大地のためのダンジョン運営

あがつま ゆい

文字の大きさ
1 / 70
ダンジョンマスターと魔王

第1話 すべての始まり

しおりを挟む
「ほ、本当に、飲めばいいんですよね?」
「ああそうだ。新作の紅茶の味を率直な意見で伝えて欲しいんだ」

 時刻は昼間だというのに薄暗い路地裏……そこで明らかに人相が悪い上にロクに洗濯もされていない服を着て、悪人特有の気配を全身にまとわせた「隅から隅まで悪党」な男が、
 彼とはとても釣り合わない程のまだ年も若い美しい娘とテーブルごしにおしゃべりをしていた。
 娘側のテーブルには安物のコップに注がれた紅茶が置いてあった。彼女が飲もうとした、その時。



「オイ、こんな真昼間から何やってるんだ?」

 青年が割って入る。年は少女より少し上くらいで、一見して彼女と同じ平民出身と思えるありきたりな服装に、
 青いハチマキのような細長い布を頭に巻き、ハチマキと同じ色のリボンもつけていた。

「賞金首、寝かせのジョイルだな。その娘さんを睡眠薬で寝かせて奴隷として売り飛ばすつもりなのか?」
「!? え!? ど、奴隷!?」
「チッ!」

「寝かせのジョイル」は逃げ出そうとするが青年の動きの方が早い。取っ組み合いのケンカになって賞金首は押さえつけられてしまう。



「さーて、どうする? 幸運なことに俺相手なら『示談』が出来る。どうだ? カネ持ってるか?」
「分かった! 右のポケットにサイフがある! それをやるよ!」

 青年は言われた通り相手の右ポケットから財布を取り出す。と同時に彼は賞金首を開放した。

「金貨2枚か。まぁ上出来だろうな。お嬢さん、災難だったな。どうせ騙されて……」
「何てことしてくれるんですかあなたは! せっかくお父さんの治療費を払ってくれる人を見つけたのに!」
「オイオイ、助けたのにそんな言い方はないだろ?」
「私は助けて欲しいと頼んだ覚えはありません!」

 危機を脱した少女は助けてくれたはずの青年に怒りをぶつける。
 ……何かある。青年はそう思って目の前の少女から訳を聞き出した。



 城下町のメインストリートに位置する商業地区……最近再開発され、国内では今最もにぎわっている場所。そこを歩きながら2人は話を重ねていた。

「なるほど。父親の治療費を払うため、か。世の中悪い奴なんて山ほどいる。ましてや君みたいな美少女なら余計に悪い虫が寄って来るさ。ホイホイついていくのは辞めた方がいい」
「説教なんて聞きたくありません! じゃああなたはお父さんの治療費を出せるんですか!?」
「さっきからずっと怒ってばっかりだなぁ、カワイイ顔が台無しだぜ?」
「な……だ、だから説教なんて聞きたくないって何度言ったら分かるんですか!? 私にはまとまったお金が必要なんですよ!?」
「……」

 そこまで聞くと青年は黙って懐から握りこぶし大の六角形をした緑色の石を取り出し、少女の手のひらにのせた。



「これは……?」
「これは「マナ結晶」っていう特別な石だ。冒険者ギルドに持っていけば父親の治療代くらいにはなるはずだ。
 どこで手に入れたかを聞かれたら我が家の家宝として受け継がれたものだ、とか言ってごまかすんだ」
「は、はぁ……本当に、それでおカネが手に入るんですか?」
「こんなカワイイ女の子を騙したら地獄行き確定だよ。良いから持っていきなさい。じゃあな」

 そう言って青年は雑踏の中に紛れ、いなくなってしまった。



(……本当なのかな、さっきの話)

 彼女は言われた通り冒険者ギルドに寄ったが、不安は隠せない。こんな石があの高い治療費になるのだろうか?

