大地のためのダンジョン運営

あがつま ゆい

文字の大きさ
17 / 70
ダンジョンマスターと魔王

第17話 虚無の構え

しおりを挟む
「先生。魔王討伐に参加したそうですが、そもそも魔王って何なんですか? ダンジョンマスターと同類とは聞いていますけど」
「魔王ってのは人間を辞めたダンジョンマスターのなれの果てさ。大方永遠の若さを求めて特殊な儀式をして身体の構造が変わっちまった人間なのさ」

 レナにとって、というか普通の人間にとって魔王もダンジョンマスターもあまり明確な区別はついていない。どっちも同類として「ひとまとめ」にしているのが現状だ。



「魔王は永遠の若さを維持するために大地のマナエネルギーを吸い取って死の土地に変えてしまうから、まともな人間である俺達とは共存は出来ない。
 どっちかが死ぬまで戦わないといけない相手だ」
「確かダンジョンには大地のエネルギーを増幅させる機能があるんですよね? それを使えば何とかなるんじゃないんですか?」
「魔王共が身体を維持するのに必要なエネルギーはダンジョンの1つや2つでは到底補いきれない。焼け石に水みたいなもんさ」
「そうなんですか……そう言えば先生は魔王を倒す復讐旅をしているとお聞きしましたけど?」
「その話か……」



 レナの鋭さにはつくづく驚かされる。ダンジョンで初めて会った時に話した「とある魔王を殺す復讐旅をしている」というのを聞き逃していない。

「細かい所まで覚えてるんだな。俺は両親をとある魔王に殺されたんだ……そいつがやって来るのを待っているのさ。
 この国のマナエネルギーは豊富で、魔王にとっては美味しい土地さ。実際、狙っているのとは別だけど魔王が来たからな」
「……」

 会って1ヶ月かそこらでは事情の全部は教えてはくれないだろう。レナは教えてくれない事を理解しつつも、少しだけ信用していない事にスレた。



「よし、じゃあ今日から戦いに関して奥義を教えるぞ。レナ、これからコイツと1対1で戦ってくれ。その途中で俺がお前を狙うから避けてみろ」
「は、はい。分かりました」
「それとウルフェン。お前油断するなよ。彼女はこんな姿でも俺より格段に強いぞ。女相手と手を抜くと返り討ちだぜ?」
「分かりました、マスター。じゃあ嬢ちゃん、本気で行くぜ」

 人狼とレナはお互いに安全な木製の武器を手にして試合を始める。

虚無きょむの構え』

 と同時にソルは構える。と同時に彼の気配がプツリと消えた。



「ヤァッ!」

 レナが2本の剣を振るい、相手のガードを揺さぶる。相手も双拳を武器とするが彼女の剣さばきについていけず、押されていく。やがて……。

「ぐっ!」

 人狼のウルフェンは左腕のガードをムリヤリこじ開けられてしまう。そこへレナが一撃を入れようとした、まさにその瞬間!
 ソルの木刀が彼女の首元にピタリ。と添えられた。

「せ、先生!? 何をしたんですか?」

 さっきまでいなかったはず。いや正確に言えばウルフェンと言ったか?
 人狼相手に1対1で戦っていた頃から彼の気配が消えていたのが引っ掛かったが、それさえ特に気にしていなかった。



「これが『虚無きょむの構え』だ。
 周りにいる人間や魔物の『認識を狂わせる』能力だ。視界に入っても見ることは出来ず、足音もするが耳に入らない、殺気や気配さえ感じなくなる。俺の知ってる中では『最強』の術さ」
「『最強』なんですか?」

 師匠が『最強』の術とどこか誇らしげに言うその様にどこが強いのか気になって聞いてみることにした。

「ああ。仲間と一緒に集団戦闘しているときにはとりわけ役に立つ。
 目の前の敵に集中してそっちに気が行った瞬間に、死角を突いた攻撃は魔王ですら回避不可能な上に一撃で致命傷を負わすことだっていくらでもできる。
 というか俺は対魔王戦においては正面からぶつかり合うなんて到底無理で、こんな小細工でもしない限り勝ち目が無い。っていうのもあるけどな。
 レナ、これからお前にはこれを教える。ついてきてくれ」
「は、はい! 分かりました!」
「返事は良いな。よしまずは……」

