大地のためのダンジョン運営

あがつま ゆい

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ダンジョンマスターと魔王

第1話 すべての始まり

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「ほ、本当に、飲めばいいんですよね?」
「ああそうだ。新作の紅茶の味を率直な意見で伝えて欲しいんだ」

 時刻は昼間だというのに薄暗い路地裏……そこで明らかに人相が悪い上にロクに洗濯もされていない服を着て、悪人特有の気配を全身にまとわせた「隅から隅まで悪党」な男が、
 彼とはとても釣り合わない程のまだ年も若い美しい娘とテーブルごしにおしゃべりをしていた。
 娘側のテーブルには安物のコップに注がれた紅茶が置いてあった。彼女が飲もうとした、その時。



「オイ、こんな真昼間から何やってるんだ?」

 青年が割って入る。年は少女より少し上くらいで、一見して彼女と同じ平民出身と思えるありきたりな服装に、
 青いハチマキのような細長い布を頭に巻き、ハチマキと同じ色のリボンもつけていた。

「賞金首、寝かせのジョイルだな。その娘さんを睡眠薬で寝かせて奴隷として売り飛ばすつもりなのか?」
「!? え!? ど、奴隷!?」
「チッ!」

「寝かせのジョイル」は逃げ出そうとするが青年の動きの方が早い。取っ組み合いのケンカになって賞金首は押さえつけられてしまう。



「さーて、どうする? 幸運なことに俺相手なら『示談』が出来る。どうだ? カネ持ってるか?」
「分かった! 右のポケットにサイフがある! それをやるよ!」

 青年は言われた通り相手の右ポケットから財布を取り出す。と同時に彼は賞金首を開放した。

「金貨2枚か。まぁ上出来だろうな。お嬢さん、災難だったな。どうせ騙されて……」
「何てことしてくれるんですかあなたは! せっかくお父さんの治療費を払ってくれる人を見つけたのに!」
「オイオイ、助けたのにそんな言い方はないだろ?」
「私は助けて欲しいと頼んだ覚えはありません!」

 危機を脱した少女は助けてくれたはずの青年に怒りをぶつける。
 ……何かある。青年はそう思って目の前の少女から訳を聞き出した。



 城下町のメインストリートに位置する商業地区……最近再開発され、国内では今最もにぎわっている場所。そこを歩きながら2人は話を重ねていた。

「なるほど。父親の治療費を払うため、か。世の中悪い奴なんて山ほどいる。ましてや君みたいな美少女なら余計に悪い虫が寄って来るさ。ホイホイついていくのは辞めた方がいい」
「説教なんて聞きたくありません! じゃああなたはお父さんの治療費を出せるんですか!?」
「さっきからずっと怒ってばっかりだなぁ、カワイイ顔が台無しだぜ?」
「な……だ、だから説教なんて聞きたくないって何度言ったら分かるんですか!? 私にはまとまったお金が必要なんですよ!?」
「……」

 そこまで聞くと青年は黙って懐から握りこぶし大の六角形をした緑色の石を取り出し、少女の手のひらにのせた。



「これは……?」
「これは「マナ結晶」っていう特別な石だ。冒険者ギルドに持っていけば父親の治療代くらいにはなるはずだ。
 どこで手に入れたかを聞かれたら我が家の家宝として受け継がれたものだ、とか言ってごまかすんだ」
「は、はぁ……本当に、それでおカネが手に入るんですか?」
「こんなカワイイ女の子を騙したら地獄行き確定だよ。良いから持っていきなさい。じゃあな」

 そう言って青年は雑踏の中に紛れ、いなくなってしまった。



(……本当なのかな、さっきの話)

 彼女は言われた通り冒険者ギルドに寄ったが、不安は隠せない。こんな石があの高い治療費になるのだろうか?

「あ、あの。私部外者なんですけど、これを両替してくれますか?」
「ふーん、どれどれ……!!」

「マナ結晶」なる石を見た受付嬢の顔がこわばる。



「……あなた、これをどこで手に入れたんですか?」

 受付嬢は驚いたのか少々裏返っている声を出して彼女に問う。どう見てもただの平民にしか見えない彼女が持ってくるものではない。

「それは……我が家の家宝でして、本当にお金に困ったときに売れと言われている物です」
「なるほど、家宝ですか。少々お時間をいただいても構いませんか?」

 そう言って受付嬢はとある装置で石の何かを測った後、ギルドの支部長の部屋まで持っていった。



「支部長、あの『緑マナ結晶』が持ち込まれました」
「!? 何だって!? 本物なのか!?」
「測定器の計測結果を見た限りでは本物だと言えるものです。いかがいたしましょうか?」
「買い取れ。いくらになろうが構わん」

 即決だった。



5分後……



「お待たせいたしました。代金をお支払いいたします」

 受付嬢をはそう言って1枚の硬貨を差し出した。

「ええ!? こ、これ、まさか……大金貨じゃ!?」

 どれだけ安く見積もっても父と娘の2人暮らしである彼女の生活費にして軽く4ヵ月以上にはなるもの。
 治療費を全額払ってもなお、悠々ゆうゆうとおつりが来るほどの大金だ。平民である彼女は存在自体は知ってはいたが、実物を見たことは無かった。

「我々としてはそれだけの価値があると見込んでの事です。よろしければこちらにサインをお願いいたします」
「……」

 彼女は治療費としては十分すぎる程の金額を受け取り、取引の証明書にサインを書いた。
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