大地のためのダンジョン運営

あがつま ゆい

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大地のための旅

第64話 魔王デイブレイクの影

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 戦いは終わった。元勇者のモルダと彼に不老の力と強さを与えた魔王の首、そして首を切断された彼らの身体が部屋の床に転がっていた。

「待て! 待ってくれ! お前の望みはなんだ!? 何だって叶えてやる! だから今回だけは……」
「俺の母親は魔王に殺されてるんだ。そんな奴らの願いを聞いてやるほど俺はお人よしじゃないんでね。ドラ、ゴン、悪いが魔王と勇者の身体を運んでくれ。2人の首は俺が持つ」

 ソルはそう言って両手両足を縛り、動けなくした2人の首なしの身体を運ぶようドラゴン2体に指示する。
 魔王が倒された後での命乞いというのはソルにとっては見飽きた光景でもあった……完全無視を決め込む。
 彼は魔王と元勇者の首を自分の曲刀と拾ったモルダの剣で突き刺し入り口まで運ぶ、その道中の事だ。



「ケッ! オレを倒してもいい気になるなよ! どうせデイブレイク様に倒されるんだろうからな!」
「!? 魔王デイブレイクだと!?」

 魔王デイブレイク。もう終わった名前が魔王の口から突然出た。今頃その名を出す、だと?

「魔王デイブレイクなら俺が倒したぞ。知らないのか?」
「フッ。デイブレイク様は不滅なのだよ。滅せられてもまた生き返り、永遠に生き続けるお方だ」
「なぜ今頃魔王デイブレイクの名を出す? お前も倒された事くらいは知ってるだろ? それに死んでも生き返るだと? 寝言でも言ってるのか?」
「だから言っただろ? オレを魔王にしてくれた恩人は不滅なのだよ。あのお方は死すら超越したお方なのだよ」

 魔王は雄弁にそう語る。少なくともその態度は言い逃れをするためのデマカセを言ってるようには感じられなかった。



「どういう意味だ?」
「詳しいことを知りたければ俺を開放しろ」
「それは出来んな。お前を生かすつもりはない」
「オレを殺すとデイブレイク様の情報は永遠に闇の中だぞ?」
「ダンジョンマスターの情報網をバカにしてもらっては困る。調べることだって出来るさ」

 ソルは魔王デイブレイクの情報は正直欲しかった。が、魔王を生かすという要求はのめなかった。
「お前からの情報が無くてもやっていける」というのは魔王にペースを握られないようにするための「虚勢ハッタリ」だった。



 ダンジョンの入り口が見えてくる。時刻は昼。真上からさんさんと降り注ぐ太陽が地上まで届いていた。
 魔王にとっては自身の身を消滅させる死の光だ、不老不死な魔王と言えどいざ光が見えてくると焦る。
 こうなると決まって冒険者相手に命乞いするわけだが、ソルはそれを聞くような人間ではない。

「待て! 待てったら! 取引しようじゃないか! オレはデイブレイク様の情報を提供しよう!
 代わりに今回だけ、1回だけ見逃してくれないか!? 簡単な事だろ!? 決して不可能な取引じゃあるまい!」
「俺にとっては不可能な取引だ。逃がしたらどんな対策を立ててくるか分かったもんじゃないからな。くたばれ」

 ソル達は魔王の首を日光に当てた。すぐに形は崩れ、チリとなって消えた。胴体も同様に日光に浴びせて滅した。
 次はモルダの番、という時にソルは彼に情けをかけた。



「オイ、モルダ。お前はかつて魔王を倒したっていう名誉があるから、特別に魔王と相討ちになって死んだって事にしてやるよ。良かったな、死してもなお勇者でいる事が出来て」
「ま、待て! オレも少しは貯えがある。それをやるから見逃してはくれないか!?」
「ダメだね、お前を生かすと強大な魔王になる。何せ元勇者の魔王だからな。それだけは出来ん」

 魔王に次いで、元勇者モルダもまたチリとなって消えた。



「グルルルル……」
「ああ。ドラか。ちょっと考え事をしててな」

 ソルはこれからの方針を決めていた。しばらくこの街に滞在して魔王デイブレイクに関する情報収集を行う。あとダンジョンの錬成部屋から得られる物資の補給もしたい。特に貴重な爆弾を使ったから補給したい。
 アイツがあそこであのタイミングで魔王デイブレイクが生きているっていう大嘘をつく理由がない。調べる価値はあるだろう。

「ドラ、ゴン。お疲れ様。あと町役場に行ってモルダが死んだことを報告しに行くぞ」

 ソルはモルダが持っていた彼の愛剣を持って町役場にある町長の執務室まで行くことにした。



「そうですか。モルダ様は最期まで勇者だったというわけですか」

 町長はソルからモルダの剣を渡され、彼の報告を聞いていた。できれば生きて帰ってきて欲しかったが、英雄らしい最期だとも思っていた。

「できれば遺体を持ち帰りたかったんですが、これしか持ち帰る事しかできませんでした。すいません」
「いえ、良いんです。勇者を含めた冒険者なんて持ち物が帰ってくるだけでも恵まれている方ですし」

 言いくるめはうまくいき、モルダは正式に魔王と相討ちして死んだという事になった。魔王に堕ちたという不名誉が伝わらないのは、せめてもの情けだった。
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