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ダンジョンマスターと魔王
第25話 ソルが見た地獄
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「魔王って具体的に何をするんですか? 世界征服をするとか聞いてますけど」
「中にはそんな奴もいるかもな。基本的にアイツらは永遠の若さを保つために各地の大地のマナエネルギーを吸う旅をしているんだ。
そうすると不作が起きて地上では飢饉が起きる。その時の話、教えてやろうか?」
この国は歴史に残るような飢饉は50年以上起こっておらず、それゆえ上は王から下は庶民まで、その悲惨さを生身で体験している者はほぼいない。
だからこそあえて、飢饉の恐ろしさを語ることにした。
◇◇◇
ソルが15歳の頃、父親が残した本を読んでダンジョンマスターとしてダンジョンを作り管理が出来るまで成長した時の事だ。
旅の途中で、魔王にマナエネルギーを吸い取られた、砂漠地帯のオアシスを救うためにダンジョンを構えていたのだが……。
「……」
民家の入口の近くで、子供が倒れていた。その身体は肉が極限まで削がれ、あばら骨がハッキリと、くっきりと、浮き出ており、
手足は「骨と皮」しか残っておらず、腹だけが大きく突き出ている格好だった。典型的な「餓死寸前の姿」だった。
その目はもはや何物も見ることは出来ず、その口はカラカラに渇いていて唾液も出ない。完全に干からびた身体はもはや治療の施しようがない。
ただこのまま、ゆっくりとかつ確実に迫って来る死を待つのみ。であった。
「マスター、そいつはもう手遅れですぜ。それよりもこっちに回した方がいいですぜ。こっちも出せる水には限度がありますんで」
ウルフェンはダンジョンから持ち出した水、正確には錬成部屋から生成した「飲料用人工水」とでも言うべきものを持ち出し、配っていた。とりあえず渇きをしのぐためだ。
……なんてことをしやがる。自分が生きるために他人を平気で踏みにじるのか? 魔王と言う奴は。許せねぇ。
ソルの心の芯に怒りが着火する。魔王がマナエネルギーを吸うから大地は枯れ、飢饉が起きて関係ない人たちが大勢苦しむことになる。
やはり魔王は倒さなくてはいけない。正義や善なんて国や時代が違えばいくらでも変わるが、力なき者を虐げるのは国や時代を問わない「悪」だ。
◇◇◇
「砂漠のオアシスが枯れて人が住めない土地になっちまったのさ。
それでも家や土地しか財産が無いから捨てられずに、あるいはそれすらない貧乏人で、カネや貯えが無いから逃げる事さえ出来ずに残った連中には地獄が待ってた」
「地獄……?」
ソルの口から「言葉という軟弱なコミュニケーションでは表現しきれない」程の、救いようのない話が放たれる。
「ああ。作物が一切育たないが生きるためには食わなくてはいけない、となるとまずは雑草を食いだしたんだ。
でもそれはほんの序の口で、木で出来たテーブルやいすをカンナで削って食ったり、さらにはワラを食いだしたり、土や砂を食って飢えをしのいでいた」
「……!!」
イスやテーブルを食べ、ワラや土を食べる。おおよそまともな神経をしてれば絶対しないことをやるのを見てきた。というソルの表情は真剣そのもので、
本当にそんな「おぞましい」「救いようのない」光景を見てきたようだ。
「そして極めつけは……人肉さ。餓死した我が子を親が食っていた。膨れた腹や、やせ細った手足を食いやすいように切ってボロボロ泣きながらな。
宗教屋の考える地獄の方がまだ救いがあるって位の地獄だったよ」
「ごめんなさい。なんか気分が悪くなってきて……」
「だろうな。こんな話聞かされてまともでいられる方がどうかしてる。レナ、お前がそう思うのも無理はないな。
ともかく俺はそんな地獄を見てきた。あんな地獄は二度と繰り返されるべきではない……だから俺は魔王と戦ってるんだ」
飢饉の惨状を生身で知ったからこそ言える彼の眼には、魔王と戦う決意がこもっていた。
「正義や悪だなんて時代や国でもいくらでも変わる。
国によっては「洗練された我々が無知蒙昧な愚民を導いてやるのだ」と言って他国侵略をするのが善とされることだってある。
だが……それでも「誰かを泣かせること、誰かを不幸にすること」は時代や国が違っても変わらない事だと思う。
魔王は存在するだけで誰かを泣かせるから、俺は魔王と戦うんだ。少なくとも俺にとっては魔王はオヤジと母さんを泣かせて、不幸にしたから戦うべき敵なんだ」
「例え、それが実のおじいさんでも、ですか?」
その問いを聞いてソルはコクリ、とうなづいた。
「もうアイツは、俺の祖父じゃない。倒すべき敵の『魔王デイブレイク』だ」
「私は、何があっても先生の味方ですよ」
