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大地のための旅
第62話 堕ちた勇者
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「勇者モルダ! いるんだろ!? 隠れてないで出てこい!」
ソルの声に応えるように、物陰から勇者モルダが姿を現す。その表情は不敬な笑みを浮かべており、品行方正であるべき勇者らしからぬ禍々しさがあった。
ダンジョンに侵入したソル達に対し、明らかな敵意を向けている。勇者なのに魔王の味方とでもいうべき態度だった。
「モルダ……お前はかつては勇者だったらしいが、父親の命を奪って魔王になった。そうなんだろ?」
「そこまで分かっているのなら隠す必要もないな……確かに俺は勇者と呼ばれていた。故郷に屋敷を建てたし、英雄だともてはやされた事もあった。
だが、それが何だというのだ」
モルダは勇者としての、英雄の名誉を「吐き捨てるような口調で」それが何だ、とバッサリ斬ってみせた。
「いくら鍛錬を積もうが身体の衰えだけは止められん……自分でも情けなくて直視できない程にな。
魔王を倒し、勇者と呼ばれ、英雄となろうがしょせんはただの人間に過ぎなかったわけで、老いからは逃れることは出来ない。
後10年もすればただの「昔はすごかった人」になるだろう。
それだけは嫌だ! 沈まない太陽になりたい! 永遠に輝き続けたいと思った! だから新たな魔王となったのだよ! 先輩の助力をもってしてな」
モルダの表情は飢えた肉食獣のようなどう猛さに満ちていた。初めて出会った時の勇者モルダとは完全に別人である。とさえ言えるほどの変化だ。
「モルダとか言ったか、お前は元勇者らしいがお前は間違っている。花は散る、太陽は沈む。それが自然の摂理で、逆らう事は出来ない。
それに、魔王になったって事は……魔王になるためにどういう事をしたのか、分かっているよな?」
加齢による体の衰えに絶望して「永遠の若さ」を求めて魔王になる者は多い。男も女も容姿の衰え、体力の衰えを出来るのならば何とかして取り戻したいと思うのは世の常。
王や貴族といった金持ちは最後には老いを何とかしたいと、ありもしない不老不死の秘薬作りにカネを注ぐものだ。
そこで得られたのが不老となる魔王になるための儀式……「特殊な魔法陣を張った上で血のつながった者の心臓を食べる事」だ。つまりは親なり兄弟なり子供なり実の家族の命を犠牲にする、というもの。
ソルはそれで実の母親を祖父に殺されたのだから、許せるものではなかった。
「半分ボケちまった先の短い老人の命が力をくれたんだ。息子のために死ねるのなら父親として「冥利につきる」ってものじゃないのかね?」
「……」
ソルは黙って曲刀を抜いた。その眼には、表情には激しい敵意が浮かんでいる。目じりが上がり、食いしばるように口を噛み、鋭い目線で相手を射抜く。
その視線は、魔王を打ち倒した英雄を見るものではなく、宿敵として滅せなくてはいけない魔王への物だった。
「ドラ、ゴン! 全力で行け! 手加減が通用する相手じゃない!」
「「ガァッ!」」
ソルはドラゴンのドラとゴンを前に出し、自分たちはスキを見つけて叩くスタイルをとる。
「虚無の構え」
ソルは気配を消した。
ソルの声に応えるように、物陰から勇者モルダが姿を現す。その表情は不敬な笑みを浮かべており、品行方正であるべき勇者らしからぬ禍々しさがあった。
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「モルダ……お前はかつては勇者だったらしいが、父親の命を奪って魔王になった。そうなんだろ?」
「そこまで分かっているのなら隠す必要もないな……確かに俺は勇者と呼ばれていた。故郷に屋敷を建てたし、英雄だともてはやされた事もあった。
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モルダは勇者としての、英雄の名誉を「吐き捨てるような口調で」それが何だ、とバッサリ斬ってみせた。
「いくら鍛錬を積もうが身体の衰えだけは止められん……自分でも情けなくて直視できない程にな。
魔王を倒し、勇者と呼ばれ、英雄となろうがしょせんはただの人間に過ぎなかったわけで、老いからは逃れることは出来ない。
後10年もすればただの「昔はすごかった人」になるだろう。
それだけは嫌だ! 沈まない太陽になりたい! 永遠に輝き続けたいと思った! だから新たな魔王となったのだよ! 先輩の助力をもってしてな」
モルダの表情は飢えた肉食獣のようなどう猛さに満ちていた。初めて出会った時の勇者モルダとは完全に別人である。とさえ言えるほどの変化だ。
「モルダとか言ったか、お前は元勇者らしいがお前は間違っている。花は散る、太陽は沈む。それが自然の摂理で、逆らう事は出来ない。
それに、魔王になったって事は……魔王になるためにどういう事をしたのか、分かっているよな?」
加齢による体の衰えに絶望して「永遠の若さ」を求めて魔王になる者は多い。男も女も容姿の衰え、体力の衰えを出来るのならば何とかして取り戻したいと思うのは世の常。
王や貴族といった金持ちは最後には老いを何とかしたいと、ありもしない不老不死の秘薬作りにカネを注ぐものだ。
そこで得られたのが不老となる魔王になるための儀式……「特殊な魔法陣を張った上で血のつながった者の心臓を食べる事」だ。つまりは親なり兄弟なり子供なり実の家族の命を犠牲にする、というもの。
ソルはそれで実の母親を祖父に殺されたのだから、許せるものではなかった。
「半分ボケちまった先の短い老人の命が力をくれたんだ。息子のために死ねるのなら父親として「冥利につきる」ってものじゃないのかね?」
「……」
ソルは黙って曲刀を抜いた。その眼には、表情には激しい敵意が浮かんでいる。目じりが上がり、食いしばるように口を噛み、鋭い目線で相手を射抜く。
その視線は、魔王を打ち倒した英雄を見るものではなく、宿敵として滅せなくてはいけない魔王への物だった。
「ドラ、ゴン! 全力で行け! 手加減が通用する相手じゃない!」
「「ガァッ!」」
ソルはドラゴンのドラとゴンを前に出し、自分たちはスキを見つけて叩くスタイルをとる。
「虚無の構え」
ソルは気配を消した。
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