55 / 70
大地のための旅
第55話 レイラ、イリーナ姉妹 ふたたび
しおりを挟む
「先生。まだ復興は終わったわけではないのに本当に良かったんですか?」
「ウルスとか言ったか? あの兵士があそこまで信じ込んでいると説得なんて不可能だ。最悪の場合孤児院の院長に何かをしようとするだろう。それを避ける狙いもあった」
「ええ!? あの人にとっては個人の院長はとても大切な人のように見えましたけど……」
「信念を曲げない奴にとってはそれに従わない奴は誰であろうと何であろうと倒すべき敵になるんだよ。それで狂った奴は何人も見てきた」
ソル一行がヤイタ地方を発ってからしばらく。隣の地域に移動していた時の事だった。
先生が言うには「自分の信念の前ではありとあらゆるものが敵になる。それで人は簡単に狂う」そうだ。
旅をしてしばし。日に代わり星が空で輝くようになった時刻に宿場町へとたどり着いた。今後の旅の目的を決める情報収集のため町の酒場によると、そこには見覚えのある顔があった。
「!! ソル!」
「!! レナさん!」
「お前、レイラか!?」
「あなた、イリーナじゃない!」
レイラとイリーナの姉妹だ。自前の服の上にエプロンを付けて、酒を運んでいた。
「お前達、この店でウェイトレスでもやってるのか?」
「あ、ああ。この辺は平和でモンスターもいないからこういう仕事で旅費を稼いでるんだ」
「へぇ。大変だな」
ダンジョンマスターはダンジョンから採掘出来るマナ結晶やエーテルといった資源を、高額で売ってお金に出来るので資金に関しては困らない。
そういう意味では常に旅費をねん出しなくてはいけない普通の冒険者に比べれば恵まれている方なのだろう。
そうしている間にイリーナは注文した客に酒を配りに行く。
「お待たせいたしました。蜂蜜酒になります」
「お、来た来た。嬢ちゃん、アンタ中々の美少女なんじゃねえの? 酌してくれ」
「ひっ! す、すいません。店ではそういうサービスはしていませんので……」
「何だとぉ? お客様は神様だろうが。お客様がいなけりゃお前らおまんま食えねえんだぞ? 嬢ちゃん、可愛いからってお高くとまってるんじゃ……」
「そこまでだ!」
レイラの鉄拳が酔っぱらいの顔面に直撃した。
ドタン。という音を立ててイリーナに絡んだ酔っぱらいは撃沈した。
「姉さん、いいの? お客さんを気絶させちゃって……」
「構わないさ。店主からも酔って絡んで来る相手は叩きのめして構わないって言われてるし。まぁ店から手を出すなって言われててもイリーナが困ってたら出すけどさ」
「ありがとう、姉さん」
「大丈夫、お礼を言われるようなことはやってないからね。さぁ、仕事仕事」
レイラは慣れた手つきで失神した酔っぱらいを引きずって外に出していた。
「ふう、お待たせ。注文は決まったか?」
「ああ、俺はウイスキーのダブル。彼女にはミルクを出してくれ」
「レイラさん、噂話ではやると聞いてましたけど、酔っぱらいをああやって止めるだなんて本当にやるんですね。私、初めて見ましたよ」
「ああ、あれか。気にするな、こういう所じゃ見慣れた光景だよ。っていうかレナ、アンタはそれよりも過激な斬りあいやってるんだからどうってこと無いでしょ?