「……そう言ってくれると助かる。っと、もう時間だ。今日の給料だ」
ソルは弟子に給料を渡して、1日を終えた。
「中にはそんな奴もいるかもな。基本的にアイツらは永遠の若さを保つために各地の大地のマナエネルギーを吸う旅をしているんだ。
そうすると不作が起きて地上では飢饉が起きる。その時の話、教えてやろうか?」
この国は歴史に残るような飢饉は50年以上起こっておらず、それゆえ上は王から下は庶民まで、その悲惨さを生身で体験している者はほぼいない。
だからこそあえて、飢饉の恐ろしさを語ることにした。
◇◇◇
ソルが15歳の頃、父親が残した本を読んでダンジョンマスターとしてダンジョンを作り管理が出来るまで成長した時の事だ。
旅の途中で、魔王にマナエネルギーを吸い取られた、砂漠地帯のオアシスを救うためにダンジョンを構えていたのだが……。
「……」
民家の入口の近くで、子供が倒れていた。その身体は肉が極限まで削がれ、あばら骨がハッキリと、くっきりと、浮き出ており、
手足は「骨と皮」しか残っておらず、腹だけが大きく突き出ている格好だった。典型的な「餓死寸前の姿」だった。
その目はもはや何物も見ることは出来ず、その口はカラカラに渇いていて唾液も出ない。完全に干からびた身体はもはや治療の施しようがない。
ただこのまま、ゆっくりとかつ確実に迫って来る死を待つのみ。であった。
「マスター、そいつはもう手遅れですぜ。それよりもこっちに回した方がいいですぜ。こっちも出せる水には限度がありますんで」
ウルフェンはダンジョンから持ち出した水、正確には錬成部屋から生成した「飲料用人工水」とでも言うべきものを持ち出し、配っていた。とりあえず渇きをしのぐためだ。
……なんてことをしやがる。自分が生きるために他人を平気で踏みにじるのか? 魔王と言う奴は。許せねぇ。
ソルの心の芯に怒りが着火する。魔王がマナエネルギーを吸うから大地は枯れ、飢饉が起きて関係ない人たちが大勢苦しむことになる。
やはり魔王は倒さなくてはいけない。正義や善なんて国や時代が違えばいくらでも変わるが、力なき者を虐げるのは国や時代を問わない「悪」だ。
◇◇◇
「砂漠のオアシスが枯れて人が住めない土地になっちまったのさ。
それでも家や土地しか財産が無いから捨てられずに、あるいはそれすらない貧乏人で、カネや貯えが無いから逃げる事さえ出来ずに残った連中には地獄が待ってた」
「地獄……?」
ソルの口から「言葉という軟弱なコミュニケーションでは表現しきれない」程の、救いようのない話が放たれる。
「ああ。作物が一切育たないが生きるためには食わなくてはいけない、となるとまずは雑草を食いだしたんだ。
でもそれはほんの序の口で、木で出来たテーブルやいすをカンナで削って食ったり、さらにはワラを食いだしたり、土や砂を食って飢えをしのいでいた」
「……!!」
イスやテーブルを食べ、ワラや土を食べる。おおよそまともな神経をしてれば絶対しないことをやるのを見てきた。というソルの表情は真剣そのもので、
本当にそんな「おぞましい」「救いようのない」光景を見てきたようだ。
「そして極めつけは……人肉さ。餓死した我が子を親が食っていた。膨れた腹や、やせ細った手足を食いやすいように切ってボロボロ泣きながらな。
宗教屋の考える地獄の方がまだ救いがあるって位の地獄だったよ」
「ごめんなさい。なんか気分が悪くなってきて……」
「だろうな。こんな話聞かされてまともでいられる方がどうかしてる。レナ、お前がそう思うのも無理はないな。
ともかく俺はそんな地獄を見てきた。あんな地獄は二度と繰り返されるべきではない……だから俺は魔王と戦ってるんだ」
飢饉の惨状を生身で知ったからこそ言える彼の眼には、魔王と戦う決意がこもっていた。
「正義や悪だなんて時代や国でもいくらでも変わる。
国によっては「洗練された我々が無知蒙昧な愚民を導いてやるのだ」と言って他国侵略をするのが善とされることだってある。
だが……それでも「誰かを泣かせること、誰かを不幸にすること」は時代や国が違っても変わらない事だと思う。
魔王は存在するだけで誰かを泣かせるから、俺は魔王と戦うんだ。少なくとも俺にとっては魔王はオヤジと母さんを泣かせて、不幸にしたから戦うべき敵なんだ」
「例え、それが実のおじいさんでも、ですか?」
その問いを聞いてソルはコクリ、とうなづいた。
「もうアイツは、俺の祖父じゃない。倒すべき敵の『魔王デイブレイク』だ」
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「……そう言ってくれると助かる。っと、もう時間だ。今日の給料だ」
ソルは弟子に給料を渡して、1日を終えた。
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