「あ、あの。私部外者なんですけど、これを両替してくれますか?」
「ふーん、どれどれ……!!」

「マナ結晶」なる石を見た受付嬢の顔がこわばる。



「……あなた、これをどこで手に入れたんですか?」

 受付嬢は驚いたのか少々裏返っている声を出して彼女に問う。どう見てもただの平民にしか見えない彼女が持ってくるものではない。

「それは……我が家の家宝でして、本当にお金に困ったときに売れと言われている物です」
「なるほど、家宝ですか。少々お時間をいただいても構いませんか?」

 そう言って受付嬢はとある装置で石の何かを測った後、ギルドの支部長の部屋まで持っていった。



「支部長、あの『緑マナ結晶』が持ち込まれました」
「!? 何だって!? 本物なのか!?」
「測定器の計測結果を見た限りでは本物だと言えるものです。いかがいたしましょうか?」
「買い取れ。いくらになろうが構わん」

 即決だった。



5分後……



「お待たせいたしました。代金をお支払いいたします」

 受付嬢をはそう言って1枚の硬貨を差し出した。

「ええ!? こ、これ、まさか……大金貨じゃ!?」

 どれだけ安く見積もっても父と娘の2人暮らしである彼女の生活費にして軽く4ヵ月以上にはなるもの。
 治療費を全額払ってもなお、悠々ゆうゆうとおつりが来るほどの大金だ。平民である彼女は存在自体は知ってはいたが、実物を見たことは無かった。

「我々としてはそれだけの価値があると見込んでの事です。よろしければこちらにサインをお願いいたします」
「……」

 彼女は治療費としては十分すぎる程の金額を受け取り、取引の証明書にサインを書いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

盾の間違った使い方

KeyBow
ファンタジー
その日は快晴で、DIY日和だった。 まさかあんな形で日常が終わるだなんて、誰に想像できただろうか。 マンションの屋上から落ちてきた女子高生と、運が悪く――いや、悪すぎることに激突して、俺は死んだはずだった。 しかし、当たった次の瞬間。 気がつけば、今にも動き出しそうなドラゴンの骨の前にいた。 周囲は白骨死体だらけ。 慌てて武器になりそうなものを探すが、剣はすべて折れ曲がり、鎧は胸に大穴が空いたりひしゃげたりしている。 仏様から脱がすのは、物理的にも気持ち的にも無理だった。 ここは―― 多分、ボス部屋。 しかもこの部屋には入り口しかなく、本来ドラゴンを倒すために進んできた道を、逆進行するしかなかった。 与えられた能力は、現代日本の商品を異世界に取り寄せる 【異世界ショッピング】。 一見チートだが、完成された日用品も、人が口にできる食べ物も飲料水もない。買えるのは素材と道具、作業関連品、農作業関連の品や種、苗等だ。 魔物を倒して魔石をポイントに換えなければ、 水一滴すら買えない。 ダンジョン最奥スタートの、ハード・・・どころか鬼モードだった。 そんな中、盾だけが違った。 傷はあっても、バンドの残った盾はいくつも使えた。 両手に円盾、背中に大盾、そして両肩に装着したL字型とスパイク付きのそれは、俺をリアルザクに仕立てた。 盾で殴り 盾で守り 腹が減れば・・・盾で焼く。 フライパン代わりにし、竈の一部にし、用途は盛大に間違っているが、生きるためには、それが正解だった。 ボス部屋手前のセーフエリアを拠点に、俺はひとりダンジョンを生き延びていく。 ――そんなある日。 聞こえるはずのない女性の悲鳴が、ボス部屋から響いた。 盾のまちがった使い方から始まる異世界サバイバル、ここに開幕。 ​【AIの使用について】 本作は執筆補助ツールとして生成AIを使用しています。 主な用途は「誤字脱字のチェック」「表現の推敲」「壁打ち(アイデア出しの補助)」です。 ストーリー構成および本文の執筆は作者自身が行っております。

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

処理中です...