少し待っててくれ、すぐに出すから」
しばらくして……
「お待たせしました。ウイスキーのダブルと、ミルクです」
「ありがとう。レイラ、この辺で何か変わった事は無いか?」
「変わった事、ねぇ。そういえば隣のルッソっていう国は食糧がやたらと安くて、この国にも随分と入ってきているそうだ。
私たちもそこで随分と買って、しばらくは食うに困らない量を調達できたんで、まかないが無い分給金が良いんだ」
「なるほどねぇ……」
ソル達には聞き覚えの無い国だが、おそらくレイラ達は別のルートでの旅だったのだろう。
ソルはウイスキーを飲みながら深々とうなづいていた……何かあるらしい。
「先生、何かあります?」
「あると言えばある。確率は低いがな……思い過ごしで終わってくれればいいんだが。レナ、さっきの話に出てきたルッソっていう国に行こう」
「分かりました。何か魔王に関わる事でもあるんですか?」
「魔王ではないが、ダンジョンマスターが関わっている可能性がある。行ってみよう」
今度の旅先が決まった。
「ウルスとか言ったか? あの兵士があそこまで信じ込んでいると説得なんて不可能だ。最悪の場合孤児院の院長に何かをしようとするだろう。それを避ける狙いもあった」
「ええ!? あの人にとっては個人の院長はとても大切な人のように見えましたけど……」
「信念を曲げない奴にとってはそれに従わない奴は誰であろうと何であろうと倒すべき敵になるんだよ。それで狂った奴は何人も見てきた」
ソル一行がヤイタ地方を発ってからしばらく。隣の地域に移動していた時の事だった。
先生が言うには「自分の信念の前ではありとあらゆるものが敵になる。それで人は簡単に狂う」そうだ。
旅をしてしばし。日に代わり星が空で輝くようになった時刻に宿場町へとたどり着いた。今後の旅の目的を決める情報収集のため町の酒場によると、そこには見覚えのある顔があった。
「!! ソル!」
「!! レナさん!」
「お前、レイラか!?」
「あなた、イリーナじゃない!」
レイラとイリーナの姉妹だ。自前の服の上にエプロンを付けて、酒を運んでいた。
「お前達、この店でウェイトレスでもやってるのか?」
「あ、ああ。この辺は平和でモンスターもいないからこういう仕事で旅費を稼いでるんだ」
「へぇ。大変だな」
ダンジョンマスターはダンジョンから採掘出来るマナ結晶やエーテルといった資源を、高額で売ってお金に出来るので資金に関しては困らない。
そういう意味では常に旅費をねん出しなくてはいけない普通の冒険者に比べれば恵まれている方なのだろう。
そうしている間にイリーナは注文した客に酒を配りに行く。
「お待たせいたしました。蜂蜜酒になります」
「お、来た来た。嬢ちゃん、アンタ中々の美少女なんじゃねえの? 酌してくれ」
「ひっ! す、すいません。店ではそういうサービスはしていませんので……」
「何だとぉ? お客様は神様だろうが。お客様がいなけりゃお前らおまんま食えねえんだぞ? 嬢ちゃん、可愛いからってお高くとまってるんじゃ……」
「そこまでだ!」
レイラの鉄拳が酔っぱらいの顔面に直撃した。
ドタン。という音を立ててイリーナに絡んだ酔っぱらいは撃沈した。
「姉さん、いいの? お客さんを気絶させちゃって……」
「構わないさ。店主からも酔って絡んで来る相手は叩きのめして構わないって言われてるし。まぁ店から手を出すなって言われててもイリーナが困ってたら出すけどさ」
「ありがとう、姉さん」
「大丈夫、お礼を言われるようなことはやってないからね。さぁ、仕事仕事」
レイラは慣れた手つきで失神した酔っぱらいを引きずって外に出していた。
「ふう、お待たせ。注文は決まったか?」
「ああ、俺はウイスキーのダブル。彼女にはミルクを出してくれ」
「レイラさん、噂話ではやると聞いてましたけど、酔っぱらいをああやって止めるだなんて本当にやるんですね。私、初めて見ましたよ」
「ああ、あれか。気にするな、こういう所じゃ見慣れた光景だよ。っていうかレナ、アンタはそれよりも過激な斬りあいやってるんだからどうってこと無いでしょ?
