大地のためのダンジョン運営

あがつま ゆい

文字の大きさ
49 / 70
大地のための旅

第49話 出発

しおりを挟む
 ソルがディラスへの挨拶を済ませてから数日。

「レナ、しつこいようだが本当にここでやり残した事は無いか? もう帰って来れなくてもいいか?」
「何回も聞くんですね。大丈夫です。やりたいことは全部やりました」
「よし分かった。じゃあ行くか」

 いよいよ旅立ちの時を迎える。
 外では既に手配した馬車に荷物を全部積みこんでいた。
 さらに事前に召喚部屋でケンタウロスを2体呼び出し、馬車を引く馬代わりとして使う事にしていた。呼び出された側からどんな仕事をするかと問われたので答えたら随分嫌がっていたが。



「先生、ダンジョンは放置でいいんですか?」
「廃棄手続きをしたからそのうち土が戻ってまた埋まる。たまに廃棄手続きを忘れて放置されたのが遺跡って奴だな」

 なるほど。じゃあ冒険者がいじくりまわして大地を傷つける事は無さそうだ。

「よし、じゃあ行くぞ。出発だ」
「ハァーア。分かりましたよ。にしても俺達を馬車馬扱いするとはねぇ。今回の召喚主はハズレだなこりゃ。ダンジョンマスターを選べないのは辛い所だなぁ」

 文句を垂れながらもケンタウロス2体は馬車を引き、出発した。



 ケンタウロスは本物の馬ほどは馬力は無いが、馬車の周りをドラとゴン、それにウルフェンが守りながら歩くには十分な速度は出ていた。
 この国は発展しているのか街道も整備されており、馬車2台がすれ違える程幅も広くてまっすぐだった。

「先生。旅っていうと山賊が襲い掛かって来ないか心配なんですけど。私たち装飾品いっぱい身に付けてますし……」
「いくら山賊と言えど、わざわざドラゴンが2体も護衛している旅人を襲おうなんて奴はいないだろ。多分誰からも襲われずに済むだろうな」

 ソルはドラとゴンを指さして安心しきった表情で伝えた。確かにドラゴンを2体も相手にしようだなんてまともな山賊ならまずやらない愚行だ。
 しかもケンタウロスが2体に人狼までいる。だったらなおさら、と言える。



 町を発ってしばらく。特に何事もなく旅をしていたが大荷物を背負って木陰で休んでいた男が立ち上がり、手を振って止めさせた。

「何だい? アンタ?」
「アンタ等強そうだね。ちょっと隣の村まで行商に行くんだ。行く方向が同じなら一緒についていっていいかい? 1人じゃ不安で……カネは出すから」
「分かった。あいにく馬車は荷物がいっぱいなんだが、それでもいいか?」
「ああ構わない。一緒に歩くだけでも十分だ」



 行商人や吟遊詩人といった旅をする職業に就いている人というのは、なるべく集団で旅をするように心がけている。
 1人でいるより複数人の方が襲われにくいし、特に野宿するなら見張りが出来るのがでかい。冒険者ギルドはそういう人のために同行者を紹介する事もやっているそうだ。

「いやぁ~助かったよ。この辺は山賊の情報は聞いてないけどやっぱり不安でね。今回は安心して旅が出来そうだよ。
 にしてもアンタ等はそれだけの護衛を連れてるって事は勇者かい? やっぱり勇者って儲かる仕事なんだな」
「まぁそんなとこだな。殺し殺されの仕事なだけあって収入がデカくないとやってられねえ仕事だよ」

 ソルは半分デタラメの事を言ってごまかす。ダンジョンマスターであることがバレたら多かれ少なかれ厄介な事になるからだ。



「あ、そうそう。隣国なんかで魔王が出たとかいう噂、聞いたことはあるか?」
「いや、知らないねぇ。よその国の噂は滅多に聞かないからねぇ」

 どうやらこの辺では魔王の情報は無いらしい。しばらくは特に目的地を決めない放浪の旅が続くと思われる。
 まぁそれも悪くない。ソルはそう思いながら馬車に揺られていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

盾の間違った使い方

KeyBow
ファンタジー
その日は快晴で、DIY日和だった。 まさかあんな形で日常が終わるだなんて、誰に想像できただろうか。 マンションの屋上から落ちてきた女子高生と、運が悪く――いや、悪すぎることに激突して、俺は死んだはずだった。 しかし、当たった次の瞬間。 気がつけば、今にも動き出しそうなドラゴンの骨の前にいた。 周囲は白骨死体だらけ。 慌てて武器になりそうなものを探すが、剣はすべて折れ曲がり、鎧は胸に大穴が空いたりひしゃげたりしている。 仏様から脱がすのは、物理的にも気持ち的にも無理だった。 ここは―― 多分、ボス部屋。 しかもこの部屋には入り口しかなく、本来ドラゴンを倒すために進んできた道を、逆進行するしかなかった。 与えられた能力は、現代日本の商品を異世界に取り寄せる 【異世界ショッピング】。 一見チートだが、完成された日用品も、人が口にできる食べ物も飲料水もない。買えるのは素材と道具、作業関連品、農作業関連の品や種、苗等だ。 魔物を倒して魔石をポイントに換えなければ、 水一滴すら買えない。 ダンジョン最奥スタートの、ハード・・・どころか鬼モードだった。 そんな中、盾だけが違った。 傷はあっても、バンドの残った盾はいくつも使えた。 両手に円盾、背中に大盾、そして両肩に装着したL字型とスパイク付きのそれは、俺をリアルザクに仕立てた。 盾で殴り 盾で守り 腹が減れば・・・盾で焼く。 フライパン代わりにし、竈の一部にし、用途は盛大に間違っているが、生きるためには、それが正解だった。 ボス部屋手前のセーフエリアを拠点に、俺はひとりダンジョンを生き延びていく。 ――そんなある日。 聞こえるはずのない女性の悲鳴が、ボス部屋から響いた。 盾のまちがった使い方から始まる異世界サバイバル、ここに開幕。 ​【AIの使用について】 本作は執筆補助ツールとして生成AIを使用しています。 主な用途は「誤字脱字のチェック」「表現の推敲」「壁打ち(アイデア出しの補助)」です。 ストーリー構成および本文の執筆は作者自身が行っております。

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

処理中です...