 ソルによる指導が始まった。



 それから2日後……

虚無きょむの構え』

 レナが構えると彼女の気配が消えた。ソルですら探すのが困難だ。

「お……俺が2年かけて編み出したものを、たった2日で?」



 ソルは弟子の成長ぶりに開いた口が塞がらない。
 自分が編み出す際にはお手本がなかったから試行錯誤の手探りであったのに対し、レナの場合はお手本がある。
 というのを勘定に入れたとしても、自分が2年かけてたどり着いた答えにたった2日であっさりと到達されてしまったからだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

天城の夢幻ダンジョン攻略と無限の神空間で超絶レベリング ~ガチャスキルに目覚めた俺は無職だけどダンジョンを攻略してトップの探索士を目指す~

仮実谷 望
ファンタジー
無職になってしまった摩廻天重郎はある日ガチャを引くスキルを得る。ガチャで得た鍛錬の神鍵で無限の神空間にたどり着く。そこで色々な異世界の住人との出会いもある。神空間で色んなユニットを配置できるようになり自分自身だけレベリングが可能になりどんどんレベルが上がっていく。可愛いヒロイン多数登場予定です。ガチャから出てくるユニットも可愛くて強いキャラが出てくる中、300年の時を生きる謎の少女が暗躍していた。ダンジョンが一般に知られるようになり動き出す政府の動向を観察しつつ我先へとダンジョンに入りたいと願う一般人たちを跳ね除けて天重郎はトップの探索士を目指して生きていく。次々と美少女の探索士が天重郎のところに集まってくる。天重郎は最強の探索士を目指していく。他の雑草のような奴らを跳ね除けて天重郎は最強への道を歩み続ける。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

盾の間違った使い方

KeyBow
ファンタジー
その日は快晴で、DIY日和だった。 まさかあんな形で日常が終わるだなんて、誰に想像できただろうか。 マンションの屋上から落ちてきた女子高生と、運が悪く――いや、悪すぎることに激突して、俺は死んだはずだった。 しかし、当たった次の瞬間。 気がつけば、今にも動き出しそうなドラゴンの骨の前にいた。 周囲は白骨死体だらけ。 慌てて武器になりそうなものを探すが、剣はすべて折れ曲がり、鎧は胸に大穴が空いたりひしゃげたりしている。 仏様から脱がすのは、物理的にも気持ち的にも無理だった。 ここは―― 多分、ボス部屋。 しかもこの部屋には入り口しかなく、本来ドラゴンを倒すために進んできた道を、逆進行するしかなかった。 与えられた能力は、現代日本の商品を異世界に取り寄せる 【異世界ショッピング】。 一見チートだが、完成された日用品も、人が口にできる食べ物も飲料水もない。買えるのは素材と道具、作業関連品、農作業関連の品や種、苗等だ。 魔物を倒して魔石をポイントに換えなければ、 水一滴すら買えない。 ダンジョン最奥スタートの、ハード・・・どころか鬼モードだった。 そんな中、盾だけが違った。 傷はあっても、バンドの残った盾はいくつも使えた。 両手に円盾、背中に大盾、そして両肩に装着したL字型とスパイク付きのそれは、俺をリアルザクに仕立てた。 盾で殴り 盾で守り 腹が減れば・・・盾で焼く。 フライパン代わりにし、竈の一部にし、用途は盛大に間違っているが、生きるためには、それが正解だった。 ボス部屋手前のセーフエリアを拠点に、俺はひとりダンジョンを生き延びていく。 ――そんなある日。 聞こえるはずのない女性の悲鳴が、ボス部屋から響いた。 盾のまちがった使い方から始まる異世界サバイバル、ここに開幕。 ​【AIの使用について】 本作は執筆補助ツールとして生成AIを使用しています。 主な用途は「誤字脱字のチェック」「表現の推敲」「壁打ち(アイデア出しの補助)」です。 ストーリー構成および本文の執筆は作者自身が行っております。

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...