさんの病気が再発しないか見守る必要があるんだよ!」
「それはグレン様がやってくださると言っているでしょう?」
喚くルドルフをバッサリ切る御令嬢。
そう、俺は王都には行くが御令嬢たちとは一緒に出発はしない。
王都までは馬車で大体十五日間。
それは俺がフルスロットルで走り抜ければ一日で着く距離だった。
一緒に行くとしたらチンタラ併走するか馬車に同乗するしかない。
馬車に同乗するのは論外だ。俺は乗るより乗せたい派なのだ。
先んじて王都に乗り込んでもいいのだが、俺が単独で行ってもやれることがない。
だったら御令嬢たちが到着するまではニッサンの町に滞在し、平たいビッチことリリンの母親のアフターケアをしながら時間を潰して後から追いついたほうがいい。
そういう結論に達したわけだが……ルドルフは往生際悪くゴネ続けていた。
「こんなことをしてもオレはここに戻ってくるからな! 王都に連れて行ったところで余計な手間がかかるだけだぞ!」
「戻るのは勝手にしてどうぞ構いません。ですがあなたのお父様に頼まれているので一度はわたくしたちの手で王都まで来ていただきます。あなたのお父様に貸しを作れる貴重な機会ですから」
……御令嬢、交渉事が苦手かと思っていたが意外としたたかだ。
ルドルフも魔法が使えなくなる拘束具を寝ている間につけられて何も抵抗できないんだからいい加減諦めろ。
一方、暫しの別れを惜しんでいるジンジャーと領主。
領主のおっさんはダイアンの襲撃によって起きた被害の後始末が残っているのですぐには領地を離れられない。
そのため参考人としてジンジャーだけが御令嬢たちと王都に行くことになっていた。
「ジンジャーよ、私もすぐ仕事を片付けてにそっちに行くからな……」
「領主様、待っています……いつまでも……」
こいつらは何回似たやり取りをすれば気が済むんだ?
ほっとこう。
「ではグレン様。また王都でお会いしましょう。わたくしの渡した紹介状はなくさないようにしてくださいね? 絶対ですよ?」
「わかってます、わかってますよ」
御令嬢の念押しをフリってやつかなと思いながら返事する。
紹介状というのは王都にあるテックアート家の屋敷にスムーズに通してもらえるようレグル嬢に書いてもらった書状である。
これがないとテックアート家に赴いても確認に時間が取られたり、最悪門前払いされたりするらしい。
でも時間がかかるだけなら別に問題ないかな……。
「時間がかかるだけなら別にいいとか思っていませんよね? 紛失して悪用されると困りますから、本当になくさないでくださいね?」
「は、はい……ん?」
御令嬢に見透かされてドギマギしていると、くいくいっと俺の服の裾が引っ張られた。
ダークエルフ少女が切なそうな上目遣いで俺を見上げていた。
「おんじん、こないの……?」
ダークエルフ少女は俺と一緒にいたがったが、そういうわけにもいかない。
彼女はジンジャーに続く解放者第二号だ。
きちんと保護して証人になってもらう必要がある。
おまけに隷属されていたとはいえ、領主邸を襲った加害者でもある。
自由に行動させるわけにはいかない。
「俺も後から行くから、向こうで会おうぜ」
「うん……まってる」
かつて妹にしてやったように頭を撫でてやる。
ダークエルフ少女は嬉しそうに目を細めた。
素直で可愛いやつだ。
御令嬢たちの乗った馬車がのんびり遠ざかっていく。
またゴブリンに襲われたりしないよな。
まあ、ルドルフとジンジャーがいるからなんかあっても大丈夫だろう。
無事に着いてくれよ。ぶきっちょな俺だけじゃエルフ仲間を助けられないんだからさ。
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