大地のためのダンジョン運営

あがつま ゆい

文字の大きさ
39 / 70
ダンジョンマスターと魔王

第39話 魔王デイブレイク

しおりを挟む
 季節はめぐり、冬。朝晩は吐く息が白く染まり、上着無しでは外を出歩くのもおっくうになる頃……。



「!!」

 ソルは目を覚ました。時刻はぜんまい仕掛けの壁掛け時計が言うには深夜5時……深夜と言うよりはそろそろ夜明けで「早朝」といった方が正しい頃だ。
 たまたま目が覚めるのが早かったわけではない。侵入者をダンジョンが探知し、ソルに伝えたのだ。

「誰だ? !!」

 ダンジョンから送られてくる情報で、ソルは悟る。
 顔や見た目は10代後半の若い青年、それでいながらどことなく老人が好むような旧式の古臭いデザインの服を着て、何よりソルになんとなくだが似ている姿。
 コイツとはいつか必ずぶつかる時が来る。その日が来るのを待ち続け、ついにこの日それが現実のものとなった。



「召喚獣は全員俺の部屋へ来い!」

 ソルは指示を出した。数分後、1体ずつの人虎とミノタウロス、3体の人狼、そして2匹のドラゴンが彼の部屋へと集合する。
 その直後、侵入者が現れた。

「随分と数だけは多いお出迎えだな」

 人知れない妖しい何かを放ちながら、男は……ソルになんとなく似ている男は、魔王独特の白色の目をダンジョンマスター側に向ける。



「じいちゃん……いや、魔王デイブレイクだな? 15年ぶりだな」
「ソルか……生きてたか。とりあえずこのダンジョンをもらいに来た。構わんな?」
「誰がタダでダンジョンをやると言ったんだ? かかれ!」

 ソルの合図で召喚獣たちが一斉に魔王デイブレイクに襲いかかる! だが……。



◇◇◇



 午前6時。太陽がすっかりと顔を出し、また1日が始まろうとしていた。

「「ごちそうさま」」

 レナとディラスが朝食を食べ終えて後片付けをしていた、その時だった。


コンコン


 誰かが家のドアノッカーを叩いた。

「はーい」

 ディラスが玄関のドアのカギを開けて出てみると……兵士が立っていた。



「ディラス様ですね? アルフレッド様がお呼びです。娘のレナさんと一緒に至急病院まで来てくれとの事です」
「病院だと? まぁいい分かった、行くと伝えてくれ。ところで何で病院なんかに?」
「それが、私はアルフレッド様から至急ディラス様に伝えて呼んで来てくれと言われただけで、詳しい話は聞いてないのですが……」
「そうか、分かった」

 アルフレッドが病院に……? 確か彼は何か特別な持病があったわけではない。何があったのだろうか?



「レナ、アルフレッド様が呼んでいるから一緒に病院に行かないか?」
「え!? アルフレッド様が!? 何かあったの?」
「詳しい話は父さんも分からないんだが、とにかく来てくれとの事だ」
「分かった、支度してから行くね」

 2人は身支度をして病院を目指した。



「ディラスとレナです。アルフレッド様から来てくれと言われたのでやって来たのですが、居場所は分かりますか?」
「ディラス様とレナ様ですね? お話はうかがっております。案内いたします」

 病院に着くと受付には既に話が行ってるらしく、名前を言うとすぐに案内してくれた。
 2人はとある病室へとたどり着くと、その中にアルフレッドがいた。
 彼は普段着でベッドのそばにあるイスに腰かけていた。どうやら彼が入院した、というわけではないらしい。



「アルフレッド様。ディラス、ただいま参りました。どのようなご用件でしょうか?」

 ディラスに言われるとアルフレッドは立ち上がり、ベッドに横たわっているソルを見せた。
 彼は上半身裸で、その身体には包帯が巻かれていて明らかに大きなけがを負っているように見えた。

「!! ソル!?」
「!! せ、先生!?」

 その姿に、思わず2人は声を上げる。
 ベッドのそばには普段彼が着ている服が捨てられるように置かれていた。
 出血してから時間が経ったのか血がべっとりとこびりついており、そこからもかなり大きなけがをしたのがうかがえる。



「ソル!? 何があったんだ!?」
「先生!! どうしたんですか!?」
「ああ、レナにディラスか。魔王デイブレイクにやられたんだ。ダンジョンを奪われて召喚獣もこいつら以外は全滅。何とか脱出するので精いっぱいだった。
 応急手当てはしたから本格的な治療が出来る医師が来るまでは安静にしてくれとの事さ」

 手当てはしてもらったというが、ソルの身体にはまだ痛みは残るのかその表情からは身体にジンジンとした苦痛が走っているのが読み取れる。
 レナは彼に言われて同室内の別のベッドに目を向ける。
 彼女が召喚したドラゴンのドラとゴン、そしてソルが子供の頃から仕えてる人狼のウルフェンが同じように傷の手当てをされた上で倒れるようにベッドに横になっていた。



