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第二章
伯爵と対面2『ディオス・テックアート』
しおりを挟む「やあ、君がグレン君だね? 私はテックアート家当主のディオス・テックアートだ」
レグル嬢やエヴァンジェリン、ジンジャーと一緒に向かった先の部屋で待っていたのは二十代中盤程度にしか見えない碧眼の美青年だった。
腰のあたりまで伸びたサラサラの金髪、若々しい相貌にキラリと光る白い歯……。
これ、父親なの? レグル嬢の兄貴とかじゃなくて?
この男、エルフの血でも混ざってるんじゃないか……?
「おや、どうしたんだい? ひょっとして私の美しさに見惚れてしまったかな? よく同年代の他家当主にも嫉妬の眼差しを送られて困っているんだが。まさかエルフのお眼鏡にも叶うとは光栄だなぁ!」
歯を見せて笑い、長い髪の毛をファサーっとさせる。
飄々とした雰囲気のディオス氏。なんか思っていたのとキャラが違う……。
違法奴隷の解放とそれを売りさばく組織の捕縛に力を入れているというから、もっと厳格な人物を想像していた。だが、目の前にいるのは若干ナルシストの入った爽やかな軽口を叩く笑顔の眩しい優男である。
「さて、グレン君。君には娘や騎士たちを救ってくれたお礼と、それから謝罪をしないといけないね?」
む? 礼はわかるが、謝罪とは?
「グレン様、昨日当家の騎士だった男が起こした非礼についてですよ」
「ああ、ディーゼル問題のことか」
レグル嬢のおかげで思い出す。
俺のなかでアレはすでに記憶の彼方に送り飛ばされ、過去のことになっていた。
たった一日前のことなのになぁ。
思いのほか俺は彼に興味を持っていなかったらしい。
つか、さり気に『だった』とか過去形になってんよ……。
気にしないでおこう。
「問題を起こした騎士は君とレグルが話し合いで出した通りの処分をすることになったよ。多分、今頃地下室で鞭を打たれてるんじゃないかな? せっかくだし、どんな感じになってるか後で見に行くかい?」
ディオス氏が気軽に散歩へ誘うような感覚で言う。
地下室ってなんだよ。さらっとすごいぞ。
レグル嬢も気にしてない感じだし、これって普通の会話なの?
ジンジャーに目線を送ると、グッとサムズアップされた。
うわぁ、やっぱ貴族怖い、人間怖い。
「……遠慮させてもらう」
俺は首を横に振って辞退する。
俺はそこまで悪趣味じゃない。
というか、俺の趣味は走ることくらいしかない。
いや、走ることはライフウェイだな。エルーシャの食事にあやかって表現してみた。
なら趣味は転生してから始めた筋トレだろう。
……どうでもいい話だな。
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