少し待っててくれ、すぐに出すから」
しばらくして……
「お待たせしました。ウイスキーのダブルと、ミルクです」
「ありがとう。レイラ、この辺で何か変わった事は無いか?」
「変わった事、ねぇ。そういえば隣のルッソっていう国は食糧がやたらと安くて、この国にも随分と入ってきているそうだ。
私たちもそこで随分と買って、しばらくは食うに困らない量を調達できたんで、まかないが無い分給金が良いんだ」
「なるほどねぇ……」
ソル達には聞き覚えの無い国だが、おそらくレイラ達は別のルートでの旅だったのだろう。
ソルはウイスキーを飲みながら深々とうなづいていた……何かあるらしい。
「先生、何かあります?」
「あると言えばある。確率は低いがな……思い過ごしで終わってくれればいいんだが。レナ、さっきの話に出てきたルッソっていう国に行こう」
「分かりました。何か魔王に関わる事でもあるんですか?」
「魔王ではないが、ダンジョンマスターが関わっている可能性がある。行ってみよう」
今度の旅先が決まった。
0
あなたにおすすめの小説
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
天城の夢幻ダンジョン攻略と無限の神空間で超絶レベリング ~ガチャスキルに目覚めた俺は無職だけどダンジョンを攻略してトップの探索士を目指す~
仮実谷 望
ファンタジー
無職になってしまった摩廻天重郎はある日ガチャを引くスキルを得る。ガチャで得た鍛錬の神鍵で無限の神空間にたどり着く。そこで色々な異世界の住人との出会いもある。神空間で色んなユニットを配置できるようになり自分自身だけレベリングが可能になりどんどんレベルが上がっていく。可愛いヒロイン多数登場予定です。ガチャから出てくるユニットも可愛くて強いキャラが出てくる中、300年の時を生きる謎の少女が暗躍していた。ダンジョンが一般に知られるようになり動き出す政府の動向を観察しつつ我先へとダンジョンに入りたいと願う一般人たちを跳ね除けて天重郎はトップの探索士を目指して生きていく。次々と美少女の探索士が天重郎のところに集まってくる。天重郎は最強の探索士を目指していく。他の雑草のような奴らを跳ね除けて天重郎は最強への道を歩み続ける。
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記
ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。
そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。
【魔物】を倒すと魔石を落とす。
魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。
世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
盾の間違った使い方
KeyBow
ファンタジー
その日は快晴で、DIY日和だった。
まさかあんな形で日常が終わるだなんて、誰に想像できただろうか。
マンションの屋上から落ちてきた女子高生と、運が悪く――いや、悪すぎることに激突して、俺は死んだはずだった。
しかし、当たった次の瞬間。
気がつけば、今にも動き出しそうなドラゴンの骨の前にいた。
周囲は白骨死体だらけ。
慌てて武器になりそうなものを探すが、剣はすべて折れ曲がり、鎧は胸に大穴が空いたりひしゃげたりしている。
仏様から脱がすのは、物理的にも気持ち的にも無理だった。
ここは――
多分、ボス部屋。
しかもこの部屋には入り口しかなく、本来ドラゴンを倒すために進んできた道を、逆進行するしかなかった。
与えられた能力は、現代日本の商品を異世界に取り寄せる
【異世界ショッピング】。
一見チートだが、完成された日用品も、人が口にできる食べ物も飲料水もない。買えるのは素材と道具、作業関連品、農作業関連の品や種、苗等だ。
魔物を倒して魔石をポイントに換えなければ、
水一滴すら買えない。
ダンジョン最奥スタートの、ハード・・・どころか鬼モードだった。
そんな中、盾だけが違った。
傷はあっても、バンドの残った盾はいくつも使えた。
両手に円盾、背中に大盾、そして両肩に装着したL字型とスパイク付きのそれは、俺をリアルザクに仕立てた。
盾で殴り
盾で守り
腹が減れば・・・盾で焼く。
フライパン代わりにし、竈の一部にし、用途は盛大に間違っているが、生きるためには、それが正解だった。
ボス部屋手前のセーフエリアを拠点に、俺はひとりダンジョンを生き延びていく。
――そんなある日。
聞こえるはずのない女性の悲鳴が、ボス部屋から響いた。
盾のまちがった使い方から始まる異世界サバイバル、ここに開幕。
【AIの使用について】
本作は執筆補助ツールとして生成AIを使用しています。
主な用途は「誤字脱字のチェック」「表現の推敲」「壁打ち(アイデア出しの補助)」です。
ストーリー構成および本文の執筆は作者自身が行っております。
【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜
KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。
~あらすじ~
世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。
そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。
しかし、その恩恵は平等ではなかった。
富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。
そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。
彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。
あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。
妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。
希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。
英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。
これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。
彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。
テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。
SF味が増してくるのは結構先の予定です。
スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。
良かったら読んでください!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる