大地のためのダンジョン運営

あがつま ゆい

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大地のための旅

最終話 永遠に生きる、という夢

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「しっかしまぁ、何でわざわざゴーレムを使うんだろう? 召喚獣でもいいのに」

 ゴーレムなんて単純な命令しか聞けないし、自力で考える力もないから召喚獣の方が扱いやすく対応力も広いのになぜ? と疑問だった。
 そんなソル達をよそに冒険者はゴーレムの断片や持っていた武器を拾い集めている。

「? 何やってんだ?」
「いやぁ、ゴーレムの身体を研究素材として国相手に売ればカネになるかなぁって。これもある意味お宝だよ。
 ついでに武器も打ち直して新しい剣や防具にする材料として工房に高く売れそうだしな。ダンジョンマスターや魔王が使ってる錬成素材は高値が付くんだよなぁ」
「ふーん」

 ゴーレムや金属素材に関してはほとんど知識の無かったソルにとっては「ピンと来ない」話だったが、冒険者は楽しそうに拾ってるので見守ることにした。



「よし! 行こうか」

 トレジャーハンターの冒険者はお宝を拾い集めて満足したようで、一行は歩みを進める。
 戦闘のあった部屋からつながった、隣の部屋に足を踏み入れると……。

「!? 何だ!? 何の部屋だここは!?」

 部屋中にガラスでできた人がすっぽり入れる筒が置かれていた。筒は透明な液体で満たされており、中には……。

「先生! この人、もしかして魔王デイブレイクじゃ!?」

 1つの筒に1人ずつ、魔王デイブレイクが入っていた。赤ちゃんの状態、少年の状態、大人の状態、成長度合いはバラバラだったが「全部」魔王デイブレイクだった。



「まさか……ここは魔王デイブレイクを「生産」している「工場」なのか!?」

 そうか、そういう事だったのか!

 ここが魔王デイブレイクを生産している「工場」なら「魔王デイブレイク様は死してもなお生き返り永遠を生きるお方」と言っていた魔王の話は矛盾しないし、
蜘蛛クモの構え」を覚える前、ソルのダンジョンを襲撃する前のデイブレイクを生産している。というのなら「蜘蛛クモの構え」を知らないし使わなかったのも、さらには
「ソルのダンジョンを襲撃したのを覚えてない」のも納得がいく。

「工場」なら製品を作る職人なり、成型する金型なりを変えなければ新しい製品は作れない。製品が「魔王デイブレイク」という魔王だったとしてもそうだろう。
 それに、工場を永遠に稼働させ続けるためには召喚獣だと水や食料などの物資も必要だ。だから守り手はそれが必要無いゴーレムでなくてはならなかったというわけか。



「先生、どうします? こんな気味悪い所、このまま放置する事はしたくないですけど……」
「最深部に行こう。うまくすればダンジョンをコントロールできるかもしれん。今回はその前にお宝探しに付き合う必要があるけどな」

 できれば今すぐ何もかも全部ぶっ壊したかったが、今回は連れのトレジャーハンターがいるから彼の顔も立てなくてはいけない。しばらくは彼のお宝探しに付き合う事にした。
 他の部屋を探っていたがどこも似たような風景で、何人もの魔王デイブレイクがガラスの筒の中に入っていた。ソルやレナからしたら気味悪いったらありゃしないものだ。



 トレジャーハンターの冒険者はソルが描いた地図を片手にお宝探しを続け、全部の部屋を回り終わった。

「満足したか?」
「それなりの収穫はあったから合格点をつけてもいいと思う。俺としては出来れば天地がひっくり返るようなとんでもないお宝を期待してたんだけどなぁ」
「じゃあ今度は俺の用事に付き合ってくれないか?」

 一行はダンジョンの最深部へと向かい、そこでソルは「ハッキング」を仕掛けた。ダンジョンの所有権を書き換えるなどの大規模な事をやるには最深部の部屋からのアクセスが不可欠なのだ。

「先生、どうですか?」
「大丈夫だ、管理人が不在なようだから『書き換え』はうまくいくだろう。レナ達は魔王デイブレイクの入った筒を全部壊して、デイブレイクも全員日光に浴びせて消滅させてくれ。頼んだ」

