大地のためのダンジョン運営

あがつま ゆい

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大地のための旅

第59話 脱出劇

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「確かソルさん、って言いましたっけ? よくここまで兵士にバレずに来れましたね?」
「詳しいことを説明している時間はありませんが、特殊な術を使ってここまで来たんです。行きましょう!」

 目指すは城の中庭。確かダンジョンマスターが作ったダンジョンがあって、そこには脱出のための細工が施されているという話だ。
 一行は歩みを進めるが……。



「!! おい! そこにいるのは誰だ!?」

 場内を見回りしていた兵士に見つかってしまう。

「!! お前達、リンファにシャオパイだな! 何でこんなとこ……」

 そこまで言ったところで兵士がばたりと倒れた。レナが「虚無きょむの構え」で気配を消して兵士の後ろに回り込み、気絶させたのだ。
 どうやら周囲にはバレてないらしい。一行は先を急いだ。



 ダンジョンマスターとの待ち合わせの場所。王城の中庭にダンジョンの入り口があった。
 国を富ませるために作ったそれの中に、ソル達はダンジョンマスターの妻子であるリンファとシャオパイと共に入っていった。

「あなた!」
「お父さん!」
「リンファ! シャオパイ! 無事だったか。助かった。本当に妻と娘を助け出してくれたんだな。何とお礼を言えばいいか……」
「良いって事、さっさと逃げようぜ。いつ追っ手が来るか分かったもんじゃないしな」

 ソルは急がせる。そろそろ気絶させた兵士が見つかる頃だから、先を急がねば。

 ダンジョンの一角、ちょうどT字路になってる場所に来るとダンジョンの主はマナ結晶を壁と手に挟んで持ち、通路を作った。
 それはあらかじめ反対側から掘っていた脱出用の通路と連結し、1本の長い通路となった。

「さぁ、行こう!」

 ダンジョンマスター親子はソル達と共に脱出通路を駆けた。



 それと同時刻……

「ふぁあああ……いやぁ寝ちまった寝ちまった……!? な、なんだ!?」

 兵士の目には開いているはずのない牢獄がなぜか開いていて、しかも中身がもぬけの殻と化した光景が飛び込んできた。

「た、大変だ!」

 彼は非常事態を伝えるべく大慌てで駆けだし、城内を大声を上げながら駆け回る。
 夜も深まり酒場で引っかけた旦那たちも自宅に戻る時刻だったが、ハチの巣をつついたような大騒ぎとなった。
 その影響はソル達にもかぶさってくる。



「!! ダンジョンに侵入者だ! しかも10人以上! 全員兵士だ!」

 どうやら脱獄したのがバレたらしい。

「どうする? やるか?」
「いや、アイディアがある」

 ダンジョンマスターは壁に手を当て、ダンジョンを操作していた。そして……。



ガラガラガラドドドドド……



 ソル達がいる通路への入り口が崩落し、ガレキに埋まった。

「これで時間を稼げる。行こう!」

 これのおかげで追撃を振り切れた。ダンジョンを抜けるとソル達の馬車が待機しており、一行は親子を乗せて急発進させる。

「やったか!?」
「いや、国境を突破するまでは安心できない。急ごう」

 時刻は深夜。さすがに寝ないわけにはいかないので途中仮眠をとりながら、一行は国境へと急いだ。



 ダンジョンマスターが妻子と共に行方をくらませて2日。
 ソル一行は国境の検問所が見えてくる場所までたどり着いた。そこでダンジョンマスターの親子たちに馬車を降りるよう伝える。

「あんたたちはドラゴンに乗って空を飛んで国境を越えてくれ。俺たちが地上で手続きを進めている間は誰も空なんて見やしねえ。突破できるはずだ」
「先生、私たちと一緒じゃ何かまずいことでもあるんですか?」
「ああ。今頃検問所には脱獄したことが伝わってて厳戒態勢を敷いてるだろうよ。何せ国の収入に関わることなんだ、伝馬を総動員して周知してるはずだぜ」

 ソルはそう言ってダンジョンマスターの家族をドラとゴンに乗せ、自分たちは何食わぬ顔で検問所へと向かう。



「……」

 検問所の空気はピリピリと張りつめていて、子供ですらそれを感じ取って泣き出してしまいそうな位だ。中で検査する兵士も顔がとてもこわばっており、国王から相当厳しく通知が来たのだろう。
 荷物の中はもちろん、馬車の車体にも極めて厳しいチェックが入る。検査にかかる時間はこれまでソルが経験した中では最も長く、念入りなチェックが行われていた。

「ふーむ……いいだろう。出国を許可する」

 許可が下りたのは検査が始まって30分も経った頃だ。無事に検問を突破できて一安心だ。
 国境から離れた場所までやってきたところでドラとゴンが降りてくる。



「もう大丈夫だと思う。親子3人で仲良く暮らせよ」
「何から何までお世話してくださって、本当にありがとうございます。それにしてもなんで私みたいな見ず知らずの人間相手にここまでやってくれるんですか? 有難いのはわかりますけど」
「なぁに、同じダンジョンマスターっていう同類が困ってたら救いの手を差し伸べるのが普通ってもんじゃないのか? 同僚が困ってたら助けるもんだろ? じゃあな。元気でな」

 ソルは親子たちの無事を願いながら別れ、再び旅路を歩み始めた。
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