大地のためのダンジョン運営

あがつま ゆい

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ダンジョンマスターと魔王

第36話 奪還部隊

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 ソルは自分のダンジョンに戻って、あの2匹に声をかけた。

「ドラ! ゴン!」

 2匹のドラゴンに声をかける。レナ以外からの命令は一切聞かない2匹だったが、今日は何か違う。と思ったのかソルの様子を注意深く見ていた。

「レナがさらわれた! 助けに行くから力を貸してくれ! 嫌だとは言わせないぞ!」
「……」
「……」

 2匹はお互いを見つめた後……。

「「ガァッ!」」

 一鳴きしてソルと行動を共にすることにした。
 ダンジョンの外に出るとソルはドラの背中に乗って、城めがけて飛んでいった。



「フム……君は意識が上半身に行き過ぎている。意識して下半身も見ないと……」

 ディラスはそこまで言って相手のスネを蹴った。

「!! ぐう!」
「こうなるわけだ。実戦ではこの隙に斬られて終わるぞ」

 王城の中庭に設けられた訓練所。ディラスはそこで講師として雇われて兵士たち相手に訓練を施していたのだが、その時!



「な、なんだありゃ!?」
「まさか、ドラゴンか!? それも2匹!」

 突如空から2匹のドラゴンが現れた。
 兵士たちが戸惑う中、中庭にドラゴンが降り立った。背中に乗っていたソルが事態を伝える。

「ソル、何の用だ!? 随分と派手な登場だな」
「ディラス、レナがさらわれたそうだ。これから助けに行くから協力してくれないか?」
「!? レ、レナがさらわれただと!? 一応は護身術は身に付けているから余程の事が無ければ……」
「俺も信じられないんだが、その『余程の事』が起きたみたいなんだ。ラズー子爵なる領主が関わってるそうだ。もちろん来るよな?」

 ソルの目は口から出たセリフが本当の事だというのを語っていたが、ディラスは今一つ信じられない。



「ウソじゃないだろうな?」
「ああ、ウソじゃない。というか、ここでこんなウソをついてお前を騙して、俺が何か得する事でもあるのか?」
「うーむ……確かにお前の言う事には一理あるな。そのラズー子爵の領土はどこだ?」
「大丈夫だ、場所は知ってる。ここから西だ……飛ぶぞ! 乗ってくれ!」
「わかった。すまない、急用ができた。訓練は後日行う。とりあえずお前たちは自主練習をしててくれ」

 ディラスはドラゴンの背中に乗り、空を飛んでいった。



「結構速度が出るな」
「まぁな。このデカさで鳥並みの速度が出るから大したもんだよ。馬車馬だって余裕で追い越せるくらい速いと思うぞ」

 2匹のドラゴンが風を切って飛ぶ。徒歩では丸1日かかる行程でもこれなら1時間もあればたどり着ける。さすがは最強の生物ドラゴンなだけある。

 2人はラズー子爵の屋敷が有る町のそばに降りて、徒歩で向かう。
 見張りや守衛には「双剣のディラス」が来たと言ったらあっさり通してくれた。さすが名高い勇者様なだけある。
 一向は特に剣を抜くような事態にはならずにラズー子爵と対面する。

「これはこれは。双剣のディラス様がこたびはどのようなご用件でして?」

 ディラスに対して彼からしたらシラを切っているように見えたラズー子爵の態度に、娘を拉致らちされた父親の苛立いらだちは隠しきれない。



「どのようなご用件で、だと? とぼけるなよ。俺の娘のレナをさらったそうではないか? 返してもらおうか」
「しょ、少々お待ちいただけるでしょうか?」

 ラズー子爵はそう言って体を小さくしながら席を外した。

(お、おい! レナの父親が双剣のディラスだったなんて聞いてないぞ!?)
(閣下! あなたが人の話を端折はしょるからこんな事になったんですよ!? 人の話を最後まで聞かない閣下に責任があるんですよ!?
 どうするんですか!? もし一方的に連れてきたことがバレたらどんな目に遭うか!)
(うるさいぞ! そんなの分かってる! ……!! そうだ!)

 子爵は必死で脳みそを動かして話が都合よく収まる妙案を思い浮かべた。ニヤリ、と笑いつつ客人の所へと戻っていった。



「いやぁ~、お待たせして申し訳ありませんでしたねぇ『自称』双剣のディラス殿」

 彼のその口調は、どこか人を馬鹿にして見下す物であった。
 ラズー子爵が手を上げると、彼を守る領内きっての精鋭兵。剣士9名、僧侶2名、魔術師1名、総勢12名がソル一行の周りをぐるりと囲んだ。
 お互いに武器を抜いて構える。



(4対12か……熱いね。僧侶と魔術師は俺が取る)
(分かった。しばらくの間は3対9か。まぁいけるな)

 まぁいける、というディラスの評価基準は相手の数と質。数では大きく相手側優位だが質は非常に悪い。
 鎧が煮固めた革の小片を縫い付けたスケイルメイルで頭は革の兜なのを見るに、領内では鉄を防具に使う余裕が無いようだ。
 自分が持っているミスリル製の剣なら簡単に鎧ごと、あるいは兜ごと相手を斬ることも可能だろう。



「ラズー子爵殿、これは一体どういう訳で?」
「いやいやビックリしたよ。あの双剣のディラスの名をそこまで堂々と名乗れるとは大した演技だな、うっかりオレも信じそうになってしまったよ」
「演技……だと?」
「ああそうだ。お前、双剣のディラスのニセモノなんだろ? お前ら、容赦するな! 英雄の名をかたる愚か者は斬って捨てろ!」

 死人に口なし、殺してしまえばOKだ。という大間違いの判断を下してしまったのだ。
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