大地のためのダンジョン運営

あがつま ゆい

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ダンジョンマスターと魔王

第33話 本番 コイツ、殺る気だ

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 王族がハンティングに使う王家の私有地である森の中に作った撮影用のダンジョンに関係者が集まっていた。
 アルフレッドに前衛役の戦士2名と弓使い1名の傭兵。それに撮影機材を持った人足、要は「荷物持ち」1名が待機していた。

「よーし、使い魔は問題なしだな」

 アルフレッドが錬成した、目玉で見て耳で聞いた映像を他所へ送信できる人工使い魔は特に問題や異常も無い。
 人足の傭兵が背負っている映像の転送装置にさっき生成した使い魔を触れさせると、これも問題やトラブルもなく使い魔と映像転送装置とがつながる。



「よーし、準備OK! 始めるぞ」

 アルフレッドが指示を出して「撮影」を開始する。

「皆さんこんにちは。これから『アルフレッドの冒険』を始めます。今日もダンジョンマスターSのダンジョンに潜ってお宝を探しちゃいます。今日も最後まで見てね!
 あ、そうそう。このお話はフィクションだからボクに憧れて本物のダンジョンに潜っちゃダメだぞ!」

 お決まりのフレーズで配信が始まった。



「さて、今回は配信初出演の冒険者を紹介したいと思います。どうぞー!」

 アルフレッドが人工使い魔を彼女の方に向けると桃色の髪をした若い少女と、彼女を守るように立つそれぞれ赤色と緑色のドラゴン2匹の映像が流れた。

「何とあのドラゴンをテイムするというテイマーのレナちゃんです! 軽く自己紹介してくれないかな?」
「あ……は、はい。レナと言います。赤いのがドラちゃんで緑色のがゴンちゃんって言います。よろしくお願いします。ほら、あいさつしなさい」
「「ガァッ!」」

 2匹流のあいさつとでも言うべきか、ドラゴン達は映像を撮影する使い魔に向けてひと鳴きした。

「はーい、自己紹介ありがとうございますー。じゃあ早速ダンジョンに潜ってみますね」

 一行は景気よくダンジョンへと潜っていった。



 ダンジョンに潜ってしばし、入り口から最も近い部屋にたどり着く。中には既にソルことダンジョンマスターSの配下は配置についており、万全の態勢で出迎えた。

 ……殴って良いんだ!! 今回の戦いでは本気で殴っても良いんだ!!

 2匹のドラゴンはキラリと目を輝かせていたのだが、それに気づいているのはソルことダンジョンマスターSだけだ。

「ドラちゃん! ゴンちゃん! 大ケガしない程度に頑張って!」

 レナの指示の元、2匹のドラゴンが動き出す。本命のダンジョンマスターS狙いだ。
 もちろん相手はそれを見越して1匹ずつのミノタウロスと人虎、人狼3体、それにウサギ型獣人の魔法使い2名を使って迎撃する。



「「サンダーボール!!」」

 ウサギ型獣人の魔術師は雷魔法でドラゴンを攻撃する。
 炎や氷には強い耐性を持つドラゴンの鱗だが、雷はそれを貫通して肉体に対し直にダメージを与える事が出来る。
 とはいえ人間とは比べ物にならない程タフな生命力を持つドラゴン。魔法の1発2発程度では止まらない。



 傭兵たちが人狼を相手にし、ドラがミノタウロスや人虎を相手にしているスキに、ゴンはダンジョンマスターSに攻撃を仕掛ける。

「ガァア!」

 ゴンは爪でダンジョンマスターSが着ている、撮影の時に着る胸当に引っかきを仕掛ける。

 ガリッ!

 という音と共に金属製の胸当てにはっきりとした爪の跡が残った。まともに食らえば大けがは免れない。



 次いでゴンは息を大きく吸い、ブレスを吐き出そうとする。一気にカタを付けるつもりらしい。
 が、ダンジョンマスターSは避けずにむしろゴンとの距離を詰め、鼻目掛けて曲刀を振り下ろす!

