大地のためのダンジョン運営

あがつま ゆい

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ダンジョンマスターと魔王

第38話 再会 そして……

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 領主の屋敷を出てしばらくして、町外れの水はけが悪いのかジメりとした場所に設置された牢屋にたどり着いた。

「閣下。そちらのお方は?」
「レナの関係者だ。彼女を出してやってくれ」
「ええ? 良いんですか?」
「構わん。出さなきゃこっちがどうなるか……」

 領主からそう告げられた看守は命令だから、とレナを開放した。



「お父さん! 先生!」
「レナ! 大丈夫か!?」
「レナ! 無事か!?」

 彼女の父親と先生は同時に似たようなセリフを発する。ようやく再開できたことに2人の声は弾んでいた。

「「ガァッ!」」
「ドラちゃんにゴンちゃんも!」

 2匹のドラゴンも心なしか緩んだ顔になっている、気がした。

「レナ、怖かっただろう。もう大丈夫だ」
「お父さん、ありがとう」



「あのー……私はこれで許されるのでしょうか?」

 ラズー子爵が再開の喜びに対して水を差すようにそう言う。
 それを聞いたソルとディラスは彼に近寄り、まずはディラスが領主様の顔面に渾身の力を込めた拳の一撃を食らわせた。歯が2本抜けた。
 次いでソルが相手の髪を左手でつかみ、顔面に追撃となる右のパンチを食らわせる。相手の歯が追加で1本抜けた。

「『俺達は』これでチャラって事にしてやるよ。あくまで『俺達は』の話だがな」

 ソルは歯が抜けるほどのパンチを顔面に2発食らってうずくまる相手に2度「俺達は」と言う。その意味はディラスの話ですぐに分かった。



「ラズー子爵殿、この事件は国王陛下にしっかりと報告しておくよ。
 詳細な裁きは国王陛下次第だが、少なく見てもお家取り潰しは確実だと思うな。それでも自分のやった事だから責任をしっかりと取って欲しいな」
「ま、待って下さいディラス殿! 国王陛下にこのことが知られたらどんな目に遭うか! それだけは勘弁していただきませんか!?」

 ラズーはディラスにすがりつくが、彼はその手をパン、と音を立てて払う。

「ではなぜ我々を襲ったんだ? 謁見した時に素直にレナを返せば報告しなくても良かったんだが、あれだけの事をされたら報告せざるを得ないな。
 自分のやったことに対してきちんとケジメをつけるのが大人ってものだ。責任を取ってもらおうか?」
「う……うう……」

 ラズーは反論する事が出来なかった。



 ソル一行はドラにディラスとレナを、ゴンにソルを乗せて王都を目指して飛んでいた。

「ドラちゃん、私とお父さんを乗せてるから重くない?」
「ガァルガガ!」
「大丈夫なのね? 無理しなくてもいいんだよ。途中で休みながら飛べばいいし」
「ガウ!」
「レ、レナ。お前言葉が分かるのか?」
「なんとなくだけどね」

 話が通じそうもないドラゴン相手でもなんとなく分かるらしい……すっかりダンジョンマスター側の人間だ。



「すっかりとダンジョンマスターに染まってるな」
「悪かったよ。俺だってレナを引き込みたくなかったんだけど結局受け入れざるを得なかったんだ。
 レナみたいな見合いの相手には困らない美少女を、個人的な血生臭い復讐旅に付き合わせたくなかったんだよ」
「……私、それでも平気ですけど」
「そんな事言うなよ。お父さんがショック受けるだろ」

 あまり気乗りしない会話をしながら、一行は帰路に着いた。



 レナが誘拐され、直後奪還された日から3日後。ラズー子爵は国王に呼ばれ王城の謁見の間へと通された。
 城の主は一国の王らしい威厳のある表情、姿に立ち振る舞いをしていたが、その顔は実に険しい……もちろん「例の事件」を知っての事だ。

「ラズー、回りくどい前置きは無しだ。お前、よりによってディラス殿を襲ったそうだな?
 しかも事の発端はお前が彼の娘をさらったから、だと聞いている。そんな事が許されると思っているのか? そもそも我が王国直轄地の領民をさらうのが許されると思っているのか?」
「も、申し訳ありません! まさかあの勇者ディラス様が王都に住んでいるとは『露知らず』で!
 本当に本人だとは分からずじまいでして、つい流行りの偽勇者なのではと思ってしまったんですよ!」



「強きにびて弱気をくじく」

 領主らしくない、むしろ下っ端チンピラの子悪党と言った方がふさわしい態度で、やらかした蛮行に対してはひたすらヘコヘコと頭を下げるばかりだ。
 もちろん事態は謝った程度では済まない所まで行ってるのだが。

「なるほど。本物の勇者だとは知らなかった、と言うか。分かった、お前の言う事は信じよう」
「!! それじゃあ!」

 もしかしたら許されるかもしれない。ラズーの顔から雲が取れ、晴れやかな日差しが差し込もうとしていた。が……



「つまりお前は、それほどまでに人を見る目が無いと自白したことになるな。我が王国の領主がそれでは困る。お前の領地は没収して、他の者に与えることにしよう」
「!!」

 現実は非情である。国王から領地没収を言い渡された。

「今回の事件はさすがの私でもお前をかばうことはできない。本日をもってお前の家は断絶だ。さらに国中にお前への手配書を出し、国外追放処分を行う」
「!! ま、ままま待って下さい! もう一度チャンスを! どうかお慈悲を!」
「くどい。お前のやったことは領主の模範の限度を大きく超えている物だ。お前の顔など2度と見たくない。よその国に行ってくれ」
「そんな事言わないで下さい! 改心して……」
「もういい! このバカをつまみ出せ!!」

 国王は口先だけのラズーに対し、城外へつまみ出すよう衛兵に命じた。



 王城を追い出され、絶望のどん底にいたラズーに衛兵が告げた。

「ラズー、国王陛下からお前への最後の伝言だ。3日だけ待ってやる。その間に国外退去の準備をしてくれ。との事だ」
「本当に国外追放するんですか……? お慈悲は無いのですか……?」
「無いだろうな、この件で国王陛下は心底ご立腹のようだ。お前を領土持ちにしたのは間違いだった、とハッキリおっしゃっていたよ。
 よその国じゃ王家直轄地の民にちょっかいを出した時点で問答無用で処刑されてもおかしくない大罪なんだぞ?
 お家取り潰しの上で国外追放、っていう『命だけは取らない』国王陛下のご恩情に感謝しろよ」
「……」

 ラズーは一歩一歩、とぼとぼとした頼りない歩みで王城を後にした。
 これからどうしよう……。
 目の前には、空っぽな風景が映っていた。
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