大地のためのダンジョン運営

あがつま ゆい

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ダンジョンマスターと魔王

第45話 かたき討ち、成る

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 魔王デイブレイクの首が宙を舞う……その表情は「死」の恐怖。
 魔王となることで克服したはずだった「死」の恐怖。それが自らに降りかかってくる事への表情だった。


ボトッ


 鈍い音と共に首がダンジョンの床に落下する。それから1テンポ遅れて、


ドサリ


 という身体がダンジョンの床に崩れ落ちる音が聞こえた。



「!! やったか!?」

 生き残った兵士達は歓喜の声を上げる。魔王デイブレイクを討った! 彼らにとっての最大級の吉報だった。

「あわてるなよ。奴はまだ生きている。まだ髪の毛で首を縛る位の事は出来る。日光に浴びせるまで油断するなよ」

 ディラスは慣れた手つきで兵士から借りた槍の穂先に魔王デイブレイクの首をブスリと刺し、持ち運ぶ。

「こうすれば何か悪あがきされても俺達に攻撃は届かない。安全に地上まで運べるって事さ。行こうか、くれぐれも日光に浴びせるまでは慎重にやれよ。
 特に胴体と首は距離を置く事だ。くっついたらまた厄介なことになるからな」

 ディラスは魔王を3体も倒したのか慣れた手つきで最後の詰めまで抜かりはなかった。



「う、うう……!? 何をするつもりだお前たち!?」

 首だけになって槍の穂先に刺されて運ばれている魔王デイブレイクがしゃべり出した。

「うおっ! 本当に首だけになっても生きてるんだな。これからお前を日光に浴びせるところだ。
 こんな狭くて暗いダンジョンに居たんじゃ気が滅入るだろ? 気分転換に日光浴でもしないとなぁ?」

 兵士たちが恐怖でうろたえる魔王に対してゲラゲラと笑いながら、より正確に言えば「わらい」ながら軽い口調で声をかけてきた。



「待て! 待てってば! 欲しい物はあるか!? 錬成部屋で取り出してやるぞ! 何だって良い! 何かあるはずだろ!?」
「あいにく罪人の命乞いに構っていられるほど我々は暇ではないんでね。その機会はまた後でしてくれないか?」

 魔王による命乞いが始まったが、ディラスはもちろん耳に挟むこともしない。

「や、やめろ、やめろ! そうだソル! お前爺ちゃんが殺されるのを黙って見ているだけなのか!?」
「爺ちゃん、いや魔王デイブレイク。お前魔王になった時に言ったよな? もう家族は要らないって。その言葉そのまま返すぜ、俺にとってお前は祖父じゃない。ただの魔王デイブレイクだ。
 そもそも、俺の両親を殺しといて「俺はお前のおじいちゃんなんだぞ」と言われても許す気なんて、とてもじゃないけど……」

 ソルは首を横に振る。



 一行は魔王デイブレイクの命乞いを特に気にせずダンジョンの入口へと向かう。そこからは日光がさんさんと降り注いでいた。

「ひ、ひいいいい!! 嫌だ! 嫌だ!! オレはまだ死にたくない!! 死にたくないんだ!! 助けてくれ! 何でもする!
 何が望みだ!? カネか!? 土地か!? それとも……」
「何でもするんだな?」

 一瞬、ソルが話に乗ったのかと思い、辺りが静まるが……。

「じゃあお前が日光を浴びて消滅する瞬間を見てみたいんだが、いいか?」

 その一言に周りは、何だそう言う事か、とどっと笑みを浮かべる。



「嫌だああああ! 助けて! 助けてくれ! 死にたくない! 死にたくない! オレはまだ死にたくないいいい!!!!」

 涙と鼻水で顔面をグショグショにして、喉が潰れそうな勢いで必死で命乞いをするが、その声を聞いてくれる者は誰一人いない。そして……。

「死にたくないいいい!!!! 嫌だあああああ!!!!! 死にたくな……」

 魔王デイブレイクの頭部が死にたくない。と言いかけた所で日光を浴び、灰になって消えた。

「よし、頭部は消えた。次は両腕だがくれぐれも慎重に。まだ生きてるから厳重に警戒してくれ」

 今度は両腕。慎重に運んで無事に日光に浴びせる事が出来た。
 最後は胴体。暴れ出さないよう縄で縛っておいたのが幸いでこちらも無事に日光を浴び、灰になって消滅した。



「終わりだ。魔王デイブレイクは完全に消滅した。君たちのおかげだ、ありがとう!!」

 生き残った兵士たちから歓声が上がる。そのグループから外れたソルは髪に付けていた青色のリボンをとり、右手に握った。

「……母さん、仇は取りました。血を分けた者同士による『骨肉の争い』を天国でどう見ているかは分かりませんが、俺にはこうするしかありませんでした。
 爺ちゃんを殺したところで母さんや父さんが戻って来るわけではありませんが、それでも俺はこうせざるを得ませんでした。これからは安らかにお眠りください」

 ソルはそう母親に報告すると再び髪に結んだ。



「先生。お母さんへのご報告ですか?」
「!! あ、ああ。聞いてたのか?」
「先生、この後どうします? このままこの国に滞在するつもりですか?」
「もう少しだけな。他の魔王を倒したり、そいつらにダメにされた大地をよみがえらせる必要があるからな。少なくてもここに骨を埋めるつもりはない」
「でしたら私もいきます。これからも先生のおそばに居させてください……どこまでもついていきます」
「……」

 彼女の言い分にソルは真剣に言葉を選ぶ。彼も男だし、勘が鈍いわけではない。



「な、なぁレナ。それって『プロポーズ』って事で良いのか?」
「!!」

 見る見るうちに彼女の顔が赤くなる。そして控えめにコクコク、と2回うなづいた。

「……分かった。これからもよろしくな。レナ」
「は、はい。私こそ、よろしくおねがいします。先生」
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