「ドラちゃん! ゴンちゃん! それにウルフェンさんまで!」

 レナは心配なのか召喚獣の方へと駆け寄る。幸い命取りになるケガはしていないようだ。

「アルフレッド様、これは一体?」

 状況を何とか飲み込んだディラスはそばにいたアルフレッドに声をかけた。



「城壁を守る衛兵たちから傷だらけのソル達がいると聞いてやってきたらこの有様でさぁ。ボクの命令で即座に病院に運ばせたんだ。ソルがここまで酷くやられるなんて滅多な事じゃないぞ」
「ですね」

 ディラスは改めてソルの方を見る。彼のダンジョンで剣を交えたり、ラズー子爵の件でソルと行動を共にしていた時に彼の強さは把握しているつもりだった。
 その彼がここまでやられるとはただ事ではなさそうだ。



「お前が負けるなんて余程の事だな」
「ああ。正直俺も相手を見くびってた。相手も15年経てば強くなるもんだなって」
「魔王デイブレイクと言ったな? 倒せるのか?」
「もちろん。当てはある」

 ソルはディラスと話しながらベッドの下に置かれていた大型のリュックサックを持ち出した。中には当面の生活資金と大金貨7枚、ソル用の武器と防具が一式詰められていた。



「備えにしてはかなりの額だな」
「こいつは傭兵の雇用代さ。冒険者ギルド行けば20名は固いな」
「なるほど。ソル、魔王退治ならアニキに言って出来るだけ国の支援を受けさせるぞ」
「そうしてくれると助かるぜアルフレッド。魔王が住み着いたら倒さない限りこの国は死の大地になるから出来るだけ戦力が欲しい。国からも戦力を引っ張れるだけ引っ張ってくれ」

 こういう時、アルフレッドは役に立つ。4男坊と言えど王族には庶民からすればケタ違いの権力やコネがある。魔王討伐には大きな助力となるだろう。



「先生、大丈夫でしょうか?」

 ケガをしているソルが心配で今にも泣きだしそうな表情をしているレナが不安げにそんなセリフを漏らす。

「ダンジョンマスターやってりゃこの程度のケガは良くある話さ。大丈夫。すぐに退院するから今日は家で大人しくしてるんだな」

 ソルは傷の痛みはあるものの、出来るだけ不安がらせないように優しい表情と口調でレナに語りかけた。
 彼女がダンジョンに来るようになってからはここまで大きなケガをしたことは無いから、レナからしたら余程不安なのは良く分かる。

「レナちゃん、大丈夫だよ。この国最高の医者を用意したからすぐに退院できるって」
「そうですか。ありがとうございますアルフレッド様」

 それにアルフレッドからも励ましてもらえたから、彼女の不安はだいぶ打ち消された。



「じゃあボクは仕事だからまた来るね」
「俺も仕事があるから離れるぞ。レナ、お前は家の中にいなさい」
「レナ、俺の事は大丈夫だから安心して待ってろ」
「わ、分かりました先生……お大事にしてくださいね」

 ソルの関係者3人は病室を出て行った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

盾の間違った使い方

KeyBow
ファンタジー
その日は快晴で、DIY日和だった。 まさかあんな形で日常が終わるだなんて、誰に想像できただろうか。 マンションの屋上から落ちてきた女子高生と、運が悪く――いや、悪すぎることに激突して、俺は死んだはずだった。 しかし、当たった次の瞬間。 気がつけば、今にも動き出しそうなドラゴンの骨の前にいた。 周囲は白骨死体だらけ。 慌てて武器になりそうなものを探すが、剣はすべて折れ曲がり、鎧は胸に大穴が空いたりひしゃげたりしている。 仏様から脱がすのは、物理的にも気持ち的にも無理だった。 ここは―― 多分、ボス部屋。 しかもこの部屋には入り口しかなく、本来ドラゴンを倒すために進んできた道を、逆進行するしかなかった。 与えられた能力は、現代日本の商品を異世界に取り寄せる 【異世界ショッピング】。 一見チートだが、完成された日用品も、人が口にできる食べ物も飲料水もない。買えるのは素材と道具、作業関連品、農作業関連の品や種、苗等だ。 魔物を倒して魔石をポイントに換えなければ、 水一滴すら買えない。 ダンジョン最奥スタートの、ハード・・・どころか鬼モードだった。 そんな中、盾だけが違った。 傷はあっても、バンドの残った盾はいくつも使えた。 両手に円盾、背中に大盾、そして両肩に装着したL字型とスパイク付きのそれは、俺をリアルザクに仕立てた。 盾で殴り 盾で守り 腹が減れば・・・盾で焼く。 フライパン代わりにし、竈の一部にし、用途は盛大に間違っているが、生きるためには、それが正解だった。 ボス部屋手前のセーフエリアを拠点に、俺はひとりダンジョンを生き延びていく。 ――そんなある日。 聞こえるはずのない女性の悲鳴が、ボス部屋から響いた。 盾のまちがった使い方から始まる異世界サバイバル、ここに開幕。 ​【AIの使用について】 本作は執筆補助ツールとして生成AIを使用しています。 主な用途は「誤字脱字のチェック」「表現の推敲」「壁打ち(アイデア出しの補助)」です。 ストーリー構成および本文の執筆は作者自身が行っております。

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

処理中です...