大地のためのダンジョン運営

あがつま ゆい

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大地のための旅

第55話 レイラ、イリーナ姉妹 ふたたび

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「先生。まだ復興は終わったわけではないのに本当に良かったんですか?」
「ウルスとか言ったか? あの兵士があそこまで信じ込んでいると説得なんて不可能だ。最悪の場合孤児院の院長に何かをしようとするだろう。それを避ける狙いもあった」
「ええ!? あの人にとっては個人の院長はとても大切な人のように見えましたけど……」
「信念を曲げない奴にとってはそれに従わない奴は誰であろうと何であろうと倒すべき敵になるんだよ。それで狂った奴は何人も見てきた」



 ソル一行がヤイタ地方を発ってからしばらく。隣の地域に移動していた時の事だった。
 先生が言うには「自分の信念の前ではありとあらゆるものが敵になる。それで人は簡単に狂う」そうだ。

 旅をしてしばし。日に代わり星が空で輝くようになった時刻に宿場町へとたどり着いた。今後の旅の目的を決める情報収集のため町の酒場によると、そこには見覚えのある顔があった。



「!! ソル!」
「!! レナさん!」
「お前、レイラか!?」
「あなた、イリーナじゃない!」

 レイラとイリーナの姉妹だ。自前の服の上にエプロンを付けて、酒を運んでいた。

「お前達、この店でウェイトレスでもやってるのか?」
「あ、ああ。この辺は平和でモンスターもいないからこういう仕事で旅費を稼いでるんだ」
「へぇ。大変だな」



 ダンジョンマスターはダンジョンから採掘出来るマナ結晶やエーテルといった資源を、高額で売ってお金に出来るので資金に関しては困らない。
 そういう意味では常に旅費をねん出しなくてはいけない普通の冒険者に比べれば恵まれている方なのだろう。
 そうしている間にイリーナは注文した客に酒を配りに行く。

「お待たせいたしました。蜂蜜酒になります」
「お、来た来た。嬢ちゃん、アンタ中々の美少女なんじゃねえの? 酌してくれ」
「ひっ! す、すいません。店ではそういうサービスはしていませんので……」
「何だとぉ? お客様は神様だろうが。お客様がいなけりゃお前らおまんま食えねえんだぞ? 嬢ちゃん、可愛いからってお高くとまってるんじゃ……」
「そこまでだ!」

 レイラの鉄拳が酔っぱらいの顔面に直撃した。
 ドタン。という音を立ててイリーナに絡んだ酔っぱらいは撃沈した。



「姉さん、いいの? お客さんを気絶させちゃって……」
「構わないさ。店主からも酔って絡んで来る相手は叩きのめして構わないって言われてるし。まぁ店から手を出すなって言われててもイリーナが困ってたら出すけどさ」
「ありがとう、姉さん」
「大丈夫、お礼を言われるようなことはやってないからね。さぁ、仕事仕事」

 レイラは慣れた手つきで失神した酔っぱらいを引きずって外に出していた。



「ふう、お待たせ。注文は決まったか?」
「ああ、俺はウイスキーのダブル。彼女にはミルクを出してくれ」
「レイラさん、噂話ではやると聞いてましたけど、酔っぱらいをああやって止めるだなんて本当にやるんですね。私、初めて見ましたよ」
「ああ、あれか。気にするな、こういう所じゃ見慣れた光景だよ。っていうかレナ、アンタはそれよりも過激な斬りあいやってるんだからどうってこと無いでしょ?
 少し待っててくれ、すぐに出すから」



 しばらくして……

「お待たせしました。ウイスキーのダブルと、ミルクです」
「ありがとう。レイラ、この辺で何か変わった事は無いか?」
「変わった事、ねぇ。そういえば隣のルッソっていう国は食糧がやたらと安くて、この国にも随分と入ってきているそうだ。
 私たちもそこで随分と買って、しばらくは食うに困らない量を調達できたんで、まかないが無い分給金が良いんだ」
「なるほどねぇ……」

 ソル達には聞き覚えの無い国だが、おそらくレイラ達は別のルートでの旅だったのだろう。



 ソルはウイスキーを飲みながら深々とうなづいていた……何かあるらしい。

「先生、何かあります?」
「あると言えばある。確率は低いがな……思い過ごしで終わってくれればいいんだが。レナ、さっきの話に出てきたルッソっていう国に行こう」
「分かりました。何か魔王に関わる事でもあるんですか?」
「魔王ではないが、ダンジョンマスターが関わっている可能性がある。行ってみよう」

 今度の旅先が決まった。
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