大地のためのダンジョン運営

あがつま ゆい

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ダンジョンマスターと魔王

第35話 俺の物になれ 命令だ

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「フム……」

 ラズー子爵ししゃくはアルフレッドのダンジョン配信を見ていた。特に冒頭部分を何度も繰り返して。

「テイマー冒険者、レナか」

 配信でドラゴンを従える少女として華々しいデビューを飾ったレナだったが、不穏分子も呼び寄せていた。

「この『レナ』という冒険者を探して欲しい」

 子爵は配下にそう指示を出す。
 彼は欲しいものは逃さず手に入れてきたという自負がある。それに突き動かされるまま、レナをも手に入れようとしていた。



 しばらく経って、情報を集めた配下が報告のためにやって来た。

「閣下。お探しのレナという冒険者ですがやはり平民で、王都で父親と一緒に暮らしているそうです」
「そうか、分かった。明日迎えに行こう」
「あの、その件なのですが……」
「何だ? 何か不満でもあるのか?」
「はい。我々にとって都合の悪い事が起きそうなんです。彼女の父親は……」

 配下が父親の情報を言おうとしたところ……。



「父親だと? そんなのどうでもいいだろ。平民の娘なら父親も同様に平民だ。オレは子爵なんだぞ? その辺の平民に屈する事なんて無いに決まってるだろ」

 口を挟むように話をさえぎった。

「い、いやそれが! 彼女の父親は信じられないかもしれませんが、あのゆ……」
「くどい。何度も同じセリフを言わせるな。お前は明日の準備さえしていればいいんだ。余計なことはするな、下がれ」
「……」

 レナの父親は勇者として名をはせた「双剣のディラス」という事を知る機会は、彼と直接会う時まで来なかった。



 レナが出演した配信の日から3日後。彼女はいつものように城下町を抜け、勤務先のダンジョンまで歩いていた、その時。
 ラズー子爵の馬車が彼女の目の前で止まった。中から護衛と共に出てきた子爵は「品定め」をするような目線で彼女を見ていた。

「ふーむ、配信で見た通りの美少女だな。いや生で見るとより美しさが際立ってるじゃないか」
「あ、あの。お貴族様もあろうお方が何のご用件で私なんかに?」
「単刀直入に言おう。オレの物になれ」

「オレの物になれ」

 単刀直入過ぎる事を言う貴族に平民のレナは戸惑ってばかり。それに彼は妻子持ちだからなおさらそうだ。



「え……? た、確かラズー様は結婚してお子様もおられるはずでは?」
「構わんだろ? それに、一体何が不満なのだね? 平民が貴族のめかけになれるだなんてこれ以上に無い程の大出世だろ?
 お前も父親も一生遊んで暮らせることが確約されるんだぞ? もっと喜んでもいいんじゃないのか?」
「……申し訳ありません。私にはこれだと決めている人がいますし、お父さんともお話しないといけません。
 多分許さないと思いますから、このお話は無かったことにしていただけませんか?」
「勘違いしてないか? オレは『プロポーズ』をしているわけではない……『命令』をしているんだ」

 ラズー子爵がそう言って手を上げると、彼の周りにいた配下である兵士たちがレナを拘束する。
 不意を突かれて刃物が首にピタリと当てられると、さすがの彼女も抵抗できない。

「何をするんですか!?」
「何をするか、だって? お前はオレの物だ、オレが今そう決めたんだ。平民のお前はもちろん、お前の父親にも拒否権は無いんだぞ分かってるのか? 連れてけ」

 ラズー子爵は配下にそう指示を出した。



「……遅い。遅すぎるな」

 ソルは弟子の身を案じていた。約束の時刻になっても姿を見せず、それどころか昼になっても来なかった。
 さすがに「何かあった」と思い、事前に調べていた父親と暮らしているレナの自宅へと向かおうとした時だった。

「あ! ソル様!」

 ダンジョンの入り口でラタトスクの1人がソルの姿を見て駆け付ける。
 余程の事が無ければ動揺しないラタトスクの様子は明らかに慌てており、ソルにとんでもない事が起きているのを一瞬で悟らせた。



「何があった?」
「レナさんが……誘拐されました!」
「!? な、何だってぇ!?」

 レナが、誘拐? 普段から彼女の強さを知っている身分としてはあまりにも突然な事だった。



「ほ、本当の話なのか!?」
「本当ですとも! ラズー子爵なる人物の手でさらわれてしまったんです!」
「……」

 こんな非常事態になっても修羅場をくぐり抜けているだけにソルは冷静だ。

「分かった! 俺が何とかする!」
「分かりました! ご武運を!」
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