「ゴゥエ!」

 鼻は大抵の生き物にとって急所であり、それはドラゴンでも例外ではない。口からブレスが漏れて不発に終わり、両手で鼻をおさえる……結構な量の血が出ている。

「!! ゴンちゃん大丈夫!? 無茶はしないで!」
「ガウゥウ!」



 ゴンは「まだ行ける!」と戦う意思を崩してはいない。鼻から手を離し再度ダンジョンマスターSに襲い掛かる。
 今度は噛みつこうと頭を前に出すが、相手は後ろに引いて避ける。逆に相手はゴンの脳天めがけて渾身の力で曲刀を振り下ろした!

 硬い物と硬い物とがぶつかる音が響くが決定打とはなっていないようだ……脳天に直撃を食らったに関わらず。
 熱や冷気を防ぐだけでなく、物理的な力にも極めて高い耐性のあるドラゴンの鱗はやはり硬い。



「「「サンダーボール!!」」」

 ダンジョンマスターSは下がってウサギ型獣人の魔術師と一緒にサンダーボールを放つ。

「!!」

 ゴンは電撃を食らって、一瞬動きが鈍る。その隙にミノタウロスが大斧の一撃を叩き込んだ。


 ガゴォッ!


 脳天狙いの一撃をゴンはとっさに腕でガードして防いだ。だがさすがに無傷では済まなかったようで腕の鱗を貫き、骨に斧の刃が届いていた。
 鮮血がブシュウッ! と吹き出てさすがに「効いた」のが誰から見ても明らかだ。

「グゥアッ!」
「ゴンちゃん! 下がって! あとはドラちゃんに任せて!」

 レナは慌てて指示を出す。本当は自分で何とかしたかったが、我慢だ。



「ぐっ!」

 人狼の喉に深々と弓使いの傭兵から放たれた矢が突き刺さる。その狙いは正確無比だ。
 のどを射られた人狼は最後のあがきで、かぎ爪の一撃を食らわせようとするが……。

「シールド!」

 アルフレッドのシールドで防がれる。

「ぐおっ!」

 ダメ押しに傭兵の戦士が持つ剣の斬撃が人狼の腹に入ると、どさりと崩れ落ちて身体が光に包まれて消えた。



「ぐああああ!」

 それとほぼ同時に、人虎の首筋にドラの噛みつきが入る。噛みつきはまさに「必殺の一撃」で、食らったものはほぼ間違いなく死ぬ致命傷を与える一撃だ。
 そのまま床にばたりと倒れ、光となって身体が消えた。

 人虎を倒したドラはダンジョンマスターSに迫る。その目はこの戦いに歓喜する感情でキラリと輝いていた。
 ドラは手の爪で相手の顔面を裂くように切りかかる!


 ガリッ!


 という音と共にダンジョンマスターSの顔に引っかき傷が走った。仮面を付けていたのが幸いして、傷は浅くて済んだがもし付けていなかったら……。
 ドラが2発目を入れようとした、その瞬間!

「フン!」

 ダンジョンマスターSはドラの足の小指をカカトで思いっきり踏みつける。

「!!」

 ドラの顔が苦痛で歪む。人間同様、やはりここも急所らしい。



 相手が痛みにひるんだその瞬間、ダンジョンマスターSはドラの鼻に斬撃を当てる。

「ガアァッ!」

 これも効いた。紅い鮮血が出て、思わず鼻を手で覆った。
 その直後! 


ガゴッ!


 という硬い物と硬い物とがぶつかる鈍い音と共にミノタウロスの大斧の一撃がドラの脳天を直撃した。
 目立った外傷はないが一種の脳震盪のうしんとうを起こして気を失い、その場にドサリと倒れた。



「ド、ドラちゃん!?」
「!! お、おいどうすんだよ。ドラゴン2匹がやられたぜ?」

 あのドラゴンがやられた。予定ではドラゴン2匹で一方的な戦いになるはずだったのに、むしろこちら側が不利なのでは? という戦況だ。

「ま、待ってくれ! ダンジョンマスターS!」

 アルフレッドが直談判じかだんぱんを持ちかけた。

「今回は撤退するよ。これで勘弁してくれないか?」

 そう言って彼は金貨4枚を差し出した。

「ふーむ……いいだろう。引き分けという事にしてやるよ。去りな」

 無事に交渉成立。一行は気絶したドラを運んでダンジョンを去った。
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