 ソルは指示を出した。



 ガシャン
 バリバリ



 ガラスの割れる音がダンジョン内に響く……「工場」に侵入した冒険者一行が魔王デイブレイクの入った筒を壊し、中身を取り出して入り口まで運んでいた。
 時刻は昼。日光が降り注ぐ時間帯でダンジョン周辺は森の中だったが「日陰」とはいえ外に出すだけですぐに魔王の身体は崩れ去った。

「こいつら、目覚める様子がないな。ちょっと不気味だよな」
「ええ。さっさと全部消滅させましょうよ。気味が悪くて……」

 レナとウルフェンがそう言いながら魔王の身体を運んでいた。筒の中に入っていた液体はちょっと粘っこくて、それが魔王の身体にまとわりついているため感触は良くない。
 作業を始めて1時間ほど。全ての筒を破壊し、その中に入っていた全ての魔王デイブレイクを日光に浴びせて消滅させた。



「ソルさん、終わりましたぜ。この後どうしますか?」
「このダンジョンの所有権を得た。このダンジョンを『放棄』して全部地中に埋める。もう2度とこのダンジョンには来れないけどいいか?」
「え? あ、ああ。俺は別に構いませんが」

 ソルは冒険者相手に念のための確認をとる。

「よし……10分後、このダンジョンは土の中だ。全員に退避するよう伝えてくれ!」

 ソルは指示を出す。
 全員に知らせてダンジョンを退去するまでかかった時間は5分程度。余裕をもって脱出できた。
 10分後……。



ガラガラガラ ドドン



 何かが崩れる音がしてダンジョンの入り口が土で埋まった。

「終わりましたか?」
「ああ終わりだ。これで魔王デイブレイクが復活することは無いはずだ」

 もしかしたら他の場所にも工場があるかもしれない。だが今のところはこれで安心できる。下山して冒険者ギルドで戦利品を換金してもらい、2年半は働かなくても食っていける財を手に入れた。
 もちろんその報酬は山分けで、ソルにもまとまった金が入ってきた。



「仕事の成功を祝って、乾杯!」
「カンパーイ!」

 その日の夜。仕事が成功したことに対して酒場で祝杯だ。美味そうな料理と、酒場とっておきの酒を開けさせ、大いに食って飲む。

「いやーソルさん! ありがとう! おかげで無事にお宝手に入ってしばらくは仕事をしなくて済みそうだよ」
「そうかそうか。俺もお前から仕事を振ってくれてとても助かったよ。ちょうど探していた奴だったからな。こっちこそカネを払ってでもお礼を言いたいくらいだよ」

 ソルにとって今回の仕事はとても助かった。何せ彼が探していた物を「ポン」と出してくれたからだ。
 もし1人で調べていたらもっと時間がかかったかもしれない事だったのでとても感謝している。



 一方で、ウルフェンは大量に盛られた肉を食っていた。野生動物の肉もなかなか美味いが、こうやって市場に流通している肉も美味い。

「よおウルフェン、相変わらずだな」
「いや、そうでもないですよマスター。昔と比べてだいぶ食欲は落ちましたよ。年は取りたくないもんですなぁ」
「……十分食ってるじゃねえか」

 本人が言うには「食欲はだいぶ落ちた」そうだが、到底そうには見えない。



 ソルは仲間がくつろいでいるのに安心し自分の席、レナの隣に帰って来た。

「先生、大丈夫ですかね? また魔王デイブレイクの工場が作られる可能性は残ってますし……」
「その時はまた潰すさ。それでいいだろ? 俺達2人なら大丈夫だって。魔王デイブレイクと戦った時もそうだっただろ?」
「……そうですよね。私たちなら大丈夫ですよね」
「私達なら大丈夫か、確かに俺達『3人』なら大丈夫そうだな」
「『3人』……? !! せ、先生!? 分かるんですか!? 何で!?」
「俺はお前の先生だぞ? それ位は分かるさ。前に食欲がわかないとか言ってただろ? あれ、つわりじゃないのか? そのうちどこかに滞在するぞ。身重で旅を続けるのは難しいからな」

 結婚して半年、ようやく2人の間に子供が出来た。



「先生、気づいてるのならもっと早めに言ってもいいのに」
「悪い悪い。色々あって中々言うタイミングが無くてな。じゃ、乾杯しようか」
「うん。3人の未来に、乾杯」

 ソルとレナはコップをコツン、と合わせた。



 ソル達の冒険はまだ続きますが、今回でいったん一区切り。
 続きはまた別の機会に。
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